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2024年度から全ての介護事業者に財務諸表の公表が義務化!経理業務で求められる対応とは?

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介護保険制度は、概ね3年ごとに改正が行われています。次の改正は2024年度に施行されることになっており、様々な改正点があります。そのうち、経理担当者が特に留意しておきたいのは、全ての介護事業者を対象に義務化されることになった「財務諸表の提出」でしょう。
そこで今回は、介護保険制度の改正内容を踏まえ、財務諸表の提出が義務化される背景や提出すべき書類、経理業務における対策について紹介します。

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目次

財務諸表の提出が義務化された背景

財務諸表公開の義務化は、2024年度の改正介護保険制度に含まれる「財務状況等の見える化」にあたります。

介護分野の最近の動向について

出典:厚生労働省 老健局 PDF「介護分野の最近の動向について

これまでも、社会福祉法人や障がい福祉事業所には、貸借対照表、損益計算書などの財務諸表の公表が義務づけられていましたが、今回の改正で、全ての介護サービス事業者に対し、事業所または施設ごとの収益および費用等の事項(介護サービス事業者経営情報)を都道府県に提出することが義務づけられました。
施行は2024年4月1日からとなっており、財務諸表を公開しなかったり虚偽の報告をしたりした場合は、業務停止もしくは指定取消の罰則規定も明示されており、強制力の強い改正となっています。

この改正背景には、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築に向けた質の高い医療・介護を効率的に提供するための基盤整備」があります。
日本は今、急速な人口減少と高齢化に伴い、2040年には20〜64歳の人口が日本全体のちょうど半分を占めるまでに減少すると推計されています。令和2年版 「厚生労働白書」でも、2040年には最大1,070万人の医療福祉従事者が必要になると発表されており、今後は健康寿命の延伸等の組合せと合わせて医療福祉現場の生産性を上げることが重要課題となっています。
一方で、新型コロナウイルスや物価上昇など、介護業界の経営に大きく影響する社会的要因も多く発生しており、政府としても適切な支援・早期対応を実現するため、3年に1度の介護事業の経営実態調査を補完する目的で、介護サービス事業者の経営情報を収集・データーベース化を図ることとなりました。

制度改正後は、介護事業者は財務諸表を定期的に各都道府県へ提出し、そのデータを、国がデータベース上で管理することになります。収集した情報は、国民に分かりやすくなるよう、属性などに応じてグルーピングした分析結果で公表する方法が模索されています。

介護分野の最近の動向について

出典:厚生労働省 老健局 PDF「介護分野の最近の動向について

公開方法は、2023年12月現在まだ公表されていませんが、従来の社会福祉法人の財務諸表では 財務諸表等電子開示システムが利用されており、これに準じる方法が充てられると予想されています。

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提出を求められている財務諸表と作成時の注意点

提出が必要となる財務諸表は、通常税務署に提出している決算書のことではなく、介護サービスごと、拠点ごとの損益計算書等となっています。つまり、介護保険法に基づく「指定居宅サービス等の事業の人員、設備および運営に関する基準」をはじめ、多くの介護事業の運営基準に規定された「会計の区分」に従って個別に作成したものになります。

(会計の区分)
第三十八条
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに経理を区分するとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならない。

出典:e-Gov「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

そもそも介護会計は「特別会計」にあたるため、介護福祉事業以外にも事業を行っている場合は、介護福祉事業は特別会計で、その他の事業は普通会計で経理業務を行わなければなりません。その上、今回の改正により、サービス・拠点ごとに損益計算書等を作成できるような仕組みも必要になります。
例えば、訪問介護、居宅介護支援、デイサービスを2拠点で運営し、かつ介護福祉関係でない事業も行っている場合は、次のように会計を5つに分けて管理することになります。

分けて管理

また、厚生労働省の「介護保険の給付対象事業における会計の区分について」(厚生労働省老健局振興課長通知)では、それぞれの法人等に適用される会計基準等を基本としつつ、それとは別に「会計処理の段階で事業ごとに区分が必要と想定される科目の按分方法を示し、これに基づく按分を行うことで運営基準を満たすこととする」と示されています。
介護業界では、運営基準を満たすための会計処理方法として主に次の4つの方式が使われていますが、どの方式を用いるにせよ、収入だけでなく水道光熱費やガソリン代等、介護材料等の経費や、スタッフの給与などもサービス・拠点ごとに管理しなければならず、共通経費などは自所で規定した按分基準に則って適切に各サービス・拠点に振り分けて計上する必要があります。

