インボイス制度とは 〜適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響〜

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いよいよ10%消費税のスタートです。
今回の改正で、日本史上初の “複数税率”になります。そしてその影響を受け、もうひとつの大きな改革である「インボイス制度―適格請求書等保存方式」への変更が、2023年にスタートすることになっています。その前段として、消費税改正とともに区分記載請求書等保存方式が導入されることも決定しています。
これらの大きな税制改正によって、当然、現場での業務負担が増えることは否めません。
しかし、具体的にどんな影響が発生するのか、まだ充分理解が浸透しているとは言えないでしょう。
今回は、この「インボイス制度」について、その概要や今後の経理業務の変更点などをまとめます。

インボイス制度とは

「インボイス制度」は、「適格請求書等保存方式」という消費税の仕入税額控除の方式のことで、軽減税率制度の導入に伴い新たに2023年から採用されるものです。
従来の方式(請求書等保存方式)では、請求書は課税事業者・免税事業者問わずに誰でも発行が可能で、発行者の名称、対価(税込)、取引年月日、取引内容、請求先の名称が書かれていれば全て仕入税額控除が可能です。しかし、インボイス制度が導入されれば、認定された事業者のみが発行できる「適格請求書」のみが仕入税額控除を受けられる対象になり、それ以外の請求書類では仕入税額控除ができなくなります。

このインボイス制度が導入される背景には、大きく2つの要因があります。

1つは「軽減税率制度の導入」です。
消費税は、購入者から預かった税金を売り手側=企業が代行納付します。企業が納付する際は、自らの仕入れにかかった消費税を差し引いて税金を納付すればよい(仕入税額控除)のですが、税率ごとに仕入税額控除を計算しなければなりません。
そのため、仕入税額控除を計算する根拠となるよう、請求書にはこれまで義務づけされていなかった「適用税率・税額の表示」が必要になります。インボイス制度の導入には、仕入税額控除の不正や記載ミスの発生を防ぐという意味があるのです。

もう1つは「益税問題の解決」です。
益税とは、簡易課税制度などを利用することで、事業者の手元に合法的に残った消費税のことをいいます。簡易課税制度では、売上高だけから納付税額を計算する制度で、みなし税率が適用されます。また、現在は前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下の中小企業は、免税点制度によって消費税を納める義務が免除されているため、自身が受け取った消費税と支払った消費税との差額がプールされて益税となっています。
今こうした益税が問題になっており、これを解決する有効な方法としてインボイス制度に期待が高まっているのです。

インボイス制度で何が変わるか?

インボイス制度が導入されると、従来の方式から大きく変わる点が2つあります。

①「適格請求書発行事業者」に登録しなければ「適格請求書」を発行できない

インボイス制度が始まると、仕入税額控除が受けられる適格請求書等の発行は、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」しか交付できなくなります。
もし、適格請求書発行事業者以外の者が適切な記載項目で請求書を発行しても、適格請求書としては認めてもらえず、「誤認される恐れがある」として1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになります。

「適格請求書発行事業者」への登録については、軽減税率対象品目の取り扱い有無に関係なく、必要かどうかは“自社の判断”に委ねられます。

例えば顧客が消費者のみの場合、消費者に対しては適格請求書を発行する必要がないため登録しないでもよい可能性があります。しかし、相手先から適格請求書等の発行を求められることが想定される場合は、登録の検討が必要になるでしょう。
また、登録できるのは課税事業者に限られます。現在、課税事業者であればもちろん可能ですが、免税事業者でも「消費税課税事業者選択届出書」(通称「課税選択届出書」)を提出して課税事業者になれば登録することができます。

適格請求書発行事業者の義務等(売り手の留意点)
イラスト出典:国税庁ホームページ「コラム≪適格請求書等保存方式の導入について≫」より

登録の手続きは、所轄の税務署で行います。過去2年以内に消費税法違反で罰金以上の刑に課せられていなければ、基本的に問題なく登録認可されます。
登録が認可されると、適格請求発行事業者には登録番号が付与されます。その登録番号が記載されているかどうかで、仕入税額控除の対象書類かどうかが決まります。登録番号は、基本的に「法人番号の前にTがついたもの」になります。法人番号がない場合は、マイナンバーとは別の、法人番号とも重複しない固有の番号が付けられます。
その後、適格請求発行事業者は「適格請求書発行事業者登録簿」に搭載され、国税庁ホームページで公表されます。

