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今、市場には請求書を受領した後の業務を効率化するクラウドサービスが数多く提供されています。どのサービスでもインボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しているため、制度対応の環境整備に導入する企業も多いようです。しかし実際は、ベンダーごとに機能やサービスの範囲、特長が異なるため、「何を基準に選べば良いのか迷う」「比較するポイントが分からない」という声も聞かれます。
そこで今回は、請求書受領システムについて、導入メリットを紹介しつつ、市場で提供されているタイプや比較ポイントなど、選定時に押さえておきたい点について解説します。
- 請求書受領システムとは
- 請求書受領システムが注目される背景
- 経理業務の課題解決を後押しする5つの導入メリット
- 請求書受領システムのタイプ別特徴
- 請求書受領システムの選び方 〜比較の際はここをチェック!
- おわりに
請求書受領システムとは
「請求書受領システム」は、受領した請求書の明細情報を電子データに変換し、処理するシステムの総称です。業界でも決まった名称はないため、「請求書受領サービス」「請求書データ化サービス」などと呼ばれることもあります。
請求書受領システムを導入すると、受領した請求書の仕訳・保存の自動化、振込データの自動作成などをシステム上で行うことが可能です。AIやOCRなどの技術革新により、決まった様式のない書類も高精度でデータ化できるようになり、紙の請求書からでもPDFなどの電子データの請求書と同様に精算データを生成し、オンラインで一元管理することができます。
大半はクラウドサービスで提供されており、請求書の自動回収機能があるものや、紙の請求書の受領代行サービスが付随しているもの、支払処理まで完結できるものなど、ベンダーごとに機能性や・特長が異なり、様々なサービスが提供されています。
請求書受領システムが注目される背景
そもそも、受領した請求書の支払業務には、入力・確認など手間のかかる手作業が多く、多くの企業で膨大な時間と労力が費やされています。昨今は、ペーパーレス化の流れにより、PDFなどの電子データで請求書を受領する機会も増えています。紙やPDFなど多様な形態で届く請求書は、それぞれ適切に処理しなければならず、経理担当者の業務負担は増加傾向にあります。その上、インボイス制度や電子帳簿保存法の電子取引における電子データ保存の義務化によって、多くの企業にとって経理業務の効率化が喫緊の課題となっています。
請求書受領システムは、このような請求書の受領に関わる業務を電子化・自動化し、効率化することを目的としています。現在は、電子帳簿保存法に対応している請求書受領システムが主流になっており、経理業務の効率化と電子帳簿保存法への対応のため、導入を検討する企業が増えつつあります。
経理業務の課題解決を後押しする5つの導入メリット
請求書受領システムを導入・利用することで、次のような経理業務の課題解決を促進する効果が期待でき ます。
●受領から支払まで業務を効率化できる
請求書の支払業務では煩雑な手作業が多く発生しますが、ほぼ「転記作業」と「確認作業」の繰り返しになっています。請求書受領システムを利用すると、受領した請求書から精算情報を簡単にデータ化できるため、転記作業がなくなります。また、作成した精算データを活用しながらその後の業務も自動化できるため、受領から支払完了までに発生する手作業を大幅に削減することができます。
請求書の支払業務を効率化できれば、限られた人的リソースを月次決算や経営資料の作成など、より生産的な業務に投入できるようになります。
●社内申請・承認がスピードアップできる
請求書の受領者が担当営業など他部門だった場合、経理担当者が支払申請・承認の進捗確認・催促を行うのは負担の大きいものです。
請求書受領システムには、請求書の支払申請・承認フロー機能が標準搭載されており、請求書の受領窓口を請求書受領システムに一元化できます。請求書ごとに「誰が」「いつ」申請・承認したか・するかをリアルタイムで把握でき、提出状況の確認や催促もしやすく、紙の請求書を回覧するよりも社内申請の手間を大幅に削減して業務をスピードアップさせることができます。
●ヒューマンエラーを防止できる
支払処理に向けて、何度も入力や確認など手作業を行っていると、人的ミスも起こりやすくなります。ミスなく支払いを行うためには、ダブルチェックなどの確認も必要になります。
