

2026年(令和8年)の年末調整では、基礎控除・給与所得控除の引き上げや、扶養控除・配偶者控除などの所得要件緩和、子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設など、税制改正の影響が複数重なります。さらに、通勤手当や食事の非課税枠拡大、令和8年分からの源泉徴収簿の様式変更など、毎月の給与計算や源泉徴収事務に関わる対応も発生します。そのため、企業の人事労務担当者には、従業員本人の控除額だけでなく、扶養親族や配偶者の所得見積額、申告書・源泉徴収簿の確認手順、給与計算システムの更新状況まで把握しておくことが求められます。本記事では、2026年の年末調整における主な変更点と、実務対応のポイントを整理します。
【この記事でわかること】
- 2026年(令和8年)年末調整における主要な変更点
- 通勤手当や食事の非課税枠拡大など、毎月の給与計算に関わる周辺の法改正
- 令和8年分からの源泉徴収事務・新様式への具体的な実務対応
- 複雑化する年末調整を乗り切るための「電子化(システム導入)」の必要性
目次
- 2026年(令和8年)の年末調整はどう変わる?主な変更点は?
- 【2026年】年末調整の変更点①:基礎控除・給与所得控除の引き上げ
- 【2026年】年末調整の変更点②:扶養控除・配偶者控除などの所得要件が緩和
- 【2026年】年末調整の変更点③:子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設
- 特定親族特別控除の実務チェックポイント
- 【その他の税制改正】通勤手当・食事の非課税枠拡大と今後の税制見通し
- 令和8年分(2026年分)源泉徴収簿における様式変更の確認ポイント
- 複雑な年末調整を乗り切るための「電子化・システム導入」
- おわりに
- 2026年の年末調整の変更点に関するよくある質問
2026年(令和8年)の年末調整はどう変わる?主な変更点は?
2026年(令和8年)の年末調整では、「年収の壁」対策や子育て世帯への支援策に関連して、各種控除や申告内容の確認範囲が変わります。加えて、基礎控除の引き上げや新たな特例の新設により、控除額の判定だけでなく、扶養対象者の再確認や生命保険料控除の適用判定も必要になります。そのため、人事労務担当者は制度内容を把握し、従業員への周知を例年以上に徹底する必要があります。
| 変更点の項目 | 改正の概要(2026年版) | 企業側の影響・実務対応 |
|---|---|---|
| ① 基礎控除・給与所得控除の引き上げ | 基礎控除(本則)が58万円から62万円に引き上げ。令和8・9年分は最大42万円の特例加算あり。給与所得控除の最低保障額は65万円から74万円に引き上げ。 | 従業員本人の合計所得金額の再計算、控除額の判定チェックが必要。 |
| ② 扶養控除・配偶者控除などの所得要件緩和 | 控除対象となる扶養親族・配偶者等の合計所得金額要件が「62万円以下」に緩和。 | パート・アルバイトの家族を持つ従業員の扶養判定のやり直しが必要。 |
| ③ 子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設 | 子育て世帯を対象に、一般生命保険料控除の上限が6万円に引き上げ(ただし、全体の合計適用限度額は12万円のまま)。 | 該当する従業員の「保険料控除申告書」の検算・属性確認が複雑になる。 |
2026年の年末調整では、従業員本人の控除額だけでなく、扶養親族や配偶者の所得要件、子育て世帯に該当するかどうかの確認も必要です。変更点ごとに確認すべき申告書や判定項目が異なるため、企業側には、従業員への案内の内容や申告書の確認手順を早めに整理しておくことが求められます。
【2026年】年末調整の変更点①:基礎控除・給与所得控除の引き上げ
2026年(令和8年)の年末調整では、基礎控除と給与所得控除の見直しにより、従業員本人の課税対象額の計算方法が変わります。基礎控除の特例加算分は月次の源泉徴収税額表には織り込まれていないため、年末調整で精算漏れがないよう確認します。ここでは、控除額の変更内容と、月次給与計算・年末調整で確認する事項を整理します。
●基礎控除の引き上げ
| 合計所得金額 (令和8・9年分における収入が給与だけの場合の収入金額(注3)) |
基礎控除額(改正された範囲) | |||
|---|---|---|---|---|
| 改正後(注1) | 改正前(注1) | |||
| 令和8・9年分 | 令和10年分以後 | 令和8年分 | 令和9年分以後 | |
| 132万円以下 (206万円以下) |
104万円(注2) | 99万円(注2) | 95万円(注2) | |
| 132万円超 336万円以下 (206万円超 475万1,999円以下) |