②「適格請求書」として記載事項を変更しなければならない

適格請求書には、必ず明記しなければならない事項があります。適格請求書の記載事項は、以下の通りです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称+登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象品目が分かるように明記すること)
  4. 税率ごとに合計した対価(税抜または税込)+適用税率
  5. 税率ごとの消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名または名称

この記載事項は、請求書の他に領収書、レシート、納品書等、仕入税額控除の書類として処理しているもの全てに必須となります。
適格請求書では定められた様式はないので、上記1〜6が記載されていれば、手書きであっても「適格請求書」とみなされます。端数処理は、1枚の適格請求書につき税率ごとに1回のみ(切り捨て、切り上げ、四捨五入は任意)となります。複数の納品書を発行し1枚の請求書でまとめて請求する場合は、それらをまとめた請求書で行うことが可能です。(詳しくはOBC360°コラム「消費税の端数処理は切り捨て?切り上げ?消費税改正後の対応とは」を参照ください)

適格請求書
イラスト出典:政府広報オンライン「消費税の軽減税率制度」より

また、原則として適格請求書でなければ仕入税額控除は受けられませんが、交付に際して特例が設けられているものもあります。

<適格請求書の交付特例>

  • 以下の場合は「適格請求書」の発行が困難なため、交付義務はありません。

    • 公共の鉄道、バス、船舶による旅客の運送(3万円未満に限る)
    • 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)
    • 生産者が農協、漁協、森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
    • 自動販売機による販売(3万円未満に限る)
    • 郵便切手を対価とする郵便サービス(ポストに差し出されたものに限る)
  • 以下の場合は「適格簡易請求書」の発行が可能です。

    • 小売業、飲食店業、写真業、旅行業
    • タクシー業
    • 不特定多数の者に対して行う駐車場業
    • 上記に準ずるその他不特定多数の者を対象とする一定の営業
  • 委託販売等の場合は、媒介または取り次ぎを行う事業者(媒介者等)による適格請求書の交付が可能です。

インボイス制度が導入されるまでの対応はどうなる?

インボイス制度は、消費税改正とともにスタートするわけではありません。
消費税改正がスタートしたばかりの段階では、すぐにインボイス制度まで導入すると混乱を招く恐れがあるため、インボイス制度になるまでの4年間は「区分記載請求書等保存方式」が採用されることになっています。
区分記載請求書等保存方式とは、従来の方式を維持しつつ区分経理に対応する方式で、下記の記載事項が必須となります。

  1. 請求書発行者の氏名または名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象品目が分かるように明記すること)
  4. 税率ごとに合計した対価(税込)+適用税率
  5. 交付を受ける事業者の氏名または名称
区分記載請求書
イラスト出典:政府広報オンライン「消費税の軽減税率制度」より

区分記載請求書等保存方式では、買い手側に対して「区分記載請求書の保存」が仕入税額控除の要件とされています。しかし、請求書等に「軽減税率対象品目の明記」や「税率ごとに合計した対価(税込)」の記載がなくても、買い手側で事実に基づき追記することが認められています。また、区分記載請求書等の発行のために登録は必要ないため、免税事業者が発行した請求書でも仕入税額控除は受けることが出来ます。
売り手側には、これまで通り、請求書の交付義務や保存義務、不正交付による罰則等はありません。

インボイス制度がもたらす経理業務への影響とは?

では、インボイス制度が導入されることで、具体的にどのような業務が新たに発生するのでしょうか?
ここからは業務目線で必要になる「動き」を確認してみましょう。

● 「適格請求書発行事業者」の登録手続きをする

適格請求書を発行する場合は、適格請求発行事業者の登録が必要です。インボイス制度がスタートする2023年10月1日から適格請求書を発行したいのであれば、2021年10月1日〜2023年3月31日の間に登録申請書を提出しなければなりません。それを過ぎても登録は可能ですが、制度開始には間に合いませんので注意が必要です。ただし「期間内に申請できなかった困難な事情」がある場合は、事情が認められれば2023年9月30日まで受け付けてくれます。
現在免税事業者である場合は、本来「課税選択届出書」が必要ですが、2021年10月1日〜2023年9月30日の間に登録する場合に限り、適格請求発行事業者の登録申請書のみで手続きできます。

