減価償却の基礎知識|減価償却費計算で押さえたい定率法・定額法と会計処理の注意点

このエントリーをはてなブックマークに追加
pic_post81_main

「減価償却」の計算は複雑で、経理担当どころか経営者からも「分かりにくい」という声をよく聞きます。
しかし、減価償却費を適当に処理してしまうと、計算上の利益が増え、実際の利益に見合わない額の法人税を支払うなど、思わぬ痛手となることもあります。
今回は、経理担当が知っておきたい「減価償却方法」について、基礎知識から会計処理上のポイントをまとめます。

減価償却とは?減価償却がもたらす効果とは

減価償却は、所得税法や法人税法などで定められており、支出額を一定の方法で数年がかりで経費計上していく方法です。原則として、減価償却はその固定資産の使用可能期間が1年以上、かつ、その取得価格が10万円以上の場合に適用します。こうした減価償却をする資産は「減価償却資産」と言われます。

減価償却を行う利点は、以下のように大きく3つあります。

  • 節税効果がある
    建物、機械、自動車など購入額が高額なものは、一括計上してしまうと経費の負担が大きくなり、経営状態を圧迫するものになってしまいます。その反面、翌年は利益だけが拡大し、余分な法人税を払うことになるなど、経営バランスが悪くなることで様々な問題が発生する要因にもなります。
    減価償却で数年に分けて費用化することで、償却するまでの期間は利益にかかる法人税の税額を抑えることが可能になるのです。
  • 資金が手元に残る(自己金融機能)
    減価償却資産を購入した翌年以降は、経費計上により経理上の利益は減りますが、実際に支出があったわけではありません。費用として損益計算書に記載する額はそのまま企業内に留まり、課税される心配もありません。
    実際に支払った額は1回でも、経年で償却することにより資金を回収したことになります。
    ただし、これはあくまでも会計上の結果なので、同額の現金が企業内にあると確約するものではないことに留意しておきましょう。
  • 適正な損益が把握できる
    意思決定を行う上で、企業の経営状態を把握していることは必要条件です。そして、経営状態の把握には、適正な会計手続きによる会計情報が不可欠です。
    減価償却資産は、おおむね長期にわたり活用され、収益獲得に貢献します。減価償却で、その資産が生み出す収益と費用とのバランスが正しく計上され、資産の価値を適正に評価することができます。

減価償却費計算に必要な「耐用年数」と「取得価額」

毎年の減価償却費は、「耐用年数」と「取得価額」を用いて計算します。
業務の効率化を図るためにも、計算を始める前に「対象物に減価償却が適用できるかどうか」「耐用年数」「取得価額」を整理しておきましょう。

■ 耐用年数

減価償却の対象となる固定資産には、それぞれに「耐用年数」が定められています。
仮に耐用年数を5年とすると、5年の間に固定資産の「取得価額」を少しずつ経費として計上していくことになります。

土地や建設仮勘定など「非減価償却資産」に分類されるものもあるため、対象物かどうかの確認が必要です。調べても分からない場合は、所轄の税務署に問い合わせて確認してください。

主な固定資産の耐用年数
構造・用途 細目 耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(他に揚げてあるものを除く。) 事務机、事務いす、キャビネット 金属製 15年
その他 8年
応接セット 接客業用 5年
その他 8年
陳列棚、陳列ケース 冷凍機付・冷蔵機付 6年
その他 8年
ラジオ、テレビ、テープレコーダーその他の音響機器 5年
冷房用・暖房用機器 6年
電気冷蔵庫、電気洗濯機、その他の電気・ガス機器 6年
事務機器、通信機器 パソコン   4年
複写機、計算機(電子計算機を除く)、金銭登録機、タイムレコーダーなど 5年
電話設備その他の通信機器 デジタルボタン 6年
その他 10年
ファクシミリ 5年
インターホン、放送用設備 6年
一般用の車両(特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの)

 

