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「給与のデジタル払い」が解禁!?企業が今のうちに確認しておくべきポイントとは

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2021年に入って、「給与のデジタル払い」に関する話題が注目を集めています。当初、政府は2021年春にも解禁する方針でしたが、5月現在でも制度改正案の審議が続いています。

しかし、一部には、試験的に手当や経費精算を電子マネー払いにする企業も現れています。政府も「2021年度のできるだけ早期に制度化」を目指すと改めて表明しており、徐々に「給与のデジタル払い」解禁が現実味を帯び始めてきました。

とはいえ、具体的なことはまだ明らかでないため、どのような影響があるのかピンとこない担当者も多いことでしょう。

今回は、給与のデジタル払いがもたらす企業への影響を中心に、今のうちに企業が確認しておくとよいポイントについてご紹介します。

目次

給与のデジタル払いとは?〜政府が解禁を進める理由

「給与のデジタル払い」とは、現金の手渡しや銀行口座への振込ではなく、スマートフォン決済やプリペイドカード、電子マネーなどといったデジタルマネーを利用して給与を支払う方法です。

本来、給料の支払いは、労働基準法で「通貨払いの原則」「直接払いの原則」「賃金全額払の原則」「毎月1回以上払いの原則」「一定期日払の原則」という5つの原則に従って支払うこととされています。現在は銀行振込が主流となっていますが、実は「直接払いの原則」の例外として認められた方法というわけです。つまり、「給与のデジタル払いが解禁される」ということは、銀行振込と同様、デジタルマネーで支払うことも「労働基準法の例外として認める」ことを意味します。

給与のデジタル払いを政府が推し進める背景には、実は次のような狙いがあります。

外国人労働者の受け入れ拡充

労働人口減少に伴い、政府はここ数年、率先して外国人労働者の受け入れ支援に力を入れてきました。その結果、外国人労働者は年々増加傾向にありますが、一方で、言語の問題や厳しい審査基準から銀行口座開設が困難になる問題が浮上しています。特に、銀行口座が開設できないと給与振込ができないため、雇用を躊躇するケースも発生しています。そのため、アメリカや中東など海外で普及しているデジタルマネーを給与の支払先として認めれば、外国人労働者の雇用拡大につながると期待しているのです。

キャッシュレス化の促進

新型コロナウイルスの影響で2020年以降急速に普及したキャッシュレス化ですが、世界規模で見ると日本はまだまだ出遅れています。政府は、「経済・社会のデジタル化の推進」を政策の1つとして掲げ、2025年までに40%、2030年までに80%の普及率を目指しており、その動機付けとしても期待されています。

新たな生活様式への対応

新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの生活様式は大きく変わりました。デジタルマネーによる決済は、接触を減らし感染予防にもなると言われており、日常生活でも定着し始めています。給与支払いにデジタルマネーが活用できれば、送金などの手間が軽減されるため、新しい生活様式への対策を進められるのではと期待されています。

給与のデジタル払いで利用できるデジタルマネーとは

デジタルマネーは、銀行以外で送金サービスを提供する「資金移動事業者」が提供しており、実物の貨幣を使わずにデジタルデータのみで決済ができます。日本でも、クレジットカードやデビットカード、交通系電子マネーやショッピングなどで利用されている電子マネー、QRコードを読み取ることで決済できるタイプ、仮想通貨など、すでに様々な種類が利用されています。

しかし、「全てのデジタルマネーが給与の支払先に利用できる」というわけではなく、2021年5月現在どのデジタルマネーが利用できるかは確定していません。専門家の間でも、通常の通貨をベースにしていない仮想通貨は、価格変動も激しいことから「給与の支払い方法として不適切」と考えられています。その他のデジタルマネーも、簡単に現金化できない仕組みのものは向いていないという意見もあります。
特に、現在の法制度下では、資金移動業者の破綻に備えた債務保証や不正取引が発生した際の損失補償など、銀行のように資金移動業者に対する規制がしっかりと整備されていません。給与支払いにデジタルマネーを解禁するには、資金移動業者の安定性や資金保全、換金の担保、個人情報を含む従業員保護といった観点で検討すべき事項が数多くあるのです。

