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電子インボイスの世界的潮流と海外進出日系企業に求められる世界基準の対応

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こんにちは。フェアコンサルティンググループと申します。フェアコンサルティングは世界17ヵ国30拠点に直営の事務所を有する会計事務所系コンサルティング会社です。
今回は世界中で導入が進む電子インボイスについて解説します。
日本でも2023年10月より消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が始まり、それに合わせて電子インボイスの導入が進むものと見込まれています。しかし会計・税務周りの電子化という観点で、日本は世界に後れを取っているのが現実です。
電子インボイスの世界的な潮流と電子インボイス先進国の現状をつかみ、海外に進出している日系企業に求められる世界基準の対応をイメージしてみましょう。

目次

1.国際規格Peppolの採用実態と相互運用

日本の代表的な会計システムベンダーから構成されるデジタルインボイス推進協議会(EIPA)は、電子インボイスの国際規格であるPeppolに準拠した電子インボイス標準仕様の策定を発表しています。
Peppolの採用はシンガポール、オーストラリア、欧州連合(EU)などで進む一方で、メキシコ、台湾、ベトナムなど電子インボイスの導入が進んでいる国では、国としては採用していません。
国際規格であるPeppol導入のメリットとしては、国外企業との電子インボイスのやり取りが国内同様に行えることです。しかし2022年時点ではPeppolを活用した国際的な電子インボイスの相互運用は進んでいません。
Peppol規格の電子インボイスの相互運用として注目されているのが、欧州連合(EU)です。しかし2022年時点ではEU域内における加盟国同士の相互運用は進んでいません。ただし公共調達における電子インボイスに関する欧州指令「Directive 2014/55/EU」がすでに制定されていることから、EU域内での相互運用の実現性は今後高いと考えられます。

2.電子インボイスの導入先進国の特徴

2022年時点では、電子インボイスの導入が進んでいる国と、進んでいない国には大きな差があります。

電子インボイスの導入が進んでいる国の特徴としては、以下3点があります。

  • 政府による義務化、推進施策(助成金など)
  • 文化・商習慣・国民性が、デジタル化に対して前向き
  • 導入までの負担が低いなど、企業における費用対効果が高い

最も電子インボイスの導入が進んでいる国がメキシコであり、メキシコ国税庁(SAT)によって義務化されています。メキシコでは従前から徴税率の低さが国家としての課題であり、国税庁自らが大きく電子化に舵を切り、2011年より大規模納税者に、2014年からは全ての納税者に電子インボイスが義務付けられました。

オーストラリアの隣国ニュージーランドも電子インボイス先進国ですが、業務効率化・デジタル化に非常に前向きな国民性を感じます。勤務後や余暇時間を積極的に楽しむ文化もあります。長時間労働の常態化、デジタル化後進国の日本にとって参考にすべき点が多々あるかもしれません。

3.電子インボイスデータ発行の仕組み・フォーマット

各国の電子インボイス発行の仕組みには主に以下の3つの手段があり、複数の手段を組み合わせて運営している国もあります。

  1. 国税庁などの公的なプラットフォームから発行
  2. 電子インボイス発行システムを購入して発行
  3. 電子インボイス発行プロバイダーのサービスに登録し、プロバイダーのWebサイトより発行

電子インボイス発行システムのベンダーや電子インボイス発行プロバイダーは、従前からの会計システムや基幹システムのベンダーが大半です。

導入が進んでいる国では、電子インボイスのフォーマットは国ごとにオーソライズされており(Peppol採用国ではPeppolフォーマット)、ファイルフォーマットはXMLファイルが大半です。インドなどはJSONファイルを採用しています。

3-1.メキシコ

前述の通り国税庁(SAT)よりファクトゥーラ(Factura)と呼ばれるインボイスの電子化が義務化されています。すべての企業では取引が発生する都度、SATのサイト又は市販の電子インボイス発行システムから電子ファクトゥーラを発行します。発行された電子ファクトゥーラはSATのデータベースに全て自動で連携し、企業側も閲覧・データ出力が可能で、出力されたデータを現地会計システムで読み込むことができます。
電子化されたインボイスデータを活用するなど、企業側も業務効率化などの恩恵を受けやすい環境が整っています。

メキシコ、電子ファクトゥーラのフォーマット

▲メキシコ、電子ファクトゥーラのフォーマット

3-2.ベトナム

2022年7月1日から電子VATインボイスがすべての取引において義務化されました。メキシコ同様に、紙のインボイスは基本的には利用されていません。税務総局のシステムやシステムベンダーが提供する発行システム、発行プロバイダーサービスなどから電子インボイスを発行します。
フェアコンサルティングベトナムが記帳代行業務をしている企業では、企業側から電子インボイスをフェアコンサルティングベトナムに電子メールなどで提出し、フェアコンサルティングベトナムで勘定奉行クラウドGlobal Editionにて電子インボイスを読み込んでいる事例(記帳業務の自動化)もあります。

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ベトナム、電子インボイスサンプルファイル

▲ベトナム、電子インボイスサンプルファイル

3-3.中国

増値税電子普通発票が2016年から発行できるようになりました。仕入税額控除可能な増値税電子専用発票については2020年12月以降、新規納税者に対する電子化地域を拡大しつつ導入が進んでいます。現状は電子発票が義務化されているわけではありませんが、大企業を中心に採用が進んでおり、近い将来電子発票時代が到来すると言われています。

中国、電子発票ファイル
▲中国、電子発票ファイル

3-4.欧州連合(EU)

最後にPeppol規格の相互運用が期待されるEUの運用実態です。
前述の通り公共調達における電子インボイスに関する欧州指令「Directive 2014/55/EU」が2014年に採択されており、主要各国における企業と政府の取引(政府公共調達)では電子インボイスが義務化されています。しかし企業間取引での導入実態はまだまだばらつきがあります。
最も進んでいるのはイタリアで、企業間取引に関しても電子インボイスが義務化されています。フランスは2023年から2025年にかけて、すべての企業に対し電子インボイスの導入を完了する見込みです。

このように企業間取引に関しては、国別でも導入にばらつきがあり、主要国の中でもドイツのように具体的な時期や運用が決まっていない国もあります。国境を越えた相互運用には時間がかかることが想定されます。

4.日系企業に求められる世界基準の対応とは

世界では電子インボイスの導入が進んでいます。先進国に限らず不正対策などをきっかけに新興国でも国を挙げて推進しています。
世界各国に直営拠点があり、日々現地の方とコミュニケーションをとっている弊社の所感としては、導入が進む国は新しい取り組みに柔軟です。これまでのやり方に固執せず効率化・生産性向上の実現を目指しています。電子インボイスに関しても請求書の電子化が目的なのではなく、業務全体をデジタルの力で変えていきたい、つまり経理DXを目指していると言えます。

日本はコロナ禍を経てもなおデジタル後進国と言われている状況です。
世界に目を向け、日本本社及び海外子会社における世界標準の経理DX実現に向けて動き出してみませんか。

玉村 健

株式会社フェアコンサルティング

システムソリューション事業部長
玉村 健氏 

 

大手外資系コンサルティングファームを経て、日本トップシェアの連結会計システムベンダーで製品企画や中西日本地域コンサルティング部門責任者として従事。フェアコンサルティングでは、日本企業にグローバルソリューションを提案する部門の責任者を務めるとともに、システムソリューション事業責任者としてグループマネジメントシステムやクラウド型グローバル会計システムのソリューション提供を行っている。

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