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IT導入補助金2024の申請受付が始まりました。中小企業・小規模事業者にとって活用しやすい人気の補助金制度ですが、申請にはIT導入支援事業者のサポートを受けるなど、他の補助金と異なるステップを踏まなければならないため、申請の流れをしっかり把握しておくことが肝要です。
そこで今回は、IT導入補助金の申請の流れや、スムーズに採択を受けるためのコツを紹介します。
※2024年IT導入補助金の公募要領については、コラム「 IT導入補助金]2024年度の制度概要や申請ポイントをわかりやすく解説」もご参照ください。
目次
- IT導入補助金申請の基本的な流れ
- 申請ステップ① 制度の理解
- 申請ステップ② 事前準備
- 申請ステップ③ 交付申請
- 採択されやすくするコツ
- 申請ステップ④以降の流れと交付決定後の注意点採択されやすくするコツ
- 信頼できるIT導入支援事業者と二人三脚でしっかり準備を!
IT導入補助金申請の基本的な流れ
IT導入補助金は、企業の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援するための補助金です。
あらかじめ運営事務局に登録された生産性向上を促すITツール(ソフトウェア、オプション、役務・ハードウェア)の中から、自社の課題にあった製品を選択・導入し、その挿入経費において一定の補助額・補助率の範囲内で補助を受けられます。
IT導入補助金の運営サイトによると、IT導入補助金を受けるには、次の7つのステップを踏むことが必要とされています。今回はこのステップのうち、交付申請までの工程に当たる①〜③について、具体的な進め方を解説していきます。
申請ステップ① 制度の理解
IT導入補助金制度には複数の申請枠があり、要件もそれぞれに異なります。申請枠や要件は毎年見直されるため、補助金を検討する際は、まずその年の申請枠や要件を確認・理解しなければなりません。
例えば、IT導入補助金2024の申請枠および補助額・補助率・対象ツールなどの要件は、次のようになっています。
※詳細は、運営サイトで公開されている各申請枠の公募要領で確認できます。
出典(要件部分):IT導入補助金2024「資料ダウンロード」
申請ステップ② 事前準備
IT導入補助金の申請では、事前に次の4つの準備が必要です。
1.「gBizIDプライム」を取得する
IT導入補助金の申請は、全てweb上で行われます。そのため、アカウント取得が必要です。
IT導入補助金には、様々な行政サービスにログインできる共通認証サービス「gBizID」のプライムアカウント※が必要です。
アカウントには有効期限や年度更新がないため、既に取得済みの場合、再取得の必要はありません。
新規IDは発行されるまで約2週間かかるため、申請のタイミングを考慮して早めに取得しましょう。
※ gBizIDプライムアカウントは、gBizID内で法人・個人事業主向けに発行されるアカウントです。取得方法は、gBizIDホームページを参照ください。
2.「みらデジ経営チェック」を実施する
IT導入補助金の目的は、企業の生産性向上と効率化を実現することにあります。そのためには、自社の強み・弱みを認識・分析し、取り組むべき課題がどこにあるかを明確にして、適切なITツールを選ばなければなりません。
その一指標として、また審査時の参考資料として、通常枠の申請では申請前に「みらデジ経営チェック」※を実施することが要件となっています。(その他の申請枠は加点要件です)
「みらデジ経営チェック」を実施するには、事業者登録が必要です。IT導入補助金の申請のために実施する場合は、gBizIDプライムアカウントも登録しなければならないため、まずはアカウントを取得してから事業者登録を行いましょう。
※「みらデジ経営チェック」は、中小企業庁「みらデジ」が運営する無料の経営チェックツールで、自社がどのような課題を抱え、何に取り組むべきなのか、デジタル化の進捗状況を踏まえて把握することができます。事業者登録方法については、「みらデジ」ホームページをご参照ください。
3.IT導入支援事業者に相談しITツールを選定する
IT導入補助金を受けるには、事務局に登録されているITツールから選定する必要があります。また、自社の課題に見合う適切なITツールを選び、高い導入効果を得るため、IT導入支援事業者のサポートも必須となっています。
IT導入支援事業者は、中小企業・小規模事業者等のパートナーとして、ITツールの説明・導入・運用方法の相談等のサポートや、補助金の交付申請、実績報告等の各種申請・手続きのサポートを行います。ステップ①で自社に合った申請枠が分からなかった場合でも、IT導入支援事業者が最適なITツールや活用できる申請枠を提案してくれます。
4.「SECURITY ACTION」を宣言する
IT導入補助金の申請には、「SECURITY ACTION」を宣言していることも要件となっています。
「SECURITY ACTION」は、企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の実践をベースに、「★一つ星」「★★二つ星」 の2段階の取り組み目標が設けられており、どちらを宣言するかは任意となっています。(「★★二つ星」であれば加点要件となり、審査に有利です)
「SECURITY ACTION」のロゴマークは取得まで1〜2週間程度かかりますが、IT導入補助金の申請にはロゴマークは必須ではないため、宣言手続きが完了次第、いつでもIT導入補助金の申請ができます。(ただし、宣言の手続きは申請者である企業が自ら行う必要があり、IT導入支援事業者は代理申請できません)
