わずか6ヶ月で2つの経営課題を解消した山本通産。
グローバル経営戦略の追い風となる海外7拠点の連結決算業務効率化に成功した5つの要因とは?
ここ数年のIT技術は進化がめざましく、次々に業務を合理化・自動化し、ビジネス環境をどんどん変化させています。それは経理や販売・仕入等にとどまらず、今まで改革がほとんど手つかずの人事総務領域にも広がりを見せ始めています。そのひとつが「HR Tech」=最新のテクノロジーで人事総務領域の業務効率を推し進めるソリューション・サービス群です。
その市場は今急速に拡大し、今では多岐にわたる業務を網羅するほど成長しています。
とはいえ、人事総務の業務は、多くの企業でいまだに専任担当者の手作業によって支えられているのが実情です。そのため、「人事総務の領域で業務の効率化は難しい」という意見も根強くあることでしょう。
そこで今回は、「HR Tech」で人事総務領域がどのように業務効率化できるかについて、詳しく見ていきましょう。
※「HR Tech」の意味や市場動向についてはOBC360記事「『HR Tech』とは?[注目ワード解説]」を参照ください。
目次
「人事総務の業務は変えられない」時代の終焉
「HR Tech」の需要は、もはや大企業にとどまらず、中小企業やベンチャーなど企業規模に関係なく広がりを見せています。その背景には、今後の日本企業がもっとも大きな課題とする「労働力の確保」「働き方改革」が影響していると考えられます。
2018年4月厚生労働省職業安定局発表の「雇用を取り巻く環境と諸課題について」によると、企業の人手不足は企業規模が小さいほど深刻化している様子が伺えます。
実際、女性や高齢者の社会進出やダイバーシティの取り組みで、ここ数年労働力人口は概ね横ばいを維持しているものの、15歳以上65歳未満とされる生産年齢人口は2065年まで減少傾向にあると見込まれています。
雇用自体が厳しくなる中、できるだけ高い労働力を確保するために、各企業でテクノロジーを活かした効率アップや自動化を進める動きが活発化しているのです。
しかし、実際の現場はいまだ手間のかかる業務が多く存在します。人事業務では勘や経験に頼りがちで人的対応を求められ、総務面においても紙でのやり取りやExcelで作業をしている企業も多いことでしょう。リモートワークやダイバーシティなど雇用が多様化すると業務そのものも複雑になり、人事総務部門の対応はますます難しくなると予想されます。
そうした背景から「HR Tech」は、人事総務の業務運営を合理化する役割として期待され、現在も進化し続けているのです。
また近年、クラウドやモバイルの普及、IT技術の発展によって情報の収集や分析・活用もしやすくなり、「HR Tech」は急速にサービスを拡大しています。(詳しくはOBC360記事「『HR Tech』とは?[注目ワード解説]」を参照ください)これまでは、給与計算など「HR Tech」と意識せずシステムを導入し、単なる「道具」として活用していただけかもしれません。しかしこれからは、人事総務領域における業務改善の「相棒」として「HR Tech」を活用する企業がますます増えていくことでしょう。
「HR Tech」活用で、業務にもたらされる3つの効果とは
では実際に「HR Tech」を活用すれば、人事総務領域でどのような変化が起こるのでしょうか。考えられる効果を大別すると次の3つが考えられます。
(1) 定型業務の時間削減・効率化
「HR Tech」によって、これまで人員を割いて行っていた定型業務の自動化・効率化が可能になっています。
例えば、人事データの管理。労働者名簿に必要な基本情報、給与計算のための情報、勤怠管理情報、紙で提出された情報など、多くの情報管理業務が発生します。こうした業務は、これまでExcelやシステムごとに多重管理しているケースがほとんどでしたが、「HR Tech」を代表するAPI(Application Programming Interface)やRPA(Robotic Process Automation)など最新のテクノロジーを駆使することで情報の一元化ができます。
また、手間のかかる業務のひとつ「労務手続き」においても、すでに「HR Tech」が活用されています。公的機関でも電子申請が進んでおり※、インターネットを介して申請書類を提出できるため、所轄窓口までわざわざ出向く必要はなくなっています。今では、従業員の申請から所轄窓口への届出まで、すべてクラウド上で完結することも可能なのです。
これまで人事総務の定型業務は「人が行うしかない業務」と思われがちでしたが、「HR Tech」を活用すれば業務時間が短縮でき、余裕が生まれた時間を採用計画や人事戦略の立案などクリエイティブな業務に活かすことも可能となっています。
