パワハラとは?定義や事例、防止のために行うべき措置と対処法

このエントリーをはてなブックマークに追加
pic_post210_main

2022年4月1日から、すべての事業主に対して、職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の防止措置を講じることが義務化されます。
「パワハラはあってはならない」という認識は、すでに世間一般に広がっているといえるでしょう。しかし、具体的に何がパワハラに該当するのか、また、職場でパワハラが起こってしまったときにどうすればいいのかがわかっていないと、適切な対策を講じることはできません。
ここでは、パワハラ防止のために企業が行うべきことについて詳しく解説していきます。

目次

パワハラの定義

どのような事象がパワハラに該当するかを検討する際には、下記の3つの要件を満たしているか確認してみましょう。すべて満たす場合、パワハラに該当すると考えられます。

1. 優越的な関係を背景としている

パワハラは、行為を受けた相手が「拒否できない」と感じるような、物理的・心理的に優越的な関係を背景に行われます。
優越的な関係とは、「上司と部下」や「先輩と後輩」といったわかりやすい上下関係だけがあてはまるわけではありません。「集団対個人」や、「知識やスキルが豊富で立場が強い人と、そうでない人」といった場合も、優越的な関係に該当します。
例えば、ある部署に新たに配属された人に対し、昔からその部署で活躍してきた同僚たちが団結して嫌がらせをするといったケースは、職位的な上下関係がなくてもパワハラにあたる可能性があるでしょう。

2. 業務上必要な範囲を超えている

パワハラと業務上の指導は、線引きが難しい問題です。上司が部下の勤務態度や仕事の進め方について行った業務上の指導は、パワハラとは呼びません。パワハラは、業務上必要な範囲を超えるかどうかが判断の基準となります。
例えば、部下が書類の作成をミスした際、正しいやり方を教え、再発防止のための取り組みを考えさせるのは、通常の業務の範囲内の指導だといえるでしょう。しかし、その際に暴力をふるったり、業務とは関係のない罵倒をしたりするのは、必要な指導とはいえません。このような場合は、パワハラに該当する可能性があります。

3. 従業員の就業環境が害される

行為を受けた従業員が、その影響で本来の能力を発揮できなくなってしまったり、心身に不調をきたして就業が困難になったりといった問題が起きているかどうかも、パワハラを判断するポイントとなります。
ただし、たとえ同じ行為を受けたとしても、人によってその行為に対する感じ方は異なるでしょう。心身や業務への影響度合いも、人によって異なるはずです。そのため、「就業環境が害されているか否か」については、従業員に心身不調などの問題が発生しうる程度であったかを、パワハラの基準とするのが適当であるとされています。

パワハラと認められる範囲を知る

パワハラ対策を行うためには、パワハラの範囲を適切に知る必要があります。続いては、指導とパワハラの違いのほか、個別事例での判断、社外におけるハラスメントの取り扱い、企業が措置を講じるべき対象者について見ていきます。何がパワハラになり、何がならないのかを知っておきましょう。

指導とパワハラの違い

業務を遂行する上では、立場が上の者から下の者へ指導を行ったり、知識のある人がない人に対して仕事を教えたりすることがあります。このような指導の背景は、「優越的な関係を背景に行われる」という点がパワハラと共通しています。

しかし、業務上必要な指示や指導までパワハラになってしまっては、部下の管理や教育をすることができなくなってしまうでしょう。くれぐれも上司から部下への指導すべてを「パワハラ」と断定することがないように気をつけてください。客観的に見て、業務上必要であると認められる範囲の指示や指導は、パワハラには該当しません。
とはいえ、パワハラと指導の境目を判断するのは困難です。管理職に対してパワハラ防止研修を行ったり、厚生労働省による動画教材を紹介したりするなど、パワハラへの理解を深めていくことが大切です。

出典:厚生労働省「動画で学ぶハラスメント」

個別の事例によって判断が異なる場合がある

同じ事例であっても、個別の状況によってパワハラに該当したり、しなかったりする場合もあります。「◯◯はパワハラではない」と画一的に決めつけると、実態にそぐわない判断をしてしまう可能性があるため、気をつけてください。

例えば、従業員に対して制服やエプロンの着用といった服装を求めるのは、業務上の必要性が高いのであればパワハラには該当しません。しかし、足をケガしている従業員に対してハイヒールを強要するのは、業務上適切と認められる範囲を逸脱しているといえるでしょう。
このように、従業員にとって著しい不利益がある場合は、パワハラに該当する可能性があるのです。

