

2024年3月に東証グロース市場へIPOを果たした株式会社ハッチ・ワーク。IPO準備に伴う業務効率化と情報共有の強化を目的に勘定奉行クラウドを導入し、月次決算を10日から5日に短縮。さらに「IPO Forum」を活用して専門家ネットワークを広げ、監査法人の選定などIPO準備を着実に進めました。本コラムでは、その取り組みを牽引したお二人にお話を伺いました。
この記事でわかること
- オンプレミス型会計システムで顕在化した課題
- 他社システムから「勘定奉行」へ切り替えた理由
- オンプレミス環境からクラウドへ移行して得られたメリット
- IPO支援の専門家ネットワーク「IPO Forum」との出会いがもたらした効果
月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」や貸会議室「アットビジネスセンター」を展開する株式会社ハッチ・ワーク。同社はIPO準備に向けて「勘定奉行」のオンプレミス版を導入していましたが、システムへアクセスするには出社が必要なうえ、自社でサーバーを管理しなければならない点に課題を抱えていました。加えて、IPO特有の課題を相談できる専門家とのネットワークや、実務に関する知見の確保を必要としていました。
こうした課題に対応するため導入したのが、「勘定奉行クラウド」です。場所を選ばずにシステムへアクセスし、税理士とリアルタイムで情報を共有できる環境が整ったことで、月次決算にかかる日数を10日から5日に短縮。さらに、「IPO Forum(※)」を通じて専門家とのネットワークを広げ、監査法人の決定などIPO準備を着実に進めることができました。今回は、同社のIPO準備を牽引した取締役兼CFOの竹内 聡様と、管理部執行役員の瀬下 修平様にお話を伺いました。
IPO Forumとは
IPOを目指す経営者や企業をワンストップで支援する、IPOの専門家によるネットワーク組織。2014年に勘定奉行を提供するオービックビジネスコンサルタントが中心となって発足し、事業計画書の作成や内部統制の構築など、IPO準備に必要な実務支援を幅広く提供している。
また、IPO審査の最新動向を解説する「IPO Forum」を半年に一度開催するほか、資本政策や労務管理など、IPOに欠かせないテーマを取り上げる「IPO塾」を年間を通じて実施。各分野の専門家であるメンバーが執筆するコラムも高い評価を得ている。
【関連コラム】
【IPO Forumネットワークメンバー】
宝印刷株式会社 / 株式会社タスク / あいわ税理士法人 / TMI総合法律事務所 / アイ社会保険労務士法人 / 株式会社オロ / イシン株式会社 / 株式会社サーキュレーション / 株式会社プロネット / 株式会社オービックビジネスコンサルタント
<奉行クラウド導入前およびIPO Forum活用前の課題>
- システムを利用するためだけに出社する必要があり、時間や場所の制約があった
- 自社サーバーの管理・保守に業務負荷がかかり、セキュリティ面にも懸念があった
- IPO準備に向けて、新規のIPO監査を受け入れてくれる監査法人の選定が難航していた
<奉行クラウド導入後およびIPO Forum活用後の効果>
- 場所を選ばずアクセス可能になり、税理士ともリアルタイムでデータ共有できるようになった
- 自社でのサーバー管理・保守が不要になり、管理負担とセキュリティ面の懸念が軽減された
- 業務効率化により月次決算にかかる日数が10日から5日に半減した
- 「IPO Forum」への参加により専門家との繋がりができ、監査法人の決定などがスムーズに進んだ
【会社情報】
企業名:株式会社ハッチ・ワーク
設立:2000年6月26日
社員数:190名 ※2025年12月末時点
市場:東京証券取引所 グロース市場(証券コード 148A)
上場日:2024年3月26日
事業内容:月極駐車場の申込・契約・決済・管理業務をデジタル化する「アットパーキングクラウド」を中心とした月極イノベーション事業と、貸会議室「アットビジネスセンター」や会議室シェア、コミュニティオフィスを展開するビルディングイノベーション事業を提供している。テクノロジーと空間活用を通じて、不動産領域の業務効率化と利用価値の向上を支援する企業。
【インタビュイー紹介】
取締役CFO 竹内 聡 様
2018年に取締役兼CFO兼管理部長として入社し、同社のIPO準備を主導。税理士としての知見も活かしながらプロジェクトを牽引し、2024年3月のIPO達成に大きく貢献した。現在は取締役兼CFOとして全社の財務戦略を担う。
執行役員 管理部長 瀬下 修平 様
2004年に入社し、IPO準備にあたっては公開準備室長としてIPO準備実務を主導。現在は人事、総務、経理、財務、法務といった管理部門全体を統括。竹内様から管理部長の役割を引き継ぎ、実務の最前線からIPO準備や上場後の組織基盤づくりを支える。
目次
1.事業成長とIPO準備を支える会計基盤。オンプレミス型システムで顕在化した課題
-御社の事業内容についてお聞かせください。
竹内様)当社は、主に2つの事業を展開しています。1つ目は、月極駐車場に特化したオンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」を中心とした月極イノベーション事業です。月極駐車場の管理会社様と利用者様をつなぎ、契約や管理業務のDXを支援しています。
2つ目は、オフィスビルの空室にテクノロジーやオペレーションの力で新たな価値を生み出すビルディングイノベーション事業です。貸会議室「アットビジネスセンター」など、現在19カ所を運営しています。
-IPO準備に向けて、会計システムにはどのような要件がありましたか?