 
自動車(2輪・3輪自動車を除く) 小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの) 4年
貨物自動車(ダンプ) 4年
貨物自動車(ダンプ以外) 5年
その他 6年
2輪・3輪自動車 3年
自転車 2年

■ 取得価額

取得価額には、基本的に資産の購入額に加え、その引取にかかる運賃や設置費など、資産を使用できるまでに要した費用も含まれます。
資産活用までに必要な費用には、引取運賃、荷役費、運送保険料、輸入手数料、関税などが挙げられます。

ただし、以下の費用については、減価償却資産の購入に関連して発生した支出であっても取得価額に含めないという選択肢を取ることが可能です。

取得価額に含めなくてもいいもの
  1. (1) 租税公課等
    • イ 不動産取得税又は自動車取得税
    • ロ 新増設に係る事業所税
    • ハ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
  2. (2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用
  3. (3) いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金
  4. (4) 減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)※使用開始後の借入金の利子は、期間の経過に応じて損金の額に算入。
  5. (5) 割賦販売契約などによって購入した減価償却資産の取得価額のうち、購入代価と割賦期間分の利息や売手側の代金回収のための費用等が明らかに区分されている場合の、利息や費用

減価償却資産の取得方法に連動する諸費用を取得価額に含めるかどうかは、慎重に検討した上で決定する必要があります。

法人税法の規定では、減価償却資産の取得時に必要な「税金の一部」などの費用に関しては、取得原価とせず一時費用として処理することを認めていますので、状況に応じた選択ができるように注意しておきましょう。

減価償却の計算方法 〜「定率法」と「定額法」

減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。

法人税法では、原則として定率法での計算を求めていますが、あくまでも税務上の処理であり、会計上は法人税法で定める方法以外でも問題はないとされています。定率法以外で計算する場合は、別途届出を行うことで可能になります。
ただし、「建物やソフトウェアなどは定額法で計算するほうが望ましい」など、減価償却資産の内訳によって定められた計算方法が異なる場合がありますので、注意が必要です。

※ソフトウェアの減価償却方法については、OBC360°記事「自社利用ソフトウェアの減価償却|耐用年数、入手方法別の会計処理について」を参照ください。

■ 「定率法」による計算方法

経年により資産価値は低下していきます。
定率法は、残存価値に対して一定の割合で減価償却を行う方法で、償却する額は初年度がもっとも多く、その後は経年とともに減少していきます。

【定率法の計算式】

減価償却費 = 未償却残高(購入年度は取得価額) × 定率法償却率

上記の方法で計算した減価償却額が「償却保証額(資産の取得価額 × 耐用年数に応じた保証率)」を下回った場合、その年度から終了年までは「定率法償却率」の代わりに「改定償却率」を使って計算します。
また、定率法の償却率で計算した償却額が「償却保証額」に満たなくなった場合は、その年以降の償却額は毎年同額となります。

■ 「定額法」による計算方法

文字通り、一定額を毎年計上していく方法で、償却費の額は基本的に毎年同じ額となります。
期の途中で減価償却資産を購入した場合、その年については月割りで計算を行います。

【定額法の計算式】

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

定率法も定額法も、償却率は耐用年数ごとに定められています。償却率については「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表八、別表九、別表十に詳しく掲載されています。取得年によって率が異なるので注意しましょう。
ここでは、2019年時点における最新の耐用年数15年分を紹介します。

償却率表 抜粋
耐用年数 2012年4月1日以降に取得した減価償却資産の 2007年4月1日以降に取得した減価償却資産の定額法の償却率
定率法の償却率 改定償却率 保証率
2 1.000 0.500
3 0.667 1.000 0.11089 0.344
4 0.500 1.000 0.12499 0.250
5 0.400 0.500 0.10800 0.200
6 0.333 0.334 0.09911 0.167
7 0.286 0.334 0.08680 0.143
8 0.250 0.334 0.07909 0.125
9 0.222 0.250 0.07126 0.112
10 0.200 0.250 0.06552 0.100
11 0.182 0.200 0.05992 0.091
12 0.167 0.200 0.05566 0.084
13 0.154 0.167 0.05180 0.077
14 0.143 0.167 0.04854 0.072
15 0.133 0.143 0.04565 0.067

