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改正育児・介護休業法に男性育休が新設!取得期間や要件、注意点など担当者が押さえておきたいポイント

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2021年9月に改正育児・介護休業法が閣議決定され、2022年4月1日からいよいよ「男性育休」が段階的に施行されます。
夫婦でも共働きが当たり前になっている現代において、男性が育児に参加する環境の整備は大きな意味があると言えます。働き方改革などの影響もあり、多くの企業が法案の動向に注目されていたことでしょう。
そこで今回は、改正育児・介護休業法について「男性育休」に関する内容を中心に、担当者目線で押さえておきたいポイントを解説します。

目次


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改正育児・介護休業法で「男性育休」が取り上げられた背景

育児・介護休業法は、少子高齢化が進む中、育児や介護を行う労働者が仕事と家庭を両立して働きやすいよう支援するための法律です。そこに今回追加されたのが、男性の育休取得に関する支援項目です。

これまでも「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」など、男性でも育児休業を取得できる取り組みはありましたが、厚生労働省が2021年3月に発表した「令和2年度雇用均等基本調査」によれば、育休取得率は女性でも100%ではなく、男性は実際の取得率は2019年度で7.48%、2020年度で12.65%と、女性の5分の1にも満たない状況です。男性の育休取得は年々上昇してはいるものの、政府の「2020年までに13%」にする目標は達成できませんでした。

男性の育児休業取得が進まない原因としては、男性が育休取得する上での社内整備や、それに対する認知・理解が追いついていないことが挙げられています。
多くの企業では、「まだ男性が育休を取りづらい風土がある」「一度に長期で休業することが難しい」「収入減」などの問題があり、育休を取りたくても申請が進んでいません。働く女性が増えたにも関わらず、女性の家庭での負担はまだまだ重く、出産を機に退職する女性もまだ大勢います。そうした現状を変え、「男女を問わず育児ができる社会」を目指すため、法改正によって「男性の育休取得支援」が加えられることになりました。

ただし、この法改正が閣議決定される前後から、各メディアでは「男性育休が義務化!?」と話題になりましたが、男性の育休取得が義務化されるわけではありません。
政府では、2025年までに男性育休取得率の30%を目指しており、今回の改正は目標実現を加速させるための支援内容になっています。

2022年4月以降の改正育児・介護休業法|5つのポイント

この改正は、「男女とも育児休業をより取りやすくする」ことが目的です。そのため、夫婦で取得しやすくなるように従来の育休制度についても一部見直しが行われました。 厚生労働省のホームページでは、次のような改正内容が施行日とともに紹介されています。

(1)雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化(2022年4月1日〜)

今回の改正法では、男女ともに育休取得の申出が円滑に行われるよう、育休を取得しやすい雇用環境の整備が義務づけられます。そのため、企業は次のような措置を1つまたは複数講じる必要があります。

  1. ① 育休に関する研修の実施
  2. ② 育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
  3. ③ 従業員への育休取得事例の収集・提供
  4. ④ 従業員へ育休に関する制度と育休取得促進に関する方針の周知

また、女性社員の妊娠の際も、男性社員の妻の妊娠・出産に際しても、次のような育休制度についての説明と取得意向の確認が必須となりました。

周知事項

  1. 1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 2. 育児休業・産後パパ育休の申出先
  3. 3. 育児休業給付に関すること
  4. 4. 従業員が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

2019年9月に内閣府が発表した「男性の子育て目的の休暇取得に関する調査研究」でも、男性の育児休暇取得率は、企業が育児休業取得促進に取り組んでいることや、上司の理解の有無が大きく影響していることが分かっています。

内閣府「男性の子育て目的の休暇取得に関する調査研究」PDF「3.調査結果のポイント」より

出典:内閣府「男性の子育て目的の休暇取得に関する調査研究」PDF「3.調査結果のポイント」より

男性の育休取得を挙げるためには、取得を支援する環境作りが重要になるため、雇用環境整備として中小企業も含めた全ての企業に対し、義務化されることになっています。
なお、周知・意向確認の方法については、「面談」「書面交付」「FAX」「メール等」のいずれかとされています。

