

介護休暇は、従業員が家族の介助や見守りを行うために休暇を取得できる制度です。介護休業と混同されやすい制度ですが、取得できる条件や日数、想定されている利用場面には明確な違いがあります。人事労務担当者が両者の違いを正しく理解し、従業員から取得についての相談を受けた際に適切に対応できる体制を整えておくことは、仕事と介護の両立支援において欠かせません。
本記事では、介護休暇とはどのような制度なのかという基本から、介護休業との違い、取得条件や日数、申請方法までを整理して解説します。制度を形だけで終わらせず、実際に活用できる状態にするための運用ポイントも併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 介護休暇とは?
- 介護休暇と介護休業の違い
- 介護休暇の制度の概要
- 介護休暇の申請方法
- 介護休暇と介護休業、どちらを選んだほうがよい?
- 介護休暇を運用する際のポイント
- 介護休暇の運用を支える勤怠・給与管理の重要性
- 介護休暇に関するよくある質問
介護休暇とは?
介護休暇は、従業員が要介護状態にある家族の介護や世話を行うために休暇を取得できる制度です。取得要件を満たす従業員から申し出があった場合、企業は原則として拒否することはできません。
ここでいう要介護状態とは、病気やケガ、身体または精神上の障がいにより、一定期間にわたって常時の介護や見守りが必要な状態を指します。このような状態にある家族の通院や入院の付き添い、介護保険サービスの手続きなど、一時的・緊急的な対応が必要な場面で利用される短期間の休暇制度が介護休暇であり、「介護全般を担う制度」ではない点に注意が必要です。
人事労務担当者には、介護休暇制度を円滑に運用するための基本的な理解が求められます。
介護休暇と介護休業の違い
| 介護休暇 | 介護休業 | |
|---|---|---|
| 対象期間 | 対象家族1人につき年間5日まで、対象家族が2人以上の場合は10日まで(時間単位での取得も可能) | 対象家族1人につき通算93日まで(3回に分けて取得可能) |
| 申請方法 | 勤務当日に申し出ても取得可能(就業規則に従う) | 原則として2週間前までに申請が必要 |
| 給与の扱い | 基本的に無給 | 基本は無給だが、条件を満たせば介護休業給付を受給できる |
| 雇用保険給付 | なし | 介護休業給付の受給対象 |
介護休暇と介護休業は、いずれも育児・介護休業法に基づく制度で、従業員には家族の介護を理由に休みを取得する権利があるという点は共通しています。ただし、介護休暇が日常的な対応や突発的な事情など、短期間の介護への対応を想定した制度であるのに対し、介護休業は数週間以上にわたる継続的な介護を前提とした制度である点が大きな違いです。
また、いずれの制度も基本的には無給ですが、介護休業については雇用保険から介護休業給付金が支給される制度があります。
人事労務担当者は、対象期間や賃金・給付の扱いの違いを踏まえ、状況に応じた制度を案内することが大切です。
介護休暇の制度の概要
介護休暇の運用にあたっては、取得日数や対象範囲、給与の取り扱いなどを正しく理解しておく必要があります。ここでは、制度の概要について解説します。
●取得可能な日数
介護休暇の休暇日数は、対象家族1人につき年間5日までです。対象家族が2人以上いる場合は、年間10日まで取得できます。
取得単位は1日単位のほか時間単位や半日単位での取得も可能で、企業によっては中抜けによる利用も認められています。そのため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなど、短時間の対応にも利用しやすい点が特徴です。
●取得対象者・条件
介護休暇の取得対象者は、要介護状態にある家族を介護する介護者です。対象となる家族には、配偶者(事実婚を含む)、子(養子を含む)、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫、養父母が含まれます。なお、介護休暇は対象となる家族と同居していない場合でも取得が可能です。
取得にあたって性別による制限はなく、雇用形態についても正社員に限らず、パートタイムやアルバイト、派遣社員などの有期雇用労働者も対象となります。ただし、日雇い労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者で労使協定によって対象外とされている場合は取得できません。具体的な判断基準については、事業主が定める規定を確認する必要があります。
●取得時の給与の取り扱い
介護休暇中の賃金について、法律上の支給義務は定められていません。そのため、介護休暇を有給とするか無給とするかは、各企業が就業規則や社内規程によって決めることができます。
介護休暇の申請方法
ここでは介護休暇の具体的な申請の流れについて解説します。
●基本的な申請フロー
介護休暇は法律上、当日に口頭での申し出による申請も可能とされています。ただし、管理や記録の側面から、多くの企業が書面や社内システムによる申請を求めているのが実情です。
そのため、申請の手続き方法や様式、提出先について就業規則や社内イントラネットなどで明示し、従業員が迷わず申請できるようにしておくことが望ましいでしょう。
●申請時の企業側の対応
社内に介護休暇を申請しづらい雰囲気があると取得が進まず、制度が十分に活用されません。その結果、介護離職が進むことも考えられます。これを避けるため、人事労務担当者は従業員が相談しやすい環境を整え、制度利用を歓迎する姿勢を示し、取得のサポートをすることが求められます。
併せて、申請ルールを規定として明確化しておくことも重要です。たとえば、家族の状況を示す資料の提出を求めるかどうかは事業主の判断によるため、必要な場合はその旨をあらかじめ定めておく必要があります。また突発的な通院の付き添いなど、当日申請されるケースも想定し、緊急時の連絡方法や対応方針についても事前に周知しておくとよいでしょう。
介護休暇と介護休業、どちらを選んだほうがよい?
