スムーズに承認される「稟議書」の書き方 〜押さえておくべき5つのポイント〜

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日本では、大手企業から中小企業まで多くの企業が、物品の購入やサービスの導入を行う際「稟議書」を必要とします。複数の承認者を経て決裁権者で決裁されないと、手続きが前に進まず、何度も書き直す事態が発生するなど面倒極まりない作業にもなっており、ある種「日本企業の非効率な業務プロセス」を象徴するような制度とも言えるでしょう。

今回は、毎日業務に追われる中で、稟議書のみに時間を費やすことができない多忙な担当者のために、スムーズに承認される「伝わりやすい稟議書の書き方」を解説します。

しっかりと伝わる稟議書の書き方をマスターし、効率よく仕事をこなしていきましょう。

稟議書の意義とは

稟議書とは、その名前の通り「稟議をするための書類」です。
日本では、社内の総意として、複数の関係者の合意を得るためには会議を開く必要があります。社内で「必要」と思われる事案は、本来であれば「会議で承認を得る」という流れを取ります。しかし、会議を開くためには、全員のスケジュール調整など多くの手間がかかります。そこで、会議を開く手間を省くため、「稟議書」を作成して関係者に回覧し、全員の承認を得て許可とします。これが「稟議」の仕組みです。

もちろん海外であっても、社員が所属する部署で事案の承認を得るということは発生します。しかし、日本のように、複数の関係者(部門責任者など)から承認を得る、というスタイルではありません。「稟議書」は、「会議」という時間の無駄と手間を省くものであり、まさに日本独特の知恵ともいえるビジネス習慣なのです。

また、稟議書には「複数の関係者との情報共有」という役目もあります。稟議書の内容を確認することで、どの部署にその事案が関連し、どのような効果が期待できるのかが理解できるため、関連部署との連携も速やかになります。回覧の間に、各関連部署の見地による改善ポイントや、代替案など新たな意見も追記されていくため、より組織に貢献できる提案にグレードアップすることもできます。

しかし実際には、承認を得るために何度も書き直しを求められたり、順調に承認を得られなかったりと、稟議で起案をする担当者にとっては、やや面倒な手続きにもなっています。
特に、基幹システムやパソコン、IT関連機器といった設備投資の場合、必要とする費用も多額になるため、減価償却期間や導入効果、機会損失によるリスクなど、導入する「意義」をしっかり吟味されることになります。申請内容に不備があると、なかなか承認も下りにくく、「購入しないと仕事が進まないのに、稟議書が承認されるまでは仕事に手を付けられない」ということも起こります。
業務が滞るリスクを避けるためにも、できるだけ早く許可が下りるよう、ポイントをしっかり押さえた稟議書にまとめることが重要なのです。

稟議書で押さえておくべき5つのポイント

稟議書は、社内で決められた様式がある場合も多いですが、様式がないときはインターネット上にある無料のテンプレートなどを利用することもできます。

稟議書で必ず記載が必要になるのは、以下のような項目があります。

  • 決裁区分(「可決」「秘訣」「条件付き認可」「保留」「差戻し」など最終判断内容が分かる項目)
  • 決済日・申請日
  • 件名
  • 承認欄(決裁者や承認者の氏名、所属部門など関係者がサインできる欄)
  • 発注先・契約先(契約や購入先がある場合に記載)
  • 稟議事項
  • 金額
  • 効果

テンプレートによっては異なる区分になっていることもありますが、書くべき内容は原則同じです。一通り書き終えたら、必要な項目が漏れていないか必ずチェックしましょう。

中でも、「稟議事項」「金額」「効果」の項目は稟議書の“要”となる部分です。たとえ「この製品が絶対いい」と決めていても、論理的にその製品が「どうしても必要」であることを説明できなければ承認されません。現状がどのように変化するのか、必要性をしっかり説明できるようにしましょう。

決裁権者や承認者を納得させるためには、次の5つのポイントが網羅されていることが肝心です。

  1. 実行の目的や目標
  2. 申請理由や背景
  3. 承認してほしい契約内容
  4. 得られるメリットやリターン
  5. 想定されるリスクやデメリット

特に、稟議書を提出しても却下される大半の理由は「背景や理由の説明不足」にあります。決裁権者や承認者は「現場の事情を全く知らない」場合がほとんどで、直属の上司くらい身近でないと現在取り組んでいる仕事内容のことなどは全く把握していないこともあります。そのため、「承知しているはず」という前提で書くと、説明不足と捉えられ却下される可能性もあります。
なぜ、その物品やサービスを購入しなければならないのか、稟議の背景を最大限わかりやすく記述し、「知らない人でも分かるレベル」にまとめることが重要です。

