消費税の端数処理は切り捨て?切り上げ?消費税改正後の対応とは

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請求書の消費税計算で1円未満の「端数」が生じることがあります。多くの企業や店舗では「切り捨て」処理が行われていますが、消費税の端数計算は「よくわからない」ままに「何気なく」処理していることも多いのではないでしょうか。
また、消費税が10%に改正されると、4年後には「適格請求書等保存方式」も導入されることが決まっています。インターネット上でも様々な消費税改正に伴う関連情報が飛び交っていますが、実は消費税の端数処方法については、まだそれほど注目されていません。
そこで今回は、様々な変化に対応を迫られる消費税改正後にもスポットを当て、担当者が押さえておきたい「消費税の端数処理」について整理してみましょう。

販売時の消費税の端数処理は、企業の采配で!

総務省では、「税抜価格」に上乗せする消費税相当額に1円未満の端数が生じる場合の端数処理について、以下のように述べています。

その端数をどのように処理 (切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。

財務省「総額表示」Q&A 問7回答より

また国税庁ホームページでも、「小売店などが総額表示に伴う税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨てまたは切上げのいずれかの方法により処理しても差し支えありません」としています。

これらが示すように、商品・サービスを販売する際、消費税の端数をどう処理するかは企業に委ねられており、法的な定めはありません。

また、事業間の取引においても、消費税の端数処理について法律で定められているわけではありません。ただし、取引先と端数処理の方法が異なると、「計算が合わない」とトラブルに発展する可能性も否めません。各企業の判断に任されている「端数処理」だからこそ、請求書を発行する際には前もって企業間で取り決めておきましょう。

消費税改正後の端数処理における注意ポイント

2019年10月1日から消費税について複数税率が導入されます。当初の4年間は従来の「請求書等保存方式」を維持しつつ、区分経理に対応するための措置として「区分記載請求書等保存方式」が適用される予定です。しかし、2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」が適用され、その記載方法にいくつか変更点が発生します。

適格請求書等保存方式のもとでは、従来の請求書の内容に、以下の項目を追加しなければなりません。

  1. ① 適格請求書発行時業者の登録番号
  2. ② 軽減税率の対象品目である旨(※印等をつけることにより明記)
  3. ③ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  4. ④ 税率ごとに区分して合計した消費税額等(消費税額および地方消費税額の合計額)
適格請求書(イメージ)
適格請求書(イメージ)

政府広報オンラインによると、この中の「④税率ごとに区分した消費税額等」で発生した端数について、「一請求書あたり、税率ごとに1回ずつ」端数処理を行うこととしています。そのため、個々の商品ごとに消費税を計算し1円未満の端数処理を行うことは認められていません。

以上より、消費税が改正され適格請求書が義務づけられて以降は、以下の2つのルールに従って端数処理を行うことになります。

  1. 1つの適格請求書内で端数処理を1回行う
  2. 税率単位で合計額に対し端数処理を1回行う

また、適格請求書等保存方式が導入されても、全ての記載事項は必ずしも一つの書類にまとめる必要はありません。例えば、請求書に納品書番号を記載するなど、複数の書類でも相互の関連が明確で取引内容を正確に把握できれば、従来通り「納品書で明細を記載し、請求書はその内容をまとめる」記載方法でも差し支えありません。
ただし、「一請求書あたり、税率ごとに1回ずつ」という消費税の端数処理ルールがあるため、納品書と合わせて1回の端数処理が適用されます。
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」によると、「納品書に『税率ごとに区分した消費税額等』を記載するため、納品書につき税率ごとに1回の端数処理を行う」(問44の回答)とあります。
つまり、各納品書で消費税計算をして端数処理を行えば、請求書ではその金額を合算して記載するだけに留まります。

出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
「4 適格請求書の記載事項」問44
より

消費税申告時における端数処理の注意ポイント

消費税に関する端数処理は、請求書発行時の他に消費税の申告・納税においても発生します。

国税庁ホームページでは、消費税の課税標準額及び税額などの端数計算の方法について、「その課税期間の課税標準額は、原則として、その課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額(消費税額及び地方消費税額を含みます)の合計額に108分の100を乗じて算出した金額となります。そして、この金額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます」としています。(2019年4月現在)
つまり、これは「消費税としていくら受け取り、支払ったのかについて、正確な数字が必要とされているのではない」ことを示しており、請求書の端数処理においては「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」のどれを選んでもさほど影響はない、ということになります。

また、適格請求等保存方式の導入後は、消費税額の計算方法として従来の計算(割戻し計算)のほか、特例として積上げ計算も可能になります。ただし、端数処理による益税を防止するため、積上げ計算で売上税額を算出した場合は、仕入税額は積上げ計算しか使用できません。
詳しくは、OBC360°コラム「「軽減税率導入後はどうなる?」消費税額を正しく計算する方法」を参照ください。

なお、国税庁ホームページでは消費税の端数計算について、以下のようにまとめています。

  1. 1)課税仕入れにかかる消費税額、売上対価の返還等の金額にかかる消費税額および貸倒れにかかる消費税額に、1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て。
  2. 2)納付する消費税額(課税売上高に対する消費税―課税仕入高に係る消費税額)に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て。
  3. 3)還付金に相当する消費税額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、還付金に相当する消費納税額が1円未満であるときは、1円とする。

まとめ

以上のことから、消費税の端数処理に関するポイントは以下の3つになります。

  • 販売において消費税の端数処理は、「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」のどれを選択しても可。
  • 「適格請求書等保存方式」導入後(2023年10月1日以降)の請求書上での端数処理は、1回限り。納品書で端数処理をした場合、複数の納品書をまとめる請求書では端数処理をしてはいけない。
  • 事業者間の取引では、トラブル回避のため請求書発行時に端数処理の取り決めを行うとよい。

会計システムや請求書を発行する販売管理システムでは、通常、端数処理は自動的に行われます。設定を変更すれば、端数処理方法を手動で変更することもできます。現在使用しているシステムで適正に消費税の端数処理が行われているか、一度設定を確認しておきましょう。

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