株式報酬とは?主な種類と導入メリット・デメリット、課税タイミングを解説

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株式報酬は、役員や従業員に自社株式や株価に連動した報酬を付与する、中長期インセンティブ報酬制度です。本コラムでは、RS、RSU、PS、PSU、ストックオプション、SAR、ファントムストックなど、株式報酬の代表的な制度の概要と分類を整理したうえで、導入のメリット・デメリットや課税タイミングを解説します。また、各制度の仕組み・課税タイミング・企業の資金負担への影響などを比較しながら、制度選定の判断軸を解説します。

IPO Compass編集部
■執筆:IPO Compass編集部
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この記事でわかること

  • 株式報酬の基本概念
  • 主な株式報酬制度の種類と特徴
  • 株式報酬を導入するメリット・デメリット
  • 株式報酬制度ごとの課税タイミング

1.株式報酬の概要

株式報酬は、役員や従業員に自社株式や株価に連動した報酬を付与する、中長期インセンティブ報酬です。役員や従業員と株主の利害を一致させ、中長期的な企業価値向上につながる経営行動を促す仕組みとして活用が広がっています。一方で、導入にあたってはコーポレートガバナンス改革や日本企業の報酬構造に関する課題もあります。ここでは、株式報酬の概要と注目されている背景を整理します。

●株式報酬とは?

株式報酬とは、役員や従業員に自社の株式や株価に連動した報酬を付与する制度です。報酬価値が業績や株価に連動するため、中長期的な企業価値向上を促すインセンティブ報酬として活用されています。従来の現金報酬は支給額そのものが価値変動のない報酬となるのに対し、株式報酬は株価や企業価値の変化が受け取る報酬の経済的価値に反映されます。

●株式報酬が注目されている理由

株式報酬が注目されている背景には、企業の持続的な成長や中長期的な企業価値向上につながる「攻めの経営」が求められていることがあります。2015年に金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を策定して以降、企業価値向上を意識した経営や役員報酬制度の見直しが進められてきました。「コーポレートガバナンス・コード」においても、上場会社の持続的な成長や中長期的な企業価値向上に向けた取り組みを後押しする方向性が示されています。
また、日本企業は欧米企業と比べて固定報酬の比率が高く、業績や株価に連動する中長期インセンティブ報酬の活用が限定的です。その結果、企業価値向上に向けた動機付けや投資家と役員や従業員の利害共有の度合いについて日本企業と欧米企業の間で差が生じています。企業価値向上に向けたインセンティブ設計や株主との利害共有の強化、グローバル水準とのギャップを埋めるなどの観点から、株式報酬制度への注目が高まっています。

参考:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」2026年7月21日

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2.株式報酬の種類

株式報酬にはさまざまな制度があり、下表は代表的な制度を整理したものです。

  概要 報酬の交付時期 報酬のタイプ
譲渡制限付株式(RS) 譲渡制限(勤務条件)が付された現物株式を交付する制度 事前交付型 フルバリュー型
業績連動型株式(PS) 譲渡制限(業績条件)が付された現物株式を交付する制度 事前交付型 フルバリュー型
譲渡制限付株式ユニット(RSU) 勤務条件達成後に株式を交付する制度 事後交付型 フルバリュー型
業績連動型株式ユニット(PSU) 業績条件達成後に株式を交付する制度 事後交付型 フルバリュー型
無償税制適格ストックオプション(SO) 税制上の要件を満たす無償のストックオプションを交付する制度 事後交付型 キャピタルゲイン型
1円ストックオプション(無償税制非適格ストックオプション(SO)) 行使価額を1円に設定したストックオプションを交付する制度 事後交付型 フルバリュー型
有償ストックオプション(SO) 発行価額を払い込んで取得するストックオプションを交付する制度 事後交付型 キャピタルゲイン型
株式交付信託(株式給付信託) 信託を通じて株式を交付する制度 事後交付型 フルバリュー型
コール・オプション(譲渡予約権) 一定の条件下で株式を取得できる権利を付与する制度 事後交付型 キャピタルゲイン型
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR) あらかじめ設定した株価と権利確定時の株価の差額を金銭で支給する制度 事後交付型 キャピタルゲイン型
ファントムストック 権利確定時に株価相当額を金銭で支給する制度 事後交付型 フルバリュー型

