キャリアアップ助成金とは?申請方法や支給金額、コースの種類を解説

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厚生労働省の「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の雇用条件改善のために設けられた助成金制度です。アルバイトやパート、派遣社員、契約社員などを正社員雇用したり、処遇改善を行ったりした事業主に対して支給されます。
非正規雇用労働者の雇用条件改善は、労働者のモチベーションアップやエンゲージメントの向上にもつながります。非正規雇用労働者を雇用している事業主は、キャリアアップ助成金を活用して処遇見直しを検討してみてはいかがでしょう。
この記事では、キャリアアップ助成金の内容や事業主による助成金申請までの流れのほか、注意点や支給されないケースなどについて解説します。

目次

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の処遇改善制度

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正社員として雇用した場合や、非正規雇用労働者の処遇を改善した場合に事業主に支給される助成金です。「正社員化支援」「処遇改善支援」の2種類に大別されます。
キャリアアップ助成金は、2022年4月から、正社員の定義変更や助成金の一部廃止などの変更が行われており、申請を検討の際は、最新の内容を確認しておいてください。

支給対象となる事業主

キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主の条件は、下記のとおりです。助成金申請を検討している事業主の方は、必ず確認してください。

<キャリアアップ助成金の支給対象事業主>
  1. 雇用保険適用事業所の事業主
  2. 雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置
  3. 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定済
  4. キャリアアップ助成金対象の労働者について、労働条件や勤務状況、賃金支払い状況などがわかる書類を作成
  5. キャリアアップ計画期間中に、非正規雇用労働者のキャリアアップに関する取り組みを実施

非正規雇用労働者を正社員雇用にした際に受け取れるキャリアアップ助成金

事業主が、非正規雇用している労働者を正社員雇用すると、キャリアアップ助成金が支給されます。正社員化支援には「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」の2つのコースがあり、コースによって支給金額に違いが生じる点に注意が必要です。
ここでは、非正規雇用労働者を正社員雇用する2つのコースの仕組みや助成金額について解説します。

1. 正社員化コースの場合

正社員化コースは、事業主が非正規雇用労働者を正社員に転換、または直接雇用すると受け取れる助成金です。
自社のアルバイトやパートなどを正社員にした場合、また人材派遣会社から自社に派遣されていた派遣社員を直接正社員雇用した場合にも適用されます。ただし、正社員化コースは、1年度1事業所あたり20人までしか申請できません。
ここでいう正社員とは、同じ事業所内の正社員と同一の就業規則が適用される従業員で、なおかつ、賞与または退職金制度と昇給制度がある従業員を指しています。
この際、正社員への転換または直接雇用の前後の6ヵ月分賃金を比較し、3%以上増額している必要があります。通勤手当や住宅手当、時間外労働手当など賃金3%以上増額の計算に含められない手当もあるため、注意してください。

正社員化コースで受け取れる助成金額は下記のとおりです。ただし、生産性向上要件を満たす場合(助成金申請事業所の生産性の伸びを算定するための「生産性要件算定シート」における生産性が、3年度前比で1~6%以上伸びている)は、支給額が割増されます。

■キャリアアップ助成金 正社員化コースで受け取れる助成金額
企業区分 条件 支給金額
中小企業 有期雇用非正規労働者を正社員にした場合 57万円
有期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 72万円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合 28万5,000円
無期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 36万円
大企業 有期雇用非正規労働者を正社員にした場合 42万7,500円
有期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 54万円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合 21万3,750円
無期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 27万円

また、正社員化コースは下記の条件に該当すると、加算される制度が設けられています。加算措置制度は、中小企業も大企業でも同様の助成額です。

■キャリアアップ助成金 正社員化コースの加算措置制度
条件 加算金額
派遣社員を派遣先で正社員として直接雇用 対象者が一人親家庭の母または父 人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員へ転換
有期雇用非正規労働者を正社員にした場合 28万5,000円 9万5,000円 9万5,000円
有期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 36万円 12万円 12万円
無期雇用非正規労働者を正社員にした場合 28万5,000円 4万7,500円 4万7,500円
無期雇用非正規労働者を正社員にし、生産性向上要件を満たす場合 36万円 6万円 6万円

さらに、勤務地・職務限定社員、短時間正社員制度を新規創設した上で、該当区分で非正規雇用労働者を正社員にした場合、1事業所あたり1回に限り、9万5,000円(生産性向上要件を満たす場合は12万円)の助成金を受け取れます。大企業の場合は7万1,250円(生産性向上要件を満たす場合は9万円)です。