請求書受領システムを利用すれば、支払いに必要な情報を自動で抽出し高精度でデータ化できるため、金額の見間違いや入力間違いなどのミスを大幅に減らすことができます。自動作成された精算データをしっかり確認すれば、その後の業務で繰り返しデータ確認する必要もなくなります。
●インボイス制度や電子帳簿保存法に自動対応できる
請求書の処理に関する法制度は、デジタル化の進展やビジネス環境の変化を受け、ここ数年で目まぐるしく変化しています。特に、インボイス制度や電子帳簿保存法によって、請求書の処理業務はこれまで以上に煩雑で手間のかかる業務になることが予想されます。
請求書受領システムは、多くのサービスでインボイス制度や電子帳簿保存法への対応が明言されており、システムを導入するだけで自動的に制度に対応する環境が整います。クラウドサービスは最新法令が施行されるたびにアップデートが行われるのが一般的なため、今後も請求書まわりの最新法令に常に対応できるようになります。
●請求書の保管コストを削減できる
受領した請求書は、一定期間の保存が義務づけられています。電子データで受領した場合は、データで保存する必要がありますが、紙の請求書の場合はファイリングの手間や保管場所の確保などが必要です。
請求書受領システムなら、紙の請求書も電子データの請求書も、一様にデータとしてクラウド上に格納し一元管理することが可能です。電子帳簿保存法の保存要件に対応しているシステムなら、要件に沿ったデータ保存が可能で、データ格納後も必要な情報の検索・取り出しが容易にできるようになっています。そのため、紙の請求書は原本を破棄しても問題なく、紙管理にかかるコストを大幅に削減できます。
請求書受領システムのタイプ別特徴
市場で提供されている請求書受領システムは、大きく「システム完結型」と「代行サービス併用型」の2種類に分類できます。
どちらも、スキャンデータや受領PDFデータをシステムにアップロードすると、AI-OCRで必要な情報を自動で読み取り、精算データを作成することができます。AI-OCRによる抽出のため確認作業は必要ですが、データ化の際にしっかり確認すれば、その後の工程では確認作業を簡略化できます。その後、仕訳データや支払データを自動作成するため、会計システムや銀行との連携で支払処理まで行うことができます。
異なるのは、受領からアップロードまでの方法です。
システム完結型には、どの請求書も受領した従業員がアップロードするタイプと、電子請求書は自動回収するタイプがあります。
従業員がアップロードするタイプは、取引先から受領した請求書をシステムに搭載されている社内申請承認ワークフローにアップロードします。承認されたデータを経理部門が確認すれば、精算データを作成します。このタイプでは、他部門も含め従来の業務フローを大きく変える必要がないため、システム導入による関係者への影響が少なく済みます。
自動回収機能があるタイプは、電子請求書であれば、専用のメールアドレスやクラウド上の指定先に、取引先が直接アップロードします。請求内容の確認は、社内申請ワークフローとの突合やAI-OCRでの読み取りデータで承認ワークフローに回すなどで確認します。ただし、紙で受領する請求書は、一度スキャンデータにする必要があります。そのため、一部のクラウドサービスでは、紙の請求書に対してスキャン代行やデータ化代行を有償オプションサービスとして提供するものもあります。
一方、代行サービス併用型は、電子データの請求書は自動回収機能で、紙の請求書は受領からスキャンしデータ化するまで、ベンダーが代行するサービスが標準提供されているタイプです。紙の請求書は、受領からデータ化までの工程をベンダーが代行するため、サービス提供会社から精算データがアップロードされるまでは支払処理対応に追われることがなくなります。データ化された情報の確認も、サービス提供会社の代行範囲に含まれるため、担当者はデータを確認する必要がありません。
これらをまとめると、請求書受領システムは次図のように4つのタイプに分類できます。
タイプA:窓口担当者がアップロードし社内申請承認ワークフローに回すタイプ。経理担当者が承認されたデータを確認することで精算データを生成します。
タイプB:タイプAに代行サービスが有償オプションとして提供されるタイプ
タイプC:自動回収機能が備わっているタイプ。紙の請求書に関しては、スキャン代行やデータ化代行などのサービスをオプションで利用可能。システム内の承認ワークフローで承認後、支払が確定されます。
タイプD:PDF等の請求書データは自動回収機能で、紙の請求書は代行サービスで受領・データ化するタイプ。代行サービスは標準サービスとなっています。システム内の承認ワークフローで承認後、支払が確定されます。
請求書受領システムの選び方 〜比較の際はここをチェック!