株式報酬は、報酬の交付時期によって事前交付型と事後交付型に分かれます。事前交付型は、株式を先に交付し、継続勤務や業績達成などの条件を満たした後に譲渡制限を解除する仕組みです。一方、事後交付型は、権利やユニットを先に付与し、条件を満たした後に株式や金銭を交付する仕組みです。
また、報酬のタイプはフルバリュー型とキャピタルゲイン型に分類されます。フルバリュー型は、株式そのものの価値を報酬として付与する設計です。キャピタルゲイン型は、あらかじめ定められた行使価額や基準価格と実際の株価との差額を報酬価値とする設計であり、株価上昇による利益を重視します。このほか、SARとファントムストックは、株式そのものではなく株価に連動した金銭を支給する株価連動型金銭報酬として位置づけられます。

●譲渡制限付株式(RS)

一定期間の譲渡制限を付した株式を事前に交付する制度です。継続勤務の条件を満たすと譲渡制限が解除され、付与対象者は株式を売却できるようになります。条件を満たさない場合は、会社が株式を無償取得します。

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●業績連動型株式(PS)

業績条件付きの株式を事前に交付する株式報酬です。業績条件の達成状況に応じて譲渡制限が解除され、付与対象者は株式を売却できるようになります。条件を満たさない場合は、会社が株式を無償取得します。

●譲渡制限付株式ユニット(RSU)

将来株式を受け取る権利を付与し、継続勤務などの条件を満たした後に株式を交付する制度です。

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●業績連動型株式ユニット(PSU)

将来株式を受け取る権利を付与し、業績目標の達成度に応じて実際に交付される株式数を決める制度です。業績評価期間の結果を反映して交付株式数が確定します。

●ストックオプション(SO)

あらかじめ定められた価格で自社株式を取得できる権利を付与する制度です。付与方法や税制上の取り扱いによって複数の種類に分かれます。

○無償税制適格ストックオプション

税制上の要件を満たすことで、税制優遇を受けられる無償のストックオプションです。

○1円ストックオプション

行使価額を1円などの低額に設定するストックオプションです。無償税制非適格ストックオプションの一種です。

○有償ストックオプション

対価を支払って取得するストックオプションです。報酬ではなく投資として扱われるため、付与対象者や行使条件など、柔軟な制度設計が可能です。

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●株式交付信託(株式給付信託)

信託を通じて役員や従業員に株式を交付する制度です。勤務条件や業績条件などに応じて株式を交付します。

●コール・オプション(譲渡予約権)

一定の条件で株式を取得できる権利を付与する制度です。条件達成後に株式を取得し、株価上昇による利益を得られます。

●ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)

基準価格からの権利確定時までの株価上昇分に相当する金銭を支給するキャピタルゲイン型の制度です。実際の株式を交付しない株価連動型金銭報酬として設計されます。

●ファントムストック

仮想的な株式を付与し、権利確定時にその時点での株価×付与した株数分を金銭で支給するフルバリュー型の制度です。実際の株式を交付しない株価連動型金銭報酬として用いられます。

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3.株式報酬を導入するメリット

株式報酬は、役員や従業員の報酬を業績や株価と連動させる制度です。ここでは、株式報酬を導入した場合に期待される主な効果を整理します。

●役員や従業員のモチベーションが向上する

株式報酬では、会社の業績や株価の上昇が役員や従業員自身の報酬価値の増加につながります。企業価値と報酬が連動することで、役員や従業員が株主としての視点を持ちながら業務に取り組む契機になります。

●優秀な人材の確保と離職防止(リテンション)につながる

成長段階にある企業では、大手企業に比べて高額な現金報酬を支給することが難しい場合があります。そこで株式報酬を活用すると、将来の株価上昇や上場後のリターンを見込む人材に対して、現金報酬以外の報酬設計を提示できます。また、継続勤務や業績などの条件を設定する制度では、条件達成まで株式報酬を受け取れないため、役員や従業員の継続勤務につながります。

●財務健全性の維持につながる

株式報酬は原則として自社株式を交付する制度であるため、キャッシュ流出を抑える設計が可能です。一方、現金報酬は、支給時にキャッシュアウトが発生し、企業のキャッシュフローに直接影響します。ただし、SARやファントムストックなどの株価連動型金銭報酬では、実際には株式を交付せず相当分を現金で支給するため、支給時の資金負担を考慮する必要があります。

●コーポレートガバナンスを強化できる

株式報酬は、役員や従業員と株主の利害を一致させることや中長期的な業績や株価と連動した報酬設計により、企業価値向上を意識した経営や業務遂行を促します。コーポレートガバナンス・コードでも、中長期的な企業価値向上に向けたインセンティブとして株式報酬の活用が示されており、上場企業のガバナンス強化施策の一つとして位置づけられています。

4.株式報酬を導入するデメリット・注意点

株式報酬を導入する際は、期待される効果だけでなく、制度運用や既存株主への影響も踏まえて検討する必要があります。ここでは、導入前に整理すべきデメリットや留意点を説明します。