すでに「SECURITY ACTION」を宣言している場合は、取得済みの自己宣言IDで申請手続きを行えます。
※詳しくは、「 SECURITY ACTION」ホームページを参照ください。
申請ステップ③ 交付申請
IT導入支援事業者に相談し導入するITツールが決まったら、交付申請の事業計画を策定し、交付申請を行います。申請は、全てWebフォームで行います。IT導入支援事業者から招待される「申請マイページ」にログインし、必要事項を入力して書類をアップロードします。
申請に必要な添付書類は次の通りです。代替書類は一切認められないため、漏れのないように注意しましょう。
出典:IT導入補助金2024 PDF「公募要領_通常枠」
履歴事項全部証明書は、発行後3ヵ月以内で、かつ全ページ揃っていることが条件で、これを満たさない場合は申請書類として認められません。また、納税証明書は電子納税書も認められていますが、XML形式で発行された納税証明データシート等は認められておらず、交付請求時にPDF形式にて発行されたフォーマット(窓口発行の納税証明書と同一フォーマット)のみ有効です。
アップロードする際は、書類にマイナンバーや保険者番号等の個人情報が記載されていないことを確認しましょう。書面をPDF化して提出する場合は、個人情報部分を黒塗りにするなどして判別できないようにします。
出典:IT導入補助金2024 PDF「交付申請の手引き」
入力画面は、基本的にラジオボタンやチェックボックスでの選択式ですが、一部の項目は記入式になっています。入力ミスなどをすると、記入不備として差戻されることがあるため、内容をしっかり確認しながら入力を進めましょう。
例えば、基本情報が提出書類の1つである履歴事項全部証明書の記載内容と異なると、差戻される可能性があります。特に住所は、証明書の記載通り、省略せず「○丁目○番地○号」のように正式な表記を徹底しましょう。また、「設立年月日の欄に創業年月日を記載する」「役員入力欄に記載する役職名を間違える」「従業員数に役員や派遣社員も含んでいる」※などもよく起こるため、注意が必要です。
※従業員数は、正社員、契約社員、パート、アルバイトの合計人数で、役員や派遣社員は含まれません。
自社での入力・書類添付が完了したら、IT導入支援事業者が導入するITツール情報や事業計画値を入力します。IT導入支援事業者から入力完了の連絡を受けたら、「申請マイページ」で内容を最終確認し手続きを完了させます。
ここまでを、交付申請期間までに終了させれば、概ね1ヵ月後に設定されている「交付決定日」に、審査結果が通知されます。
なお、「申請マイページ」では、申請手続きのほか事業者情報の変更や、事務局からの通知・連絡の受け取りなどもできます。「申請マイページ」のステータスで審査の進捗を確認できるため、不備があった場合にすぐ対応できるよう、定期的にチェックしておくと安心です。
採択されやすくするコツ
IT導入補助金の審査では、申請枠によって異なります※が、主に事業面、計画目標値、政策面の3つの項目で審査が行われます。
※インボイス枠には計画目標値の審査はありません。
出典:IT導入補助金2024 PDF「公募要領_通常枠」
審査は提出された書類をもとに行われるため、選んだツールが自社の課題解決に不可欠であると伝えることが重要です。「現在の財務状況」「自社の強み・弱み」「申請するITツールでビジネスプロセスをどう改善したいか」といったシナリオを作成して、申請フォームにあるフリー入力欄を活用してしっかり伝えていきましょう。
申請フォームには、アンケート形式の入力項目もありますが、総じて「分からない」「予定なし」「無回答」など経営に対して後ろ向きな選択・記述をしないことが大切です。現在は取り組んでいなくても、「今は実施できていないが今後は実現したい」など前向きな回答を心がけましょう。
また、各申請枠には加点項目の取り組みが設けられおり、基準を満たすことで審査時に加点されます。どの程度審査が有利になるのかは公表されておらず、加点されたからといって必ず採択されるものではありませんが、IT導入補助金を受ける可能性を高めるためにも、積極的に取り組むことをおすすめします。
例えば2024年の審査では、次の取り組みが加点となっています。
※空白は必須項目です。
出典:IT導入補助金2024 PDF「加点項目一覧」
全ての枠で加点項目となる「地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画」は、地域未来投資促進法※に基づき策定された地域経済牽引事業計画のことで、市町村や県に認められ承認を得られれば、申請枠での加点となります。ただし、すぐに取得できるものではないため、この取り組みで加点を狙うのは難しいと言えるでしょう。
※地域未来投資促進法とは、地域の特性を活かした高い付加価値を創出することで地域経済の発展を促進することを目的に作られた法律
すぐに取り組めて効率よく加点を狙うなら、SECURITY ACTIONの「★★二つ星」宣言や「サイバーセキュリティお助け隊サービス」のITツールの選定などが挙げられます。
賃上げの事業計画の策定については、次の要件を全て満たした場合に加点されます。また、これらに加え、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、さらなる加点となります。
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- 事業計画期間において、給与支給総額※を年平均成長率1.5%以上(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が、制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年平均成長率1%以上)向上する