62万円 | 88万円(注2) | 58万円 | |
| 336万円超 489万円以下 (475万1,999円超 665万5,556円以下) |
68万円(注2) | |||
| 489万円超 655万円以下 (665万5,556円超 850万円以下) |
67万円(注2) | 63万円(注2) | ||
| 655万円超 2,350万円以下 (850万円超 2,545万円以下) |
62万円 | 58万円 | ||
(注)
1 所得税法第86条の規定による基礎控除額62万円(改正前:58万円)に、租税特別措置法第41条の16の2の規定による加算額を加算した額となります。
2 62万円にそれぞれ、42万円、5万円、37万円を加算した金額(改正前:58万円にそれぞれ、37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額)となります。なお、この加算は、居住者についてのみ適用があります。
3 給与所得控除の最低保障額の引き上げの改正後の給与所得控除に基づいた金額であり、特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
4 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。
出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
2026年(令和8年)の税制改正では、基礎控除の本則額が58万円から62万円に引き上げられました。さらに、令和8・9年分については、合計所得金額が655万円以下の人に対して特例加算が設けられています。
合計所得金額が489万円以下の場合は、本則62万円に42万円が加算され、基礎控除額は104万円になります。489万円超655万円以下の場合は、本則62万円に5万円が加算され、基礎控除額は67万円となります。
基礎控除額の引き上げと、後述する給与所得控除の最低保障額の引き上げに伴い、令和9年分以後の「源泉徴収税額表」が改正されました。令和8年分の給与等については、令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じません。令和8年12月の年末調整では、改正後の基礎控除額を差し引いて1年分の所得税額を計算し、それまでに源泉徴収した税額との差額を精算します。
なお、基礎控除への42万円・5万円の特例加算分は、令和8年11月までの月次の源泉徴収事務には反映しません。月次給与の計算で最大104万円を控除する扱いではない点を確認します。
●給与所得控除の引き上げ
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額(改正された範囲) | ||
|---|---|---|---|
| 改正後 | 改正前 | ||
| 令和8・9年分 | 令和10年分以後 | ||
| 190万円以下 | 74万円(注1) | その収入金額×30%+8万円 (69万円未満となる場合は69万円) |
65万円 |
| 190万円超 220万円以下 | その収入金額×30%+8万円 | ||
(注)
1 給与所得控除の最低控除額等の特例(租税特別措置法第29条の4)の適用後の給与所得控除額となります。
2 給与等の収入金額が220万円超の場合の給与所得控除額に改正はありません。
出典:国税庁 PDF「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
給与所得控除については、65万円だった最低保障額が74万円に引き上げられます。これに伴い、所得税法で定める令和8年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」も改正されました。手計算で年末調整を行う場合は、前年の表を使わず、令和8年分以後の表に基づいて給与所得控除後の金額を確認します。
| 給与等の収入金額 | 69万1,000円以上 74万1,000円未満 |
74万1,000円以上 219万1,000円未満 |
219万1,000円以上 219万3,000円未満 |
219万3,000円以上 219万6,000円未満 |
219万6,000円以上 220万円未満 |
|---|---|---|---|---|---|
| その給与等に係る 給与所得の金額 |
なし | その収入金額 -74万円 |
145万1,000円 | 145万3,000円 | 145万6,000円 |
出典:国税庁 PDF「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
