介護休暇・介護休業制度とは|仕事と介護の両立支援で企業が注意すべきこと

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今、日本では高齢化が加速的に進み、企業にとって「介護」問題は避けて通れない現象になっています。
内閣府の「平成30年版高齢者白書」によると、介護や看護を理由とする離職者数は2013年以降急激な増加傾向にあり、毎年80,000人を超えているそうです。
介護をしている側の中心世代となる40代〜50代は、いわゆる「働き盛り」の世代であり、管理職など重要なポストについている「優秀な人材」も多く存在します。企業にとって、彼らを手放す状態は大きな損失と言えるでしょう。優秀な人材を確保し続けるためには、「社会問題としてどう解決するか」「どう従業員を守るか」を企業側でも考えなければなりません。

今回は、仕事と介護の両立支援制度でもある「介護休暇」「介護休業」にスポットを当て、介護に直面する従業員に対して企業が配慮すべきことや、従業員を守るために知っておきたいポイントなどをご紹介します。

「介護休暇」と「介護休業」の違い

1991年、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称:育児・介護休業法)が施行されました。これは、少子高齢化の加速によって深刻化する労働者人口の減少に対し、介護や子育てなどで時間的制約を抱える労働者を支援するために作られ、よく耳にする「介護休暇」や「介護休業」は、この法律で定められている「介護と仕事を両立させるための支援制度」になります。

2016年には、昨今の介護離職数の増加の影響を受け大きな法改正がなされ、支援内容が大幅に拡充されました。

「介護休暇」「介護休業」には、取得するための要件や手続きの方法がそれぞれに定められています。

介護休暇

介護休暇は、病気や怪我、高齢などの理由で要介護状態になった家族を介護することになった従業員に対して与えられる休暇です。
介護を伴う休暇の申し出には、有給休暇ではなく介護休暇で対応することになります。

●取得できる日数

要介護状態にある対象家族1人につき、最大5日(対象家族が2人以上の場合は10日)取得できます。ただし、対象家族が3人以上になったとして、10日を超える休暇は取得できません。
また、半日単位の取得も可能なため、排泄・食事介助などの直接的な介護や、必要な買い物や書類の手続きを行うなどにも利用できます。ただし、「1日の所定労働時間が4時間以下」の従業員、「半日単位での取得が困難と認められる業務に従事」する従業員については、半日取得はできません。

●介護休暇を取得できる対象者

介護休暇は、正社員をはじめ、アルバイトやパート、派遣社員や契約社員も取得できます。
ただし、「入社6ヶ月未満」「1週間の所定労働日数が2日以下」の従業員は、労使協定で対象外にすることができます。

●取得申し出の方法

介護休暇の申し出は、「書面による方法」とは限定されていません。社内制度としてまだ確立していない場合は、有給休暇の取得時と同じように手続きしてもらうと分かりやすいかもしれません。また、急遽取得せざるを得ない状況も考えられるため、当日の電話による申し出や「書面による申し出は事後でも可」などの配慮も必要です。
申し出には、自身の氏名、対象家族の氏名・続柄、希望する介護休暇の取得予定日と終了予定日、対象家族が要介護状態にある事実を明らかにしてもらいます。「対象家族が要介護状態にある事実」については口頭も可となっています。

介護休業

介護休業は、負傷や疾病、身体もしくは精神の障害などの理由から2週間以上「常時介護」が必要な家族(配偶者、父母、配偶者の父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護する場合に取得できる休暇です。
「常時介護が必要とする状態」とは、厚生労働省により以下のような判断基準が示されています。ただし、あくまで「参考」であり、従業員が介護休業を取得する妨げにならないよう、企業には柔軟に運用することが求められています。また、必ずしもその家族が要介護認定を受けている必要はありません。

育児・介護ガイドブック
出典:厚生労働省「育児・介護ガイドブック」(リンクPDF)p11「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」より
●取得できる日数

要介護状態にある家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。

●介護休業を取得できる対象者

介護休業は、日雇い労働者を除く全ての従業員が取得できます。
ただし、有期契約社員は、申し出時点で次の要件を満たすことが必要になります。

  • 入社1年以上であること。
  • 介護休業取得が可能な93日を経過して6ヶ月以上の契約が認められていること。

また、以下の従業員は労使協定により対象外にすることも可能です。

  • 入社6ヶ月未満の従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
  • 介護休業取得後93日以内に雇用関係が終了する従業員
●取得申し出の方法

書面等で従業員からの申し出が必要です。申し出には、申出日、自身の氏名の他、対象家族の氏名・続柄、対象家族の要介護状態、希望する介護休業開始日と終了予定日などを記載します。また企業は、必要に応じて要介護状態の証明書類の提出を求めることができます。
申し出の内容をもとに、93日の範囲内で介護休業開始日と終了予定日を決定し、従業員へ通知します。
介護給付金制度を使用する場合には、所轄のハローワーク(公共職業安定所)に雇用する企業が申請します。申請方法については後述の「介護休業には、介護休業給付金が支給されます」を参照ください。