2. 障害者正社員化コースの場合

事業主が障害者の非正規雇用労働者を正社員などに転換した場合においても、キャリアアップ助成金を受け取ることができます。障害者正社員化コースの対象となるのは、下記の条件を満たす労働者です。

<障害者正社員化コースの対象労働者>
  1. 該当事業主に非正規雇用労働者として6ヵ月以上雇用されている
  2. 転換実施日の時点で身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、脳の機能的損傷にもとづく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者のいずれかに該当する
  3. 就労継続支援A型事業(障害者・難病患者が、雇用契約を結び一定の支援を得ながら職場で働く福祉サービス)利用者ではない

ほかにも、「事業主・取締役の3親等以内の親族ではない」といった条件もあるため、実際に申請を行う際には、必ず細かい要件を確認してください。
障害者正社員化コースの支給額は下記のとおりです。支給対象期間は1年で、最初の6ヵ月(第1期)と後半の6ヵ月(第2期)に分けて支給されます。

■キャリアアップ助成金 障害者正社員化コースで受け取れる障害・転換内容別支給金額
企業区分 支給対象者 条件 支給金額
中小企業 ・重度身体障害者
・重度知的障害者
・精神障害者
有期雇用から正規雇用へ 120万円
有期雇用から無期雇用へ 60万円
無期雇用から正規雇用へ 60万円
・重度以外の身体障害者
・重度以外の知的障害者
・発達障害者
・難病患者
・高次脳機能障害と診断された者
有期雇用から正規雇用へ 90万円
有期雇用から無期雇用へ 45万円
無期雇用から正規雇用へ 45万円
大企業 ・重度身体障害者
・重度知的障害者
・精神障害者
有期雇用から正規雇用へ 90万円
有期雇用から無期雇用へ 45万円
無期雇用から正規雇用へ 45万円
・重度以外の身体障害者
・重度以外の知的障害者
・発達障害者
・難病患者
・高次脳機能障害と診断された者
有期雇用から正規雇用へ 67万5,000円
有期雇用から無期雇用へ 33万円
無期雇用から正規雇用へ 33万円

非正規雇用労働者の処遇改善をした際に受け取れるキャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金では、非正規雇用労働者の労働条件を見直すことも助成金支給対象です。処遇改善支援に関する5つのコースについて解説します。

1. 賃金規定等改定コース

事業主は、非正規雇用労働者の賃金規定を見直して、2%以上昇給した場合に助成金を受け取れます。上限は、1年度1事業所あたり100人で、申請は1年度に1回のみです。追加申請はできません。

■キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースで受け取れる助成金
企業区分 条件 支給金額(1人あたり)
中小企業 対象の非正規雇用労働者が1~5人 3万2,000円
対象の非正規雇用労働者が1~5人で、生産性向上要件を満たす場合 4万円
対象の非正規雇用労働者が6人以上 2万8,500円
対象の非正規雇用労働者が6人以上で、生産性向上要件を満たす場合 3万6,000円
大企業 対象の非正規雇用労働者が1~5人 2万1,000円
対象の非正規雇用労働者が1~5人で、生産性向上要件を満たす場合 2万6,250円
対象の非正規雇用労働者が6人以上 1万9,000円
対象の非正規雇用労働者が6人以上で、生産性向上要件を満たす場合 2万4,000円

さらに、下記にあてはまる中小企業は、加算措置制度の対象です。

■キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースの加算措置制度
条件 加算金額(1人あたり)
3%以上5%未満の賃金増額につながる賃金規定の改定を行った場合 1万4,250円
3%以上5%未満の賃金増額につながる賃金規定の改定を行い、生産性向上要件を満たす場合 1万8,000円
5%以上の賃金増額につながる賃金規定の改定を行った場合 2万3,750円
5%以上の賃金増額につながる賃金規定の改定を行い、生産性向上要件を満たす場合 3万円

また、「単純比較表」「分類法」「要素比較法」「要素別点数法」のいずれかの手法で職務評価を行い、それにもとづいた賃金規定の増額改定を行った場合は、下記の加算を受けられます。

■キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースの職務評価・増額改定を行った場合の加算措置制度
企業区分 条件 加算金額(1事業所あたり)
中小企業 職務評価の手法の活用により賃金規定などを増額改定した場合 19万円
職務評価の手法の活用により賃金規定などを増額改定し、生産性向上要件を満たす場合 24万円
大企業 職務評価の手法の活用により賃金規程などを増額改定した場合 14万2,500円
職務評価の手法の活用により賃金規定などを増額改定し、生産性向上要件を満たす場合 18万円

2. 賃金規定等共通化コース

非正規雇用労働者と正社員に共通する職務などを鑑みた上で、賃金規定を新たに作成・適用した事業主には、下記の助成金が支給されます。

■キャリアアップ助成金 賃金規定等共通化コースで受け取れる助成金
企業区分 条件 支給金額(1事業所あたり)
中小企業 有期雇用労働者などに関して正社員との共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成・適用した場合 57万円
有期雇用労働者などに関して正社員との共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成・適用し、生産性向上要件を満たす場合 72万円
大企業 有期雇用労働者などに関して正社員との共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成・適用した場合 42万7,500円
有期雇用労働者などに関して正社員との共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成・適用し、生産性向上要件を満たす場合 54万円

3. 賞与・退職金制度導入コース

事業主が非正規雇用労働者向けの賞与や退職金制度を新設し、支給やそのための積立を行った場合、下記の助成金の支給対象となります。

■キャリアアップ助成金 賞与・退職金制度導入コースで受け取れる助成金
企業区分 条件 支給金額(1事業所あたり)
中小企業 有期雇用労働者などに関して賞与・退職金制度を新設、支給または積立を実施した場合 38万円
有期雇用労働者などに関して賞与・退職金制度を新設、支給または積立を実施し、生産性向上要件を満たす場合 48万円
大企業 有期雇用労働者などに関して賞与・退職金制度を新設、支給または積立を実施した場合 28万5,000円
有期雇用労働者などに関して賞与・退職金制度を新設、支給または積立を実施し、生産性向上要件を満たす場合 36万円

なお、賞与と退職金、両方の制度を同時に導入すると、下記の加算が受けられます。

■キャリアアップ助成金 賞与・退職金制度導入コースの加算措置制度
企業区分 条件 加算金額(1事業所あたり)
中小企業 賞与と退職金両方の制度を同時に導入した場合 16万円
賞与と退職金両方の制度を同時に導入し、生産性向上要件を満たす場合 19万2,000円
大企業 賞与と退職金両方の制度を同時に導入した場合 12万円
賞与と退職金両方の制度を同時に導入し、生産性向上要件を満たす場合 14万4,000円

4. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース

2022年9月30日までの時限措置ではありますが、「労使合意にもとづく社会保険適用拡大」を行って、これまで対象外だった非正規雇用労働者を社会保険の被保険者とした場合、下記の助成金が支給されます。

■キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コースで受け取れる助成金
企業区分 条件 支給金額(1事業所あたり)
中小企業 有期雇用労働者などの働き方の意向を適切に把握、社会保険の適用・働き方の見直しに反映させる取り組みを実施し、新たに社会保険の被保険者とした場合 19万円
有期雇用労働者などの働き方の意向を適切に把握、社会保険の適用・働き方の見直しに反映させる取り組みを実施し、新たに社会保険の被保険者とし、生産性向上要件を満たす場合 24万円
大企業 有期雇用労働者などの働き方の意向を適切に把握、社会保険の適用・働き方の見直しに反映させる取り組みを実施し、新たに社会保険の被保険者とした場合 14万2,500円
有期雇用労働者などの働き方の意向を適切に把握、社会保険の適用・働き方の見直しに反映させる取り組みを実施し、新たに社会保険の被保険者とし、生産性向上要件を満たす場合 18万円

※2022年9月30日まで

中小企業が社会保険加入日以降、該当の非正規雇用労働者の基本給を増額した場合は、増額率に応じて1人あたり1万9,000~13万2,000円(生産性向上要件を満たす場合は2万4,000~16万6,000円)の加算対象があります。大企業は1人あたり1万4,000~9万9,000円(生産性向上要件を満たす場合は1万8,000~12万5,000円)です。ただし、支給申請は45人分が上限となるので注意しましょう。

社会保険加入日以降、非正規雇用労働者の生産性を上げるための研修制度や評価制度などを導入した場合は、1事業所あたり10万円(大企業は7万5,000円)の加算が受けられます。

