メルマガ読者20万人以上!
OBC 360のメルマガ登録はこちらから!

メルマガ登録

消費税還付とは?その仕組みと還付を受けるための条件

このエントリーをはてなブックマークに追加
pic_post78_main

消費税は最終的には消費者が負担することになるものの、申告・納税については仲介する立場の企業が代行するという仕組みになっています。中間申告による分割納付という手段があるとはいえ、この負担は企業にとって決して軽くはありません。
しかし、法人税などと同様、消費税も一定の条件を満たせば還付される場合があります。
今回は、どのような条件があれば還付を受けることができるのか、消費税還付の仕組みや条件、手続き方法、還付を受けた際の会計処理方法についてご紹介します。

勘定奉行クラウド

目次

消費税の還付対象となる企業は?

OBC360°の過去記事「『軽減税率導入後はどうなる?』消費税額を正しく計算する方法」でもご紹介したように、「納付すべき消費税額」とは、「売り上げで預かった消費税額」から「支払った消費税額」を差し引いた額となります。このとき、「支払った消費税額」が多くなれば「納付すべき消費税額」はマイナスとなり、その分が還付されます。

消費税額の計算方法には、原則となる計算方法の「一般課税」の他に、適用を受けた企業に対し仕入控除税額計算の簡易化を認める「簡易課税」がありますが、簡易課税では仕入税額計算に「みなし仕入率」を使うので還付金額を正しく計算することができません。そのため、簡易課税制度を受けている企業は、消費税還付を受けることができません。
また、免税事業者も、消費税還付を受けることはできません。
還付を受けられるのは、「一般課税」を適用している課税事業者に限られますので、注意しましょう。

■ 課税事業者とは・・・

原則として、以下の法人が対象となります。

  • 前々事業年度の課税売上高が1,000万円(前々事業年度が1年未満の企業については、課税売上高を年換算した金額が1,000万円)を超える法人
  • 創業から2年度以内で、事業年度開始日時点での資本金が1,000万円以上の法人

ただし、そもそも免税事業者である創業1〜2年目の企業や売上高1,000万円未満の企業であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になれば消費税還付を受ける対象企業になれます。
「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、翌年(創業年に提出する場合は創業時)から課税事業者になれますが、一度課税事業者になると2年間は免税事業者に戻ることができませんので、そのことを踏まえて判断する必要があります。

勘定奉行クラウド

消費税の還付はどんな時に受けられる?

課税事業者が消費税還付を受けられるケースには、主に以下のような場合が考えられます。

① 大幅な赤字になった場合(赤字計上)

売上の減少や創業当初などで売上よりも仕入などの経費の方が多かった場合、消費税額は当然マイナスで計上されるので、還付金を受け取ることができます。
ただし、経費が嵩み赤字になったからといって、必ずしも消費税還付を受けられるというわけではありません。例えば、以下の経費類は消費税の課税対象とはならないため、消費税還付の計算からは除外します。

<消費税還付の計算に含まれないもの>

不課税取引
  • 国外取引により支払った経費
非課税取引
  • 従業員に対して支払った給料
  • 事業税、固定資産税、不動産取得税などの租税公課
  • 国民年金、国民健康保険料などの社会保険料
  • 損害保険料や生命保険料

など

② 大幅な設備投資をした場合

自動車や機械設備といった「高額な資産投資」を行なった場合、支払った消費税額の方が多くなる可能性があるため、消費税の還付金を受け取れます。
例えば、消費税率10%で計算した場合、資産投資額が1,000万円を超えると100万円単位での消費税還付を受けることができます。
ただし、土地の購入に関しては、消費税の課税対象外となります。また、不動産賃貸業を営んでいる場合、家賃収入は非課税となるため、原則消費税還付を受けることはできません。

③ 輸出中心の貿易業を営んでいる場合

消費税は、日本国内での取引に対してかかる税金です。そのため、海外への輸出(国外取引)の場合は、非課税(輸出免税)になり、「売上で預かった消費税額」は0円になります。
しかし、仕入れやそれにかかる広告宣伝費や交際費については消費税がかかってしまうため、「支払った消費税額」が嵩むことになり、消費税還付を受ける可能性が高くなります。
ただし、国外取引中心の企業でも簡易課税制度の適用を受けている場合は、国内取引企業と同様、還付を受けることができませんので注意しましょう。

勘定奉行クラウド

還付を受けるために必要な手続き・受け取り方は?

