電子インボイスとは?「Peppol(ペポル)」とは? 2023年インボイス制度後の業務にもたらすメリット

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2020年12月、電子インボイス推進協議会「EIPA(エイパ)」によって、日本国内における電子インボイスの標準仕様を国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することも発表され、今“電子インボイス”が注目を集めています。
しかし、まだ仕組みが構築されているわけではなく、電子インボイスがどのようなものかと訝しがる担当者も多いのではないでしょうか。
電子インボイスは、これから具体化されるため未知数な部分も多くありますが、今回は電子インボイスが一体どんなものか、「Peppol(ペポル)」や業務にもたらす影響などについて解説します。

目次

電子インボイスとは

国際規格「Peppol(ペポル)」とは

電子インボイスが業務にもたらす5つのメリット

おわりに

電子インボイスとは

電子インボイスとは、適格請求書等保存方式(以後「インボイス制度※」)において仕入税額控除に必須となる適格請求書を電子化する仕組みのことを言います。
インボイス制度は、2019年に消費税が複数税率となったことを受けて、適正な消費税の仕入税額控除を行うことを目的にしたもので、2023年10月から導入される予定となっています。
現在は、「税率ごとに区分して合計した金額」と「軽減税率が適用される項目」の記載がある請求書を受領し保存していれば、免税事業者との取引においても仕入税額控除を受けることができます。(区分記載請求書等保存方式)
しかし、インボイス制度が始まると、適格請求書発行事業者が発行した請求書のみが仕入税額控除の計算対象となり、それ以外(免税事業者など)の請求書では仕入税額控除が受けられなくなります。この適格請求書を取り扱うことによって、買い手・売り手双方にこれまでにない業務負荷が発生することが懸念されているのです。
例えば、買い手は仕入税額控除を受けるために税区分ごとに会計処理を行い、税率ごとに仕入税額控除の計算をしなければ成りません。また、免税事業者からの仕入は仕入税額控除の対象にならないため、会計処理は分けて行う必要があります。
さらに、売り手も、適格請求書発行事業者に登録したり、請求書には登録番号や適用税率と税率ごとの消費税額の表示を求められたりという対応が必要になります。
そこで、政府と会計システムなどを手がける民間企業団体が協議を開始し、来るインボイス制度開始に向けて企業間でやり取りする請求書の完全なデジタル化、つまり“電子インボイス”(Electronic Invoicing)の導入検討を始めたのです。
EUでは、すでに電子インボイスが紙のインボイス(請求書や納品書、送り状などの役割を備えた貨物通関手続きの書類)と同様の地位を得ており、加盟国間での規定統一が図られています。また韓国でも、全面的に電子インボイス制度が導入されているなど、世界で電子インボイスの導入が進んでいます。
日本でも導入することで、企業がスムーズにインボイス制度へ対応できるよう、電子インボイス化を進めています。
※インボイス制度についての詳細は、コラム「インボイス制度とは 〜適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響〜」も参照ください。

国際規格「Peppol(ペポル)」とは

国際規格「Peppol(ペポル)」とは、受発注や請求にかかる電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」の規格で、国際的な非営利組織であるOPEN PEPPOLが管理しているグローバルな標準規格です。
当初はヨーロッパの公共調達の仕組みとして導入されましたが、その後BtoB取引でも利用が促進され、「Peppol(ペポル)」に基づく電子インボイスの国際的な利用が進んでいます。日本では、2020年末に電子インボイス推進協議会(EIPA:エイパ)が国内向け電子インボイスの仕様にこの「Peppol(ペポル)」に準拠させることを発表したことで、注目を集めました。
電子インボイス推進協議会が「Peppol(ペポル)」を標準仕様にする目的は、「中小企業や大企業が幅広く低コストで利用できること」「グローバルな取引にも対応できる仕組みにすること」にあります。
すでに「Peppol(ペポル)」を導入している国では、「ユーザー(中小・小規模事業者)の操作がシンプルで、導入のハードルが低い」「ユーザー間でデータ連携が進み、業務コストの削減が実現できている」「既存のシステムやEDIネットワークを利用しながら、別のネットワークの取引相手とデータのやり取りが可能」などと、高く評価されています。
電子インボイス推進協議会では、2023年10月にはどの企業でも「電子インボイスありき」で業務が行われていることを目指して、今後は「Peppol(ペポル)」をベースにして、2021年6月末を目処に日本の法令や商慣習などに対応した“日本標準仕様”を策定・公開ができるよう進めています。

電子インボイスが業務にもたらす5つのメリット

現在すでに、取引先と請求書を電子データでやりとりすることは認められています。
※詳しくは、コラム「請求書を電子化するメリットとは|対応における法的解釈と導入時の注意点も解説!」を参照ください。
インボイス通達(平成30年6月6日)でも、適格請求書を電子データとして提供してよいことになっており(インボイス通達3−2)その方法として、光ディスク等のほか、次のようなものが挙げられています。