5. 短時間労働者労働時間延長コース

短時間勤務の非正規雇用労働者について、手取り収入が減らないよう週の所定労働時間延長と処遇改善の上で社会保険への加入を行うと、下記助成金が支給されます。申請は1事業所あたり、1年度につき45人までです。このコースは2024年9月30日まで暫定措置が適用されており、以降は支給額が減額となったり、支給申請上限人数が減少したりすることがあるので注意してください。

■キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長コースで受け取れる助成金
企業区分 条件 支給金額(1人あたり)
中小企業 1週間あたりの所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険に加入させた場合 22万5,000円
1週間あたりの所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 28万4,000円
1週間あたりの所定労働時間を1時間以上2時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させた場合 5万5,000円
1週間あたりの所定労働時間を1時間以上2時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 7万円
1週間あたりの所定労働時間を2時間以上3時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させた場合 11万円
1週間あたりの所定労働時間を2時間以上3時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 14万円
大企業 1週間あたりの所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険に加入させた場合 16万9,000円
1週間あたりの所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 21万3,000円
1週間あたりの所定労働時間を1時間以上2時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させた場合 4万1,000円
1週間あたりの所定労働時間を1時間以上2時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 5万2,000円
1週間あたりの所定労働時間を2時間以上3時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させた場合 8万3,000円
1週間あたりの所定労働時間を2時間以上3時間未満に延長し、基本給の昇給を行った上で社会保険に加入させ、生産性向上要件を満たす場合 10万5,000円

※2024年9月30日までの暫定措置

キャリアアップ助成金申請の流れ

キャリアアップ助成金の申請は、計画性にもとづいて行う必要があります。助成金申請手順は下記のとおりです。正社員化支援と処遇改善支援は、申請の流れにおいて基本的に変わりはありません。

■支援別・キャリアアップ助成金の申請ステップ
Step 項目 正社員化支援の流れ 処遇改善支援の流れ
Step1 計画の策定 事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置して、労働組合に意見聴取をした上で「キャリアアップ計画」を作成 事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置して、労働組合に意見聴取をした上で「キャリアアップ計画」を作成
Step2 労働局長の認可 キャリアアップ計画について、事業所を管轄する労働局に届出・認定。正社員に転換する前日までの提出が必須 キャリアアップ計画について、事業所を管轄する労働局に届出・認定。正社員に転換する前日までの提出が必須
Step3 就業規則等の改定 就業規則等に正社員転換についての手続き方法や要件、時期に関する規定を設け、労働基準監督署に届出 助成金対象となるコースの要件にもとづいて賃金の改定や社会保険加入などを実施
Step4 転換の実施 Step3にもとづき、転換を実施 Step3にもとづき、転換を実施
Step5 6ヵ月間の賃金支払い 転換後、6ヵ月間継続雇用し、その間の賃金を支払う
※賃金額は3%以上上がっている必要あり
転換後、6ヵ月間継続雇用し、その間の賃金を支払う
※「賞与・退職金制度導入コース」の場合は、初回の賞与支払いまたは6ヵ月以上の退職金積立
Step6 助成金の支給申請 Step5の賃金支払いが完了した翌日から2ヵ月以内に支給申請 Step5の賃金支払いが完了した翌日から2ヵ月以内に支給申請
Step7 助成金の受け取り 審査に通過後、助成金が支給 審査に通過後、助成金が支給

キャリアアップ助成金申請時の注意点

非正規雇用労働者を正社員として雇用したり、賃金を上げたりしたとしても、要件を満たさないと助成金を受け取れない可能性があります。
ここでは、キャリアアップ助成金を申請する際に、注意しなくてはならない点をいくつかご紹介しましょう。

正社員化・処遇改善措置前の手続きが必要

キャリアアップ助成金では、正社員への転換や賃金アップなどの措置前に「キャリアアップ計画」を策定し、届け出なければなりません。措置後提出は受け付けられないため、必ず事前に労働組合等と協議の上で、計画を策定してください。

就業規則などへの明記が必要

特定の非正規雇用労働者の処遇を変えるだけでは、キャリアアップ助成金の要件を満たすことができません。どのようなときに、どのような労働者が該当の制度の対象になるのか、就業規則などにルールとして明記する必要があります。

支給申請期間中の手続きが必要

キャリアアップ助成金の申請ができるのは、該当の措置を行った後、6ヵ月分の賃金が支払われた日の翌日から2ヵ月以内です(賞与は初回支払日の翌日から2ヵ月以内)。この期間内に手続きを行わないと、助成金は支給されません。

