【メンタルヘルス・ストレスチェック連載コラム第2回】ストレスチェック制度|義務化の対象や実施方法など総務・人事担当者の疑問を徹底解説!

このエントリーをはてなブックマークに追加
ストレスチェック制度|義務化の対象や実施方法など総務・人事担当者の疑問を徹底解説

ストレスチェックは、「ストレスチェック制度」により50人以上の従業員を抱える企業に義務づけられているものです。
しかし、実施するに当たってはいろいろと準備も大変なようで、OBC「奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウド」で協力いただいているメディカルトラスト社にも2年間で1,000件を超える質問が寄せられているそうです。
今回は、OBC「奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウド」で提携していただいている「株式会社メディカルトラスト」の本山武志さんに、ストレスチェックを実施するにあたり「企業はどういったところでつまずきやすいか」ついて伺ってみました。

インタビュー:本山武志さん

株式会社メディカルトラスト 産業保健事業部 業務支援チーム・リーダー。
OBC「奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウド」の開発にも携わり、ストレスチェックをはじめとするメンタルヘルスケアのサポート業務に従事。相談センターとして対応するメンバーを率い、利用者からの問い合わせや相談、専門医の紹介など、OBCと連携して企業のメンタルヘルスケアを多角的にサポートする。
株式会社メディカルトラスト ホームページ:http://www.medical-tt.co.jp

ストレスチェックの対象者は「健康保険証の発行」を目安に

- ストレスチェックを実施する上で、よくある質問にはどんなものがありますか?

(本山武志さん)
一番多いのは、「対象者は?」という質問ですね。
基本的には「週の4分の3以上勤務して、1年以上の更新が見込まれ」かつ「ストレスチェック受検期間中に在籍している」人が該当します。目安としては、健康保険証を発行している労働者は基本的に対象者になります。

最近は特に「入社後何カ月経ったら受検させるべきか」という質問が目立ちますが、実は、この部分については規定がありません。中途採用者ですと、入社後すぐの受検で高ストレスと判定しても、その原因が自社なのか前職なのか特定しがたいためです。ですから労基署の方でも、「試用期間あけに実施する」「入社後6ヶ月後」などと社内ルールで取り決めて、それに従うのでよいと判断しています。

対象者でトラブルになりやすいのが、派遣社員の扱いです。法的に受検させる義務を負うのは派遣元の企業ですが、派遣先でも実施することが望ましい、とガイドラインにも記されています。
ただ、ストレスチェックの後には、産業医の面接も付随します。派遣先で受検した結果、その派遣社員が面接を希望した場合、「費用を派遣先と派遣元どちらが持つべきか」という論争になることがあるのです。この場合は、原則として派遣元が費用を持ちますが、原因が派遣先にある場合は派遣先で持つこともあるので、一概ではありません。

また、出向社員についても問い合わせがよくあります。
出向先が海外ですと、この制度が及びませんので対象外になります。ただ、これは「規程に沿うなら」という話なので、「心配だからストレスチェックを受けてもらいたい」という企業側の思いを制約するものではありません。厳密に「実施しない」と強いるものではないので、社内ルールに任せられているところもあります。

ストレスチェックの実施・運用には「社内ルール」が重要に!

- 他には、どんな問い合わせがありますか?

「ストレスチェックをしたが、その後はどうしたら」という質問も多いですね。
ストレスチェック制度には法律に沿ったガイドラインがあり、厚生労働省からも「ストレスチェック制度導入ガイド」というガイドブックが出ていますが、対象者の範囲でもお話したように事業内容によって様々なケースが想定されますので、事細かに定義はされていません。
そこで、重要になるのが社内ルールです。あらかじめ自社内で運用のルールを決めておき、基本的にはガイドラインに沿って行い、ガイドラインでカバーできない部分は社内運用ルールに従う・・・というように考えてもらうと分かりやすいのではないでしょうか。

ただし、そのルールは従業員へ周知しておかなければなりません。
周知の方法としては大きく3つあります。1つは「ストレスチェックの実施規程に記載すること」、2つめは「安全衛生委員会で周知すること」、そして3つめが「安全衛生委員会の土台となる労働安全衛生規程に盛り込むこと」です。安全衛生委員会の議事録に記載された事項は、実施規程への記載と同等の効力がありますから、安全衛生委員会で話し合うのは大事ですね。
実施規程や議事録は社内ネットワークで共有するなどして、全従業員が分かりやすく、アクセスしやすい方法で閲覧できるようにする必要があります。OBCの「奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウド」には、こうした基本の流れを作成できるテンプレートがありますから、このようなシステムを活用してルール作成を行うものよいでしょうね。

最適なメンタルヘルスケア体制のために考えるべきことは

- ストレスチェックを実施するにあたり、総務・人事担当者が注意すべきことはありますか?