また、令和8・9年分の給与等の収入金額が69万1,000円以上220万円未満の場合、その給与等に係る給与所得の金額は、改正後の金額を用いることとされています。給与収入が比較的低い従業員については、給与所得控除後の給与等の金額が前年とは異なるため、年末調整時の計算表や給与計算システムが令和8年分以後の表に更新されているかを確認する必要があります。
●基礎控除と給与所得控除の改正で、年収の壁は178万円に引き上げ
基礎控除と給与所得控除の見直しにより、給与収入のみでほかに所得がない場合には、所得税の課税最低限は178万円となります。これは、基礎控除(本則62万円+特例加算42万円)の最大104万円に、給与所得控除の最低保障額74万円を合わせた金額です。
ただし、178万円は所得税の計算上の目安であり、基礎控除額は本人の合計所得金額によって変わります。年末調整では、従業員本人の収入金額と合計所得金額の見積額を確認したうえで、控除額を判定します。
【2026年】年末調整の変更点②:扶養控除・配偶者控除などの所得要件が緩和
2026年の税制改正では、扶養控除や配偶者控除などの対象となる親族等の所得要件が緩和されます。これまで所得要件を超えていた家族が控除対象になる可能性がある一方、学生アルバイトなどは本人の税額と親側の扶養判定を分けて確認する必要があります。ここでは、所得要件の変更内容と、申告書・源泉徴収事務で確認する事項を整理します。
●改正の概要
| 扶養親族等の区分 | 所得要件(注1) (令和8・9年分における収入が給与だけの場合の収入金額(注2)) |
|
|---|---|---|
| 改正後 | 改正前 | |
| 扶養親族 同一生計配偶者 ひとり親の生計を一にする子 |
62万円以下 (136万円以下) |
58万円以下 (123万円以下) |
| 特定親族 | 62万円超 123万円以下 (136万円超 197万円以下) |
58万円超 123万円以下 (123万円超 188万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超 133万円以下 (136万円超 207万円以下) |
58万円超 133万円以下 (123万円超 201万5,999円以下) |
| 勤労学生 | 89万円以下 (163万円以下) |
85万円以下 (150万円以下) |
(注)
1 合計所得金額(ひとり親の生計を一にする子については総所得金額等の合計額)の要件をいいます。
2 給与所得控除の最低保障額の引き上げの改正前および改正後のそれぞれの給与所得控除額に基づいた金額であり、特定支出控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
出典:国税庁 PDF「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が「62万円以下」に緩和されました。これにより、これまで所得要件を超えていたために控除の対象外だった家族が、新たに扶養控除や配偶者控除などの対象となる可能性があります。
パートやアルバイト収入がある家族を持つ従業員に対しては、判定基準が変わるため、家族の令和8年中の合計所得金額の見積額を申告書に正しく記載するよう案内します。
勤労学生控除の所得要件も緩和されたため、学生本人が控除を受けられる範囲が広がります。ただし、学生本人に所得税がかからない場合でも、親側の扶養控除では所得が62万円以下かどうかで判定するため、本人の税額と親側の扶養判定は分けて確認します。申告書の案内・回収時は、学生本人のアルバイト収入が親側の扶養控除に影響する可能性も周知します。
| 配偶者又は特定親族の合計所得金額 (令和8・9年分における収入が給与だけの場合の収入金額(注)) |
配偶者特別控除額 | 特定親族特別控除額 | ||
|---|---|---|---|---|
| 所得者の合計所得金額 (収入が給与だけの場合の収入金額(注)) |
||||
| 900万円以下 (1,095万円以下) |
900万円超 950万円以下 (1,095万円超 1,145万円以下) |
950万円超 1,000万円以下 (1,145万円超 1,195万円以下) |
||
| 62万円超 85万円以下(136万円超 159万円以下) | 38万円 | 26万円 | 13万円 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下(159万円超 164万円以下) | 63万円 | |||
| 90万円超 95万円以下(164万円超 169万円以下) | 63万円 | |||
| 95万円超 100万円以下(169万円超 174万円以下) | 36万円 | 24万円 | 12万円 | 63万円 |
