内部統制評価におけるロールフォワードとは?実施手順や確認事項を解説

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内部統制評価におけるロールフォワードは、期中評価の結果を期末日時点の評価へつなげる手続きです。本コラムでは、ロールフォワードの目的や実施の流れ、期中評価後に確認すべきポイント、証跡の残し方、監査法人との事前協議について解説します。また、内部統制評価のスケジュールにロールフォワードを組み込むにあたっての期間設定や、追加手続きの要否を判断するための確認材料を整理します。

IPO Compass編集部
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この記事でわかること

  • 内部統制評価におけるロールフォワードの定義と目的
  • ロールフォワード手続きの実施の流れ
  • ロールフォワードでの確認事項
  • ロールフォワード実施時のポイント

1.そもそも内部統制とは

●内部統制の定義

内部統制とは、企業活動における適正性を確保するために、組織全体で継続的に実行される一連のプロセスと体制を指します。経営層だけで完結するものではなく、現場の従業員が日々の業務執行のなかで行う統制活動も含まれます。
内部統制については、主に会社法と金融商品取引法の2つの法律で規定されています。

会社法における内部統制は、「会社が組織として健全かつ適正に業務を行うための体制」を指し、取締役会を設置している大会社には内部統制システムの整備が義務付けられています。

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一方、金融商品取引法における内部統制は、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制」とされています。一般的にはJ-SOXと呼ばれ、上場企業や有価証券報告書の提出義務がある会社に対して、内部統制報告書の作成、監査、提出を義務付ける制度です。

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●内部統制の主な目的

○業務の有効性と効率性を向上させること

内部統制システムを構築すると、人員、時間、予算などの経営資源を業務目的に従って最適に配分できるようになり、業務の効率性が高まります。また、業務プロセスを見える化し、社内ルールを体系的に整備することで、個人に依存していた作業や重複していた業務を特定・排除できます。こうした改善により、業務が本来の目的どおりに機能する状態、つまり有効性が高い状態を実現できます。
業務の進め方を組織内で共有すれば、事業に直結する付加価値の高い業務に人員や時間を配分できます。その結果、組織全体の業務効率が高まり、経営目標を達成しやすくなります。

○報告の信頼性を確保すること

報告の信頼性とは、財務諸表だけでなく非財務情報を含む社内外への報告が正確かつ適切な根拠に基づいて作成されている状態を指します。財務報告の作成過程で取引記録や証憑との整合性を確認することで、投資家や金融機関、取引先などが会社の状況を判断するための情報を整えます。
内部統制では、取引の記録、承認、照合、修正の手順を定め、報告内容の根拠を確認できるようにします。これにより、決算や開示に関わる情報が、担当者の判断だけに依存せず、組織として確認されたものとして扱われます。

○事業活動に関わる法令等を遵守すること

内部統制では、事業活動に関係する法令や社内規程に沿って業務を行うため、業務ごとに守るべきルールや承認手続きを定めます。各担当者が同じ基準で業務を進められる状態を作ることで、個人の判断だけに依存しない運用を実現します。
法令や社内規程に沿った運用を行うには、規程の作成だけでなく、実際の業務で確認、承認、記録が行われているかの確認も欠かせません。これらの手続きを日常業務に組み込むことで、内部統制は組織として法令等を守るための基盤となります。

○資産の保全を図ること

資産の保全とは、会社が保有する現金、預金、棚卸資産、固定資産、情報資産などを、取得、使用、処分が適切な手続きと承認のもとで行われるよう管理することを指します。紛失や不正利用、毀損を防止するとともに、資産の状況を正確に把握できる体制を整備することが重要です。
内部統制では、資産の取得、使用、保管、処分に関する権限や手続きを定めます。資産の管理では、担当者・承認者・記録者を分けることで、一人の判断だけで処理が完結しない仕組みを作ります。定期的な照合や棚卸を行うことで、帳簿上の残高と実際の資産の状況を確認できます。

出典:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」

●内部統制評価の流れ

○Step1. 評価範囲の選定

評価範囲を選定する際は、財務報告に与える影響の大きさを、量的重要性と質的重要性の両面から確認します。前期末の実績値や当期の予測値を基に、連結売上高などに占める割合を踏まえて評価対象とする事業拠点を選び、併せて、財務報告への影響が大きい勘定科目や業務プロセスを確認します。
リスクの高い業務や非定型取引も、評価範囲を決定する際の確認対象です。例えば、不正や誤謬が発生した場合に財務報告へ重要な影響を及ぼす可能性がある業務プロセスについては、金額的な重要性だけでなく質的重要性も考慮し、個別に評価対象へ追加することがあります。

○Step2. 整備状況の評価

整備状況については、設計した内部統制が、財務報告の信頼性に影響を与えるリスクに対応できる内容になっているかを評価します。現場へのヒアリングなどを基に、業務の流れを「業務記述書」や「フローチャート」として文書化し、併せてリスクと統制活動の対応関係を「リスク・コントロール・マトリクス(RCM)」として整理します。これら3つの文書は「3点セット」と呼ばれ、整備状況評価の基礎資料として使われます。
続いて、作成した3点セットに沿って、実際のサンプル取引を発生から完了まで追跡する「ウォークスルー」を行います。ウォークスルーでは、文書化した手続きと実際の業務が一致しているか、また、リスクに対応する統制活動が業務内に存在・機能しているかを確かめます。

