コロナ禍における各国の現状と海外子会社の管理体制とガバナンス強化に向けた課題~インド・中国・シンガポール・ドイツの今とこれから~

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急増する海外進出に伴って、海外子会社での不正が増え、日本本社がグローバル経営管理体制の整備を進める中でコロナ禍に見舞われました。今回はインド・中国・シンガポール・ドイツ等各国の現状と日系企業としてのwithコロナ時代におけるガバナンス維持に向けた課題を整理いたします。

目次

1.コロナ禍における、日系企業の海外子会社管理状況

2019年12月、中国武漢市に端を発した新型コロナウイルスにより、世界各国でロックダウンやサーキットブレーカーが発動されるなど、世界中で混乱が起こっています。そして、2020年7月現在では、コロナ禍が始まって半年以上が経過し、国によって状況が変わってきています。

当社、フェアコンサルティンググループは会計事務所系コンサルティング会社であり、世界15ヵ国27拠点に直営の事務所を有しています。今回は弊社事務所がある以下の4ヵ国を抽出し、各国の現状(2020年7月現在)と日系企業としてのガバナンス維持に向けた課題を整理いたします。

  1. ① 中国
  2. ② インド
  3. ③ シンガポール
  4. ④ ドイツ

2.中国

中国は新型コロナウイルスの感染源であり、世界に前例がない状況において、新型コロナに全方位的な判断と実行の速さで対応が進みました。その結果、感染者の増加を抑え、他国と比較しても経済活動の回復もすみやかです。
一方で、多くの日系企業がビジネスにおいて多大な影響を受けています。中国国内及び日中間の移動の自由が制限され、中国国内での事業活動に大きな制限があります。また、中国での流行時期と日本での流行時期がずれたことで、日系企業は長期にわたって経営判断が停滞しているように中国では見られています。
多くの日系企業にとっての中国子会社は、相対的にビジネスが大きく、近年のグループガバナンスインシデントの中で連結PLの大きなインパクトがあったものは中国子会社に集中しています。グループガバナンス体制が崩れ、日本本社の目が行き届かなくなっている今、新たなインシデントの芽が出始めていないか、充分に注意が必要でしょう。

3.インド

3月25日にロックダウンを開始しましたが効果が薄く、感染者・死亡者共に増加傾向は落ち着いていません。日本人駐在員の帰国率が最も高い国であり、滞在・就労許可の新規申請も停止されています。
経済面では、政府から総額20兆ルピー超の経済支援策が5月13日から5日間にわたって発表され、Googleも多額のインドへの投資を表明したばかりです。
日系企業の管理面では、人件費が安かった分、海外子会社の中でもシステム投資やクラウド化が進んでいなかった背景があり、ロックダウンによる業務への影響が出やすい状況にありました。
もともとガバナンス体制の構築に苦労する国ではありましたが、上記の状況からより一層難しい状況に陥っていると思われます。

個別論点ではありますが、以下の点も多く聞かれます。

  • ローカル会計システムのデータがわかりづらいが、他に高額の欧米系のERPしか選択肢が無い。
  • もともと就業管理が困難な環境の中、在宅勤務における就業管理が課題

4.シンガポール

厳しい制約があったサーキットブレーカーは6月1日に解除されました。3つのフェーズに分かれる解除ステップは、6月19日からフェーズ2に移行しており、小売店の店舗業務が再開したものの職場では原則在宅勤務が継続。国境を跨ぐ移動再開の見通しも立っていません。
シンガポールを拠点とした東南アジアへの営業活動が物理的に不可能であり、マレーシアからの陸運制限により生産・販売活動に支障が出ています。また、海運需要の低下による船舶関連の収益減少に加え、資金回収の問題が顕在化しています。
グローバルガバナンスの視点からも、ASEAN統括拠点として業務はシンガポール国内で完結しないことが多く、日本本社同様に国境を越えられず周辺国の子会社の管理に支障が出ています。

5.ドイツ

EU域内においても、3月16日に 国境を接する国との国境管理を開始し、その後非EU市民等の入国制限が発動されました。一時的に国境管理によりEUの単一市場が崩れる事態になりました。6月半ばにはEU域内の暫定国境管理は終了しましたが、EU域外からの入国管理は厳しく制限されている状況ですし、EU域内の移動も元に戻っているわけではありません。
自動車産業への依存度が高い中、販売店の営業停止が自動車産業や国家そのものに大きな影響を与えています。(製造自体は制限の対象からは外れています。)
欧州統括拠点が多く、EU域内で国境管理されたことは想定外であり、決算やガバナンス体制に影響が大きく出ました。また、出張等の日本本社からのサポートによって運営が成り立っていた企業も多い中で、日本本社からのサポートを受けづらい状況が続いています。

6.海外拠点のガバナンス体制を維持する効果的な施策とは?

最後に海外拠点のガバナンス体制維持のための施策について触れておきます。それぞれの国の状況は異なるものの、新型コロナウイルスの影響が世界レベルで長期化することは間違いありません。
企業ガバナンスの観点から、「人の移動を前提としないガバナンス・決算体制の構築」が急務でしょう。また、事業環境が不安定でリスクを抱える中、生産性の向上(=リソースの有効活用)がポイントとなります。

フェアコンサルティングとして、以下の2つの手段を進めることを提案いたします。

  • 社内リソースは自社にしかできない業務(製造・営業・企画など)に最大限投入し、外部でできる業務はアウトソーシングを活用しコストを削減
  • ボーダレスなデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、人が移動できなくても管理品質を維持できる仕組みを構築する

コロナ禍で売上・キャッシュが大幅に減少しているという現実もあり、海外子会社は生産性・効率性をこれまで以上に求められるでしょう。そのための手段として、管理業務や内部監査のアウトソーシングが注目されています。
日本人駐在員を海外拠点にアサインするコストは、日本での人件費よりも諸手当や税務負担の分高くなりますのでアウトソーシングによりコスト削減が見込まれます。また、管理業務のアウトソーシングでは、リアルタイムでの会計の見える化が実現するため、これまでブラックボックスになっていた子会社の管理状況が明らかにすることができます。つまり、アウトソーシングを活用することで、コスト削減効果だけではなく付随する効果も生み出すことが可能です。

また、ボーダレスなデジタルトランスフォーメーションも、昨今の通信環境の発展、クラウドアプリケーションの成長に伴って、安価でスピーディな手段が充実してきました。特に国境を越えた移動の制約が大きい今の状況では、より有効な手段であると言えるでしょう。

当社では、クロスボーダーM&A等秘匿性の高い情報を、法人を越えてやり取りする機会が多いため、日ごろからセキュアなオンラインストレージを活用しています。また、記帳業務のアウトソーシングでは、セキュリティが高く、ネットワークの制約を受けにくいSaaS型のグローバルクラウド会計システムを用いています。
このようにして当社では、ボーダレスな情報基盤が整っていたため、コロナ禍でも業務を滞りなく進めることができました。withコロナ時代ではボーダレスな情報基盤の整備が必須と言えます。

新型コロナウイルスとの戦いは長期化するでしょう。
日本本社には、海外子会社ガバナンスを維持するとともに、withコロナ時代に求められる子会社管理体制の整備が求められています。

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