また、稟議内容を補填するためには、メリットやリターンについても客観的かつ論理的に説明する必要があります。例えば、業務時間の削減、費用の削減などの直接的効果や、顧客・従業員の満足度といった間接的効果なども有効です。その他「投資額の回収予定期間」や将来的な効果にも触れておくとよいでしょう。
効果は、可能な限り数値化(定量)しておきましょう。漠然とした文言で説明するより、数値で示せるほうがより効果を具体的に理解できます。数値化しづらい感覚的な評価も、「○人のうち△%」という風に、なるべく数字に置き換えて表現するとよいでしょう。キャッシュフローの流れが見えるものも好まれるため、財務的な影響を可視化した資料(ビジネスケース)などを添付するのも効果的です。その際、ステークホルダー(対象者)も明らかにすると、稟議の重要性はさらに高まります。
さらに、実行にあたって予想されるリスクやデメリットなども、隠さずに明示しておきます。経営層など承認者が抱く疑問の中には、「購入しなければどんな問題・損失が起こるのか」「案件を承認したことで起こり得るリスクは何か、それは回避できるのか」というものもあります。そうした疑問に対して先回りして回答しておくことで、承認者も納得しやすくなります。

特定の契約したい商品がある場合は、具体的な契約対象商品(システム)や販売元、契約内容、費用等も明示しておきましょう。
特に、システム導入の場合、選定理由を示すことで他商品との優位性や選んだ製品の正当性を証明することにもつながります。ただし、製品の機能はカタログや見積書を添付するに留め、詳細に説明する必要はありません。
費用は、初期費用だけでなくランニングコストも明確に記載しておきましょう。期初にIT経費の年間予算を組んでいる場合、予算範囲内であれば定義上「年初に承認済み」となるため、金額と執行内容が「年初の予算計画に準じているか」を確認するだけでよくなります。

「年初計画通りである」ことを強調することで、「承認しても問題ない」案件であることを伝えるようにしましょう。

稟議書の承認・決裁をスピードアップさせる4つのコツ

稟議書は、なるべくスムーズに決裁をとりたいものです。できるだけ「最短」で「労力をかけず」かつ「確実に」承認を得るためには、書き方のテクニックも必要です。
ここでは、起案から決裁までのスピードを上げる4つのコツをご紹介します。

1.ダラダラと記述し、まとまりのない文章にしない

詳しく説明しようとして、ダラダラとまとまりなく長文を書いてしまう場合があります。こうした文章は、読みにくくなるため、補足説明を求められたり「意味がさっぱり理解できない」と差し戻されたりしてしまうことがあります。
稟議書では、一瞥して理解できるよう明確な短い文章が好まれます。箇条書きやナンバリングなど、見せ方にも工夫を加え、何を伝えたいのか簡潔にまとめるようにしましょう。

2.相手に対して分かりやすい言葉で書く

稟議書を書く際は、専門用語を避けた「相手目線」の文章を心がけることが大切です。例えば、「オンプレミス」や「ページビュー」などのIT用語も、ITが苦手な管理者には伝わらないケースも多く見られます。簡単な注釈を付けたり平易な言葉に置き換えたりして、読みやすさに配慮しましょう。

3.不要なデータを掲載しない

稟議書を書くために、様々な情報を収集することになります。しかし、闇雲に集めた情報を全て掲載すると、却って読みにくく、「論点が不明瞭」という印象を与えてしまうことにもなります。
稟議書には、「これだけ情報を集めてこの稟議を上げている」という主張は不要です。説明に使用する情報の提示は必要最小限に留め、説得力のある情報だけを伝えることが大切です。

4.事前に根回しをしておく

実は、「決裁権者や承認者に、事前に根回しすること」も稟議書を通す上で最も大切なポイントです。
自分が聞いていない案件がいきなり稟議書で回ってくると、「何かリスクがあるに違いない」と警戒される可能性があります。そこで、「事前に根回し」をしておくのです。
「根回し」といっても、難しく考える必要はありません。稟議書を回覧する決裁権者や承認者に、回覧前に内容を耳に入れておくのです。例えば、「こういう内容の稟議書を出します。これでこの問題がすぐ解決するので早めに承認をお願いします」と口頭で伝えるだけでも構いません。この一言が伝わっているだけで「事前に聞いていたとおりだ」となり、警戒心が和らぎます。
また、問題点を指摘されるなどがあったとしても、該当箇所を修正または加筆することで、「自分の意見も盛り込まれている」と承認されやすくなります。
承認・決裁までには相応の時間と労力がかかりやすいので、関係者への根回しによって成功率を高めておくとよいでしょう。

おわりに

稟議書は、起案者から上層部・関係者への「プレゼン」でもあります。稟議書が分かりやすくまとまっていれば、承認も得やすく起案も実現しやすくなります。
ぜひこの書き方のコツを参考に、より効率的に、少ない労力で確実に稟議決裁とり、自社の成長スピードアップにも役立ててください。

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