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ストレスチェックの集団分析とは?その有効性と活用のコツを解説

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ストレスチェック制度が2015年にスタートして以来、義務化の対象となった企業ではすでに実施率がほぼ100%に達しています。ストレスチェックで企業が注意すべきことは、その「結果」です。しかし、結果をしっかり分析し職場改善に活用している企業は、まだ7割程度に留まっています。(厚生労働省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)結果」より)
プライバシーに関わる部分を把握することはできなくても、集団分析を使えば職場ごとにストレス軽減のための対策を講じることができるのです。
今回は、ストレスチェックの集団分析を紐解き、職場改善に上手く活用するためのコツをご紹介します。

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目次

ストレスチェックの集団分析とは?

ストレスチェックにおける「集団分析」とは、正確には「集団ごとの集計・分析」のことを言います。

そもそもストレスチェックを実施することには、「従業員自身にストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に予防すること」と「職場環境を改善すること」の2つの大きな目的があります。
集団分析を行うと、部署ごとの業務負荷状況や、集団のストレスの傾向を把握できます。個人に対するストレスチェックの結果を、事業部や似たような職務・環境単位で合計し、集団ごとにストレスの特徴と傾向を分析します。これにより、業務量や人員の調整、業務手順の見直しなど、対策を検討する際に役立てることができるのです。

ストレスチェック制度の流れ図
出典:厚生労働省「こころの耳」ホームページ掲載
「ストレスチェック制度を利用した職場環境改善スタートのための手引き」より引用より

集団分析は、その集団でのストレスチェック受検者が10人以上いれば、分析ができます。ただし、10人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあるため、原則として労働者全員の同意がない限り、集計・分析結果が企業に開示されることはありません。
集団分析に必要な「集団」は、企業側であらかじめ調整することができますので、10人を下回る部署の場合は、同じ部門の他部署と合わせるなどして行いましょう。

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集団分析はどうやる?

厚生労働省が公開している「労働安全衛生法に基づくストレスチェック方法実施マニュアル(平成28年4月改訂)」によると、集団分析は「使用する調査票(ストレスチェック項目)により異なる」とされていますが、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)または簡略版(23項目)を使用する場合、「職業性ストレス簡易調査票」に関して公開されている「仕事のストレス判定図」を利用することができます。

「仕事のストレス判定図」では、以下の2つの判定図から「仕事の量的負担」「コントロール」「上司支援」「同僚支援」の4つの尺度の得点を計算し、集団の平均値と標準集団(全国平均)を比較して、その集団におけるストレスの大きさや健康への影響を判定します。

[量―コントロール判定図]

仕事の量的負担と、仕事のコントロール(仕事の裁量権)を尺度として作成されるもので、仕事量とそれに関する裁量権のバランスを判定することができます。
仕事の量が多くコントロールが低いほど右下に現れ、白い範囲から黄色、オレンジ、さらに赤へ近づくほど、ストレスが生じ易い環境にあると考えられます。

量コントロール判定図
図出典:厚生労働省「こころの耳」ホームページ掲載
「ストレスチェック制度を利用した職場環境改善スタートのための手引き」より引用より

[職場の支援判定図]

上司の支援と同僚の支援の点数から作成されるもので、健康問題の危険(リスク)を判定します。
上司や同僚からの支援度が低いと左に現れ、左下にあればあるほど健康問題へのリスクが高くなります。

職場の支援判定図
図出典:厚生労働省「こころの耳」ホームページ掲載
「ストレスチェック制度を利用した職場環境改善スタートのための手引き」より引用より

集団分析では、この2つの判定図から「現在の職場の仕事のストレス要因がどの程度従業員の健康に影響を与える可能性があるか」を総合的に判断します。
例えば、上記の2つの判定図を点数で表してみましょう。

仕事のストレス要因と健康リスク判定図
図出典:厚生労働省「こころの耳」ホームページ掲載
「ストレスチェック制度を利用した職場環境改善スタートのための手引き」より引用より

