東京プロマーケットからセントレックス上場を実現~ニッソウ前田氏が語る、2市場上場体験談~

2019年2月、東京プロマーケットに上場し、わずか2年後の2020年3月、名証セントレックスに上場を果たした株式会社ニッソウ。市場選択の基準と理由、それぞれの上場後のメリット等、ニッソウ前田社長が上場体験談を語る。
更新:2022年6月30日
  • ※本コラムは、2020年10月16日時点の記事です。2022年4月4日より新市場区分(東京証券取引所:プライム・スタンダード・グロース/名古屋証券取引所:プレミア・メイン・ネクスト)に再編されています。旧市場名は新市場名に読み替えてご覧ください。

1.注目高まる東京プロマーケット、2018年2月ニッソウが上場

東京証券取引所(東証)が運営するプロ投資家(※)向け市場「東京プロマーケット」。2019年には過去最多の9社が上場を果たし、東証市場再編も見据えて注目が高まっています。
そんな東京プロマーケットに2018年2月、株式会社ニッソウが上場を果たしました。そしてわずか2年後の2020年3月、一般市場である「名証セントレックス」にステップアップしています。
なぜニッソウは東京プロマーケットに上場したのでしょうか。なぜわずか2年でセントレックスに上場したのでしょうか。

会社概要
会社名:株式会社ニッソウ
代表者名:代表取締役社長 前田 浩
本社所在地:東京都世田谷区
創業:1987年1月
事業内容:リフォーム事業
資本金:203百万円(2020年7月末)
従業員数:45名(2020年7月末)

※特定投資家(機関投資家、上場企業、資本金5億円以上の株式会社、3億円以上の金融資産を持ち証券会社へ特定投資家として申し出た個人等)と非居住者を併せて特定投資家等(プロ投資家)といいます。

2.ニッソウが東京プロマーケットを選択した理由

上場は創業当初からの私の夢でした。
そんな私が、東京プロマーケットへの上場を具体的に考え始めたのは、2016年春ごろです。東京プロマーケットの存在を知り、監査証明が1期分でよい、形式基準がないなど、一般市場よりも緩和された要件を知り、この市場であれば上場を目指せるかもしれないと思いました。

そして、東京プロマーケット上場には一般的な上場メリットである、以下5点も期待していました。

① パブリックカンパニーとして信用力の向上
② メディアなどに取り上げられる機会が増え、知名度が向上
③ ガバナンスの強化
④ 既存社員の士気向上
⑤ 資金調達力


ニッソウ前田氏
▲上場の理由と想定メリット。上場後、想定以上のメリットを享受することができた。

当初から最終目標は一般市場への上場でしたが、まずは東京プロマーケットに上場を果たし、その結果を踏まえて次の市場へのステップアップを検討しようと思いました。

そして、2018年2月に晴れて東京プロマーケット上場を果たしました。東京プロマーケットに上場後、期待していた上述した5つのメリットを想定以上に感じることが出来ました。

▼宝印刷株式会社 大村氏が東京プロマーケットの活用法を解説

3. 2020年3月、セントレックスに上場

東京プロマーケットに上場してから休む間もなくセントレックスへの上場準備に入りました。
なぜセントレックスを選んだのかと言いますと、主幹事証券会社である岡三証券さんからセントレックスも企業規模に合った市場で選択肢の一つであると提案されたこと、そして私自身はセントレックスを“西のマザーズ”だと考えたからです。
マザーズに比べてセントレックスは銘柄数が少ないため、オールジャパンで言えば、セントレックスのほうが目立つのではないかということと、また、当社は本社が東京にあるため、今後の事業拡大を考えると西側の知名度を得られることは有益でした。

ニッソウの2度の上場スケジュール
▲ニッソウの2度の上場スケジュール

4.東京プロマーケットとセントレックスの違いと苦労

東京プロマーケットへの上場審査(J-Adviserの審査)と一般市場の上場審査(取引所の審査)のレベル感は大きく違います。

たとえば、更なる内部管理体制の強化が求められます。
もちろん東京プロマーケット上場時にも内部管理体制は整備していますが、さらに厳しく問われることになります。具体的には、社長や担当者が不在でも会社がしっかり回る仕組みが出来ているかを確認されます。