● 自社請求書のフォーマットを変更する

区分記載請求書等保存方式では厳密ではないものの、インボイス制度がスタートすれば、請求書の記載事項を要件に合わせて変更しなければなりません。業務をスムーズに行うためにも、消費税改正時点から自社の請求書フォーマットを変更しておくことが望ましいでしょう。
現在利用しているシステムの既存フォームを使用している場合は、必須事項が記載される内容か確認しておかなければなりません。エクセル等で独自のフォーマットを作成し使用している場合は、フォームの作り直しが必要になるでしょう。

● 仕入税額控除対象かどうかで、請求書を別管理する

消費税改正後は、請求書等の交付を受けることが困難な場合を除き、帳簿および請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。そのため、仕入税額控除の計算に使う書類とそうでない書類は、分けて管理する必要があります。
このとき、マスタ機能で取引先ごとに課税・免税の識別ができない販売管理システムの場合、分類から保管までの業務が非常に煩雑になることが予想されますので、課税・免税で区分できるものに切り替える必要があります。
ここで注意しておきたいのは、免税事業者からの仕入れ分です。免税事業者が発行した請求書は、すぐに仕入税額控除が100%できなくなる訳ではなく、2023年10月から3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除が可能となる経過措置が取られる予定です。そのため、その間の仕入管理はそれぞれ別にしておく必要があります。
なお、消費税改正以後の仕入税額控除の要件とされる「帳簿の記載事項」は以下の4つになります。

  1. 相手先の氏名または名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象品目は別に記載)
  4. 金額

● 買い手・売り手ともに請求書を保存する

適格請求書は仕入税額控除の要件であるため、買い手側は一定期間保存する必要があります。保存期間は、これまでと同様、交付日または受領日の翌月1日から2ヶ月後を経過して7年間となります。
保存が必要とされる請求書等には、適格請求書や適格簡易請求書、適格請求書の記載事項が記載されている仕入明細書等、またそれらの電磁的記録(PDFなど)が含まれます。
ただし、以下の場合は帳簿のみの保存でも仕入税額控除が認められます。

  • 「適格請求書の特例」が認められているもの
  • 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券等が使用の際に回収されるもの
  • 古物営業を営む者が、適格請求書発行事業者でない者から買い受ける古物
  • 質屋営業を営む者が、適格請求書発行事業者でない者から取得する質物
  • 宅地建物取引業を営む者が、適格請求書発行事業者でない者から買い受ける建物
  • リサイクル業等を営む者が、適格請求書発行事業者でない者から買い受ける再生資源又は再生部品・自動販売機での購入(3万円未満)
  • 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当など)

また、売り手側となる適格請求書発行事業者にも、交付した適格請求書の写しを保存する義務が課せられます。インボイス制度導入以降は、受領した適格請求書だけではなく、発行した原本の保存もしっかり行いましょう。

● 税区分ごとに会計処理を行う

仕入税額控除の計算では税率ごとの仕訳が必要になるため、会計システム上では税区分ごとに仕訳入力することになります。この仕訳入力は、消費税改正直後の区分記載請求書等保存方式から必要になります。
販売管理システムと会計システムが連携していない場合は、手入力作業が必要になりますので入力ミスに注意しましょう。

適格請求書に対応したシステムへの早期切り替えを!

インボイス制度導入後、免税事業者との取引は自社の消費税負担が増える恐れがあり、免税事業者排除に繋がる可能性があるなど、先行き不透明な部分も残っています。しかし、消費税改正が現実となった今、全ての企業がこのインボイス制度によって影響を受けることは間違いありません。今後の動向にも留意しつつ、早め早めにインボイス制度への対応準備を行っていきましょう。

市場には、すでに多くの販売管理システムや会計システムで、インボイス制度を見越した機能変更が予定されています。OBCの「商奉行」クラウドでも、区分記載請求書、適格請求書の記載要件に対応した請求書を作成するほか、税率を自動判定して区分管理することができます。また、勘定奉行など会計システムともデータ連携して、スピーディかつ的確に経理処理を行うことも可能です。
こうしたシステムのインボイス制度対応は、業務を効率的に行うためにも欠かせない要素です。今のうちに、自社のシステムが適切に対応できるか確認し、来たるべき日に備えておきましょう。

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