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被保険者報酬月額変更届とは? 8、9月は標準報酬月額の随時改定を忘れずに!

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社会保険料は、原則として7月に提出する年に算定基礎届によって保険料が決まり(定時決定)、当年9月から翌年8月まで適用されます。(詳しくは、OBC360°コラム「算定基礎届とは?担当者が押さえておくべき基礎知識」をご参照ください)

しかし、年の途中に昇給や降給などで大幅に報酬が変更した従業員は、変更が発生した時点で手続きを行い、社会保険料額を見直さなければなりません。これが、いわゆる「随時改定」です。

日本では、3月決算の企業は全体の約2割に留まっており、昇給・降給の時期が定時決定時期にそぐわない企業が大半を占めています。つまり、ほとんどの企業で随時改定の手続きが恒例化していると考えられます。

そこで今回は、「随時改定」で必要になる「月額変更届」について、提出が必要なケースやタイミングなど、労務担当者が押さえておきたい「基本」を解説します。

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目次

月額変更届は、随時改定を行うために必要な書類

定時決定は、「4月・5月・6月に支払われた報酬の総額」をもとに標準報酬月額を算定し、7月1日~10日の期間中に「算定基礎届」を管轄の年金事務所等へ提出します。
しかし、昇給・降給が4月以降に決まる企業の場合、昇給後の給料が保険料に反映されるのは翌年10月からとなってしまい、控除される保険料が実際の収入とつりあわないケースが起こりかねないのです。こうした乖離を防ぎ、従業員の暮らしを守るためにも、その給与が大きく変動した場合は「随時改定」の手続きで標準報酬月額を見直します。
その際に提出しなければならない書類が「被保険者報酬月額変更届」いわゆる「月額変更届」になります。

ただし、自社の決算時期の関係上、昇給・降給などの報酬の変動が定時決定に間に合わないからといって、「全ての従業員に対して随時改定を行わなければならない」というものではありません。原則として、7月1日時点で社会保険の被保険者となる従業員は、全員定時決定の手続きを行う必要があります。その上で、算定月以降で条件を満たした従業員のみ対象として随時改定を行うことになります。

1~6月に随時改定を行った場合、新たな社会保険料は同年8月まで適用され、7月の定時決定に基づく新しい標準報酬月額をもとに9月以降の1年間の社会保険料が計算されます。(再び随時改定を行った場合は例外)

「随時改定では、昇給後の報酬が3ヵ月支払われた後に手続きを行う必要があります。特に、定時決定は年末調整に次いで繁忙期の業務とも言われており、賞与支払届の提出も重なるなど多忙を極めます。その直後に行う随時改定は、ホッと一息つく頃に発生するため、つい忘れやすくなりがちです。
7~9月に随時改定を行った場合は、この時決定した標準報酬月額が定時決定よりも優先されるため、翌年8月まで適用されることとなります。その際は、該当者の算定基礎届に「7~9月に随時改定の予定あり」と明記しておけば、対象者の定時決定手続きを省略することができます。
定時決定の業務を少しでも軽くする一方、8月、9月の月額変更届の提出も忘れないようにしましょう。

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随時改定の対象になるケース・ならないケース

随時決定は、次に挙げる条件を全て満たす従業員がいた場合に必ず行わなければなりません。

<随時改定を行う条件>

  1. 昇給・降給などによって、基本給や手当といった固定的賃金に変動があった。
  2. 給与が変動した月から3カ月間に支払われた給与(残業手当ほか固定的賃金以外の手当も含む)の平均月額に当てはまる標準報酬月額とこれまで使用していた標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
  3. 給与が変動した月から3カ月間の全てにおいて支払基礎日数が17日(特定適用事業所で勤務する短時間労働者は11日)以上ある。

支払基礎日数については、定時決定で算定基礎届を提出する際と同様の条件となります。
1の「固定的賃金」には、月給・週給・日給といった基本給や通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当などの手当類が含まれます。これら固定的賃金が変動するケースには、以下のようなものが考えられます。