精度の高い予実分析も必須です。これは本当に一つ一つを念入りに確認されます。月次の損益対照表で予算と実績に差異が生じたときは、その理由を分析し取締役会に報告する等、東京プロマーケット上場時よりも、さらに詳細に行いました。

また、東京プロマーケットからセントレックスに上場したのは当社が初めてで、前例がなかったためわからないことだらけという状況がありました。東京プロマーケット上場廃止の手続きを間違いなく行わなければならないことや、上場準備中でも東京プロマーケットの適時開示を適切に行わなければならないというところに非常に苦労しました。

5.セントレックス上場によるメリット

東京プロマーケット上場時にも、想定していたメリットを十分に享受することができたと感じていましたが、セントレックスに上場し、さらにそのメリットを強く感じています。

上場想定メリットと実際の差異
▲上場想定メリットと実際の差異

信用力の向上や知名度の向上は東京プロマーケット上場時よりも格段に上がりました。
また、社員の愛社精神もさらに向上したように感じます。「私も上場企業の一員かぁ」と嬉しそうに社員が話していたのを聞き、上場できてよかったと心から思いました。

上場前には想定していなかったこと、気づいたこともたくさんありました。
たとえば、他の上場企業の社長を紹介してもらえるようになりました。
また、上場前には考えてもいなかったM&Aや業務提携のお話などが舞い込んでくるようになりました。
特にセントレックスに上場してからは、株価が日々変動することで、会社が市場から評価されているというほどよい緊張感がうまれました。まるで毎日通信簿を付けられているようです。

6.一般市場への上場を実現するための秘訣

当社が上場を実現できた理由は以下の4つであると考えています。

① TOKYO PRO Marketへの上場経験が有益であった
② 良い出会い
③ 業績の目標値達成(増収増益)
④ セントレックスが企業規模とマッチングしていた


まず「①TOKYO PRO Marketへの上場経験が有益であった」ですが、開示書類などの作成のノウハウがすでに培われていたことがセントレックス上場の際にも非常に役立ちました。

次に「②良い出会い」ですが、主幹事証券である岡三証券や監査法人からの指導のおかげでセントレックス市場に見合った会社に成長できました。主幹事証券や監査法人からの指導には、できる限り早急かつ真摯に対応することを心掛けました。上場直前では毎日のように主幹事証券から電話等で連絡をいただき対応をしていました。相性のあった支援家の方たちと二人三脚で上場という目標に向かって進むことが出来たと感じています。

上場想定メリットと実際の差異
▲厚い信頼関係で結ばれた岡三証券村主氏・船津丸氏、前田氏、名古屋証券取引所伊藤氏

そして「③業績の目標値達成(増収増益)」ですが、これが出来ないと上場は赤信号です。特に大幅な下振れは絶対にだめです。当社は、上場に向けて社員が一致団結して目標に向かうことが出来ました。

最後に「④セントレックスが企業規模とマッチングしていた」ですが、主幹事証券が選択肢の一つとして提案してくれたセントレックスを検討しましたが、実際にセントレックスが当社の身の丈に合っていたと思います。

7.さらなるステップアップを目指して

2020年7月15日、当社は将来的に東証への上場申請に向けた準備を開始する旨を取締役会で決議しました。当社はこれからもさらなる飛躍を目指していきます。

これから上場を目指す経営者の方には、こう伝えたいです。

当社は決して特別な会社ではありません。皆様の会社と変わりません。
マザーズは難しくても、セントレックスなら十分にチャンスがある可能性があります。もっといえば、東京プロマーケットも視野に入れても良いと思います。
同業にはない工夫をして、その業界のNo.1のカテゴリを1つ作りましょう。そして上場するために大事なことは、あきらめないこと、出来るまで続けることなのです。

■ 株式会社ニッソウホームページ
ニッソウホームページ

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執筆
株式会社ニッソウ 代表取締役社長 前田 浩氏
株式会社ニッソウ 代表取締役社長 前田 浩氏
1961年生まれ。東京都出身。高校中退後、芸能プロダクションに所属し、ナイトクラブやホテルラウンジなどでピアニストとして活動。その後、インテリア関連会社を経て1986年に独立。1988年にニッソウを設立する。小中規模不動産会社を主要顧客とし、現在1700社以上との取引実績があり、その多くからリピート依頼がある。2018年にTOKYO PRO Market、2020年に名証セントレックスに上場を果たす。

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