そんな中、「給与のデジタル払い解禁」の話題とともに高い関心を寄せられているのが「ペイロールカード」です。
ペイロールカードは、給与振込先として機能するプリペイド(前払い)型のカードのことで、アメリカだけでなく、韓国、中国、インドと世界で普及が進んでいます。国内・海外のクレジットカードやQRコード決済のデジタルマネーにも対応しており、ATMから現金へ換金することも可能です。

銀行口座を開設する必要がなく、審査も不要で、簡易に口座を持つことができるため、事情があって銀行口座を開設することが難しい人も利用できます。
給与のデジタル払い解禁のニュースが話題になったことから、ペイロールカードへの関心も高まりつつあります。

給与支払いにどのデジタルマネーが選ばれるにせよ、先の課題を解決する法改正や運用スキームが具体化すれば、解禁される日も近いでしょう。

給与のデジタル払いで受ける企業のメリット・デメリット

給与をデジタル払いにするメリットとして、よく「従業員の利便性」が語られます。

通常デジタルマネーで決済する際は、銀行口座からデジタルマネーにチャージする必要があります。もし給与をデジタルマネーで受け取れれば、そうした「チャージ」が必要なくなります。今でも多くのデジタルマネーがATMから現金化できるので、日常的にキャッシュレス決済を利用している従業員にとっては利便性の高い方法となるでしょう。
ある民間会社の調査では、特に若い世代にデジタル払いに肯定的な人が多かったようです。他の調査でも、スマートフォン決済を利用している人が2020年時点で4割いることが分かっており、キャッシュレス決済を日常的に利用している従業員が多い企業なら、従業員の満足度が向上すると期待されているのです。

それだけではありません。デジタル払いの導入は、企業にとって次のようなメリットもあると考えられています。

●業務の効率化が期待できる

銀行振込の場合、どの従業員の口座(支店、口座番号、口座名義人)にいくら振り込むかを振込依頼書や振込一覧表にまとめ、銀行に持ち込むことで、銀行が支払日当日に各口座に入金します。デジタル払いの場合、どのデジタルマネーが適用されるかによっては、資金移動業者が用意したソフトを使用し簡単に手続きが行える可能性があり、業務量の削減・効率化につながるのではと期待されています。

●振込手数料が軽減される可能性がある

労働基準法第24条では「賃⾦は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎⽉1回以上、⼀定期⽇を定めて⽀払わなければならない」とあり、銀⾏振込で⼿数料がかかる場合は企業が負担することになっています。もしデジタル払いが可能になれば、手数料が銀行より低く抑えられる可能性があり、経費負担の削減も期待されています。そうなれば、経費精算などで即時決済も導入しやすくなり、従業員の立替負担を軽減することもできるでしょう。

●多様な人材の採用・確保がしやすくなる

給与の振込先としてデジタル払いが可能になると、デジタル払いを求める人材を集めやすくなることが予想されています。外国人労働者はもちろん、デジタル払いを希望する人にとっても就職・転職活動の際の選択肢にもなり得ます。特に副業者の場合、本業とは別に給与を管理する方法としてデジタルマネーを活用するケースも想定できます。

●フリーランスや個人事業主との取引が円滑になる

フリーランスや個人事業主に報酬を支払う場合、銀行振込では働いてから支払いまでの期間が長くなりがちです。そうした支払いにもデジタル払いを利用できれば、リアルタイムでの支払いも可能になるため、快適な取引ができるようになります。

制度導入を検討する前に確認しておきたいポイント

新しい制度を導入する場合は、スピーディーな判断とスムーズに運用させることが重要になります。今はまだ給与のデジタル払いを導入する予定はなくても、検討から運用まで時間がかからないよう、現体制・設備が対応可能か見極めておくことも大切です。
特に次の3つのポイントは、導入の妨げになる可能性があるため、事前に確認しておくことをお勧めします。

1.給与規定の見直しが必要かどうか

給与の支払い方法は、給与規定に明記しなければならない「絶対的記載事項」に該当します。
例えば、下記の厚生労働省のモデル例のように支払先を限定した表記になっている場合、デジタルマネーも含むように表記を変更する必要があります。

(賃金の支払と控除)