社外におけるハラスメントの取り扱い

社内だけでなく、社外で起こったハラスメントであっても、パワハラに該当する可能性があります。例えば、懇親会や社員寮内、出張先など、実質的に仕事の延長上にある環境・状況において優越的な関係性を背景としたハラスメントが起これば、それはパワハラだといえるでしょう。

パワハラは、職場におけるハラスメントを指していますが、上記のような業務中に訪れている場所や、業務と密接な関わりのある場所についても、「職場」に含まれます。ただし、実際に職場に該当するかどうかは、個別に判断することになります。

企業が措置を講じるべき対象者

企業は、社内でパワハラが起こらないように対策を講じるとともに、パワハラが起こってしまった際には、パワハラを受けた対象者の雇用形態にかかわらず、適切に対処をする必要があります。「正社員ではないから」といった理由でパワハラを放置することはできません。

なお、派遣社員を雇用するのは派遣元の派遣会社ですが、実際に業務を行っているのは派遣先の事業所です。そのため、派遣元だけでなく派遣先の企業も、自社の従業員への対処と同様の措置を派遣社員に講じる必要があります。

パワハラの6つの類型

厚生労働省は、パワハラを6つの類型に分類しています。具体的にどのような行為がパワハラに該当するのか、ひとつずつ例を交えて解説します。なお、この6つの類型はあくまで参考であって、これに該当しないからパワハラではないということではありません。

1. 身体的な攻撃

殴る、蹴るといった身体的な攻撃は、パワハラに該当します。また、直接自分の手で攻撃をしていなかったとしても、物を投げるといった行為があった場合、身体的な攻撃によるパワハラといえるでしょう。

一方、誤って体にぶつかってしまったといったケースは、パワハラには該当しません。ただし、「誤ってぶつかった」ことが事実ではなく、実際には攻撃を目的として故意にぶつかっていたという場合は、パワハラにあたる可能性が高いです。

2. 精神的な攻撃

精神的な攻撃とは、脅迫や暴言、侮辱などのことです。身体的な攻撃を行わず、言葉だけの攻撃があっても、パワハラに該当する可能性があります。
例えば、下記のような行為はパワハラに該当する可能性が高いといえます。

  • 相手の人格そのものの否定
  • 業務上必要な範囲を超えた、長時間や繰り返しの叱責
  • 他者の前で激しい叱責を繰り返す行為
  • 性的指向や性自認に関する侮辱

また、対面での罵倒や必要以上の叱責だけでなく、メールやチャットなどで相手の人格や能力を否定するような言動を繰り返したり、第三者に見える形でメールやチャットなどで罵倒、叱責をしたりする行為もパワハラに該当します。
一方で、「何度注意しても同じミスを繰り返す部下に対し、それまでよりも強い口調で指導を行う」「業務上、重大なトラブルを引き起こした従業員に対し、通常よりも強い注意を行う」といった行為は、パワハラには該当しない可能性が高いでしょう。

ただし、どこまでが「業務上必要程度の強い注意」であるか、その捉え方には注意が必要です。従業員本人にミスや叱責の原因があれば、何を言っても良いというわけではありません。

3. 人間関係からの切り離し

業務上正当な理由がないにもかかわらず、従業員を一人だけ別室に隔離して業務を行わせたり、仕事を与えずに自宅待機させたりすることは、人間関係からの切り離しというパワハラにあたります。また、「同僚同士で結託して特定の個人を無視する」といった、集団の優位性を背景にした行為もパワハラです。

一方、中途入社の社員に対して個別で研修を行う、遠方の従業員にテレワークを認めるなど、業務上の必要があった上で個別作業を指示するのであれば、パワハラにはなりません。

4. 過大な要求

現実的に遂行できないような過大な目標設定を行い、未達成時に強く叱責するような行為は、過大な要求というパワハラにあたります。
また、従業員に対して特に必要のない過酷な肉体労働を強制したり、業務に関係のない上司の個人的な用事を強制的に行わせたりする行為についても、過大な要求によるパワハラに該当します。

どこからが「過大」であるかは個別の判断になりますが、従業員のそれまでの実績や一般的な業務量などを加味した上で、適切な業務指示を行う必要があるでしょう。
「従業員のスキルアップのためにこれまでよりも難しい仕事を任せる」ことは、通常の企業活動の中で当たり前に行われることです。しかし、「成長のために」という名目であっても、一般的に考えて現実的ではない目標を強要することはできません。