(2)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(2022年4月1日〜)

今回の改正により、現行法で「有期雇用労働者が育児・介護休業を取得する要件」とされている「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上ある者」が廃止されます。このため、2022年4月1日以降に有期雇用労働者が育休を取得する場合は、もう1つの要件である「1歳6ヵ月までの間に契約満了することが明らかでない者」のみが適用され、無期雇用で働いている人と同様の扱いが受けられます。
ただし、労使協定締結により「雇用された期間が1年以上」を定めている場合は、1年未満の従業員を除外することができます。

(3)産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(2022年10月1日〜)

男性の育児休業取得を促進するため、「出生時育休制度」(以下「産後パパ育休」)が新設されます。
これは、「原則、子供が1歳(最長2歳)まで」とする育休制度とは別に取得できるもので、出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得できます。
これまでは、ママの出産後8週間以内の期間内にパパが育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度パパが育児休業を取得できる「パパ休暇」制度がありましたが、今回の産後パパ育休は、このうち「出産後8週間以内の期間内」を別枠として独立させたものになります。
申請期限は、原則として「休業希望日の2週間前まで」となっており、「出産予定日がずれた」「産後の母子の健康状態を見て決めたい」など臨機応変に取得することができるようになります。

※環境の整備などについて、改正法で義務付けられる内容を上回る取り組みを労使協定で定めている場合は「1か月前まで」とすることができます。

また、労使協定を締結すれば男性も休業中に就労が可能になり、男性の育児参加を促進する効果が期待できます。
育休期間中の就労についての手続きは、次のような流れになります。

ただし、企業の意に反して、労働者が同休業中の就業を希望しない場合でも、解雇やその他不利益取扱いをしてはなりません。 なお、就業可能日等には次のような上限があるので注意しましょう。

就業可能日等の上限

  1. ● 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
  2. ● 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

例えば、従業員の所定労働時間が1日8時間、1週間の所定労働日が5日の場合、2週間の休業期間中に働ける上限は、「就業日数5日、就業時間40時間」もしくは「就業日の8時間未満」(休業期間中の所定労働日=10日・休業期間中の所定労働時間=80時間となるため)となります。

(4)育児休業の分割取得(2022年10月1日〜)

現行法では、育休の分割取得は原則できませんが、新たな育休制度では2回まで分割して取得できるようになります。この分割取得は産後パパ育休でも適用されるため、夫婦で育休制度を併用すれば、男性は1歳までに計4回の育休取得も可能になります。
また、「保育所に入所できない」等による1歳以降の育休延長についても、育休開始時点を柔軟化することにより、夫婦で途中交代しながら育休取得ができます。

厚生労働省 パンフレットPDF「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より
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厚生労働省 パンフレットPDF「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より

出典:厚生労働省 パンフレットPDF「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より

また、1歳以降の育休再取得についても、分割取得と同時に「特別な事情がある場合に限り再取得可能」に変更されます。

(5)育児休業取得状況の公表の義務化(2023年4月1日〜)

「育休を取りやすい風土作り」を意識づけるため、2023年4月以降、従業員1,001人超の大企業に対して「1年に1回育児休業の取得率の公表」が義務付けられることになりました。公表内容は、男性従業員の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定められる予定です。
男性の育休取得率は、SDGsやESG投資などで企業の社会的評価や投資の判断基準になると予想されており、大企業では人気向上を狙って積極的に取り組む動きが加速すると考えられています。


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改正法施行に向けて企業が準備すべき3つのこと

今回の改正は、産後パパ育休の創設から有期雇用労働者の取得要件の変更、現行育休制度の改正と、多岐にわたります。これらの改正内容に準拠するため、企業は施行日までに次の3項目について準備を進めておく必要があります。

  1. 1. 就業規則等の改定が必要か確認する
  2. 2. 男女ともに育児休暇が取得できるよう環境整備を行う
  3. 3. 産後パパ育休での育児休業給付金手続きを確認しておく
1. 就業規則等の改定が必要か確認する

