年末調整業務では、膨大な事務作業や確認作業を伴うため、人事労務担当者の業務負担が年々深刻化しています。その打開策として、多くの企業で浸透し始めているのが「年末調整の電子化」です。
市場にも多くのサービスが提供されており、「そろそろ自社でも」と検討している企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、年末調整業務をデジタル化するメリットやサービスの選び方についてご紹介します。
目次
- ほぼ全ての年末調整書類が電子データで提出できます!
- 年末調整業務を電子化するメリット
- 年末調整手続きを電子化する際に必要なこと
- 年末調整電子化サービスを見極める!3つのポイントとは
- 導入後の初期設定の仕方もチェックしよう!
- おわりに
ほぼ全ての年末調整書類が電子データで提出できます!
「年末調整の電子化」とは、従業員から年末調整で提出する書類を電子データで受け取り、年末調整業務を行うことを言います。
年末調整では、申告書や控除証明書類など様々な書類が必要となります。特に申告書は、税制改正の影響を受けて毎年のように変更され、「年末調整書類を増やさない」という大前提があるかのように1枚に複数の申告書が収められるなど、年々複雑さが増しています。
従来は紙での提出を基本としていたため、申告書の配付・回収から給与システムへの入力まで、担当者が手作業で行う業務が多々ありました。それに加え、様式の複雑さから従業員の問い合わせ対応や記載内容のチェックに対する業務負担が増えることが懸念され、政府でも「年調ソフト」を提供するなど年末調整の電子化が進められるようになりました。2020年には、電子データで発行された控除証明書の提出も認められるようになり、今では国を挙げて年末調整の電子化が推進されています。
現在は、扶養控除等申告書や配偶者控除等申告書など、すべての年末調整申告書類が電子データで提出可能になっています。また、生命保険料や地震保険料、社会保険料といった保険料に対する控除証明書、住宅ローンを受けた際の所得税額の特別控除証明書、年末残高等証明書など、多くの添付書類も電子データで提出できます。
ただし、住宅ローン控除証明書及び年末残高等証明書は、居住年が2019年(令和元年)以後から電子データが発行されるため、居住年が2018年(平成30年)以前の場合は、従来通り書面で提出することになります。また、国外居住親族に係る親族関係書類・送金関係書類、勤労学生に該当する旨の証明書といった「控除証明書等」として掲げられている書類以外の書類は、法令上電子データで発行することができないため、従来通り書面での提出が必要です。
申告書 | 申告書の電子化 | 添付書類の電子化 |
---|---|---|
扶養控除申告書 | ○ | 親族関係書類:× 送金関係書類:× 勤労学生の証明書類:× (書面で提出要) |
配偶者控除等申告書 | ○ | |
基礎控除申告書 | ○ | |
所得金額調整控除申告書 | ○ | |
保険料控除申告書 | ○ | ○※1 |
住宅ローン控除申告書 | ○※2 | ○※2 |
※1 生命保険料、個人年金保険料、介護医療 保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金が対象です。
※2 2019年以降開始の住宅ローンに限ります。(2018年以前は書面で提出)
出典:国税庁 PDF「年末調整手続きの電子化及び年調ソフトに関するFAQ」
なお、控除証明書データは、従業員が自ら保険会社などへ控除証明書の電子データ発行を依頼する必要があります。年末調整手続きを電子化する際には、従業員に対し、控除証明書を電子データで提出する場合の注意点として周知しておきましょう。
年末調整業務を電子化するメリット
法定調書の提出については、前々年の提出枚数が100枚以上の場合電子申告が義務づけられていますが、従業員が提出する書類を電子データで受け取ること自体は義務ではありません。
しかし、年末調整業務を電子化すると、次のように担当者だけでなく従業員にも大きなメリットがもたらされます。
紙の申告書で手続きする場合、申告書の作成に慣れていない従業員にとっては記入作業も戸惑いがちで、記入漏れや記入ミス、計算間違いなどが発生しやすくなります。生命保険料などの控除証明書も、紙での提出では「紛失した」「忘れていた」などによって後日追加で提出されることもあります。