(※公的機関の電子申請については、コラム下部の「こんな記事もオススメ」を参照ください)
(2) 従業員エンゲージメント(従業員体験)の向上
「従業員エンゲージメント」とは、簡単に言えば「企業と従業員が互いに信頼しあい、貢献しあえる状態」のことを指します。従業員が企業の掲げる理念や目標、戦略に共感し、「やらされている」ではなく、自分のこととして意欲的に「実現したい」「達成させたい」と思っている状態を表します。
この「従業員エンゲージメント」は、今や企業の成長・発展に欠かせないものです。世界各国の研究調査でも「従業員エンゲージメントの高さは企業の業績と相関関係がある」ことが明らかになっており、「組織の活性化」が課題となる人事総務部門としては「いかに高いエンゲージメントを維持するか」は重要なポイントとなっています。
「HR Tech」は、こうした従業員エンゲージメントの維持・向上にも大いに役立ちます。
例えば、年末調整や労務手続きなど、各種申告書類を従業員が自分で入力するクラウドサービスがあります。クラウドを使うので、従業員が都合のよいタイミングでストレスなく手続きでき、「難しい」「分からない」といった不満解消にも役立っています。また、普及が進むチャットやビデオ通話などのコミュニケーションツールも、従業員同士のコミュニケーションをスピーディーかつ円滑にでき、業務ストレスの改善に一役買っています。
ただし、こうした従業員エンゲージメントは「日常の業務だけではなかなか見えにくい」という難点もあります。そのため、一部では従業員の満足度をアンケートで多角的に“見える化”する従業員サーベイ(Employee Survey)を取り入れる動きも活発になってきています。
近年、口コミサイトやSNSなどで従業員やOB・OGが発信する情報がリクルーティングに大きく影響しています。「働き場所」としての満足度が高ければ、社外の評判も高まり、優秀な人材が集まりやすくなります。そのため、「従業員エンゲージメント」を上げる施策としても「HR Tech」は注目されているのです。
(3) マネジメント力の向上
人材不足が叫ばれる中、「優秀な人材をどのように発掘するか」「採用した人材をどう定着させるか」は、人事総務の担当者にとって大きな課題であり悩みの種でもあります。
企業が目標を達成するためには、採用や適正配置、育成面での戦略は欠かせません。働き方や働き手の多様化が進むにつれ、人材マネジメントにおいても「HR Tech」への期待が高まっています。
例えば採用面において、最近では「HR Tech」により自社に適した人材かどうかを判断する「マッチング」が簡単に行えるようになっています。SNSを使って人事担当者と求職者が直接やりとりをする新しい形の採用活動「ソーシャル・リクルーティング」もそのひとつで、応募者の個性を採用前に多角的に確認できるのが特長です。履歴書や先行状況の管理、応募者の評価などもすべて情報を一元化できるATS(Applicant Tracking System/採用支援システム)を提供するサービスも近年増えてきました。
また、効果的な人材マネジメントには、精度の高い意思決定をスピーディーに行うことが求められます。
今日では、人工知能(AI)や機械学習によって解析された分析データを使って、最適な人材配置や個人に合わせた育成プランを作成したり、メンタル面に問題のある従業員を早期発見したり、もっと成長するチャンスを求める従業員を発掘する・・・といったきめ細かなマネジメントを行えるようになりました。
蓄積されたデータを分析しグラフや数値として客観的に可視化することで、課題の早期発見、適材適所の推進、生産性の高い組織作りなどにも、「HR Tech」は大いに役立っています。
おわりに
いかがでしたか?
今、ITの世界では新しい技術が次々に誕生しており、「HR Tech」市場も益々拡大しています。業務改善を先延ばしされがちだった人事総務の領域でも、「HR Tech」の活用によって定型業務はもちろん、本来力を入れるべきマネジメント業務でもクオリティアップを図れるようになってきているのです。
「HR Tech」という新しいソリューション・サービスが注目される今こそ、企業競争力を高めるチャンス。「HR Tech」を有効に活用して業務の合理化・効率化を推し進め、人事総務部門が本来取り組むべき業務に集中できる環境を整えていきましょう。
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