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[IT導入補助金2022]インボイス導入を見据え国が企業のDX推進を強力支援!2年分のクラウドサービス利用料が対象に
IT導入補助金は、中小企業などがITツールを導入する際に費用の一部を国が補助する制度です。2022年度で6回目を迎えるこの制度は、毎年大きな予算が充てられ、多くの企業が活用している人気の制度の1つです。
そんなIT導入補助金の2022年度の補助内容が、公式サイトで発表されました。それによると、2022年度はインボイス導入を見据えた補助内容となっており、企業間取引や経理業務のDX化を強力に進めようとする政府の方針がみられます。
今回は、2022年度のIT補助金について、新設された補助対象枠や従来からの変更点やスケジュールなど最新情報をご紹介します。
目次
- 2022年度IT導入補助金の概要
- 特別枠「デジタル化基盤導入類型」とは
- 特別枠「複数社連携IT導入類型」とは
- 通常枠(A類型・B類型)の補助内容
- 2021年度採択率からみる2022年度の採択予想
- 申請スケジュールと申請時の注意点
- 申請前に準備しておくべき3つのこと
- インボイス導入で業務が煩雑化する前に「業務のDX化」を!
2022年度IT導入補助金の概要
IT導入補助金は、国内の中小企業や小規模事業者、個人事業主※を対象として、業務の効率化や生産性の向上を目的に、IT導入支援事業者が提供するITツールの導入費用の一部を支援する補助金です。採択を受けてからITツールを購入することができるので、企業にとってコスト面のリスクがない点が魅力となっています。
※ 補助対象となる中小企業・小規模事業者の条件については、「IT導入補助金」公式サイトを参照ください。
IT導入補助金は、毎年補助対象や採択率の見直しが行われており、特にここ数年は通常枠(A類型・B類型)の他に、時世に対応する “特別枠”が設けられています。例えば、2020年・2021年には、新型コロナウイルス感染症対策に焦点が当てられ、業務を非対面化するITツールが補助対象となりました。
2022年度は、インボイス制度のスタートが翌年に控えていることを踏まえ、企業間取引や経理業務のデジタル化を強力に推進するため次の内容が追加され、特別枠として「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」が設けられることになりました。
- ① 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特化し、補助率を引き上げ
- ② クラウド利用料を2年分まとめて補助
- ③ PC・タブレット、レジ・券売機等の購入を補助対象に追加
- ④ 複数社連携IT導入類型の創設
特別枠「デジタル化基盤導入類型」とは
「デジタル化基盤導入類型」では、中小企業・小規模事業者等のインボイス制度対応のためのデジタル化を一気に進めるため、補助対象となるITツールが会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに限定されています。
補助対象となる経費は、これらのパッケージ購入費やクラウドサービスの初期費用・サービス利用料、システム構築費や導入作業費など関連費用となります。特に、クラウドサービスの月額・年額利用料とシステム保守費用は、最大2年分が補助対象となるため、会計システム、受発注システム、決済システム、ECシステムをクラウドサービスで導入すれば、インボイス制度がスタートする2023年10月までの運用コストの一部が補助金で賄えることになります。
補助率は、通常枠よりも高く設定されており、より活用しやすくなっています。また、計算方法が二重構造になっていることも特徴的で、補助額は補助率3/4が適用される範囲と補助率2/3が適用される範囲でそれぞれ算出し合算することになります。(補助率3/4が適用される範囲は、ソフトウェア導入費用に換算すると約6.6万円〜66.6万円となり、超過分に補助率2/3が適用されます)
例えば、ソフトウェア導入費用が80万円の場合、66.6万円までは補助率3/4が、残りの13.4万円は補助率2/3が適用され、合計で約58.8万円が補助されることになります。
(例)
また、PCやタブレットなどハードウェアについては、2021年度ではレンタル費用が補助対象になっていましたが、2022年度は「購入費」が対象となっています。補助率や補助上限額から換算すると、PCなら1〜2台分の購入費が補助金で賄える計算になります。
特別枠「複数社連携IT導入類型」とは
もう1つ特別枠として追加される「複数社連携IT導入類型」は、地域DXの推進や生産性の向上を目的として、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入する取り組みを支援するものになります。
具体的には、次のような取り組みイメージが紹介されています。
補助対象事業者は、商工団体や地域のまちづくり、観光振興などの担い手として活動する10者以上の中小企業や団体となっています。
補助対象となる経費は、「基盤導入経費」「消費動向等分析経費」「参画事業者のとりまとめに要した事務費・専門家費」の3種類があり、それぞれ補助額・補助率は次のようになっています。(基盤導入経費の補助金計算は、デジタル化基盤導入類型と同様となっています)
補助限度額として、基盤導入経費と消費動向等分析経費では3,000万円、事務費・専門家は200万円と設定されていますので、その範囲内での補助となります。
通常枠(A類型・B類型)の補助内容
2022年度の通常枠(A類型・B類型)の補助額・補助率は、次のようになっています。
通常枠が利用できるITツールは2021年度と同様、主に生産性の向上を目的とするもので、類型ごとにプロセス要件が設定されています。要件を満たすITツールであれば、デジタル化基盤導入類型のようにソフトの指定はありません。プロセス要件に関する詳細は、OBCのIT導入補助金特設サイトまたは公式サイトを参照ください。
2021年度採択率からみる2022年度の採択予想
気になる採択率ですが、公式サイトによると、2021年度は通常枠(A類型・B類型)と新型コロナウイルス感染予防対策を目的とした低感染リスク型ビジネス枠(C類型・D類型)で、それぞれ第1次〜第5次公募まで次のような申請者数、交付決定数となっており、全体では59.25%の採択率となっています。