※給与支給総額とは、非正規を含む全従業員・役員に支払った給与等(福利厚生費、法定福利費、退職金を除く)
他にも、すでに「くるみん・えるぼし認定」を受けている企業や、健康経営優良法人2023に認定された企業、「地域 DX 促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた企業、介護保険法に基づくサービスを提供し介護職員等特定処遇改善加算を取得している法人などは、そのまま加点となるため有利です。
なお、IT導入補助金には、過去のIT導入補助金で特定申請枠の交付決定を受けた事業者など、減点項目も設定されています。それぞれの申請枠の公募要領に詳細が記載されているため、減点項目も入念に確認しておきましょう。
申請ステップ④以降の流れと交付決定後の注意点
IT導入補助金の「交付決定」通知を受けたら、申請したITツールを発注・契約し、導入費用を支払います。通知が届く前に発注・契約したり費用を支払ったりすると、補助金の対象外となるため注意しましょう。
また、この時点ではまだ補助金は交付されません。通常請求額に基づき、ベンダーへの支払いを先に行うことになります。支払方法は、銀行振込(または口座振替)とクレジットカードから選べます。(現金払いは不可)
ITツールを発注・契約し、納品・支払いまでが済んだら、以下のような書類を「申請マイページ」から提出します。(事業実績報告)この手続きは、申請した企業とIT導入支援事業者の両者が行うことになっています。
- IT導入支援事業者が発行した請求書・請求明細書
- IT導入支援事業者に支払った証憑
- 振込明細書
- 振込受付書
- 利用明細書ネットバンキングの取引完了画面
- クレジットカード会社の利用明細等(口座振替の場合は通帳など代⾦支払が行われたことが分かる書類)
- 補助⾦の交付を受ける口座情報
- ITツールの利用を証明する資料(導入したソフトウェアが分かる画像や自社の導入されていることが証明できる画像)
補助金の交付は、報告時点で「ITツールの利用・運用が開始されている」ことが必須になります。事業実績報告が完了すると、その内容から補助金額が確定され、「申請マイページ」で補助金額を確認できるようになります。
報告期限は交付決定後約6ヵ月程度となっていますが、それより短く設定されている申請スケジュールもあるため、申請のタイミングでスケジュールをしっかり確認しておきましょう。(申請スケジュールの詳細は運営サイト上で順次公表されます)
補助金の交付後は、定められた期間内に事業実施効果報告を行わなければなりません。
例えば、通常枠であれば「ITツールによる生産性向上をどれだけ実現できたか」「数値目標に関する情報」(営業利益、人件費、減価償却費、従業員数および就業時間等)や給与支給総額・事業場内最低賃金等を報告します。インボイス枠では、導入したITツールを継続的に活用していること、ITツールの運用によるインボイス制度対応状況の効果などを証明する書類等を提出することも必要です。
IT導入補助金2024では、事業実施効果報告の報告期間は次のようになっています。
年度 | 事業実施効果報告対象期間 | 事業実施効果報告期間 |
---|---|---|
1年度目 | 2025年4月1日~2026年3月31日 | 2026年4月~2026年7月 |
2年度目 | 2026年4月1日~2027年3月31日 | 2027年4月~2027年7月 |
3年度目 | 2027年4月1日~2028年3月31日 | 2028年4月~2028年7月 |
※ 賃上げ要件の効果報告では、効果報告値とあわせて、賃金台帳など事実確認ができる書類が必要になる場合があります。
年度 | 事業実施効果報告対象期間 | 事業実施効果報告期間 |
---|---|---|
1年度目 | ITツール導入後~ | 2026年1月~2026年3月 |
3年度目 | 2027年4月1日~2028年3月31日 | 2028年4月~2028年7月 |
※インボイス枠には、2年度目の報告は必要ありません。
※賃上げによる加点を受けない場合は3年度目の報告も不要になります。
事業実施効果報告前に、導入したITツールを解約・利用停止した場合や、廃業、倒産、事業廃止、事業譲渡、吸収合併等により補助事業を取りやめた場合は、辞退の手続きを行えば報告の義務はありません。
ただし、この場合は交付規程に基づき、交付された補助金の全部または一部の返還が必要となることがあるため、注意が必要です。また、返還が必要な場合は、補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じて加算金を納付する必要があり、納付が遅れると延滞金も発生します。
信頼できるIT導入支援事業者と二人三脚でしっかり準備を!
IT導入補助金の採否は、不備による差戻しや減点項目が多いなども大きく影響するため、他の補助金等の申請同様、申請書の作成が要となることは間違いありません。
申請の際にはIT導入支援事業者のサポートが必須となる工程も多く、スムーズかつ確実な採択に向けて手続きを進めるには、信頼できるIT導入支援事業者に相談することが肝心です。制度にも対象ツールにも知見の深いIT導入支援事業者を選ぶことで、充分なアドバイスやサポートが期待できます。
IT導入支援事業者と信頼関係をしっかりと築き、協力しながら、スマートな採択を目指して準備を進めましょう!
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