こうしたトラブルは、提出後の担当者の業務にも大きく影響することから、できるだけスムーズに年末調整業務を進められるよう、申告書の配付準備からマニュアル作り、従業員に対するきめ細やかな対応まで慎重に業務が進められ、毎年約3ヵ月を要する一大イベントの様相を呈しています。
年末調整手続きを電子化すると、従業員側の手続きはWeb上ですべて完結でき、記入項目が分かりやすく表示されるため記入漏れもなくなり、控除額計算の計算ミスも減ります。
担当者も、申告書類の配付準備から従業員のサポート、提出された書類のチェックまでほぼ自動化されます。また、申告書の内容を給与システムに反映する際も、紙の手続きでは手入力が必要ですが、デジタル化すれば年末調整データを給与システムにアップロードするだけでよくなります。
提出書類はデータで管理できるので、紙の書類のように保管スペースを確保する必要もありません。
このように、年末調整業務のデジタル化には、担当者・従業員双方の手間を大幅に軽減するという効果が期待できます。
実際、奉行Edge 年末調整申告書クラウドを使用している企業の中には、業務時間を8割以上削減できたという事例もあります。
例えば、300名規模の企業で業務に約15日かかっていた場合2.5日で完了する計算になり、この効果は忙しい担当者が一年間、毎週ノー残業デーを継続した時と同程度と言われています。また、従業員側への調査でも、約87%が年末調整の電子化で申告にかかる時間が削減できたと回答しており、「ストレスが軽減された」「ラクになった」と実感していることが明らかになっています。
年末調整手続きを電子化する際に必要なこと
年末調整手続きを電子化するには、次のような準備が必要になります。
●年末調整書類をデータ回収できるソフトウェアを導入する
1つは、年末調整書類を電子データで提出できる専用のソフトウェアが必要です。市場には、国税庁の「年調ソフト」をはじめ、奉行Edge 年末調整申告書クラウドのような年末調整電子化サービスが数多く提供されています。年末調整に必要な情報を電子データとして提出してもらうには、こうしたサービスを活用することが必須になります。
ただし、情報の収集方法は各サービスによって異なります。一覧記入形式やアンケート形式など入力方法が違ううえに、給与システムへの連携方法も変わります。どのソフトウェアを選んでも自由ですが、「従業員にとってどのような使い勝手か」「自社の給与システムとどのように連携できるか」などを確認して、自社にとって最適なサービスを選ぶことが肝心です。 年末調整電子化サービスの選び方については、次章で解説します。
●従業員への周知と、電子データ取得への問い合わせ対応を準備する
年末調整書類を電子データで提出してもらうには、従業員側で準備してもらうことも発生します。
例えば、専用のソフトウェアを利用する前にも準備が必要になるケースがあります。国税庁の年調ソフトを選択した場合、従業員側で所有する端末にインストールが必要です。民間のクラウドサービスであれば、インターネットに接続できる環境とID・パスワードがあれば、申告書データを作成できるので、インストールの必要はありません。
また、保険会社等からの控除証明書などの添付書類も電子データで提出してもらう場合は、従業員本人が保険会社等へ電子データでの発行手続きをする必要があります。控除証明書類の中には、マイナポータルと連携して取得することができるものもあります。この場合、マイナンバーカードや電子証明書等のパスワードの設定が必要です。
このように、控除証明書等のデータ取得には従業員本人の手続きが必要になるため、手続きにかかる時間を考慮して早めに呼びかけを行い、データの取得方法や不明点に関する問い合わせへの対応準備もしておきましょう。
年末調整電子化サービスを見極める!3つのポイントとは
国税庁の「年調ソフト」をはじめ、市場で提供されている年末調整電子化サービスには、それぞれ特長があります。年末調整手続きを電子化する際には、これらサービスの特長をしっかり理解し、自社の取り組み方に合うものを選ぶのが肝心です。
ここでは、奉行Edge 年末調整申告書クラウドで年末調整の電子化に成功した企業の共通点から、自社に合ったサービスの見極めポイントを3つご紹介します。
<自社に合ったサービスの見極めポイント>
ポイント① 従業員・担当者が行うすべてのプロセスをデジタル化できるか
年末調整業務は、担当者が担う業務と従業員側の業務を合わせると、次図のように4つのプロセスと15の業務に分類できます。年末調整をデジタル化するのであれば、これらの業務すべてをデジタル化できるかがポイントになります。
●申告準備プロセス
