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今、さまざまな分野で最新のテクノロジーを活用する動きが広まっています。「HR Tech」もそのひとつ。市場は年々拡大しており、多くのサービスが提供されています。
しかし、「言葉は聞いたことがある」「何となくは知っている」という方は多くても、「HR Tech」とは何か、どんなサービスがあるのか・・・といった認識はあまり高くないようです。
今回は、「HR Tech」の意味や現状とこれからについてお話します。
目次
「HR Tech」の定義
「HR Tech」とは、HR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。最先端のIT関連技術を駆使して人事に関わる業務の改善を図るサービス全般を指します。これまでも個々の業務に対応したサービスは存在しましたが、金融分野にテクノロジーを取り入れた「Fin Tech」や教育分野における「Ed Tech」と同様、「HR Tech」というサービス群として注目を集めるようになりました。
日本では、海外で見られるような、いわゆる「人事」のみの単一機能で部署が構成されることは少ないため、「HR Tech」でカバーできる範囲は採用、人材育成・配置など人事業務に限らず、給与計算や勤怠管理など総務業務まで幅広いのが特徴です。
「HR Tech」先進国のアメリカでは、すでに驚異的な勢いで市場が巨大化しており、人事業務の効率化が急速に進められています。日本でも、給与計算や勤怠管理など従来からあるサービスのほか、人事面においてもデータやテクノロジーを活用する動きを見せ始め、2018年現在提供されている国内の「HR Tech」サービスは200種類を超えると言われています。
2018年2月5日付の日本経済新聞によると、「HR Tech」のクラウド市場は2016年度・2017年度で大きく飛躍しており(前年比142.8%)、2018年度以降もさらに拡大し続け、オリンピック後の2022年度には2016年度の約6倍まで成長すると予想されています。
政府も「HR Tech」を活用する動きを見せ始めました。2018年7月31日付のOBC360記事「2021年に税・社会保険の書類が消える!?行政手続きのクラウド化から企業が突入するクラウド時代を考える」でご紹介したように、2021年を目標に企業を対象とした税や社会保険などに関する書類のペーパーレス化が検討されています。手続きの詳細はまだ明らかにはなっていませんが、「HR Tech」が企業のクラウド化を加速させる日は目前に迫っているようです。
「HR Tech」が実現すること
今や政府も注目するなど、急速に浸透しつつある「HR Tech」。実際の業務においては、どのような変化をもたらすのでしょうか?
実は、「HR Tech」を活用することで、人事総務の領域にこれまでの規制や常識にとらわれない新しい価値が生まれています。
(1) 「いつでもどこでも」化
「HR Tech」は、人事総務領域において「時間や場所を問わず業務が行える」という価値を生み出しました。「HR Tech」はクラウドサービスが主流であるため、インターネットにつながる場所なら「いつでも、どこでも」利用できます。今では大企業だけでなく中小企業でもクラウド化が進んでおり、事実、多くの企業で「HR Tech」を活用しやすくなっています。
また、スマートフォンやタブレットなど、従業員自身のデバイスを使って操作できることも大きく影響しています。インターネットに繋がっていれば、自分のデバイスで自宅や外出先からでもデータ入力や情報の確認、書類の提出ができるのです。総務担当者も、提出された書類を見ながら入力する手間が省けるうえ、リアルタイムでのやりとりも可能になり、迅速な対応が実現します。
(2) 「ヒト」「モノ」「カネ」の動きを自動化
「HR Tech」を支える最新テクノロジーにより、お金や情報が自動的に繋がる世界が実現しています。
例えば、異なるシステムが互いにデータなどを交換できるようになるAPI(Application Programming Interface)という技術は、データ連携の手段、外部システムとの機能共有に利用されています。海外送金サービスや地方銀行間の口座連携、自社のWebサイトにGoogleが提供するマップを埋め込む・・・などの活用例が有名ですが、人事総務の領域でも「労務手続きを電子申請する」「勤怠管理と給与計算のシステムを連携する」といったことに利用されています。
また、RPA(Robotic Process Automation)という技術を使えば、これまで人が行ってきたパソコン操作を伴う業務をも自動化することもできます。別システムのデータを参照して行うデータ入力やデータの照合、エクスポートなど、操作をルール化するだけで後は自動で実行するので、勤怠管理データを利用した残業時間のチェックなどにも有効です。
他にも、過去の履歴から人工知能(AI)が学習して次の作業を予測しながら進めるなど、「HR Tech」はどんどん現場に活かされています。
(3) 意思決定も迅速化
「HR Tech」は、これまで経験や勘に頼りがちだった人事領域においても迅速な意思決定に貢献します。AI(人工知能)化や機械学習が進み、今ではインターネット上に存在する膨大なデータをあらゆる角度から分析・解析できるようになりました。「HR Tech」もそうした分析・解析サービスが増え、人事評価や人材配置の適正、育成プログラムの最適化など、特に判断が難しく結論を出すのに時間がかかりやすかった分野で、客観的かつ的確な判断材料として活用されはじめています。
「HR Tech」は、より精度の高い戦略的な意思決定のスピードアップも実現可能にしているのです。
「HR Tech」が活用できる業務範囲
では「HR Tech」のサービスは、どの程度の業務範囲をカバーしているのでしょうか。
実は、「HR Tech」が活用できる人事総務の業務は以下のように多岐にわたります。
- 総務業務領域
給与賞与計算業務、勤怠管理業務、社会保険等の手続き業務、年末調整業務、各種証明書発行業務・・・など - 人事業務領域
人材採用・リテンション(人材確保)、人材育成、人事配置、人事評価、リモートワーク、組織サーベイ、従業員エンゲージメント、健康管理・メンタルヘルス、社内コミュニケーション・・・など
これまでは、総務業務は紙やExcel操作が当たり前で、人事業務では経験や勘に頼ることも多いため、人事総務領域は「テクノロジーの未開の地」とも言えました。
しかし今、IT関連のテクノロジーは日々進化しています。「HR Tech」も多岐にわたる業務を網羅し、オールインワンのサービスだけでなく、特定の業務に特化したサービスも次々にリリースされています。部分的なシステム化も実現しており、今まで「システムでできない」とあきらめていた業務も柔軟に対応できるようになってきているのです。
今後はさらに開発者の注目を集め、新サービスも続々と登場することでしょう。
ますます広がる「HR Tech」の可能性・・・今後もその動向には目が離せません。
※「HR Tech」が具体的に人事総務の業務にどのような効果をもたらすのかについては、記事「いよいよ総務業務にも変革の波!『HR Tech』活用がもたらす3つの効果」を参照ください。
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