  1. EDI取引を通じた提供
  2. 電子メールによる提供
  3. インターネット上のサイトを通じた提供

ではなぜ、これらの方法がすでに認められているにもかかわらず、改めて電子インボイスが必要なのでしょうか。

実は電子インボイスには、上記の方法ではなし得ない、インボイス制度開始後の経理業務に役立つメリットがあります。

1.仕訳入力から仕入税額控除の計算まで業務が自動化できる

インボイス制度が始まると、経理業務でもっとも懸念されているのが、仕入税額控除の計算でしょう。複雑になった複数税率ごとに会計処理を行い、仕入税額控除の対象かどうかを判断し、適切に入力処理をしていかなければなりません。適格請求書と免税事業者等からの請求書との分類に始まり、仕入税額控除の計算に必要な情報を会計システムに入力する業務は、相当手間がかかると予想されます。
すでに市場で提供されているシステムの多くは複数税率に対応しているため、電子データを直接システムに取り込むことができれば、仕訳入力から仕入税額控除の計算まで業務を自動化することができます。
しかし、メールやweb上でPDFなどの電子データを受け取っても、必ずしもシステムに自動取り込みできるものではありません。また、web-EDIなどを利用する場合でも、取引先のシステムが同じ規格を使用していなければ自動取り込みは難しくなります。
電子インボイスは、国内で規格統一された仕様になるため、消費税など法改正の場合と同じように各社のシステムで対応を検討することが予想されます。そうなれば、たとえ取引先が異なるシステムを使用していても、請求情報を自動で取り込めるようになり、複雑化が心配されている仕入税額控除の計算もシステムが自動で行ってくれるようになります。
また、社内の基幹システムが相互連携できていれば、販売管理システムでの取引情報をもとに会計システムでの処理も自動化でき、帳簿との付け合わせ作業などもなくなります。
電子インボイスを活用することで、業務時間を大幅に削減することが可能になるのです。

2.高い真正性で改ざんの心配がない

請求書が電子化することでまず気になるのが、改ざんの可能性です。
書面であれば、法人印を押印するなどの対応が可能ですが、そもそも押印に法的根拠はないため、PDFなど電子データで請求書を交付する場合も、押印は不要とされています。
ただし、メールやweb上でPDFなどの電子データを送付する場合、個別に改ざん防止措置を取る必要があります。その方法にはタイムスタンプの付与や電子署名などがありますが、電子インボイスでは適格請求書発行事業者情報を付与した電子署名(eシール)の導入が検討されています。これにより、書類の適正保存や適格請求書発行事業者の確認事務など、インボイス制度導入後の事務負担を減らすことができると期待されています。
総務省では今後、eシールの制度化を予定しており、実現すれば「適格請求書発行事業者等が発行した電子インボイスの真正性確保」が保証されることになります。

3.海外取引も国内取引と同様に対応できる

電子インボイスが「Peppol(ペポル)」 に準拠することになれば、海外企業との取引でも国内と同様の電子インボイスでやり取りすることが可能になります。
「Peppol(ペポル)」を導入している国は世界各国に広がっており、現在オーストラリアやニュージーランド、シンガポールをはじめとした30か国以上で採用されています。
もちろん、日本の法令や商慣習などを反映した日本仕様として標準規格化されることにはなりますが、世界規模での競争力が激化している現代では、国内企業の成長を後押しすることができると政府も期待を寄せています。

4.適格請求書の保管・管理・検索が容易になる

請求書には、7年間の保存が義務づけられており(法人税施行規則第59条)、インボイス制度下では金額にかかわらず全ての適格請求書が対象となります。
適格請求書になっても紙でやり取りしていると、保管する場所やファイリングなどの手間、保管のための経費がかかります。電子データで保存すれば、保管スペースも経費も必要なく、ファイル名などで必要な情報を手早く検索することが可能になります。
また、請求書を電子データで保存する場合、電子取引の種類に応じて次のような方法が認められます。

  • 電子メールに添付されている場合
    (1)請求書等が添付されたメールそのものをサーバや自社システムに保存する。
    (2)添付された請求書等をサーバ等に保存する。
  • 発行者のwebサイトからダウンロードする場合
    •PDF等をダウンロードできる場合
    (1)webサイトに保存する。
    (2)webサイトからダウンロードしてサーバ等に保存する。
    •HTMLデータで表示される場合
    (1)webサイト上に保存する。
    (2)webサイト上に表示される領収書を画面印刷し、サーバ等に保存する。
    (3)webサイト上に表示されたHTMLデータを請求書の形式に変換し、PDF等でサーバ等に保存する。
  • 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し授受する場合
    (1)クラウドサービスに領収書等を保存する。
    (2)クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する。
※参考:国税庁「電子視聴簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ適用要件」

もし自社で利用する電子インボイス対応システムがクラウドサービスであれば、クラウド上でデータを保管できることになります。自社サーバで保管・管理するには、独自に強固なセキュリティ体制が必要となるため、ベンダーによるセキュリティ体制が整っているクラウドを活用できるのは、保管・管理面においても安心といえるでしょう。

5.在宅勤務やテレワークでも請求書業務ができる

コロナ禍で経理業務の最大の課題となったのが、業務の性質上「テレワークができない」ことでした。その最たる理由が「請求書業務」と言われています。
電子インボイスに対応するクラウドサービスを使えば、オフィス外にいてもインターネットを介してアクセスできるため、在宅勤務やテレワークでも請求書業務に従事することができます。

おわりに

インボイス制度を「法令改正」という観点だけで見れば、「適格請求書の様式を採用し、消費税について適正に仕入税額控除を行うこと」になります。
しかし、軽減税率が導入されたことによって、消費税への対応が複雑になり、これまで以上に業務負荷が増えることは目に見えて明らかです。
電子インボイスにすることは、想定される業務負荷を最大限減らし、業務のデジタル化を実現することにもつながります。企業には今後、インボイス制度に向けて適格請求書の発行準備とともに、電子インボイスの導入も求められることになるでしょう。
これからは電子インボイスの動向にも注目して、インボイス制度開始後からスムーズに業務に取りかかれるよう、今から少しずつ業務のデジタル化を進めておきましょう。

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