では具体的に、どのような計算になるか見てみましょう。

例えば、2019年1月に普通自動車(新車)を取得価額200万円で購入した場合、耐用年数は6年になります。このときの減価償却の計算は、それぞれ以下のようになります。

【定率法で計算した場合】
償却率・・・0.333
改定償却率・・・0.334
償却保証額・・・200万円×0.09911=198,220円

償却年 償却額 計算式 翌年度期首価額
1年目 666,000 200万円×0.333 1,334,000
2年目 444,222 前年の残額×0.333 889,778
3年目 296,296 593,482
4年目 198,222 改定取得額(ここまでの残額)×0.334 395,260
5年目 198,222 改定取得額×0.334 197,038
6年目 197037 ここまでの残額-1円 1
定率法での減価償却イメージ

【定額法で計算した場合】
償却率・・・0.167

償却年 償却額 計算式 翌年度期首価額
1年目 334,000 200万円×0.167 1,666,000
2年目 334,000 1,332,000
3年目 334,000 998,000
4年目 334,000 664,000
5年目 334,000 333,000
6年目 329,999 ここまでの残額-1円 1
定額法の減価償却イメージ

いずれの方法でも、帳簿上にその資産を残すため最後に1円だけ残します。これを「備忘価額」と言います。

減価償却時に、担当者が留意しておきたいポイント

ここでは、減価償却の会計処理を行うにあたり、経理担当者として注意しておきたいポイントについてまとめます。

● 「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要な場合があります

前述したように、法人税法では定率法での計算を原則としていますが、定率法以外の方法で計算することも認められています。ただしその場合、「減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。
提出期限は、新たに取得した事業年度の確定申告書の提出期限、中間申告を行う場合はその中間申告書の提出期限までとなります。
申告書の様式および記載要領については、国税庁のホームページからダウンロードができます。

● 年度途中で購入した場合、初年度は月割りで計算します

期の途中で減価償却できる資産を取得した場合、取得月から期末までの期間で計算を行います。

【1年目の計算式】 

減価償却費 = 取得価額 × 定額法または定率法の償却率 × 使用月分/12ヶ月

例えば、12月決算の企業が2019年10月に乗用車を400万円で購入した場合、1年目は3ヶ月しか使用していないことになるため、各計算式に3/12を乗じて算出します。

<定率法の場合> 
乗用車の耐用年数 6年
定率法の償却率 0.333

1年目の減価償却費 = 400万円 × 0.333 × 3/12 = 333,000円

● 中古品を購入した場合、耐用年数は使用期間で計算します

中古品を購入した場合、どうすればよいか迷いがちなのが「耐用年数」の算出です。
中古品の場合、新品で購入したときの50%を超える購入額であれば、法定耐用年数が適用できます。新品購入額の50%以下なら、取得した時点を起点にその後の使用可能な年数を見積り、見積もった数値で減価償却費を計算します。
使用可能な年数が算出しづらい場合は、下記の方法でも必要な年数を算定することができます。

中古品の使用可能年数の簡単な見積方法
  1. (A) 法定耐用年数の全部を経過した資産は、法定耐用年数の20%に相当する年数を「使用可能年数」とする
  2. (B) 法定耐用年数の一部を経過した資産は、法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を加えた年数を「使用可能年数」とする

ただし、計算結果が2年に満たない場合は「2年」を使用可能年数とし、算出した年数に月単位の端数が出た時は切り捨てるものとします。

● 減価償却費は、「直接法」または「間接法」で会計処理を行います

減価償却の仕訳方法には「直接法」と「間接法」の2種類があり、それぞれで会計処理が変わりますので注意が必要です。

<直接法の場合>

直接法とは、減価償却費を直接固定資産から差し引いていく方法です。
例えば、取得価額10万円、耐用年数4年の固定資産を定額法で減価償却する場合、毎年の減価償却費は2.5万円になります。帳簿上では以下のように処理します。