申請は給与支払い後に行われ、さかのぼって訂正できない

キャリアアップ助成金の申請をするのは、正社員への転換や賃金アップなどを行い、賃金を6ヵ月支払った後です。「賃金アップの割合を間違えた」などの理由から支給要件を満たさないことが後でわかっても、さかのぼって修正できません。
不正受給が相次いで発覚したことから、キャリアアップ助成金の審査は非常に厳しくなっています。助成金申請に詳しい社会保険労務士などに相談しながら、不備がないように慎重に申請手続きを進めるようにしてください。

助成金支給までに時間がかかる

事業主はキャリアアップ助成金の要件を満たすために、キャリアアップ管理者を選出・配置し、キャリアアップ計画を作成します。その後、該当労働者を正社員へ転換や処遇改善して、6ヵ月分の賃金支払いなども行わなければなりません。ここまでの手続きだけでも、かなりの時間がかかるはず。さらに、申請後の審査にも数ヵ月程度要することもあります。
状況によって異なりますが、該当の措置を行ってから助成金を受け取るまでには、およそ1年程度を要すると考えておいたほうがいいでしょう。

キャリアアップ助成金が支給されないケース

さまざまな理由によって、キャリアアップ助成金が支給されないこともあります。せっかくの申請が無駄にならないよう、キャリアアップ助成金が不支給になってしまう理由について解説します。

労働基準法などの法令違反がある

支給申請日の前日から過去1年以内に労働関連の法律に違反したことがある事業主は、キャリアアップ助成金の対象になりません。残業代の算出方法や労働時間、有給休暇付与・取得など、最新の労働基準法を遵守した経営が行えているかどうか、確認しておく必要があります。
また、そもそも労働者の処遇が改善されていないなど、キャリアアップ助成金の意図にそぐわない経営を行う事業主は支給対象外です。労働環境や社内規定をあらためて見直してみてください。

実地調査の協力を拒否した

キャリアアップ助成金の申請後、審査のために事業所の実地調査が行われることがあります。実地調査は予告なく行われることもあり、拒否すると助成金の支給を受けられません。
調査時に提出を求められた総勘定元帳や賃金台帳などの法定帳簿において、不正に改ざんされた書類や原本とは異なる書類を提出し、それが明らかになった場合も不支給の対象です。

書類の疑義に対し適切な対応をとらない

キャリアアップ助成金の申請にあたって、申請書や添付書類などに不明点があった場合、都道府県労働局長から書類の補正や追加書類の提出を求められる場合があります。期日までに必要な対応をとらないと不支給の対象です。

不正受給から5年以内の申請

不正受給をしたことがある事業主は、以後5年間はキャリアアップ助成金の受給ができません。不正受給とは、虚偽の申告によって、本来なら受け取れないはずの助成金を受け取ること。虚偽の程度にかかわらず、真実とは異なる申告によって助成金を受け取った場合、不正受給扱いとなります。

受給後の会計検査院検査への協力不同意

キャリアアップ助成金の支給後、会計検査院が会計検査を行うケースがあります。この会計検査への協力を同意していないと、助成金を受け取ることはできません。あらかじめ会計検査への協力には同意しておくようにしてください。
なお、検査対象となる可能性を踏まえ、支給申請書や添付書類の写しなどは、支給決定から5年間保存しておきましょう。

キャリアアップ助成金を不正受給した場合の罰則

キャリアアップ助成金を不正受給した場合は、助成金を全額返還しなければなりません。また、助成金支給日の翌日から返還日までの期間に対して、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金を支払う必要があります。なお、申請に際して代理人を利用しており、なおかつ代理人が不正を黙認・関与していた場合、申請代理人も連帯債務を負うことになります。
不正受給をしてしまうと、その後5年間は助成金を受け取ることができません。将来的にも大きなデメリットとなるため、虚偽の申請はしないようにしましょう。

キャリアアップ助成金の審査通過に向けて、日々の労働基準法遵守と総務人事系システム活用を

キャリアップ助成金を受け取るためには、厳しい審査を通過する必要があります。日頃から労働基準法に則った経営を行い、就業規則や賃金規定に問題がないか、社会保険労務士などに確認してもらいましょう。
また、助成金の申請自体も、人事労務担当者が該当分野に知見のある社会保険労務士を通して行うのが確実です。キャリアアップ計画の作成段階から、専門家に相談しつつ手続きを進めることをおすすめします。

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山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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