5. 過少な要求

過大な要求がパワハラに該当する一方で、過少な要求についてもパワハラとみなされます。過小な要求とは、従業員の役職や立場に到底見合わないような雑務ばかりを担当させる、特定の個人に故意に仕事を回さないといった行為が該当します。
なお、一時的に任せられる仕事がないために従業員の手が空いてしまったり、能力に応じて業務量の調整を行ったりといった、一般的な業務の割り振りで起こる仕事量の減少については、パワハラにはあたりません。

6. 個の侵害

個の侵害とは、個人に認められるべきプライバシーを侵害する行為のことです。職場の外での行動を監視したり、本人や私物などを写真に撮ったり、個人情報をほかの従業員に広めたりする行為は、個の侵害にあたるパワハラです。

例えば「あの人は◯◯という病気にかかっている」「不妊治療をしている」といったことは、他者が広めて良い情報ではありません。本人からの報告や偶然見聞きしたなどの理由で、部下や同僚等の個人情報を知ることがあっても、それを他者に広めることはパワハラです。ただし、本人の同意を得た上で、業務上必要な範囲に限って伝達することはパワハラには該当しません。

個の侵害は、明確な悪意なく行われてしまう可能性もあるパワハラです。暴行や精神的な攻撃と同様に、個の侵害もパワハラに該当することを従業員に周知しましょう。

企業が行うべきパワハラ対策

企業は、パワハラに対して適切な措置を講じる義務を負っています。それでは、パワハラ対策として行うべき措置とは、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、方針の明確化と周知のほか、相談窓口の設置、パワハラ発生時の適切な対応、当事者のプライバシーの保護、相談者の立場の保護など、企業が行うべき具体的なパワハラ対策をひとつずつご紹介します。

方針の明確化と周知

パワハラ対策を行うにあたっては、まず、企業が「パワハラを許さない」というトップメッセージが重要です。また、その姿勢を従業員に周知させる必要があります。就業規則や服務規程などに規定を設けるとともに、社内報など従業員全員が目にする媒体を活用して、パワハラに対する企業の姿勢を伝えましょう。

同時に、何がパワハラにあたるのかを従業員に広く知らせることも大切です。従業員がパワハラに関する正しい知識を身につけられるように、パワハラにあたる事例や、パワハラが発生する背景にはどのようなものがありえるのかといった情報を伝えます。
また、パワハラに関する研修を実施するのも効果的です。特に管理職に対しては、パワハラと指導の境界を伝えたり、部署内のパワハラに対して適切な対処をとったりするための研修を行ったりするといいでしょう。

相談窓口の設置

パワハラは、社内で起こることが多い問題です。そのため、従業員が問題に直面していても、「誰に相談したらいいのかわからない」「相談をすることで余計に問題が大きくなるのでは」といった不安を抱く可能性があります。そうなると、パワハラが解決されずに長期化しかねません。
企業は、このような問題が起こらないよう、パワハラに対してスムーズに適切な対処がとれる体制を整える必要があります。具体的には、パワハラに関する相談窓口を設置することが先決となります。

パワハラは、デリケートな問題であることも多いです。そのため、従業員が躊躇なく相談を行うことが難しい一面があります。「窓口担当者を決めて対面で相談を受けつける」という形式の相談窓口を設置しても、従業員が相談をしにくい可能性もあるでしょう。
その対策として、メールや電話などを使った受付を可能にするなど、従業員が相談しやすい体制を整えていってください。同時に、従業員から相談があった際、どのように対処するのかもあらかじめ企業の中で決めておき、担当者の一存で問題が見過ごされることがないようにします。

相談窓口は、従業員に広く周知させることが大切です。パワハラを受けている人だけでなく、パワハラが起こっているのではと感じている第三者からの相談や、「自分の行為はパワハラに該当するかも」と不安に感じている従業員からの相談など、幅広い質問を受けつけることを伝え、従業員が相談しやすい体制を整えていってください。
また、相談者のプライバシーや心情には十分配慮し、ヒアリングなどは慎重に行う必要があります。相談窓口の担当者が適切な対応を行えるよう、十分な研修等を行ってください。重要なのは、相談窓口の担当者が問題を解決する役割ではないことを理解し、必要な情報を聞いて、正確に会社に報告することです。