準備段階では、従業員への連絡やマニュアル作成など細かな作業があります。年末調整の電子化を考えるなら、この準備段階からペーパーレス化できないかも検討しましょう。
例えば、従業員にメールで提出依頼通知を送れるサービスなら、紙で回覧する必要がなくなり、一括送信できるので簡単です。また、Web上で手続きできるサービスであれば、メールの本文にログイン情報を記載して送るだけでよく、従業員もアクセスしやすく簡単にログインできて申告手続きに進むことができます。
●従業員による入力・提出プロセス
「従業員が入力しやすいか」は、年末調整電子化サービスの最大の見極めポイントとも言えます。
年末調整電子化サービスには、申告画面が「yes/no」で答えるアンケート形式になっているものや、奉行Edge 年末調整申告書クラウドのように一覧記入形式になっているサービスなどがあります。毎年問い合わせの多い記載内容が簡単に入力できるか、迷ったときのヘルプがあるかなどもしっかり確認しましょう。また、当年申告した内容から、翌年の申告書画面に自動的に反映されるものなら、入力の手間が省けて従業員にとっても利便性が上がります。
例えば、奉行Edge 年末調整申告書クラウドなら、自身や扶養親族の情報など、次年度以降は前年用いたデータが反映されます。また、保険料控除申告書や住宅借入金特別控除申告書なども、前年の情報が自動的に表示されるため、従業員は前年データを確認しつつ変更・追加修正を行うだけで良くなります。
控除証明書など添付書類を電子データで提出してもらう場合も、年末調整電子化サービスにどのようにアップロードするかをチェックしておくと、従業員にも説明がしやすくなります。
具体的な取得方法は、事前にしっかり従業員に伝え、可能な限り電子データで提出してもらえるよう促せば、将来的に完全ペーパーレス化も夢ではありません。
●内容確認プロセス
担当者にとって、準備段階と等しく手間のかかる確認作業も、できるだけ効率化できるサービスを選ぶことが重要です。
例えば、奉行Edge 年末調整申告書クラウドのように、従業員が変更を加えた箇所が一目で分かる機能があれば、担当者は画面のどの部分を念入りに確認すればよいかをすぐさま判断できます。
提出状況は管理画面で確認でき、つねに自動更新されるため、未提出者にはサービスから随時催促メールを送ることもできます。
●情報活用プロセス
年末調整の電子化にあたって、給与システムとの連携方法はスムーズな業務遂行に欠かせません。
連携方法には、大きくAPI連携とCSV連携があり、よほど給与システムが老朽化していない限り、ほとんどのサービスから給与システムにデータをインポートできるようになっています。特にAPI連携は、サービスから直接給与システムにデータを送信でき、手作業でのインポート作業が発生しないためオススメです。さらに、奉行Edge 年末調整申告書クラウドと給与奉行クラウドように自動連携できる組み合わせなら、デジタル化の恩恵を最大限享受できます。
ポイント② 自社の事情に合った運用ができるか
新しい仕組みを導入する場合、自社の事情が実現を阻む課題になることがあります。例えば、年末調整の電子化にあたって次のような課題がある場合は、従業員の状態に合わせられるサービスを選ぶことも大切です。
(例1)紙でないと申告できない従業員がいる
例えば、「スマートフォンを所持していない」などWebでの申告が難しい従業員がいる場合は、氏名や住所、扶養親族などの基本情報を印字した申告書を用意できるサービスがオススメです。基本はWeb入力で申告してもらい、該当者のみ予め印字した申告書に訂正や追記をしてもらうことで、申告書の作成時間を大幅にカットすることができます。
(例2)控除証明書は紙で提出したい従業員がいる
控除証明書のデータ提出が難しい場合は、奉行Edge 年末調整申告書クラウドのように画像添付できる機能を備えたサービスもオススメです。原本となる書類は別途回収する必要がありますが、Webで提出の際にスマートフォンで撮影した画像を添付できるため、担当者は原本が到着する前でも画像を見ながら確認作業を進められます。
(例3)従業員のメールアドレスが分からない
従業員のメールアドレスを把握していない場合は、年末調整電子化サービスにメールアドレスの収集機能があると便利です。奉行Edge 年末調整申告書クラウドの場合、QRコードを読み取って空メールを送ると、メールアドレス登録用のURLが自動返信されます。従業員は、登録画面から氏名やメールアドレスを入力するだけでよく、簡単に従業員のメールアドレスを集められます。