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○Step3. 運用状況の評価

運用状況に関しては、整備状況の評価で有効と判断された内部統制が、評価期間を通じて継続的に機能しているかを評価します。評価対象となる統制活動のうち、重要な統制活動(キーコントロール)を特定し、母集団から複数の取引をサンプルとして抽出します。
抽出したサンプルについて、定められたルール通りに承認、照合、記録などが行われているかを検証する運用テストを行います。運用テストを通じて、決算に重大なミスを招くような欠陥(開示すべき重要な不備)が存在せず、内部統制が継続的に正しく機能しており、重要な虚偽表示を防止できる水準にあることを確認します。

○Step4. 不備の検討、不備の評価

不備を検出した場合は、その内容が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性を検討し、対応方法を決めます。不備の内容や発生原因、影響範囲を整理したうえで、改善策をまとめた改善計画書を作成し、監査法人へ提出します。
改善計画書では、是正活動の内容や、担当部署、期限、再評価の方法を定めます。期限を区切って是正活動を実施し、是正後に再評価を実施します。改善が確認できない場合は、改善計画を立案し直し、是正活動を継続します。

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2.内部統制におけるロールフォワードとは

●内部統制におけるロールフォワードの定義

内部統制におけるロールフォワードとは、期中に前倒しで実施した内部統制評価の実施日から、本来の評価基準日である期末日までの期間について、内部統制の有効性を確認する手続きです。この期間は、「ロールフォワード期間」と呼ばれます。

内部統制におけるロールフォワードの定義

●内部統制におけるロールフォワードの目的

ロールフォワードの目的は、期中評価の結果が、本来の評価基準日である期末日時点まで継続して有効であると証明することです。J-SOXでは期末日時点で内部統制が有効であることが求められるため、企業は期中評価から期末日までの空白の期間を埋める手続きとしてロールフォワードを実施します。
期中評価を前倒しで行う背景には、主に2つの理由があります。1つは、決算繁忙期の評価負担を分散することです。運用テストの大半を期中に済ませておくことで、期末の作業を変更内容の確認に絞りやすくなり、現場と監査人の負担を抑えられます。
もう1つは、期中に見つかった不備の改善状態を追跡することです。期中評価で発覚した不備について、改善後も期末日まで統制が機能し続けているかを最終確認します。

3.ロールフォワード手続きを実施する流れ

●Step1. 期中における運用テストの実施

ロールフォワードの前提として、まず期中(たとえば第3四半期など)に内部統制の運用テストを実施します。評価対象となる業務プロセスが定められたルール通りに運用され、統制が有効に機能しているかを確認します。
この段階での確認結果が、ロールフォワード期間中の変更や不備の有無を確認する際の起点になります。

●Step2. ロールフォワード期間の決定

次に、期中の運用テスト実施日から、評価基準日である期末日までの期間を確定します。この期間が、ロールフォワード期間です。
ロールフォワード期間は、監査法人等と協議したうえで設定します。期間中に想定される変更の有無や確認範囲を踏まえ、一般的には数ヵ月程度で設定されます。

●Step3. 内部統制の変更の有無や不備の確認

ロールフォワード期間中に、内部統制の仕組みや運用に変更が生じていないかを確認します。確認対象には、組織変更やシステムの入れ替え、業務手順の変更、不備の発生などが含まれます。
主な確認方法として、各業務部門の責任者への質問やアンケートの回収があります。また、実際の取引を1件サンプリングし、期中評価後もルール通りに処理されているかを追跡して確認する方法も用いられます。

●Step4. 変更や不備があった場合の対応(追加手続き)と検証

ロールフォワード期間中に内部統制の変更や新たな不備があった場合には、追加手続きを実施します。変更や不備の内容に応じて、ウォークスルーや追加の運用テストを行います。
これらの追加手続きにより、変更後の統制が有効に機能しているかを検証します。

●Step5. 期末日時点での最終的な有効性の評価

最後に、期中に行った運用テストの結果と、ロールフォワード期間中の確認結果、変更や不備があった場合の追加手続きと検証の結果を総合し、期末日時点での内部統制の有効性を判断します。
「開示すべき重要な不備がない」と判断した場合は、内部統制は期末日時点でも有効であると結論付けます。この結論をもって、ロールフォワードを含む内部統制評価手続きが完了します。

4.ロールフォワードで確認する内部統制の対象領域

ロールフォワードでは、期中評価以降に内部統制に影響する変化が生じていないかを確認します。

●組織全体を対象とする内部統制(全社的統制)

全社的統制は、内部統制のうち、企業風土や経営方針、IT基盤など、組織全体に影響を及ぼす統制です。決算・財務報告プロセスや業務プロセスを支える土台として位置付けられます。
ロールフォワードでは、期中評価以降に全社レベルのルールに変更が生じていないかを確認します。確認にあたっては、内部統制の実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)などを参考にします。