パワハラ発生時の適切な対応

相談窓口にパワハラの相談が来た際には、事実関係を慎重に確認し、対処する必要があります。パワハラ発生時の適切な対応とは、単に行為者とされた従業員に注意をすればいいというものではありません。言葉や行動をとらえて判断するのではなく、その前後の状況も含めて、その行為の妥当性を検討する必要があります。また、場合によっては、関係者の同僚や上司等から話を聞くなど、従業員同士で協力体制を敷いて対処をしていきます。

具体的にどのような対処が適切なのかは、個別の事案によって異なります。画一的な対応をとるのではなく、指針を決めた上で、それぞれの相談内容に応じた判断を行いましょう。
なお、この対処法は、相談窓口の担当者が一人で決めるものではありません。企業としてどのようにパワハラに対処していくのかを検討し、再発防止といった今後の対応についても慎重に協議します。

併せて、パワハラが起こった場合にどのような対処をとるのか、具体的に就業規則等に明記しておく必要もあります。企業としてパワハラを認めないという姿勢を明確にするためにも、パワハラによる懲戒規定を定め、周知してください。
このような規定を設け、基準を明確にすることは、パワハラの防止や従業員に対する啓発にもつながります。

当事者のプライバシーを保護する

パワハラの相談に対応する際は、相談をした人(パワハラを受けている人)とパワハラを行っているとされた人、双方のプライバシーに配慮しなければいけません。
相談者やパワハラを行った人の個人情報や、知られたくない情報が外部へ漏れることがないよう、マニュアルを整備したり、相談担当者への研修を行ったりしましょう。
また、相談時は従業員のプライバシーが保護されることを、周知することも大切です。個人情報が漏れないように対処をとっていることを伝えることで、従業員が相談しやすい体制を作れます。

相談者の立場を保護する

従業員がパワハラの相談を行った際、それを理由として相談者の不利益になる配置転換や降格、解雇等を行うことはできません。これは、社内の相談窓口だけでなく、都道府県労働局への相談や調停の申請を行った場合も同様です。
なお、立場を保護すべき相談者には、パワハラを告発した第三者も含まれます。どのような立場の人でも、パワハラの相談が原因で不利益を被ることがあってはなりません。相談者の立場を保護することも、就業規則等に明記し、従業員に周知しましょう。

パワハラ相談を受けたらどう対応する?

パワハラの相談を受けた際には、作成したマニュアルに沿って対応を行います。パワハラ相談を受けた際の一般的な流れは、下記のようになります。

<パワハラ相談を受けた際の一般的な流れ>
  1. 相談をしてきた本人に対し、どのような解決を望むかを含めたヒアリングを行う
  2. パワハラをした相手へのヒアリングを行う(必要に応じ第三者へのヒアリングを行う)
  3. 事実関係を検討する
  4. パワハラが事実である場合は、対策委員会によって対応を協議する(パワハラが誤解であった場合は、本人および相手に説明を行い、再発防止の取り組みを行う)
  5. 必要に応じ、パワハラを受けた本人に経過の説明をする
  6. 必要に応じ、本人・相手・第三者のヒアリングを行う
  7. 該当の行為が懲戒に値するかどうかの判定を行い、該当する場合は行為者に弁明の機会を与えたうえで処分を行う
  8. パワハラを受けた本人に対し、処分内容や調査の経緯の説明を行う
  9. 再発防止措置をとる

パワハラ相談を受けた際は、慎重に対応を進めなければいけません。適切なフローにもとづいて対処を進めるとともに、相談者・行為者・職場で見聞きした人、すべてについてメンタルヘルスなどにも配慮が必要です。
調査と並行して、相談者にはパワハラの行為者と離れた部署で仕事をさせたり、メンタルヘルス不調となる人がいれば、必要に応じてカウンセリングや心療内科の受診を促したりといった対応をとりましょう。

パワハラを行った従業員への対応

パワハラへの対応を検討する際は、パワハラを受けた本人へのケアやプライバシーの保護を十分に行わなければいけません。それと同時に、パワハラを行った従業員に対してどのような対処をするのかも決めておく必要があります。

パワハラを行った従業員に関する規定を定めておく

パワハラについて企業としてどのように対処していくのか具体的に定め、あらかじめ従業員に周知しておく必要があります。
また、パワハラを行うと従業員にはどのような不利益があるのかを周知しておくことは、職場内におけるパワハラの抑止力にもなります。