介護への対応方法は、家族の状況や介護の内容によって従業員ごとに異なります。そこで、介護休暇と介護休業の違いを正しく理解し、状況に応じて使い分けができるようにしておくことが大切です。
●短時間・短期間の対応が中心なら「介護休暇」
介護休暇は、急な通院の付き添いや短時間の外出など、突発的に介護対応が必要となる場面に向いている制度です。たとえば、病状の急変によって一時的な介助が必要となるケースなどが該当します。
制度上、時間単位での取得も可能とされており、仕事の合間に必要な対応を行いやすい点が特徴です。また、当日の申し出による取得も認められているため、常時の介護には至らないものの、急な体調変化があった場合や通院が必要になった場合にも柔軟に対応できます。
このような特性を踏まえ、企業側は申請ルールを過度に複雑にせず、従業員が必要な場面で利用しやすい運用を心がけることが望まれます。
●まとまった準備や長期的な介護には「介護休業」
介護の状況が変化し、一定期間継続的に介護に関わる必要が生じた場合には、介護休業の利用が適しています。介護休業は日常的な介護対応に加え、生活や介護体制そのものを見直すための時間を確保することを想定した制度です。
たとえば、遠方で行っていた介護を自宅介護に切り替える準備や、介護施設への入居手続き、主たる介護者としての役割調整など、短時間では対応しきれない場面が該当します。
このようなケースでは、企業側が休業開始のタイミングや取得期間について、従業員に事前に相談できる体制を整えておくことが大切です。こうした対応によって従業員の不安を軽減することで、職場復帰までの流れもスムーズに整えやすくなります。
介護休暇を運用する際のポイント
介護休暇は制度を整備するだけでなく、日々の運用が適切に行われてこそ機能します。ここでは、介護休暇を形骸化させないために、人事労務担当者が意識しておきたい運用上のポイントを解説します。
●業務を標準化し、休みを取りやすい体制を整える
介護休暇を円滑に運用するためには、特定の従業員に業務を集中させない体制づくりも重要です。日頃から職場内で担当内容や作業手順、業務の進捗状況を共有しておけば、ある部分の担当者が急に休暇を取得した場合でも対応しやすくなります。
こうした体制を整えておくことは、介護休暇の取得を検討している従業員にとっての心理的な負担軽減になり、制度を利用しやすい環境づくりにつながります。
●制度への理解を広げ、利用しやすい雰囲気をつくる
介護休暇が円滑に運用されるかどうかは、制度の内容だけでなく、職場全体の理解や協力体制にも左右されます。そこで、介護休暇を取得する意義や介護離職の防止、人員確保といった組織側のメリットを共有しておくことが重要です。こうした情報をあらかじめ伝えることで、「介護休暇は職場全体で支える制度である」という理解が広がり、利用しやすい雰囲気につながります。
また、介護休暇をライフイベントに対応する制度の一つとして、育児休業と同様に位置づけて説明すると、取得に対する心理的な抵抗感を下げる効果を期待できます。
さらに、制度の運用を担う管理職自身が介護休暇の趣旨や基本的なルールを正しく理解していることも欠かせません。事前の情報共有や研修を通じて、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。
●運用ルールを明確にし、手続きと相談先をわかりやすくする
介護休暇を円滑に利用してもらうためには、申請方法や申請期限、相談窓口といった基本的な運用ルールを明確にしておくことが重要です。特に介護休暇は急な事情に対して利用されることが多いため、従業員が迷わず行動できる状態を整えておく必要があります。
具体的な対応としては、就業規則や介護休暇に関する規程に取得条件や手続きの流れを明記し、イントラネットや説明資料を通じて周知しておくことが有効です。併せて、制度の背景や関連する仕組みについては厚生労働省Webサイトなどの公的情報を参照できるよう案内しておくと、従業員が自ら確認しやすくなります。
また、介護保険制度や介護休業給付金の概要、近年の法改正の動きについては、公式に示されている資料や様式例を紹介しておくとよいでしょう。こうした情報と併せて相談窓口を明確にしておくことで、介護休暇を利用する従業員の不安の軽減につながります。