前提として、ストレスチェックの結果は、個人情報のなかでも特に機微なものだということ、チェックの目的は職場環境改善のためだということを、しっかり把握しておいてほしいですね。
ストレスの高さを理由に、個人や組織に対して降格や減給といった不利益な処置をすること、組織のストレス値を上げている個人を突き止めようとする行為は、法的に禁止されているため論外です。
ストレスチェックは、あくまで従業員が自身のコンディションに気づき、企業側で環境改善につなげることが目的ですので、病気探しや診療ツールではありません。
企業においては、ストレスチェックを実施して、集団分析・組織分析のレポートから、ストレス値の低い部署はどうして低いのか、職場環境のよいところを探して他部署に落とし込むことが重要になります。前向きな環境改善を目的にしているのだと認識した上で、実施と分析に当たってもらいたいですね。

- ほかに、総務・人事担当者が注意すべきことはありますか?

実施事務従事者は、実施者である産業医などを補助し実務をする人ですが、「昇給・昇格・異動・解雇など人事に関わる人が実施事務従事者になってはいけない」という決まりになっています。
ストレスチェックを受ける従業員の視点に立てば分かりますが、総務・人事担当者がストレスチェックの窓口だと、「面接を申し込んだら評価を下げられてしまうのでは」と不安になりますよね。実施事務従事者が人事権を持つ場合やその監視下にある人間である場合、たとえ産業医の面接を希望していても申出が出来なくなります。
ストレスチェックを正当に評価するためにも、人事に一切関わらない、あるいは、その影響下にない人間を選任するのが望ましいでしょう。
現実的に難しい場合、チェックを行う人間と「面接を受けてください」と声をかける窓口担当を分ける方法もあります。ただしこの場合も、窓口担当者に人事権があってはその効果が期待できませんので、注意していただきたいです。

- 10~11月にストレスチェックを実施する企業が多いそうですが、実施時期は決まっていますか?

10~11月は、受ける側も受けさせる側も繁忙期であるケースが見受けられます。だからこそ、この時期に行うことで企業にとっての課題がわかる・・・という考え方もあります。しかし、ストレスチェックを実施して、高ストレス、さらには面接指導の対象となった場合は必ずセットで面接の申出を募ります。あまりに多忙だと、ストレスチェックを受ける時間を割くために本来の業務をやりくりせねばならない・・・という負荷がかかるかもしれません。
また、この時期にストレスチェックを受けると、結果の到着が年末にかかり、面接受付は年明け以降になることも考えられます。受けた従業員側は仕事納め前後に「あなたはストレスが高いです」と知らされ、そのままモヤモヤとした気持ちを抱えながらお正月休みに入らざるを得なくなります。
制度が導入された初年度こそ「12月1日から翌年11月30日の間に実施」という期限がありましたが、2年目以降は1年に一度行えばよいとなっています。実施報告についての期限もないので、企業の業務内容を勘案して、「行事」として年間スケジュールに入れるといった工夫があってもいいですね。

- 新たに体制を整えてやっていこうとする場合、どのくらいの費用を見込んでおけばいいでしょうか?

ストレスチェックを行うのに有料システムを利用する場合は、システム料金がかかりますね。その他には、産業医、看護師・保健師などの産業保健の専門家、必要に応じてコンサルタント・・・などの費用も必要です。

メンタルヘルス対策予算は、いわば損害保険料のようなものです。利益を生むわけではなく、福利厚生にもあたりません。5~10年スパンで見ていかないと効果はわからない、しかも、あくまで“予防”のための対策ですから、「起こるかどうかわからない将来の事故に対してコストをかけたくない」「対策を講じるにしても最小限の額にしたい」と考えられている方がいらっしゃるのもよく分かります。
しかし、1人でも休職者が出た場合の経済的損失は、対策予算の比ではありません。営業利益の中で月20万円、30万円とメンタルヘルスケアに経費がかかっても、1人の従業員が例えば月50万の利益を生み出していればどうでしょうか。その年間利益が失われること、訴訟問題にまで発展しかねないことを考えると、充分ペイできる経費ではないかと思います。
費用の見込については、総務・人事担当者、もっと言うなら経営者が「メンタルヘルス対策にかかる目先の20~50万円をどう解釈するか」にかかっていると言えます。
ダイヤモンドは、その価値が分かっているから磨いて美しくしようとします。今やストレスチェックや産業保健、メンタルヘルスケアの分野は、企業にとっての“ダイヤモンド”です。低コストにこだわらず、自社にとって最適な体制づくりを検討した上で判断してほしいと思います。