法人の場合、消費税還付を受け取るためには、以下の3つの書類が必要となります。

  1. ①消費税および地方消費税の確定申告書
  2. ②付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
  3. ③消費税の還付申告に関する明細書

これらの書類を、事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に作成し、税務署長に提出します。

「消費税の還付申告に関する明細書」には、消費税が還付申告となった理由や、取引先ごとの売上、仕入れの明細などを記載します。書類の記載方法については、国税庁ホームページに掲載されている「『消費税の還付申告に関する明細書(法人用)』の記載要領」を参照ください。
輸出業を営む企業の場合は、輸出事業で受ける還付金と国内向け事業の納付税額を「消費税および地方消費税の確定申告書」の中で同時申告する必要がありますので、注意しましょう。

還付金の受け取りには、確定申告時に指定した預貯金口座に振り込んでもらう方法と、ゆうちょ銀行または郵便局に出向いて受け取る方法があります。
預貯金口座への振込を希望する場合は、原則として、申告者本人または納税管理人の名義である口座となり、屋号が含まれる場合振り込みできない可能性があります。また、指定できる口座は、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合及びゆうちょ銀行に限られます。インターネットバンクについては、還付金の振込みができない銀行があるため、事前にインターネットバンクに確認が必要になります。

還付金が支払われるまでには、おおよそ1〜2ヶ月ほどかかることもあります。申告書の記載内容や添付書類の確認等にも、ある程度の時間は要するため、還付金の振込完了はある程度の数ヶ月ほどかかると理解しておいた方がいいでしょう。還付金を事業資金のあてに考えているのであれば、尚更早く手続きを取るようにしましょう。
電子申告(e-Tax)で必要書類を提出すれば、支払いまでの期間が3週間程度まで大幅に短縮されます。もし消費税の還付金をなるべく早く受け取りたい場合は、e-Taxで提出することをおすすめします。

還付金を受け取ったら、経理処理はどうする?

通常、消費税の会計処理は、消費税を費用または収益としては認識しない「税抜経理方式」と、消費税を費用または収益として認識している「税込経理方式」のどちらかで行われています。
自社がどちらの方式を選択しているかによって、会計処理が若干異なるため注意が必要です。

●税抜経理処理の場合

還付される消費税の仕訳には、「未収消費税」(資産)を使用します。
確定申告時の処理では、課税売上に対する消費税は「仮受消費税」、課税仕入れに対する消費税は「仮払消費税」として表示されます。そこで還付金の額が判明している場合は、借方に「未収消費税」として計上します。ただし、確定申告書の作成を通して計算された実際の還付金の額と、仮受消費税と仮払消費税の差額に端数処理が発生し、一致しない場合があります。この不一致には、「雑収入」などの勘定科目を使用し調整します。還付金を受け取ったら、「未収消費税」を減少させます。

<決算時>
借方 金額 貸方 金額
仮受消費税 ×××× 仮払消費税 ××××
未収消費税 ××××    
    雑収入 ××××
<入金時>
借方 金額 貸方 金額
普通預金 ×××× 未収消費税 ××××

●税込経理方式の場合

税込経理方式で、確定申告分を当期に計上する場合は、税抜経理方式と同じ「未収消費税」(資産)を使用します。この場合、税抜経理処理のような「端数による不一致」は発生しません。そのため、決算時は「雑収入」(消費税の課税区分は「不課税」)を用い、還付金の受け取り後に「未収消費税」を減少させます。

<決算時>
借方 金額 貸方 金額
未収消費税 ×××× 雑収入 ××××
<入金時>
借方 金額 貸方 金額
普通預金 ×××× 未収消費税 ××××

おわりに

消費税改正に伴い税率が上がると、消費税の還付金を受け取れる場合、その金額も膨みます。還付を受けられるのであれば、ぜひ申告をしておきたいと思うのは当然でしょう。
しかし、「消費税還付を申告すると、かなりの確率で税務調査に入られる」という定説があります。このことは、過去、消費税の還付金を受け取りたいがために不動産賃貸業者による「自動販売機を設置して課税事業者になる」といった手法(自販機スキーム)が横行したことも要因になっています。
税務署ではこれを問題視し、近年様々な対策が取られるようになりました。国税庁サイトには「不正に還付申告を行っていた法人から1億18百万円を追徴」したという事例も公表されていることを考えると、還付金が大きくなれば税務調査も行われる可能性があると理解しておいた方がいいでしょう。

還付される消費税額が数万円程度の場合は問題ありませんが、多額の消費税還付を申告した際には契約書等の提出を求められます。申告額が数百万円単位になると、税務署からも問い合わせや税務調査が入ったという報告もありますので、多額の設備投資などを行なった場合は関連書類をしっかり保管しておきましょう。

勘定奉行クラウド

こちらの記事もおすすめ

関連リンク

メルマガ読者20万人以上!
OBC 360のメルマガ登録はこちらから!

メルマガ登録

新規CTA