| 100万円超 105万円以下(174万円超 179万円以下) | 31万円 | 21万円 | 11万円 | 63万円 |
| 105万円超 110万円以下(179万円超 184万円以下) | 26万円 | 18万円 | 9万円 | 63万円 |
| 110万円超 115万円以下(184万円超 189万円以下) | 21万円 | 14万円 | 7万円 | 63万円 |
| 115万円超 120万円以下(189万円超 194万円以下) | 16万円 | 11万円 | 6万円 | 63万円 |
| 120万円超 123万円以下(194万円超 197万円以下) | 11万円 | 8万円 | 4万円 | 63万円 |
| 123万円超 125万円以下(197万円超 199万円以下) | ― | |||
| 125万円超 130万円以下(199万円超 204万円以下) | 6万円 | 4万円 | 2万円 | ― |
| 130万円超 133万円以下(204万円超 207万円以下) | 3万円 | 2万円 | 1万円 | ― |
(注)給与所得控除の最低保障額の引き上げの改正後の給与所得控除額に基づいた金額であり、特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
出典:国税庁 PDF「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
給与所得控除の引き上げと扶養親族等の所得要件の緩和に伴い、配偶者や特定親族の合計所得金額に応じた控除額も見直されています。収入が給与だけの場合は、表中の収入金額も確認しながら、令和8年分以後の基準に基づいて控除額を判定します。
●適用時期と申告書の変更点
扶養親族等の所得要件の改正は、所得税は令和8年分以後、個人住民税は令和9年度分以後から適用されます。令和8年分の給与等の源泉徴収事務では、令和8年12月1日以後に支払う給与等から改正後の取り扱いが適用されます。
この改正により、新たに扶養親族等の要件を満たす親族等について扶養控除等の適用を受ける場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要です。従業員から申告書を回収する際は、新たに対象となる家族の記載漏れがないかを確認します。
また、令和8年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」では、記載欄が「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」に変更されています。源泉控除対象親族には、控除対象扶養親族のほか、19歳以上23歳未満で合計所得金額の見積額が58万円超100万円以下の特定親族も含まれます。
「源泉控除対象親族」に記載した特定親族は、各月の給与の源泉徴収において控除が反映されます。令和7年分までは年末調整でのみ適用されていたため、令和8年分以後は申告書の記載内容が月次給与計算にも影響します。
一方、合計所得金額が100万円超123万円以下の特定親族は、月次の源泉徴収では考慮されません。この場合は、年末調整で「特定親族特別控除申告書」を提出することで、特定親族特別控除の適用を受けられます。
出典:国税庁 PDF「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」
【2026年】年末調整の変更点③:子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設
子育て世帯向け生命保険料控除の特例では、23歳未満の扶養親族などがいる従業員について、一般生命保険料控除の上限額が引き上げられます。対象者かどうかで控除額の判定が変わるため、保険料控除申告書の確認時には、扶養親族の有無や契約内容を確認します。ここでは、特例の対象者、控除額の上限、実務担当者が確認する事項を整理します。
●特例の対象と控除額の上限
子育て世帯向け生命保険料控除の特例は、23歳未満の扶養親族などがいる従業員が対象です。対象となる従業員については、一般生命保険料控除の上限額が従来の4万円から6万円に引き上げられます。控除額は年間の保険料額に応じて計算します。
| 年間の生命保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 30,000円以下 | 新生命保険料の全額 |
| 30,000円超 60,000円以下 | 新生命保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超 120,000円以下 | 新生命保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 一律60,000円 |