賃金は、労働者に対し、通貨で直接その全額を支払う。

2 前項について、労働者が同意した場合は、労働者本人の指定する金融機関の預貯金口座又は証券総合口座へ振込により賃金を支払う。

厚生労働省 スタートアップ労働条件「賃金規定」例より

給与規定は、変更すると届出が必要になるため、今のうちに確認しておくとよいでしょう。

※給与規定の変更届については、コラム「給与規定を変更したら変更届出は忘れずに!手続きの流れや注意点を分かりやすく解説」をご覧ください。

また、給与のデジタル払いを導入すると、従業員から「銀行口座とデジタルマネーに分割したい」という要望が出てくる可能性が高くなります。どのように社内ルールとして取り決めるかは企業判断になりますが、こうした声が多くなると、ある程度の妥協は認めざるを得なくなるでしょう。デジタル払いとの併用に関するルールについても、事前に取り決めておくことが肝要です。

2.給与システムが対応するかどうか

給与のデジタル払いで想定されている懸念事項の1つに、「システムの対応力」も上がっています。
多くのシステムでは、バージョンアップで法改正に対応するサービスが整っていますが、今後整備される運用スキームによっては現有の給与システムで対応できない可能性も考えられます。場合によっては、システムのリプレースもしくは改修が必要になるでしょう。
制度化されるまでは各社の対応方法も不確定ですが、現有システムがどのように制度に対応するかについて、ベンダーからの情報を定期的に確認しておくとよいでしょう。
特に、現有システムがクラウド型でない場合は、そもそもデジタルマネーに対応しない可能性もあります。改修やリプレースにもコストや時間がかかるため、これを機にクラウド移行するかどうかも検討しておきましょう。

3.従業員情報の収集・管理方法は適切かどうか

実際にデジタル払いを導入すると、従業員に対して「デジタル払いへの変更希望」とともに「切り替える際の支払先情報の提供」を求める必要が生じます。
例えば、デジタル払いには、銀行口座情報に代わるデジタルマネーの個人キー情報が必要になります。個人キー情報の中には、銀行名や本支店名、口座番号のような視覚できる情報がないものもあり、従来の情報収集や管理の方法では対応が難しくなる可能性があります。特に、個人キーは個人情報にあたるため、情報漏洩のないよう万全な体制で収集し管理することが望まれます。紙やメールで情報を収集できたとしても、万全なセキュリティ体制が求められるうえ、多くの従業員が希望すると業務負荷が上がる可能性もあります。
現在の業務プロセスで、適切に、負担なく情報を収集・管理できるか、今のうちに見直しておくとよいでしょう。

おわりに

今、世の中は、多様化する社会のニーズに対応するため、あらゆるモノ・コトがデジタルシフトしています。行政でも、押印廃止や各種手続きの電子化などが進められており、給与のデジタル払いが検討されているのも「時代の要請」と言えるでしょう。

デジタル化は、業務においても大きな変化を生みだします。仕事の効率を大きく向上させ、結果として企業の生産性が向上し、競争力強化が実現できます。事実、中小企業庁が2020年7月に発表したレポート「中小企業のデジタル化に向けて」でも、IT投資に積極的な企業ほど生産性が高いことが報告されています。

だからこそ、今市場では、様々な業務を効率化するクラウドサービスが数多く提供されています。業務に合わせて導入できるので、自社サーバのように多額な導入コストを工面する必要もなく、自社の体制や環境に合わせて少しずつデジタルシフトしていくことができます。
例えば人事労務業務の場合、従業員とのやり取りを紙からデータにするだけでも、その後の作業効率は格段にあがります。データで受け取れば、紙を見て手入力する必要がなくなり、そのまま様々な手続き業務にデータを活用することができます。奉行Edge労務管理電子化クラウドのように、データでの情報収集もしながら社会保険や労働保険手続きも直接電子申請にも対応するシステムなら、行政手続きまで手間をかけず完了させることができます。

もはや、業務のデジタル化は企業にとって「当たり前の装備」になりつつあります。そうした時代の流れを見据えて、早晩「一人総務時代」になると懸念されている人事総務部門から、少しずつ準備できることを始めてみませんか。

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