請求書受領システムは、請求書の処理業務をペーパーレス化し生産性を高めることを目的としているため、基本的な機能に差はありません。発行者名や請求日、支払期限、支払先口座、請求金額、税区分ごとの金額の内訳などは、どのシステムでもデータ化される項目で、その他データ化が必要な情報については、任意で設定できるようになっています。
しかし、細かな機能を1つ1つ吟味していくと、ベンダーによって様々な特長があるため、どのサービスを選べば良いのか悩んでしまい、なかなか絞り込めない可能性があります。できるだけ短時間に、自社に適したサービスを探すなら、次のようなポイントで自社の業務に合っているかを判断するのがおすすめです。
●代行サービスは必要か
先述したように、代行サービスの有無はシステム分類上の基本でもあります。
例えば、「流れを変えずに業務の手数を減らしたい」「業務をペーパーレス化して生産性向上を図りたい」と考える場合は、システム完結型が向いていると言えます。工数や業務の無駄がなくなれば効率化を図れるなら、代行サービスはオーバースペックとなる可能性が高くなります。
一方、紙の請求書が大半を占める場合や「人員強化を安易にできない」「今の人員キャパで対応が限界」という場合には、受領からデータ化までの業務をカバーしてくれる代行サービス併用型が効果的です。データ化代行サービスのあるシステムなら、紙の請求書をOCRにかける際のスキャンも代行してくれるため、社内ではデータ化された内容を確認するだけで良くなります。ただし、請求書に記載された取引内容は、企業機密にも匹敵するため、取引先に安心してもらう意味でも、セキュリティ体制がしっかり整ったサービスを選ぶのが得策でしょう。
自社で完結できるどうかを見極めて、適切な方法で精算データを作成できるシステムを選びましょう。
●自動回収したいか
自動回収機能のあるシステムでは、取引先が専用メールアドレスに送信する、または専用クラウド上へ直接アップロードするため、基本的に自社に請求書データが届くことはありません。窓口担当者が社内申請のために手動でアップロードする必要がなく、システム内で自動回収されたデータと支払申請ワークフローの内容が自動突合されるため、経理担当者はその結果を確認するだけになります。
ただし、自動回収を行うには、取引先に送信先の変更を伝える必要があります。取引先が安心して送信できるように、セキュリティ体制がしっかり整っているサービスを選び、取引先にもその内容を伝えておくことが望ましいでしょう。
●自社の基幹システムと連携するか
請求書受領システムは、一度精算データを作成すれば、支払予定表や支払データ、仕訳データを自動作成することができます。ただし、請求書の受領から支払までの処理業務は経理業務の一部であり、経理業務の全体効率化を図るためには、それらのデータを次工程で利用するシステムに連携できるかもチェックしておく必要があります。
多くの請求書受領システムは、APIかCSVで次工程のシステムに連携できる仕組みになっています。API連携の場合は、ボタンのクリックだけでデータを送信できるので簡単ですが、CSV連携になる場合は、CSVファイルにデータを一度出力してから手動で連携したいシステムに取り込む必要があり、少なからず手間が発生します。そのため、なるべく自社の基幹システムとAPI連携できるものを選ぶのがよいでしょう。
API連携できるかどうかは、会計システムだけでなく債務管理システムなど、自社に導入している関連システム全ての対応状況を確認しておきましょう。債務管理システムと連携すれば、債務伝票の作成や精算締め、受領した請求書と債務情報との突合作業なども、精算データを活用して自動化でき、債務管理業務も含めた業務の効率化が実現できます。
例えば、奉行Edge 受領請求書DXクラウドの場合、勘定奉行クラウドと自動連携し、支払い対象を確認した後は勘定奉行クラウドで仕訳結果を確認するだけで良くなり、業務負担をさらに減らすことができます。
また、債務奉行クラウドと連携することで、仕入や経費の債務発生から管理し、精算情報と受領請求書との突合作業や債務残高管理の自動化により、支払の生産性・精度を向上することができます。