この場合、総合健康リスクが118ということは、「従業員の健康への悪影響が平均より18%増しになる」と予想したことになり、職場ごとの総合健康リスクが現在よりも低下するよう職場の健康やストレスの管理・改善が望まれます。そこで、企業では、4つの尺度のうちリスクの高いものを中心にしながら、ストレスを軽減するための対策を検討・実施していくことになります。
全国平均の点数はあくまで目安ですが、実際には健康リスクが150点を超えているケースで健康問題が顕在化している例が多くあるそうです。厚生労働省では、少なくとも120点を超えていれば、問題が顕在化する前にストレス要因を探り、何らかの対策を検討する必要があるとしています。
ただし、健康リスクが全国平均を下回っていても、問題がないわけではありません。健康に影響を与える仕事上のストレスは、判定図に使う4つのストレス要因以外にもたくさんあります。実際に職場環境を改善するためには、様々な仕事上のストレスを考慮する必要があります。

「職業性ストレス簡易調査票」では、対人関係によるストレスや、技能の活用度、仕事の適性度などの詳しい分析も可能です。項目が多い「新職業性ストレス管理調査票」では職場との一体感やワークエンゲージメント等の評価もできます。こうした調査を用いて詳細に分析することで、さらに効果的な改善方法を見つけることもできます。

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集団分析を上手く活用するには、専門家のアドバイスも必要

集団分析は、現在「努力義務」となっていますが、厚生労働省では「必要性や緊急性が低いことを意味するものではなく、事業者は、職場のストレスの状況その他の職場環境の状況から、改善の必要性が認められる場合には、集団的分析を実施し、その結果を踏まえて必要な対応を行うことが自ずと求められることに留意するべきである」としています。(厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」PDFより)
このことから見ても、集団分析は「実施しなくてもいい」ものではなく、できる限り実施して、職場環境の改善に活かすことが求められています。

最近は、市場でもストレスチェックを簡単に実施できるwebシステムが多く提供されています。厚生労働省でも、集団分析等ができる「ストレスチェック実施プログラム」が無料配付されているほどです。ストレスチェックのみのタイプから集団分析も行えるもの、産業医の面談受付など様々なシステムがあり、利用人数や分析方法などによって細かく料金設定がされているため、自社のメンタルヘルスケア体制に合わせて手軽に導入することができます。
とはいえ、分析結果を独自に読み解くのは、骨の折れる作業でもあります。職場環境改善の進め方で「経営者・人事主導型」「管理職主導型」「従業員参加型」のどの方法を採用するかによっては、情報を共有する人も変わるため、分析結果の解説や対策のアドバイスなどが求められることもあるでしょう。
また、システムによっては分析できる集団数が少ないものもあり、利用人数や質問項目数などストレスチェックの実施状況だけでシステムを選ぶと、必要な分析結果が得られなかったり、追加料金が発生したりすることもあります。
ストレスチェック用のシステムを選ぶ際は、集団分析の内容や職場環境の改善の活かし方など、ストレスチェック後の対応も加味することが大切です。特に、集団分析の結果においては、専門家の知見を踏まえたレポートで提供されるものならば、後々の改善策も立案しやすくなるでしょう。

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おわりに

そもそも、職場環境の改善は、中長期的な目線で取り組む必要があるものです。集団分析結果から見えてきたストレス要因をいかに改善していくか、そして対策でうまくいった点を振り返ると同時に、改善すべき課題点を整理し、次年度以降の活動にフィードバックする・・・という、PDCAサイクルで考えることが大事です。
ストレスチェックは本来、労働者が50人以上いる事業場で年1回義務づけられており、コロナ禍においても「万全の対策を行った上で、期限を守って実施」することが推奨されています。
特に、テレワークや在宅勤務など感染予防のために職場環境の見直しが進められている中では、従業員にもフラストレーションや不安が少なからず発生していることでしょう。そうした変化をいち早くキャッチし、環境改善に努めることも必要です。
専門家のアドバイスを受けながら、ストレスチェックの結果を有意義に活用し適切なメンタルヘルスケア対策を行いましょう。

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