参考:国税庁「第41条の15の5((年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例))関係」
この特例は、子育て世帯の経済的負担を軽減するための2026年および2027年限定の暫定的な支援策です。ただし、上限額が引き上げられるのは一般生命保険料控除のみであり、介護医療保険料控除や個人年金保険料控除を含めた全体の合計適用限度額は、従来どおり12万円のままです。
●実務担当者の確認ポイント
実務では、従業員ごとに扶養親族の有無を確認し、一般生命保険料控除の上限額を4万円とするか、6万円とするかを判定します。旧生命保険料契約(平成24年以前の契約)が含まれる場合は計算ルールが複雑になるため、契約区分・保険料額・一般生命保険料控除の対象となる契約かどうかを控除証明書で確認します。
手作業で控除額を計算する場合は、令和8年分から計算式が変わるため、上限額を誤って適用しないよう計算式を確認します。年末調整システムを利用している場合は、「子育て特例」の自動判定に対応しているかを申告書の回収前に確認します。
特定親族特別控除の実務チェックポイント
特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の子どもがいる世帯の税負担を軽減するための制度です。2026年分以後は、申告書に記載する「源泉控除対象親族」の情報が、年末調整だけでなく月次の源泉徴収事務にも関係します。ここでは、月次の給与計算への反映と、重複申告や相互適用ルールで生じやすい記入ミスの防止について整理します。
●毎月の給与計算(源泉徴収)に与える影響を確認する
特定親族特別控除は、2026年分以後、年末調整だけでなく毎月の給与計算にも影響します。「源泉控除対象親族」の人数カウントが月次の源泉徴収税額の計算に関わるため、扶養控除等(異動)申告書の記載内容と給与計算上の人数が一致しているかを確認します。
2026年分の給与計算では、月次での人数把握が正しく行えているかを確認します。年度途中で従業員の扶養状況に変更があった場合、給与計算への反映が遅れると月次の所得税額に誤りが生じる可能性があるため、異動申告書を受け取った場合は、次回以降の給与計算に反映できるよう速やかに処理します。
●重複申告や相互適用ルールの記入ミスを防ぐ
特定親族特別控除では、同じ子どもを複数の人が重複して控除対象にすることはできません。共働き世帯では、同一の子どもを夫婦双方の扶養として申告してしまうケースがあるため、従業員に重複申告できないことを案内します。
また、配偶者控除や配偶者特別控除との組み合わせにも注意が必要です。たとえば、夫が配偶者(特別)控除を受け、妻が特定親族特別控除を受けるようなケースでは、控除対象となる親族の組み合わせによって可否判定を誤る可能性があります。
同一の親族について複数の納税者が特定親族特別控除の適用を受けることはできないため、重複申告や相互適用ができない点を申告書の案内時に周知します。
また、手書きの申告書では、親族の氏名、続柄、生年月日、所得見積額の記入漏れや誤記が起こりやすくなります。紙で回収する場合は、従業員に記入例を示し、記入漏れを防ぎます。申告システムを利用する場合は、対象者情報の自動入力や入力チェック機能を活用し、差し戻しや再確認の件数を減らします。
【その他の税制改正】通勤手当・食事の非課税枠拡大と今後の税制見通し
通勤手当や食事の現物支給についても、2026年の税制改正により非課税枠が見直されています。駐車場代の支給や食事補助の扱いによっては、給与計算上の課税・非課税の判定を見直す場面があります。ここでは、通勤手当・食事補助・防衛特別所得税の見通しを整理します。
●通勤手当の非課税枠拡大(駐車場代など)に伴う処理を確認する
2026年4月施行の改正により、従業員が一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担している場合、通勤距離に応じた非課税限度額に、駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算できるようになりました。
これにより、これまで課税扱いを前提としていた駐車場代についても、一定額まで非課税で支給できる可能性があります。企業では、駐車場代を新たに通勤手当として支給するか、すでに支給している場合は非課税枠の範囲内で処理できているかを確認します。新たに支給する場合は、通勤手当の支給規程や給与計算上の非課税設定を見直し、課税扱いと非課税扱いの区分を正しく設定します。
●食事の現物支給における非課税枠の変更に対応する
社内食堂や食事券など、食事の現物支給における非課税限度額も引き上げられています。食事補助を導入している企業では、従業員から徴収する金額や会社負担額が、改正後の基準に合っているかを確認します。