介護休暇の運用を支える勤怠・給与管理の重要性
介護休暇の制度概要から取得方法、運用時のポイントまでを解説してきました。実際に介護休暇や介護休業等を運用する場面では、支給日数の管理や申請のタイミングなど、的確な判断が求められることも少なくありません。
たとえば、入社間もない従業員から介護休暇や介護休業の取得について相談があった場合の取り扱いや、制度の利用状況をどのように管理するかといった点についても、事前に基準を明確にしておく必要があります。
また、介護休暇の取得状況の管理や勤怠への反映、制度改正に伴う社内規程の見直しなど、実務対応は多岐にわたります。これらの業務に円滑に対応するには、介護休暇や介護休業の取得状況を正確に管理し、給与計算と連動させられる仕組みを整えておくことが重要です。その具体的な方法の一つとして、クラウド型の勤怠・給与管理システムを活用することが考えられます。
奉行Edge 勤怠管理クラウドを利用すれば、介護休暇や介護休業等の取得状況を含めた勤怠管理を一元化できます。また給与奉行iクラウドと連携することで、勤怠データを基にした給与計算を効率化し、制度改正に伴うミスや確認作業を減らすことが可能です。
人事労務担当者は、介護休暇の利用が今後さらに増えることを見据え、制度を「知っている」状態から「運用できる」状態へと落とし込んでおくことが求められます。勤怠管理と給与計算を連携させる仕組みづくりを進めることで、企業と従業員双方にとって安心できる環境整備につながるでしょう。
介護休暇に関するよくある質問
実務の現場では、介護休暇の取り扱いについて判断に迷う場面が少なくありません。ここでは、人事労務担当者が対応を求められることの多い質問について、基本的な考え方を紹介します。
- 従業員から介護休暇を申し出られたが、業務都合で断ることはできる?
-
原則として、介護休暇の取得を業務都合のみを理由に拒否することはできません。介護休暇は育児・介護休業法に基づいて一定の要件を満たす労働者に認められた法定の権利であり、申し出があった場合には原則として受け入れる義務があります。
実務上、担当業務の調整が難しいケースも考えられますが、その場合でも他の従業員への引き継ぎや業務の標準化などによって対応する必要があります。管理職が業務都合を理由に介護休暇の取得を誤って制限してしまうことがないよう、制度の趣旨や取得要件、対応上の注意点を事前に共有しておくことが重要です。
- 子どもの介護にも介護休暇は使えるのかと質問された際、どう案内すべき?
-
介護休暇は、要介護状態にある家族を介護するための制度であり、子どもであっても対象となります。取得要件に対象家族の年齢による制限はなく、病気や障がいなどによって継続的な介護や見守りが必要な状態であれば、介護休暇の取得が可能です。
単なる育児目的ではなく「介護」に該当するかどうかを基準に判断する旨を、丁寧に説明するとよいでしょう。
- 介護休暇を時間単位で運用する場合、人事としてどこまでルールを整えるべき?
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介護休暇は時間単位での取得も認められているため、人事労務担当者としては申請方法や取得単位、勤怠への反映方法などを明確にしておく必要があります。
具体的には、最小取得単位や申請期限、事後申請を含めた手続きの流れなどを就業規則や運用ルールとして明確にしておくことで、現場での判断のばらつきや対応ミスを防ぐことができます。
- 介護休暇の申請時に証明書類を必ず求めるべき?
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介護休暇の取得にあたっては、証明書類の提出を必ず求めなければならないわけではありません。書類提出の要否は企業の判断に委ねられており、就業規則や社内ルールで定めることが可能です。なお、介護休暇の取得要件として要介護認定は必須ではありませんが、状況確認の参考として扱われる場合もあります。
書類提出を過度に求めると、制度が利用されにくくなるおそれもあります。制度趣旨を踏まえ、実務負担とのバランスを考慮した運用を検討することが望まれます。
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