パワハラを行った当人、パワハラを受けた当人への聞き取りを行う

パワハラの相談窓口に「◯◯さんからパワハラを受けています」という相談があったとしても、それを最初から事実と決めつけて対処することがないように気をつけてください。
パワハラは人と人のあいだで起こることですから、認識の相違や勘違いなどから問題が生じている可能性もあります。また、相談者側が悪意を持って相談をする可能性もゼロではありません。双方の主張を公平に聞き取るとともに、必要に応じて第三者への聞き取りなども行って事実確認を行いましょう。

ただし、事実確認の段階においては、パワハラを行っているとされた従業員には、相談者に不利益な取り扱いなど、報復となるようなことはしてはいけない旨を明示しておく必要があります。また、パワハラの当事者同士での直接の話し合いを認めると、パワハラによる被害が拡大する可能性もありますので、十分配慮してください。

ハラスメント規定に応じた措置をとる

パワハラの事実が認められた場合は、ハラスメント規定に応じた措置をとることになります。
併せて、パワハラを受けた側と行った側双方に対し、なぜそのような処分をとることになったのか、十分に説明を行ってください。

パワハラによって上司や企業が訴えられた事例

パワハラによって、上司や企業等が裁判で訴えられる事例は複数存在しています。その中から3例を取り上げて、どのようなものなのか見ていきましょう。

直属の上司ではない相手からのパワハラ例

2013年1月30日、東京地裁の判決事例では、入社日が2ヵ月しか変わらず、直属の上司でもない人物からのパワハラが認められ、パワハラを行った個人に対して慰謝料200万円の支払いが命じられました。
この事例における当事者たちの入社日は2ヵ月しか変わらず、先輩後輩という関係性でもありません。しかし、パワハラを行った人物は企業内において重要な立場にあり、明らかにパワハラを受けた人物よりも優位性があったという判決が出ています。
この裁判では「業務以外の仕事を命じる」「大声で叱責する」「侮辱的な内容のメール等を送る」といった行為がパワハラと認定されました。
出典:厚生労働省「【第24回】「同じ会社の社員からパワハラを受けた事案 ― 慰謝料請求事件」

報復めいた人事による慰謝料請求が認められた例

東京地裁で2008年11月11日に判決が出た事例では、企業のセールストーク内容等に疑問を覚えていた従業員に対し、専務や上司が従業員に対して人格否定につながるような言動をしたり、不当な配置転換、自宅待機命令などを出したりしたといったパワハラ内容が裁判にかけられました。従業員は、最終的に明確な理由がないまま退職させられています。
パワハラを受けた元従業員は、会社に置かれていた重い私物の荷物を持ち帰らされたことによる腰痛と、パワハラによるうつ病を発症し、訴えを起こしていました。裁判所は企業の対応はパワハラの不法行為にあたるとして、元従業員の慰謝料請求を認めました。
出典:厚生労働省「【第53回】 「罵倒、のけ者にするなどといった行為が不法行為にあたると判断された事案 ― 美研事件」

休職がパワハラを原因としたものと認められた例

大阪地裁で2014年4月11日に判決された事例は、休職期間満了に伴う退職を通知された従業員が、「休職はパワハラによるものであり、就業規則が定める休業理由『業務外の傷病』にはあたらない。そのため、退職通知は無効である」と主張した裁判です。
この従業員は、上司と企業に対して損害賠償を請求するとともに、企業に対し、就労不能中の賃金の支払い、さらには雇用契約上の権利を有していることの確認を求めました。パワハラ行為として訴えられた内容は、業務に関する大声での叱責や、人格を否定する言動などでした。このうち、業務と直接的に関係のない人格の否定について、パワハラと裁判で認められています。
出典:厚生労働省「【第25回】「上司のパワーハラスメントが原因で休職したものとして地位の確認と損害賠償を請求した事件 ― 大裕事件」

従業員のメンタルケアは適切に行うことが肝要

人はパワハラを受けると、心身に大きな負荷がかかり、通常の業務を行うのが困難になっていきます。企業は、従業員が業務を行う上で感じる不安や不満、ストレスを素早く把握し、適切な対処ができる体制を整える必要があります。
奉行Edge メンタルヘルスケアクラウドでは、従業員のストレスチェックや専門家への相談窓口の提供、メンタル不調者の自動検知などが行えます。従業員のメンタルケアや職場環境の改善にご活用ください。
奉行Edge メンタルヘルスケアクラウド

山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

関連リンク

こちらの記事もおすすめ