給与計算システムを利用している場合は、食事の現物支給に関する非課税限度額が更新されているかを月次給与計算の前に確認します。改正前の基準のまま処理すると、課税対象となる金額の判定を誤る可能性があります。
参考:国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」
●2027年以降に導入される防衛特別所得税の見通しを押さえる
2027年以降には、「防衛特別所得税(仮称)」の導入が予定されています。源泉徴収や給与計算の設定変更が想定されるため、今後公表される情報を確認しながら準備を進めます。
年末調整や月次給与計算では、基礎控除や扶養判定に加え、通勤手当や食事補助などの周辺項目も確認対象になります。今後の税制改正にも対応できるよう、現在の給与計算システムが法改正に合わせて設定を更新できるものかどうかを確認し、継続して運用できる体制を整えます。
令和8年分(2026年分)源泉徴収簿における様式変更の確認ポイント
令和8年分(2026年分)の源泉徴収簿では、源泉控除対象親族や特定親族特別控除など、税制改正に対応した様式変更が行われています。特に、人数カウントや控除額欄の記入箇所が変わるため、前年分との違いを確認したうえで年末調整作業を進めます。ここでは、新様式で確認する親族欄と年末調整欄の変更点を整理します。
●新様式における「源泉控除対象親族」の変更点を把握する
特定親族特別控除の新設に伴い、令和8年分以後の給与の源泉徴収事務では、「源泉控除対象親族」に該当する人数も扶養親族等の数の算定に反映されます。令和7年度税制改正による改正内容として、令和8年分以後の源泉控除対象親族の範囲は次のようになります。

出典:国税庁 PDF「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
これにより、2026年分からの給与の源泉徴収事務では、「源泉控除対象配偶者」と、新たな「源泉控除対象親族」に該当する人数で扶養親族等の数を算定します。令和7年分までの源泉徴収事務は、「源泉控除対象配偶者」および「控除対象扶養親族」の数を基に扶養親族等の数を算定していました。
●年末調整欄や各種控除欄の追加ポイントを押さえる
源泉徴収簿は次のように様式が変更されているため、必ず「令和8年分」の様式を使用します。手計算で年末調整を行う場合は前年分の様式を流用せず新様式に切り替え、給与計算システムを利用している場合は様式変更と控除欄の追加が反映されているかを確認します。
<源泉徴収簿の変更点>
- ① 「年末調整」に「特定親族特別控除額」欄を追加
- ② 「扶養控除等の申告・各種控除額」に「特定親族」欄を追加
- ③ 「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族の合計数」を「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の合計数」に変更
- ④ 「配偶者の有無」欄を削除
- ⑤ 「前年の年末調整に基づき繰り越した過不足税額」等の欄位置を変更し、「賞与等」を1行削除

出典:国税庁 PDF「令和8年分給与所得に対する源泉徴収簿」
複雑な年末調整を乗り切るための「電子化・システム導入」
ここまで見てきたように、2026年の年末調整は控除適用条件の判定が複雑になっています。具体的には、基礎控除や給与所得控除の引き上げ、扶養控除・配偶者控除などの所得要件の見直し、子育て世帯向け生命保険料控除の特例など、確認すべき項目が増えています。そのため、扶養親族の所得判定や控除額の確認を間違えないよう、これまで以上に慎重に作業を進める必要があります。
現在、法定調書の種類ごとに、前々年に提出すべきであった法定調書の提出枚数が100枚以上である場合は、e-Tax等による提出が義務づけられています。なお、令和9年1月以後は、この基準が30枚以上に引き下げられます。そのため、年末調整関連業務でも電子化の流れは進んでいるものの、いまだに年末調整手続きを紙で行っている企業は一定数存在します。しかし、今後税制改正がさらに複雑になってくると予想されるため、手作業で記入・チェックを行う業務フローでは、ミスをカバーしきれなくなるリスクがあります。
これからの年末調整には、従業員からの申告精度を高め、計算ミスを防ぐ仕組みが求められます。
一方、近年は、生命保険料控除証明書や住宅ローン控除証明書などを電子データで取得する流れも進んでおり、今後はマイナポータル連携による取得が広がっていくと考えられます。マイナポータル連携により、生命保険料や住宅ローン控除証明書などのデータを取得し、年末調整システムに取り込めるようになれば、紙の証明書を紛失するリスクがなくなります。また、システムへの自動取り込みにより、入力作業や確認作業の時間短縮にもつながります。