ポイント③ 政府が推奨するデジタル環境を構築できるか
政府が求めているのは、「すべての年末調整手続きをワンストップでデジタル化できる」環境の構築です。
特に、マイナポータルとの連携が推奨されており、住宅ローン控除の年末残高証明書や各種保険料の控除証明書データも、すでにマイナポータルを通して企業に提出できるようになっています。また、令和4年度の税制改正で住宅ローン控除の年末残高証明書に「調書方式」が採用されたことにより、金融機関にマイナンバー等を記載した「住宅ローン控除の適用申請書」を提出した場合、令和6年分以降、年末調整で年末残高証明書の提出が不要になっています。
さらに、将来的には、従業員から企業、企業から国税庁や市区町村に、e-TaxやeLTaxを使うことなくマイナポータルで一括提出できるようになります。そうなれば、今後マイナポータルを活用した年末調整が標準スタイルになる可能性は大いにあります。
年末調整電子化サービスを選ぶ際は、こうしたマイナポータル連携ができる(または連携予定がある)サービスかどうかも重要になってくるでしょう。
奉行Edge 年末調整申告書クラウドなら、すでにマイナポータル連携が標準化されており、導入するだけで政府が進めようとしている理想の環境整備が可能になります。従業員がマイナポータル連携できるようにしていれば、控除証明書は基本的に提出済みの扱いとなるため、書類の回収も不要になります。
導入後の初期設定の仕方もチェックしよう!
新しいシステムやクラウドサービスを導入すると、最初に初期設定はつきものです。年末調整電子化サービスを利用する際も、例外ではありません。とはいえ、多くのサービスでは自社で初期設定を行うのが一般的なため、設定に戸惑う担当者も多いようです。
先述した見極めポイントを踏まえてサービスを絞り込んだら、初期設定の仕方についてもしっかり確認しておきましょう。
例えば、奉行Edge 年末調整申告書クラウドの場合、初期設定として次の5つの作業を企業側で行うことになります。
導入後、まず会社情報と社員情報の登録を行います。国税庁の「年調ソフト」の場合は、「給与支払者情報の登録」は企業側で行い、社員情報は従業員が自ら入力することになりますが、一般のサービスの場合はほぼ社員情報のインストールまで企業側が行います。
奉行Edge 年末調整申告書クラウドでは、給与奉行クラウドの社員情報とIDを紐付けるだけで登録が完了するため、1〜4まで簡単に進められます。他社の給与システムであっても、社員情報をCSVデータに書き出して奉行Edge 年末調整申告書クラウドにインポートすれば、社員データを共有することができます。
従業員のメールアドレスを把握していない場合は、先述した方法で従業員から収集する必要がありますが、それ以外に初期設定で従業員が行う作業は発生しません。
また、初期設定の手順を詳しく解説した動画も提供しているため、初めての方でも安心して操作を完了できます。従業員向けには、利用ガイドのテンプレートも用意されており、自社専用に編集・加工もできます。
年末調整のスケジュールとしては、導入から年末調整準備まで概ね1〜2ヵ月を見込んでおくのが一般的ですが、奉行Edge 年末調整申告書クラウドなら初期設定作業は30分〜1時間程度で終わり、従業員への事前アナウンスを含めても、5日程度もあれば年末調整手続きを受け付けられる体制が整います。
おわりに
年末調整の電子化には、控除証明データを用意してもらうなど、従業員の協力も必要です。そのため、いきなり最初から完全なデジタル運用を目指すのは難しいでしょう。しかし、電子データで提出してもらうことで、年末調整業務において圧倒的な効率化が図れることは明白です。
また、年末調整は税制改正の影響を大きく受けるものです。毎年、税制改正の内容を精査し従業員に周知するのにも相当の時間を費やしている企業は多いことでしょう。
奉行Edge 年末調整申告書クラウドのようなクラウドサービスなら、税制改正にもつねに対応するため、担当者も従業員も少ない負担で安心して業務を遂行することができます。
煩雑かつ気の抜けない、従業員の生活に関わる大切な手続きだからこそ、電子化で正確&効率アップを実現しましょう。
※奉行Edge 年末調整申告書クラウドは2024年定額減税にも対応しています
※定額減税の詳細については、コラム「所得税・住民税の定額減税について制度概要と企業の対応をわかりやすく解説 」を参照ください。
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