従業員から申し出があったら・・・企業が留意しておきたいポイント

ここでは、従業員から介護休暇や介護休業の相談または申し出を受けた場合に、企業の対応として気をつけておきたいポイントを6つご紹介します。

■ 法律で守られた制度なので、企業は拒否できません

介護休暇も介護休業も、育児・介護休業法において原則として「事業主は介護休暇(休業)申請を拒否できない」「介護休暇(休業)を取得しても解雇される理由にはならない」と定められていますので、例え就業規則において介護休暇や介護休業に関する規定が定められていなくても、取得の申し出は受けなければなりません。(ただし、労使協定で介護休暇や介護休業の「対象外」と定めた従業員からの申し出は拒むことができます)
また、「解雇」だけでなく、降格や減給、賞与の削減といった、従業員が不利益になることも禁止されています。
企業のコンプライアンスとしても、こうした法律の規定は徹底しておく必要があります。

■ 企業は介護のための選択的措置を講じなければなりません

企業は、介護休業を申し出た従業員に対して、介護を必要とする期間や回数に配慮して適切な対応が求められています。そのため、介護休業とは別に以下のような措置を選択し講じることが義務づけられています。

  1. 所定労働の短縮(短時間勤務)
  2. フレックスタイム制度
  3. 始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ
  4. 介護サービス費用の助成など

これらは、2017年の法改正で「利用開始から3年以上の期間に2回以上利用できる措置であること」となりました。
例えば、最初の数ヶ月は短時間勤務を利用し、その後介護休業をとり、再び短時間勤務に切り替える・・・というように、この一連の期間が3年以上で「措置を2回以上利用する」ことが認められています。

育児・介護休業法のあらまし
図出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」14「事業主が講ずべき措置」より

なお、この措置は社内制度としての確立を求められており、「運用だけでは不十分」となっていますので注意が必要です。

■ 介護する従業員は、所定労働時間・時間外労働・深夜労働が制限されます

従業員が介護休暇や介護休業を申し出た場合、事業の正常な運営を妨げない限り、「残業させてはいけない」ことが定められています。厚生労働省の方針では、「あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきものであることに留意」することとなっていますので、勤務形態等就業規則を見直しておく必要があります。

また、制限時間(1ヶ月24時間、1年150時間)を超えての時間外労働、午後10時〜午前5時(深夜)の労働も「事業の正常な運営を妨げる場合を除き、させてはならない」ことになっています。
要介護状態の対象家族がいる従業員は、介護終了までの間、何度でも時間外労働や深夜労働の制限を請求することができます。時間外労働の制限の請求は1回につき1ヶ月以上1年以内の期間について、また深夜労働の制限の請求は1回につき1ヶ月以上6ヶ月以内の期間で認められています。
ただし、日々雇用される労働者は請求することができません。「入社1年目」「1週間の所定労働日数が2日以下」の従業員については、労使協定で対象外とすることができます。

■ 介護休業は、社会保険料・住民税は免除されません

介護休業の期間中に賃金を支払うことは、法律上義務付けられてはいません。したがって、介護休業中に賃金支払いがない場合は、雇用保険料の負担は発生しません。
しかし、介護休業については社会保険料の免除制度がないため、無給となった場合でも健康保険料や厚生年金保険料の支払いは発生し続けます。また、住民税も前年の収入により税額が決定するため、介護休業中でも支払わなければなりません。
従業員の事情によっては、会社による立替え納付などのサポートが必要になる場合もありますので、介護休業を希望する従業員としっかり話し合っておきましょう。

■ 介護休業には、介護休業給付金が支給されます

介護休業は、休業期間中の経済的支援のため、所定の手続きを行えば介護休業給付金の支給を受けることができます。
対象となるのは、介護休業開始前日から1ヶ月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1ヶ月と数え、介護休業開始前の2年間、雇用保険の被保険者期間が1年以上ある従業員となります。ただし、有期契約社員については別途要件が定められていますので、詳しくは厚生労働省のホームページ「Q&A〜介護休業給付〜」を参照ください。

手続きは、企業が管轄するハローワーク(公共職業安定所)に以下の必要書類を提出することになります。

  • 介護休業給付金支給申請書(マイナンバーの記載が必要です)
  • 従業員が提出した介護休業申出書
  • 住民票記載事項証明書等(介護対象家族の氏名・続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
  • 出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)賃金台帳等(支給対象期間中に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況、休業日数及び就労日数を確認
  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書