「育児休業取得状況の公表の義務化」を除くその他の改正内容は、規模を問わず全ての企業に適用されます。そのため、これまで労使協定の締結や育児介護休業について充分な制度を定めていなかった企業では、規約や社内ルールづくりから始める必要があります。
人事労務担当者としては、改正法の内容を理解した上で自社の就業規則等の改定が必要か見定め、必要に応じて改定を実施しましょう。

2. 男女ともに育児休暇が取得できるよう環境整備を行う

2022年4月以降に義務化される「雇用環境整備」については、現行育休制度からの改正内容だけでなく、新設される産後パパ育休への周知徹底も必要です。「該当する当事者だけが知っておけばよい」というものではないため、管理者を中心に全社的な理解促進に努める必要があります。
また最近は、マタニティハラスメントや時短ハラスメントなど、育休取得に対するハラスメントが社会問題となっています。今回の改正では、妊娠・出産の申し出や、それにかかる育休取得の申し出、産後パパ育休期間中の就業ができないことに対する不利益な取り扱いが禁止されているだけでなく、企業には上司や同僚からのハラスメントを防止する措置も義務づけられています。特に男性が育休を取得する場合、「男のくせに」などという言葉も投げかけられやすく、社内全体で理解を深める必要もあります。育休取得には周囲の協力も欠かせないため、社内研修などを通してしっかり周知・理解促進に努めましょう。

3. 産後パパ育休での育児休業給付金手続きを確認しておく

産後パパ育休は、育児休業給付金の対象となります。(出生時育児休業給付金)ただし、休業中に就業した場合は、就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業時間数が80時間)以下である場合に給付の対象となります。詳しい手続き方法や書類の入手については、所轄のハローワークで確認しておきましょう。
また、男性社員にとっては、育児休業給付金の手続きだけでなく「育休手続きも初めて」という人も多いはずです。少なからず社内申請上で不明点なども出てくると考えられますので、社内の手続き方法や申請に必要な情報などについても、社内に周知しておくことが肝要です。

クラウド型の労務管理システムで育休申請もスムーズに!

社内手続きにおいて、育休申請などを紙の書類で回収していると、承認フローや本人への問い合わせ等などで時間がかかったり、ハローワークへの申請業務にも手作業が発生したりして、手続き業務に相当の時間を費やすことになります。せっかく制度が手厚くなっても、その分業務の手間が増えては育休取得促進にも影響が出かねません。
こうした手続き業務を効率化するのに役立つのが、労務管理システムです。

最近はクラウドサービスで提供されているタイプが多く、どこからでもアクセスできて、社内の申請手続きを簡単にペーパーレス化できます。
例えば、奉行Edge労務管理電子化クラウドは、従業員がパソコンやスマートフォンから育児休業の取得申請ができ、男性が育児休業のみを取得する場合の申請にも対応しています。また、育児休業給付金の受取口座を、給与・賞与の口座とは別に指定することも可能です。

社会保険や雇用保険の手続きも、提出された情報を基にシステムから電子申請できるので、育児休業給付金の一連の手続きを簡単に進められます。マイナポータル申請APIにも対応しているため、マイナンバーで紐付いていれば年金機構や健康保険組合への手続きも電子申請が可能です。
こうしたクラウドサービスを利用すれば、担当者は情報を転記する必要も、申請のためにハローワークに移動する必要もなくなります。

さらに、給与奉行クラウドと連携すれば、「被保険者休業開始時賃金月額証明書」に賃金情報や勤怠情報が自動入力されるため、転記ミスや手入力の手間も省けます。

おわりに

男性が育休取得をするかどうかは、最終的に各家庭の判断となりますが、男女を問わず、育休取得には周囲の理解が欠かせません。
特に、雇用環境の整備や周知・理解の促進は、企業に義務づけられているものであり、怠ると行政労働局の指導勧告対象となって、最悪の場合は企業名が公表されることもあります。そうなれば、企業ブランド力は落ち、採用難など悪影響を及ぼす可能性もあります。
これからは、男女ともに「育休取得は当たり前」になることを見越し、就業規則の改定や手続きのシステム化などの環境整備に、今からしっかり取り組んでおきましょう。


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