4つの方式

※方式の選択は任意ですが、事業規模が小さいほど③もしくは④、または③④の併用で会計処理を行うのが一般的です。

中小の介護事業者の場合、経理担当者を独自に雇用することが少なく、経営者自らが会計業務を担当していたり、会計事務所に記帳代行を依頼していたりするケースが少なくありません。会計処理方法や按分基準など、アウトソーシング先に介護会計の知見がなければ、後日自所内で資料を再び作成し直さなければならない可能性が高くなるため、状況に応じて委託先の再検討も必要となります。
公表する財務諸表において、虚偽の報告を行った場合は指定の取り消しもあり得るため、今回の公表義務化を機に、現在行っている会計処理について早急に確認・見直しを行うことが望ましいでしょう。

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財務諸表公表に向けた対策は
多拠点展開への対応と配賦機能に優れた管理会計システムで!

介護会計では、介護報酬がどの介護サービスから発生し、返戻がいくらあるか等も管理する必要があります。そのため、拠点ごと・介護サービス別に区分し、どの事業で発生したのか区別できない費目も合理的な按分基準に基づいて経理を行うのが基本となっています。事務的経費などの共通経費も、介護福祉事業と他の事業とで明確に按分する必要があります。

すでにこの方法で適切に会計業務を行っている場合は、サービス・拠点ごとの財務諸表の作成も簡単にできる可能性が高いと考えられます。しかし、どこまで厳密に管理会計が行われているかによっては、現状の業務内容を見直す必要もあるでしょう。また、例えば共通費以外でサービス・拠点ごとに発生した会計処理は自所内で行えるようにするなど、経理業務のプロセスを見直すことで、本部の経理担当者の按分する手間を軽減することもできるでしょう。

市場には専用の会計ソフトも多く提供されていますが、勘定奉行クラウドのように汎用性が高く、緻密な部門設定や按分設定ができる会計システムも、法令に則った財務諸表を作成することができます。
介護会計は一般企業の会計に比べて特殊な勘定科目が多くなりますが、勘定奉行クラウドでも勘定科目は任意で変更・追加することができ、部門登録で介護サービスや拠点を設定するだけで、部門別に試算表を集計・出力することができます。
クラウドサービスで提供しているため、各拠点にライセンスを追加すれば、各拠点からアクセスして日次の仕訳入力業務の分業もしやすく、仕訳入力時に部門コードを用いて入力すれば、本部は結果を確認することで簡単に会計処理をまとめることが可能です。

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共通経費は、月次決算時に按分すれば各部門の損益計算書にも反映されます。部門の人数や売上実績など、様々な配賦基準に基づいて部門共通費を配賦できるため、介護会計の按分基準の中で一番多く利用されている「延利用者数割合」で設定することもでき、手間を掛けずにサービス・拠点ごとに共通費を配賦できます。

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また、勘定奉行クラウド[個別原価管理編]では、労務費の配賦も自動処理できるため、給与システムや勤怠管理システムで管理されている情報をインポートすれば、労務費計上まで瞬時に完了することができます。

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さらに、勘定奉行クラウドには税理士等の専門家が利用できるライセンスがひとつ無償提供されるため、申告前の税理士等との連携もスムーズです。事業規模によってグレードアップもしやすく、難易度が高いとされる会計処理方式に切り替えたり、事業拡大に伴いグループ経営を行ったりする場合にも、システムを入れ替える必要がありません。

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おわりに

日々の業務に加えて、サービス・拠点ごとの損益計算書を作成・提出しなければならなくなると、経理担当者の負担は相当なものになるでしょう。
しかし、勘定奉行クラウドのように汎用性が高く、拠点対応にも長けている会計システムを利用すれば、専用の会計システムでなくても、業務効率化の推進を図れます。
また、今回の改正に対応すると、サービス・拠点ごとに経営状況が見える化できます。勘定奉行クラウドのように、柔軟な切り口で多角的に分析する会計システムなら、経営の厳しい事業に対する経営の立て直しにも役立てられます。
介護事業は、今後、より社会的信頼性が問われる事業になります。今回の財務諸表の公表義務化を機に、介護事業の経理業務のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。

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