  • 基本給自体が昇給(ベースアップ)・降給(ベースダウン)した
  • 給与体系が変更した(日給から月給へ変わる・・・など)
  • 日給または時間給の基礎単価(日当など)が変更した
  • 請負給、歩合給等の単価や歩合率が変更した
  • 住宅手当や役付手当など、手当の追加や支給額の変更などがあった

2については、固定賃金等が変動した直後の3カ月間に支払った報酬から算出した標準報酬月額を基として「従前より2等級以上の差」が生じた場合となっていますが、標準報酬月額等級表の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となります。

(ア)厚生年金保険の場合
ケース 従前の標準報酬月額 報酬の平均月額 改定後の標準報酬月額
昇給の場合 30等級・590千円 635千円以上 31等級・620千円
1等級・88千円で
報酬月額83千円未満
93千円以上 2等級・98千円
降給の場合 31等級・620千円で
報酬月額635千円以上
605千円未満 30等級・590千円
2等級・98千円 83千円未満 1等級・88千円
(イ)健康保険の場合
ケース 従前の標準報酬月額 報酬の平均月額 改定後の標準報酬月額
昇給の場合 49等級・1,330千円 1,415千円以上 50等級・1,390千円
1等級・58千円で
報酬月額53千円未満
63千円以上 2等級・68千円
降給の場合 50等級・1,390千円で
報酬月額1,415千円以上
1,355千円未満 49等級・1,330千円
2等級・68千円 53千円未満 1等級・58千円
出典:日本年金機構「随時改定」

また、さかのぼって昇給が行われ昇給差額を支払った場合も、差額が振り込まれた月を変動月として計算し、2等級以上の差が生じれば随時改定の対象になります。

ただし、随時改定の対象にならないケースもあります。

例えば、残業手当や日直手当、休日勤務手当、能率手当など支払額が流動的な手当は固定的賃金に含まれません(非固定的賃金)。このため、以下のような場合は随時改定を行う必要はありません。

  • 固定的賃金は上がったが、非固定的賃金が減ったため、変動後の標準報酬月額が従前より下がり2等級以上の差が生じた
  • 固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増えたため、変動後の標準報酬月額が従前より上がり2等級以上の差が生じた

また、休職などの休職給の支払いを受け固定的賃金が変動した場合も、随時改定の対象にはなりません。ただし、一時帰休(レイオフ)により通常の給与額より低い休職給が3カ月以上続いた場合は、基本給が変動していなくても随時改定を行います。一時帰休が解かれ、元の額で給与が支払われるようになって3カ月以上が経過すると、これもまた随時改定の対象とされます。

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月額変更届の書き方と手続き方法

随時改定を行ったら、「被保険者報酬月額変更届」に必要事項を記入し管轄の年金事務所へ提出します。
健康保険組合の保険に加入している場合は、年金事務所と健康保険組合の両方に提出する必要があるので、忘れないようにしましょう。

月額変更届に記入する項目は、算定基礎届と共通しています。記入方法については、書き方を解説したホワイトペーパーをご用意していますので、ダウンロードしてマニュアルとしてご活用ください。

出典:日本年金機構PDF「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」

提出の際、添付書類は基本的に必要ありません。ただし、残業が一定期間に集中するなどで3カ月平均でなく年間平均で手続きをする場合は、以下の書類が必要になります。

(様式1)

年間報酬の平均で算定する申立書(随時改定用)

(様式2)

健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等(随時改定用)

※様式のダウンロードは、日本年金機構ホームページを参照ください。

また、例年同じ時期に固定賃金の変動等が発生することが見込まれる場合など、必要に応じて賃金台帳など資料の提出を求められることがあります。

CAUTION

改定月の初日から起算して60日以上手続きが遅れた場合、標準報酬月額の等級が5等級以上下がる手続きを行う場合、これまでは「賃金台帳の写し及び出勤簿の写し」(被保険者が法人の役員を務める場合は、取締役会の議事録など)といった資料を添付する必要がありましたが、2019年からは行政側の手続きコスト削減のため、添付不要になっています。