●株式が希薄化しやすい

株式報酬として新規に株式を発行して付与する場合、既存株主の持分割合が低下します。特に、多額の株式報酬を付与する場合、既存株主の保有株式の価値や議決権比率への影響も大きくなります。そのため、導入時は付与対象者、付与株式数、発行割合を確認し、既存株主への影響を踏まえて検討します。

●制度設計が複雑で、運用負担が大きい

付与条件や業績連動指標、権利確定条件、交付時期などを、株式報酬制度の導入目的に応じて設計する必要があります。制度の目的と設計内容が一致していない場合、期待したインセンティブ効果が得られない可能性があります。
また、会計処理や税務上の取り扱いは制度ごとに異なるため、設計・運用には会社法、会計・税務に関する専門知識に加え、継続的な運用体制も求められます。

●株価変動によるリスクがある

株式報酬は株価に連動するため、株価が下落すると役員や従業員が受け取る報酬価値も低下します。株価下落によって報酬価値が下がると、役員や従業員のモチベーションも低下する可能性があるため、株価変動による影響も踏まえて制度設計を行うことが重要です。

5.株式報酬の課税タイミング

株式報酬は、制度によって付与対象者に課税されるタイミングが異なります。導入を検討する際は、譲渡制限解除時、株式交付時、権利行使時、株式売却時のうちのどのタイミングで課税が発生するかを確認します。ここでは、主な課税タイミングと該当する制度を整理します。

●譲渡制限解除時

譲渡制限付株式(RS)や業績連動型株式(PS)などの事前交付型の株式報酬制度では、譲渡制限が解除された時点で、解除時点の株価を基に給与所得として課税されます。給与所得課税のため、原則として会社に源泉徴収義務が生じます。

●株式交付時

譲渡制限付株式ユニット(RSU)や業績連動型株式ユニット(PSU)では、権利やユニットの付与時ではなく、株式が交付された時点で、交付時点の株価と交付株式数を基に給与所得として課税されます。給与所得課税のため、原則として会社に源泉徴収義務が生じます。

●権利行使時

税制非適格ストックオプションでは、権利行使時に課税が発生します。役員や業員が権利を行使して株式を取得した場合、権利行使時の株価と行使価額の差額が給与所得として課税されます。一方、税制適格ストックオプションでは、行使時には課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得として課税されます。

●株式売却時

株式報酬として取得した株式は、売却時には通常の株式譲渡と同様に譲渡所得として課税されます。売却価格から取得価額を差し引いた額が課税対象となります。

6.最後に

株式報酬の導入を検討する際は、事前交付型・事後交付型という交付時期と、フルバリュー型・キャピタルゲイン型という報酬タイプの両面から、自社の成長フェーズや付与対象者に適した制度を選定します。また、制度ごとに課税タイミングや運用負担が異なるため、導入目的とあわせて整理・比較したうえで検討することが重要です。

7.株式報酬に関するよくあるご質問

株式報酬制度を選ぶポイントは?
株式報酬制度は、自社の成長フェーズや付与対象者、制度運用にかかる負荷を踏まえて選定します。成長企業では、将来の株価上昇によるリターンを重視するキャピタルゲイン型が選択肢になります。一方、成熟フェーズの企業では、株式そのものの価値を報酬として付与するフルバリュー型を検討します。併せて、管理コストや会計・税務処理に対応できる社内体制も確認することが重要です。
株式報酬の課税の種類は?
株式報酬の課税は、主に給与所得課税や譲渡所得課税として整理されますが、制度設計や付与対象者により異なります。給与所得課税は、譲渡制限解除時や株式交付時、権利行使時などに報酬としての経済的利益が発生した場合に行われます。譲渡所得課税は、取得した株式を売却した際に、売却価格と取得価額との差額に対して行われる課税です。
株式報酬の仕訳方法は?
株式報酬の仕訳方法は、制度によって異なります。導入する制度に応じて、報酬費用を認識するタイミングや会計処理を確認します。
株式報酬とインサイダー取引の関係は?
上場企業では、株式報酬として取得した株式の売買がインサイダー取引規制の対象となる場合があります。そのため、売買可能期間や社内規程を整備するなど、適切な株式管理・運用体制を構築しておくことが重要です。
上場企業が株式報酬を発行する場合、適時開示や書類の提出は必要?
上場企業が株式報酬として株式や新株予約権を発行または処分する場合、制度内容や発行条件に応じて、適時開示や書類提出が必要になる場合があります。たとえば、株式や新株予約権の発行や役員報酬制度の変更、割当先や発行条件などが開示対象となることがあります。導入時は必要となる開示事項や提出書類を整理し、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。

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