支払額は、原則として「休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 67%」で算出します。
正確な金額はハローワークによって算出されますが、介護休業中に賃金の支払がない場合で、介護休業開始6ヶ月前の平均賃金が月額15万円程度の場合、支給額はおおよそ月10万円程度になるでしょう。
ただし、給付額には上限があります。介護児休業期間中に賃金が支払われていると、減額される場合がありますので、従業員に説明ができるよう準備しておくとよいでしょう。
なお、この支払額は非課税となります。

■ 介護と仕事の両立支援策を、社員全員に発信しておきましょう

ある民間の調査で、介護に直面した正社員の7〜8割が「仕事と介護の両立」に不安を抱えていながら、勤務先に相談する割合が極めて少ないことが分かりました。その結果として、介護離職率が高まり「優秀な人材」を手放す結果が生じているのであれば、企業は「介護に直面しても両立を支援する姿勢」「安心して相談できる職場」であることを伝え続けなければなりません。
介護の当事者である従業員はもとより、まだ介護に直面していない従業員も含め、全ての従業員に対して、日頃から情報提供や働き方について発信しておくことが望ましいでしょう。

また介護は、ケアマネージャーや介護サービス、様々な自治体の支援を得ることが大事になってきます。
企業が直接ケアマネージャーと連携することはできませんが、従業員が仕事と介護を両立し働き続けられるよう支援体制を考えることが重要です。
厚生労働省では、ホームページを通して「企業ができる仕事と介護の両立支援」ガイドやマニュアル、支援モデルなどを紹介しています。それらを有効に活用して、日頃から従業員が気軽に相談できる環境を整えましょう。

介護休業を支援する企業向けの助成金制度

介護休業を支援するにも、その従業員が不在になる間、仕事のやりくりに困る企業もあるかもしれません。年々労働人口も減少傾向にあり、特に中小企業においては潤沢に人材を確保することも難しいでしょう。
そこで厚生労働省では、仕事と介護の両立を積極的に支援する中小企業に対し、助成金制度を用意しています。
職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”のためにも、こうした制度を有効に活用しましょう。

■ 介護離職防止支援コース

従業員の「介護休業の取得・職場復帰」と、介護両立支援制度など「介護のための柔軟な就労形態の制度導入」について、助成金を支給するものです。
それぞれ、1企業につき1年度5人まで支給します。

    支給額
A 介護休業 休業取得時 28.5万円 <36万円>
職場復帰時 28.5万円 <36万円>
B 介護両立支援制度 28.5万円 <36万円>

参考:厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」リーフレット(リンクPDF)

ただし、支給にはそれぞれ要件がありますので、詳しくは厚生労働省ホームページより2019年度「両立支援等助成金のご案内」リーフレット(PDF形式)を参照ください。

■ 再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)

介護のほか、妊娠、出産、育児、配偶者の転勤等を理由に退職した人について、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記した再雇用制度を導入している企業が、再就職を希望する人を採用した際、最大5人まで支給されます。
ただし、離職後1年以上経過している人の再雇用で、無期雇用者として6ヶ月以上継続雇用し、支給申請日においても雇用している場合に限られます。また支給額は、継続雇用6ヶ月後、1年後の2回に分けて半額ずつ受け取ることができます。
なお、この助成金は、中小企業のほか大企業・中堅企業にも適用されます。

再雇用人数 中小企業 中小企業以外
1人目 38万円 <48万円> 28.5万円 <36万円>
2~5人目 28.5万円 <36万円> 19万円 <24万円>

参考:厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」リーフレット(リンクPDF)

他にも、各公共団体が独自に助成金制度を設けている場合もあります。
また、「両立支援等助成金」の他にも、国が主体の「雇用関係助成金制度」はいくつかあります。その他の雇用関係に利用できる助成金制度については、厚生労働省ホームページ「事業主の方のための雇用関係助成金」をご確認ください。

まとめ

厚生労働省では、介護に直面した従業員に対し「企業が取り組むべき支援」は5つある、としています。

厚生労働省が推奨する、企業が取り組むべき5つの支援

  1. 仕事と介護の両立を支援する姿勢であることを伝える
  2. 地域包括支援センターなどで地域支援情報をしっかり把握するよう伝える
  3. 上司との三者面談で、当面の支援方針を共有する
  4. 介護の体制ができてきたら、両立のための介護支援プラン策定を支援する
  5. 定期的に上司と共にフォロー面談をする

介護は、いつ起こるかわからないものです。突発的な事案であるからこそ、日頃からこうした支援を行って従業員を安心させ、企業への信頼を高めることで働きがいや働く意欲に還元することが大切なのではないでしょうか。
厚生労働省の「仕事と介護の両立支援対応モデル」なども活用しながら、よりよい働きやすい職場環境にしていくために、介護に不安を抱える従業員をサポートしていきましょう。

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