借方 貸方
減価償却費 25,000 固定資産 25,000
<間接法の場合>

間接法とは、減価償却を行っても直接固定資産を減らさず、「減価償却累計額」という負債資産に集計して間接的に記帳する方法です。間接法を用いると、貸借対照表で減価償却資産の帳簿価額(取得価額―減価償却累計額)が明確に表示されることになります。

借方 貸方
減価償却費 25,000 減価償却累計額 25,000

また、減価償却完了前にその資産を除却した場合は、損失額(除去時の帳簿価額―見込評価額)を「固定資産除去損」として計上します。例えば、下記の固定資産を除却した場合、以下のように処理します。

(例)
取得原価100万円、帳簿価額10万円(減価償却累計額90万円)、見込評価額3万円の固定資産の除却

直接法の場合
借方 貸方
貯蔵品 30,000 固定資産 100,000
固定資産除去損 70,000
間接法の場合
借方 貸方
減価償却費累計額 900,000 固定資産 1,000,000
貯蔵品 30,000
固定資産除去損 70,000

● 損金算入の限度額に注意しましょう

損金とは、各種経費として損失した金額です。当然、減価償却費も損金算入でき、節税対策としてもメリットがあることは前述しました。
しかし、損金に算入できる金額には限度があり、償却限度を超えると損金不算入となります。減価償却を行う際は、限度額に充分注意しておきましょう。
なお、減価償却限度額の計算については、定率法・定額法それぞれに計算式があります。

<定率法での減価償却限度額の計算>

(算式1) 定率法の償却限度額 = (取得価額 -これまでの累計償却額))× 定率法の償却率

(算式2) 調整前償却額が償却保証額に満たない場合
定率法の償却限度額 = 改定取得価額 × 改定償却率

<定額法での減価償却限度額の計算>

(算式) 定額法の償却限度額 = 取得価額 × 定額法の償却率

詳しくは、国税庁ホームページ「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」を参照ください。

● 税制法の改正があった際は注意しましょう

税務の基盤となる税制法は、経済状況に合わせて改定されます。減価償却に関してはそれほど頻繁に影響するものではありませんが、それでも改正の内容によっては計算方法などがガラリと変わることもあります。
過去の例では、2007年には「減価償却資産償却限度額の計算方法」が変更され、2015年の税制改正大綱では、建物付属設備と構築物の法定償却方法が変更されるなどが発生しました。
こうした改正が行われると、固定資産の取得年度によって異なる計算方法を用いなければならないなど、業務負担が大きくなる可能性があります。
近年では、専用のシステムで減価償却費計算が行えるようになっていますが、正しい結果を得るには、そのシステムが最新の税制法に対応しているかどうかは重要です。アップデートの時期や対応について、今一度確認しておくとよいでしょう。

おわりに

減価償却は、計算にたどり着くまでに耐用年数や取得価額を整理する必要があり、なかなか一筋縄ではいかない業務です。
しかし、いま市場にはOBCの「固定資産奉行」のような減価償却に関する業務に対応するシステムも多く出回っています。資産に応じた減価償却費を自動計算したり、会計システムと連携して資産の仕訳も簡単に行えたりと、煩雑で手間のかかりやすい業務を効率化することも簡単になってきています。他にも、「固定資産奉行」では確定申告に必要となる「減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」いわゆる別表(十六)を作成できるなど、システムの機能性も充実しています。
最近では、減価償却の業務に対応するクラウドサービスも登場しており、選択肢は広がりを見せています。

健全な経営の実現には、実績に即した納税、純利益を正確に把握する意味でも、減価償却資産をしっかり管理する必要があります。このようなシステムやサービスを利用して、煩雑な業務をシンプルにし、適切に減価償却を管理できる体制を整えてはいかがでしょうか。

こちらの記事もおすすめ

関連リンク