このように、提出すべき証明書の電子化も進んでおり、「年末調整=紙」という考え方自体を見直さなければならない時代がきているといえます。
市場では、こうした時代の流れを受け、年末調整申告用のクラウドサービスも数多く提供されています。ただし、サービスごとに対応範囲や操作方法が異なるため、使い勝手の面から慎重に選ぶことが求められます。
たとえば、奉行Edge 年末調整申告書クラウドの場合、自動で最新の法制度に対応するため、税額計算などの検算も行えます。
従業員は、画面に従って入力項目に必要な情報を入力するだけでよく、入力された年収額から自動計算して控除額が表示されます。

また、紙の申告書を配付・回収したり、未提出者へ催促したりする手間を減らせるため、手作業に比べて年末調整業務にかかる時間を短縮できます。従業員も場所を選ばず申告できるだけでなく、前年の情報が自動複写されるため、毎年同じ内容を入力する負担を減らせます。
さらに、控除証明書データの受入やマイナポータルとの連携もでき、保険料控除や住宅ローン控除の額が申告画面に自動入力され、控除額も自動で計算されます。2年目以降は、前年に申告した内容が自動的に複写されるため、住宅ローン控除などは毎年変動する年末調整残高を入力するのみで処理が完了します。
※控除証明書が紙の場合でも、内容を転記するだけで控除額が自動計算されます。

提出状況や内容の確認、差し戻しもすべてオンラインで完結でき、年末調整申告手続き業務の時間を、紙で行う場合と比べて約8割削減できます(OBC調べ)。
また、申告情報はCSVファイルで給与システムに連携できるため、誤入力の心配もなく、正確な税額計算が可能になります。各情報は給与奉行iクラウドにも自動連携で取り込めるため、申告情報の転記ミスや重複作業もなく、正確な税務処理と業務効率の両立を実現できます。

おわりに
ここ数年、税制改正が続くなかで、年末調整手続きは紙と手作業だけで対応する時代ではなくなってきています。計算処理の迅速化と正確性を両立させるためにも、年末調整の電子化は欠かせない取り組みです。
ただし、「とにかくデジタル化できればよい」わけではありません。控除額の自動計算や前年情報の活用、法改正に合わせた更新対応など、自社の業務フローに合った機能を備えたサービスを選ぶことが求められます。
「奉行Edge 年末調整申告書クラウド」のように、必要情報を入力するだけで控除額を自動計算できる基本機能に加え、前年の情報を参考にできる機能や、法改正に合わせた自動アップデート機能などを備えたシステムを活用することも有効です。2026年の複雑な税制改正に振り回されないためにも、自社に合ったシステムを選定し、従業員も担当者もスムーズに年末調整を進められる実務体制を整えていきましょう。
2026年の年末調整の変更点に関するよくある質問
- 2026年の年末調整で変更されるポイントは何ですか?
-
2026年の年末調整では、主に3つの変更があります。1つ目は、基礎控除・給与所得控除の引き上げです。基礎控除は最大104万円、給与所得控除の最低保障額は74万円に変更されます。2つ目は、扶養控除・配偶者控除などの所得要件が「62万円以下」に緩和される点です。3つ目は、23歳未満の扶養親族がいる子育て世帯を対象に、一般生命保険料控除の上限が6万円に引き上げられる特例の新設です。従業員本人の控除額だけでなく、扶養親族や配偶者の所得見積額、子育て世帯に該当するかどうかも確認対象になります。
- 2025年と2026年の年末調整の違いは何ですか?
-
2025年は、特定親族特別控除の新設や、それに伴う申告書・源泉徴収事務の見直しが主な変更点でした。2026年は、これに加えて基礎控除・給与所得控除の引き上げ、扶養控除・配偶者控除などの所得要件緩和、子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設があります。2025年よりも確認範囲が広がるため、従業員本人の控除額だけでなく、扶養親族や配偶者、子育て世帯に該当するかどうかも確認します。
- 2026年から扶養控除のルールは変わりますか?
-
2026年から、扶養控除などの対象となる親族等の合計所得金額要件が「58万円以下」から「62万円以下」に緩和されます。そのため、これまで所得要件を超えていた家族でも、改正後は控除対象になる可能性があります。学生アルバイトやパート収入がある家族を持つ従業員については、家族の収入金額と合計所得金額の見積額を確認し、親側の扶養判定と本人の税額を分けて確認します。なお、所得税は令和8年分以後、個人住民税は令和9年度分以後から適用されます。
関連リンク
こちらの記事もおすすめ
OBC 360のメルマガ登録はこちらから!