●決算や財務報告にかかわるプロセス

決算や財務報告にかかわるプロセスは、財務諸表の作成や開示に直接関係します。ロールフォワードでは、期中評価以降にこのプロセスに影響する変更が起きていないかを確認します。
確認対象には、会計方針の変更、新たな税制・会計基準への対応、連結対象となる子会社の増減などがあります。

●企業の主軸となる重要な業務プロセス

企業の主軸となる重要な業務プロセスとは、売上、購買、棚卸資産など、主たる事業活動における日常的な取引プロセスを指します。ロールフォワードでは、期中評価以降に業務マニュアルの改定やシステムの入れ替えが起きていないかを確認します。
併せて、3点セットに記載された業務フローと運用にズレが生じていないかも確認します。

●リスクが高い特殊な取引として、個別に追加された業務プロセス

個別に追加された業務プロセスとは、非定型取引や固有のリスクが高いなどの理由で評価対象に加えられたプロセスです。ロールフォワードでは、期中評価以降に対象取引の発生頻度や金額の急増、担当者の異動など、状況が変わっていないかを確認します。

5.内部統制においてロールフォワードを実施する際のポイント

ロールフォワードの手続きを円滑に進めるには、不備の是正期間、証跡の保存、監査法人との事前協議という3つのポイントを押さえておく必要があります。

●不備の是正(改善)期間を逆算してスケジュールを組む

万が一、期中評価で内部統制の不備が見つかった場合でも、期末日までにプロセスの改善と再テストを終えられるよう、逆算してスケジュールを組みます。改善内容の検討から業務プロセスの見直し、再テストの実施までには時間を要するため、この期間を見込んで日程を設定します。

●確認結果は必ず証跡(エビデンス)として残す

ロールフォワード期間中における変更の有無は、各部門の業務責任者への質問やヒアリングによって確認するケースが多いです。ただし、口頭での確認だけでは、監査上の証明力を持ちません。
確認結果は、質問回答書や確認書などの書面、またはデータとして必ず残します。書面やデータとして保存することで、期末日時点の評価を支える証跡になります。

●事前に監査法人と協議し、手続きの合意形成を図る

一般的に、ロールフォワード期間が長くなるほど、追加的な確認手続きや再テストの負担が増える傾向にあります。
ロールフォワード期間を何ヵ月に設定するか、また確認をどの範囲・深度で行うかは、監査法人の見解によって異なる場合があります。期末の監査対応で手続きが不十分と指摘される事態を防ぐため、期間と実施方法について事前に監査法人と協議し、方針の合意を得ておきます。

6.最後に

ロールフォワードは、期中評価の結果が期末日時点まで継続して有効であることを証明するための手続きです。期中の運用テストからロールフォワード期間の決定、変更や不備の確認、必要に応じた追加手続きを経て、期末日時点での最終評価に至るまで、一連の流れとして実施します。
ロールフォワードでは、全社的統制、決算・財務報告プロセス、企業の主軸となる業務プロセス、個別に追加された業務プロセスの4つの区分を確認対象とし、期中評価から期末日までの間に生じた変更や不備の有無を確認します。
これらの手続きを計画的に進めるには、不備が見つかった場合の是正期間を見込んだスケジュールの策定、確認結果の証跡の保存、監査法人との事前協議が必要です。自社の内部統制評価全体の流れの中で、ロールフォワード期間、是正・再テスト期間、監査法人との協議時期を整理しておきましょう。

7.内部統制におけるロールフォワードに関するよくあるご質問

内部統制とロールフォワードの関係は?
ロールフォワードとは、期中に実施した内部統制の評価結果を、本来の評価基準日である期末日時点へ延長する手続きです。
期末日までに内部統制に影響するルール変更や不備が確認されなければ、期中に前倒しで実施した評価結果を期末日時点での評価として活用できます。これにより、決算繁忙期に運用テストを一から行う範囲を抑え、評価作業の負担を分散できます。
ロールフォワード期間(期中評価から期末まで)の目安は?
ロールフォワード期間は、一般的には数ヵ月程度で設定されます。ただし、評価対象や期末日までの変更状況によって、設定する期間は変わります。
期間を設定する際は、期中評価後から期末日までに内部統制へ影響を及ぼす変更が生じる可能性や、変更があった場合の確認方法を検討します。期間の設定や確認範囲、追加手続きの要否は、企業側で方針を整理したうえで監査法人と協議します。
ロールフォワード手続きを省略できるケースはある?
ロールフォワード手続きを省略できるかどうかは、評価対象となる内部統制の内容や、期中評価後から期末日までの変更状況によって判断します。期中評価後は、各業務部門の責任者への質問やアンケートなどにより、内部統制に影響を及ぼす変更の有無を確認します。その結果、変更がなく、期中評価の結果を期末日時点の評価として利用できる場合には、追加の確認手続きや再テストを省略できることがあります。
ただし、省略できる範囲や判断方法は、監査法人の見解によって異なる場合があります。ロールフォワード手続きの要否や確認範囲は、期末評価に入る前に監査法人と協議し、評価方針として整理します。

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