●インボイス制度・電子帳簿保存法の対応方法は自社に合うか
市場で提供されている請求書受領システムの多くは、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応することが明言されています。
インボイス制度への対応では、インボイス・非インボイスの判別や登録番号の照合、税区分に応じたデータ化の機能が標準仕様となっているものが一般的です。ただし、取引先マスタとの連携方法や控えの管理方法は、ベンダーによって異なります。自社の取引先マスタとの連携方法は、できるだけ手間のかからない方法を選ぶことが賢明でしょう。
また、デジタルインボイスへの対応もベンダーによって異なります。取引先との間でデジタルインボイス「Peppol」を検討する可能性がある場合は、対応するサービスを選んでおくことが大事です。奉行Edge 受領請求書DXクラウドの場合、「Peppol」を含めた様々な請求書(PDF・紙)の一括受領に対応するため、いつからでも取引先とのやり取りを「Peppol」に切り替えることができます。
また、電子帳簿保存法への対応については、多くのサービスが「電子帳簿保存法の法的要件を満たした電子的受領・保存が可能」と唄っています。より安心感を得たいなら、「JIIMA認証」の有無を目安にするのもおすすめです。JIIMA認証は、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェア・サービスに与えられるため、JIIMA認証を取得しているシステムなら制度対応にも安心できるでしょう。
奉行Edge 受領請求書DXクラウドの場合、受領した請求書の電子データを電子帳簿保存法の法的要件に沿ってクラウド上で適正に保存します。勘定奉行クラウドと連携すれば、帳票上に日付・金額・支払先情報を保持することも可能です。
●サポート体制は充実しているか
請求書受領システムの多くは、「導入時の初期設定は自社で行う」という方針になっています。しかし、ITに不慣れな経理担当者には、設定作業そのものが負担になることもあるため、導入時の伴走サポートがあると安心でしょう。また、初期設定完了後も、稼働中に困ったことがあった場合などに気軽に活用できる相談サポートがあると便利です。
サポート方法は、メール、チャット、オンライン、電話などベンダーによって手段が異なります。自分が使いやすい手段でサポートを受けられるかも確認しておくとよいでしょう。またサービスによっては、回答の回数に制限がある場合や返信に時間がかかる場合、相談内容によっては有償となる場合があるため、検討時にしっかり内容まで確認することが大切です。
例えば、奉行Edge 受領請求書DXクラウドの場合、初期設定から本稼働までの手順をSTEPごとに動画で解説した導入完全ガイドを標準サービスとして提供しており、初めてでも安心して設定できるようになっています。また、インストラクターが設定に関する不明点や運用フローを最終フォローアップする有償サービスもあります。導入後は、チャットボットサービスやヘルプセンター(Web)での案内のほか、サポートセンターによるリモート指導の他、Webオンライン、電話、FAXなどで個別相談にも対応可能です。利用者専用のコミュニティサイトも運営しており、様々な情報やコンテンツを提供しています。
おわりに
インボイス制度や改正電子帳簿保存法の施行は、今後の経理業務に大きな負担となることが予想されます。基幹システムと連携でき制度対応もできる請求書受領システムなら、基幹システムをリプレイスしなくても、煩雑な受領・支払処理業務を適正に処理かつ最大限省力化することができます。
個々の機能やコストに目を向けると、どれを選べば良いか迷ってしまうものでも、ポイントを絞って選べば、自社に必要な機能やサービスが見えてきます。今回ご紹介したポイントを参考にしながら、優先して解決したい課題や理想とするゴールをしっかり見極め、自社の業務に合ったサービスを賢く選びましょう。
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