IT導入補助金の2022年度予算は単体では公表されていませんが、中小企業生産性革命推進事業の2022年度補正予算額が2,001億円となっており、2021年度は2,300億円であったことから考えると、2022年度の採択率も上記とほぼ同程度ではないかと予想されます。
IT導入補助金は、一度採択を受けると以降の年度公募期間に応募することはできません。(原則1回)
ただし、不採択になったり採択後に申請を取り下げたりした場合は、次回以降の公募期間に再申請することができます。採択されるまで何度でも申請できるので、あきらめずに申請し続けるのもポイントでしょう。
申請スケジュールと申請時の注意点
IT導入補助金は、毎年複数回の公募期間が設定されています。(2021年度は5次公募まで実施)
それぞれの公募期間の締切日までに受け付けた申請で審査し、交付が決定します。
申請は公式サイトの申請マイページから行うため、締切日の直前はアクセスが集中し通常より接続に時間がかかる可能性があります。申請・提出は、日時に余裕を持って行うのがよいでしょう。
<参考:2022年度 1次公募スケジュール>
申請には、従来通りIT導入支援事業者の協力が必要です。
IT導入支援事業者とは、経済産業省が委託する事務局によって認められたITベンダー・サービス事業者です。IT導入支援事業者の提案によって導入するITツールが決定したら、IT導入支援事業者と共同作成で申請することになります。
「IT導入補助金を検討してみようか」と思ったら、早めにIT導入支援事業者に相談しましょう。
申請前に準備しておくべき3つのこと
IT導入補助金の申請は、次のようなステップで行います。
<申請ステップ>
公募がスタートしたら交付申請を行いますが、1回の公募期間は約1ヵ月と短いため、すぐに手続きができるよう少なくとも次の3点は事前に準備しておきましょう。
1.IT導入支援事業者に相談しITツールを選ぶ補助対象となるITツールは、あらかじめIT導入支援事業者が事務局に登録し認定を受けているものに限られます。また、申請には「どのような課題を」「どのITツールで解決するか」などの内容が必要です。
そのため、まずはIT導入支援事業者に相談し、事業や業務の課題にマッチしたITツールを選びましょう。
なお、IT導入補助金の審査では、事業面からの審査項目・政策面からの審査項目の他に加点項目※での審査もあり、中にはITツールに関する項目も含まれています。加点対象となる取り組みは採択されやすくなるため、ITツール選びの際に留意しておくとよいでしょう。
※ B類型では加点項目の一部が賃上げ目標として必須となります。
(参考)2021年度IT補助金の加点項目
- ● 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること
- ● 地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること
- ● クラウドを利用したITツールを導入すること
- ● テレワーク対応したITツールを導入すること
- ● インボイス制度対応したITツールを導入すること
- ● 以下の要件をすべて満たす事業計画を策定し、従業員に表明していること
- • 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
- • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
申請は、基本的にIT導入事業者が中心となって行いますが、オンラインでの手続きとなるため、「gBizIDプライムアカウント」が必要になります。gBizIDとは法人・個人事業主向けの共通認証システムで、様々な行政サービスに利用できます。プライムアカウントは企業に割り当てられるアカウントで、補助金を受ける企業が取得しなければなりません。
プライムアカウントは、gBizIDサイトから申請できますが、印鑑証明書・印鑑登録書など書類の提出が必要です。
審査の上、提出された書類に問題がなければ1週間程度でアカウントが発行されます。
申請には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。
「SECURITY ACTION」は、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。2021年度から導入され、「SECURITY ACTION」の「★一つ星」「★★二つ星」の宣言が申請要件となっています。
申請時に「SECURITY ACTION」の宣言済アカウントIDの入力が必要となりますので、アカウントIDの発行および星の取得を済ませておきましょう。
「SECURITY ACTION」の詳細や手続き方法については、IPAの「SECURITY ACTION」サイトを参照ください。
インボイス導入で業務が煩雑化する前に「業務のDX化」を!
2022年度のIT導入補助金は、1年後にスタートするインボイス制度の導入準備が大きな目的です。
インボイス制度では請求書の記載事項が変わるため、発行側の導入準備が注目を集めていますが、実は本当に業務が大変になるのは受領側の経理業務です。
例えば、仕入税額控除※を適用するためには、税区分ごとの仕訳起票はもちろん、適格請求書とそうでない書類を分ける必要もあり、取引先から区分しておく必要があります。
※ インボイス制度後の仕入税額控除の要件については、コラム「仕入税額控除とは?要件や計算方法などの基礎知識~インボイス制度での変更点も解説」を参照ください。
また、受領した証憑に紙とデータが混在すると、証憑を収集する業務フローが複雑になり負担が増えることになります。証憑のタイプごとに適切な保管も必要になり、気付かないうちに電子保管すべき証憑を紙で保管してしまうなど電子帳簿保存法違反をしてしまうことも考えられます。
このように受領後の業務負担を考えると、受領側こそインボイス制度が始まる前に経理業務を変革しておくことが重要です。
今回のIT導入補助金は、クラウドサービスをより長く使えるよう利用料2年分も補助対象になっています。クラウド活用はDX推進の第1歩です。この機会にぜひIT導入補助金を活用して、業務のDX化を進めておきましょう!
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