竹内様)通常の会計業務とIPO準備では、会計システムに求められる要件が大きく異なります。IPO審査に対応するには、厳格な仕訳承認の仕組みや、内部統制を担保する精度の高さ、事業拡大を見据えた拡張性が欠かせません。
こうした要件に対応できる会計基盤を整えるため、私自身はまだ当社へ参画前でしたが、IPO準備を本格化させた2017年に「勘定奉行」のオンプレミス版を導入しました。
-その後、「勘定奉行」のオンプレミス版からクラウド版へ移行した背景を教えてください。
瀬下様)大きな課題は、会計業務を行うために出社が必要だったことです。2020年からのコロナ禍を受け、全社的にリモートワークへの対応が求められました。しかし、当時のオンプレミス環境では、システムへアクセスするために経理担当者が出社しなければなりませんでした。
さらに、自社でサーバーを管理・運用する負荷も生じていたため、場所を選ばずに業務を行え、管理負担も軽減できるクラウド環境への移行を進めました。
2.証券会社・監査法人からの高い信頼性と、法改正への迅速な対応が選定の決め手に
-他社システムから「勘定奉行」へ切り替える際、最大の決め手となったのは何でしょうか?
竹内様)証券会社や監査法人から、高い信頼を得ているシステムであることです。IPO準備では、会計システムの信頼性や内部統制の有効性が厳しく問われます。「勘定奉行」は、多くの上場企業で利用されており、証券会社や監査法人にも安心して受け入れてもらえることが、選定における基準の1つになりました。
-IPO審査に対応できるシステムとして、具体的にどのような点を評価されましたか?
竹内様)内部統制上、適切な設定を確実に行える仕様を評価しました。「勘定奉行」では承認後の仕訳を編集できないよう設定できるほか、修正が必要な場合も修正内容や履歴を残しながら対応できます。
瀬下様)上場企業に求められる機能が十分に備わっている点も、高く評価しました。入力・承認・閲覧・内部監査といった役割に応じて権限を設定でき、誰が仕訳を入力・削除したのかという操作履歴もすべてログに残ります。内部統制を整備し、監査法人を受け入れる体制を構築するうえで、欠かせない機能でした。
「勘定奉行」はこうした内部統制上の要件を満たす仕様となっており、多くの上場企業で利用されています。監査法人側もそうした実績や仕様を理解しているため、会計システムそのものが論点になることはありませんでした。
-その後、クラウド版へ移行する際に、導入を後押しした要因はありましたか?
瀬下様)法改正に伴うアップデートの迅速さと、「SOC1® Type2」「SOC2® Type2」を取得している点です。税制などが改正された際、クラウド版ではシステム側で速やかにアップデートが適用されるため、自社で更新作業を行う負担を軽減できます。
クラウドサービス事業者の内部統制について第三者の保証を受けたことを示す、SOC報告書を入手できる点も重要な決め手でした。オンプレミス環境のときのように自社だけでサーバーを管理し、強固なセキュリティ体制を維持するには大きな負担がかかります。第三者による保証を受けたクラウド版へ移行することで、自社でサーバーを管理する必要がなくなり、セキュリティ面でも安心して利用できる環境を整えられました。
【関連コラム】
3.月次決算を10日から5日に短縮。税理士とのリアルタイムな情報共有で業務を効率化
-「勘定奉行iクラウド」への移行により、経理・決算業務ではどのような成果が得られましたか?
瀬下様)月次決算にかかる日数を半減させ、決算の早期化が実現できました。
以前は月次決算の完了までに10日程度かかっていましたが、現在は5日で完了しています。クラウド環境への移行により、場所を選ばずシステムへアクセスし、決算業務を進められるようになりました。社内ワークフローとの連携もスムーズです。
-外部の専門家との連携やデータのやり取りには、どのような変化がありましたか?