月額変更届の提出は、「速やかに事業主が」届出することとされています。提出自体を忘れていた場合は、気づいた時点で管轄の年金事務所等に連絡を入れ、速やかに提出します。連絡や提出のタイミングによっては、従前の標準報酬月額で保険料を納付している可能性があるため、納付状況も確認しておくと良いでしょう。
提出方法は、算定基礎届と同様、紙の届出書類を管轄の年金事務所へ郵送もしくは持参するか、電子申請も可能です。電子申請に対応するシステムを利用しない場合は、直接、電子政府の総合窓口(e-Gov)から申請することができます。直接e-Govから申請する方法については、日本年金機構のホームページを参照してください。

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月額変更届も、電子申請対応の給与システムで効率化を!

月額変更届の提出後はおおむね保険料が増額しますが、随時改定の手続きは企業の義務ですので「手続きしない」という選択肢はありません。
2020年4月から特定の大法人に対して電子申請が義務化される社会保険手続きの中には、月額変更届や算定基礎届も含まれます。この「手続きの電子化」の最大の目的は、行政手続きコスト削減にあるため、その対象は随時拡大することが見込まれており、そう遠くない将来中小企業にまで及ぶことも想定されます。
自社が電子申請の義務対象になってから慌てることのないよう、なるべく早く準備を進めておくことが重要です。
給与奉行クラウドでは、月額変更届についても作成から電子申請まで一貫して行える機能が備わっています。昇給・降給が行われた変動月から3カ月間の支払いデータをもとに月額変更届が必要になる従業員を自動でピックアップできるため、一連の手続きを効率的に進められます。クラウドを利用しているためテレワークなどでも対応でき、郵送準備にかかる時間、年金事務所やハローワークを往復する時間など担当者の労力を大幅に削減することが可能です。
世間には、他にもこうした電子申請対応のシステムがたくさんあります。このようなシステムを活用して、業務の効率化を図る取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。

被保険者報酬月額変更届に関するよくあるご質問

月額変更届とは?
定時決定は、「4月・5月・6月に支払われた報酬の総額」をもとに標準報酬月額を算定し、7月1日~10日の期間中に「算定基礎届」を管轄の年金事務所等へ提出します。
しかし、昇給・降給が4月以降に決まる企業の場合、昇給後の給料が保険料に反映されるのは翌年10月からとなってしまい、控除される保険料が実際の収入とつりあわないケースが起こりかねないのです。こうした乖離を防ぎ、従業員の暮らしを守るためにも、その給与が大きく変動した場合は「随時改定」の手続きで標準報酬月額を見直します。
その際に提出しなければならない書類が「被保険者報酬月額変更届」いわゆる「月額変更届」になります。
随時改定の対象になるケース・ならないケースは?
随時決定は、次に挙げる条件を全て満たす従業員がいた場合に必ず行わなければなりません。

1.昇給・降給などによって、基本給や手当といった固定的賃金に変動があった。
2.給与が変動した月から3カ月間に支払われた給与(残業手当ほか固定的賃金以外の手当も含む)の平均月額に当てはまる標準報酬月額とこれまで使用していた標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
3.給与が変動した月から3カ月間の全てにおいて支払基礎日数が17日(特定適用事業所で勤務する短時間労働者は11日)以上ある。
月額変更届の書き方と手続き方法は?
随時改定を行ったら、「被保険者報酬月額変更届」に必要事項を記入し管轄の年金事務所へ提出します。
健康保険組合の保険に加入している場合は、年金事務所と健康保険組合の両方に提出する必要があるので、忘れないようにしましょう。
月額変更届に記入する項目は、算定基礎届と共通しています。記入方法については、書き方を解説したホワイトペーパーをご用意していますので、ダウンロードしてマニュアルとしてご活用ください。

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