ストレスをそのまま放置しない、“点”ではなく“面”の体制づくりを

- ストレスチェック通して企業がメンタルヘルスケアに取り組むにあたり、一番の問題点は何だと思われますか?

ストレスチェックの後、面接や産業医らのサポートを受けることがメンタルヘルスケアには重要ですが、面接を希望する人が想定以上に少ないようです。
高ストレス者のうち約10%は面接対象者であるとされています。実際は、面接を受けたほうがよい人はもっと多いこともありますが、しかしその中で実際に面接を受ける人の割合は、全受検者のうちたった0.6%という結果報告もあります。
ストレスチェックの結果は、本人の同意なく企業に開示されることはありませんが、従業員が産業医の面接を申し出るということは、企業にストレスの高さを開示することにもなります。「人事への影響はない」ことを充分認識されていないと、不安が拭いきれず面接へのハードルが高くなってしまいます。それでは結局、ストレスチェックも“点”でしか活用されなくなります。

これは事業者の課題でもありますが、人事には影響しないことをストレスチェック実施前にしっかりアナウンスすれば心理的ハードルは下がるので、多少は安心して面接を受けられる環境になっていくかと思われます。従業員が安心できる要素をまず提示してあげないと、せっかくのデータが活用できませんし、従業員のケアも進んでいきません。

もちろん、中には面接希望率が高い企業もあります。その要因には、産業医が定期的に職場を巡回していることが挙げられます。産業医のプロフィール等を回覧した上で巡視してもらうと、労働者は産業医の顔を覚えていきますから、いざ不調が起きた時もすぐに産業医に声をかけ、面接などへとスムーズに移行できるというわけです。
せっかく資源が備わっているのに充分活かされていないのであれば、その存在をしっかり認知させ、企業、従業員ともに「チーム産業保健」を活用するイメージをつけていくのが適切でしょう。
すぐ相談できる専門家として産業医を用意することは、企業の果たすべき役割です。ストレスチェックの実施だけでなく、「チーム産業保健」の周知・運用も含め“面”としての体制が必要なのです。

専門家へのインタビューを終えて・・・

ストレスチェックは単なる“義務”ではありません。
メディカルトラスト社の本山さんも、「年間業務として捉えていただければ、ストレスチェックを能動的に受けていただける、企業側も能動的に実施できる、受検率が上がる、受検率が上がれば組織分析の精度も上がる、サンプルも増える、より詳細な分析ができる、そしてそれが職場環境改善に繋がりやすい・・・と、よい相乗効果が広がります」と語っています。
しかし現実に目を向けると、全てを自社内で準備し運用するのは難しい側面もあります。産業医の選任は必須となりますし、組織分析を行うことで職場環境改善に繋がりますが、それにかかる労力も考慮しなければなりません。
そうした中で、自社のメンタルヘルスケア体制を整えるために適切なサポートが受けられる“社外資源”の導入を検討することも、ひとつの手段ではないでしょうか。

例えば、ストレスチェックサービスを提供するシステムは巷に数多くありますが、OBCの「奉行Edgeメンタルヘルスケアクラウド」は、スタンダードコースとプロフェッショナルコースをご用意しています。ストレスチェックの実施フォローはもちろん、プロフェッショナルコースでは専門医の判定から、実施や規定に関する相談、組織分析レポートまで、システムを介してメディカルトラスト社から意見を聞くことができるようになっています。

メンタルヘルスケアの取り組みは、ストレスチェックや分析、面接といった各項目を点で捉えず、それらを線でつなぎ、“チーム産業保健”という面で支える仕組みを作れるかどうかにかかっています。自社の安全配慮義務徹底のためにも、「面で捉えた仕組み」で従業員の心身の健康保全に取り組んでいきましょう。

関連リンク

こちらの記事もおすすめ