瀬下様)税理士とのデータ共有や、確認作業が円滑になりました。現在は専門家向けのアカウントを発行し、直接システムへアクセスしていただいています。
同じシステムの画面をリアルタイムで確認しながらやり取りできるため、データを抽出して送付する作業が不要になりました。情報共有が迅速になり、外部の専門家との連携にかかる業務負荷も軽減されています。
-業務体制の継続性という観点では、どのようなメリットを感じていますか?
瀬下様)不測の事態が発生しても、月次決算を継続できる業務体制を整えられたことです。クラウド環境への移行により、経理担当者が出社しなくてもシステムへアクセスし、通常通り業務を進められるようになりました。
コロナ禍のように出社が難しい状況でも、経理・決算業務を滞りなく継続できます。時間や場所を問わず決算業務を完遂できる環境を構築できたことは、事業継続性の観点からも大きなメリットだと実感しています。
4.迅速なサポートと専門家ネットワークがIPOを後押し。決算の早期化や内部統制を目指す企業に最適
-導入後のサポート体制をどのように評価されていますか?
瀬下様)迅速かつ丁寧で的確なサポートを受けられる点を高く評価しています。
電話では、一次対応の窓口担当者が問い合わせ内容を正確に把握してくださり、疑問点を押さえた回答も的確です。メールへの返信も速く、円滑に問題を解決して業務を継続できるため、サポート体制の充実を実感しています。
-「IPO Forum」への参加により、どのようなメリットが得られましたか?
竹内様)IPO準備に必要な実務知識を得られたことに加え、専門家とのネットワークが広がったことも大きなメリットです。
IPO準備を始めた2018年頃は、「監査法人難民」と呼ばれる企業が増えていた時期で、会計監査を引き受ける監査法人が限られていました。そのため、監査法人の選定はIPO準備における重要な課題であり、CFOである私にとっても主要な役割でした。そこで、IPO Forumを通じて広がった専門家とのネットワークから紹介を受け、監査法人の決定に至りました。

IPO Forumへ参加した主な目的は、IPO準備に必要な知識を得ることでした。登壇者は、会計・税務・労務・法務・資本政策など、IPO準備に必要な知識・サービスを提供するプロフェッショナルの方たちや上場企業のCFOなどです。IPO準備企業が直面する課題には共通点が多いため、具体的な課題や解決事例を聞くことで、自社に応用できる施策を検討できます。実際に、労務管理や残業時間の抑制に関する情報を持ち帰り、自社での対応を検討できたことにも大きな価値を感じています。
-2025年6月開催の「IPO Forum」では講師として登壇されたそうですね。どのような思いで知見を共有されたのでしょうか?
竹内様)実際のIPO審査で求められる水準と、実務担当者が想定する基準との隔たりを埋めたいと考え、登壇しました。
業務負荷を考慮すると、実務担当者は対応範囲を必要最小限に抑えたいと考えるのが自然です。しかし、実際の審査には、上場企業に求められる水準まで厳格に対応しなければなりません。
私自身がIPO審査を通じて得た知見や、労務管理の重要性などを共有することで、これから準備を進める皆様の一助になればと考えています。
-最後に、どのような課題を持つ企業に奉行クラウドとIPO Forumを推奨したいとお考えですか?
竹内様)IPO準備において、会計システムの選定に悩んでいる企業には、「勘定奉行クラウド」をおすすめします。IPO準備では、監査法人をはじめとするさまざまな関係者と連携し、会計監査・内部統制監査やIPO審査上の論点を一つひとつ減らしていくことが重要です。少なくとも会計システムについては、監査法人が安心できるものを選び、早期に検討を終えることが望ましいと考えています。
また、「IPO Forum」を通じて、IPOにかかわる企業や専門家とのつながりを得られることも大きなメリットです。IPO準備に必要な機能やサービスについて話を聞けるほか、他社が直面した課題や解決事例も学べます。当社もフォーラムの参加者を含む多くの方々から支援を受け、そのネットワークがIPOを推進する力になりました。実務的な知識を得ながら、IPOにかかわる方々とのつながりを広げられる有用な場だと考えています。
瀬下様)実務面では、月次決算の早期化やペーパーレス化を目指す企業、内部統制の整備を進める企業に推奨します。
利用者ごとの権限を詳細に設定でき、操作ログや変更履歴も残せるため、内部統制に必要な環境を整えられます。これから監査法人を受け入れる体制を構築したい実務担当者にとっては、非常に適したシステムです。
関連コラム
IPO Compassメルマガ登録はこちらから!








