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社会保険の被扶養者に関する手続きは、従業員本人だけでなく被扶養者家族にとっても大切な手続きであるため、担当者としては、常にミスなくスムーズに進めたいでしょう。
そこで今回は、発生頻度の高い手続きの1つである「被扶養者(異動)届」について、届出が必要となるケースや手続きの方法、注意しておきたいポイントまでわかりやすく解説します。
目次
- 被扶養者(異動)届とは
- 被扶養者(異動)届が必要なケースとは
- 被扶養者の認定要件〜対象となる「範囲」と「収入要件」とは
- 被扶養者(異動)届の書き方と手続きに必要な書類
- 被扶養者(異動)届の提出方法
- 被扶養者(異動)届の手続き業務も
情報収集から電子申請まで一気にできる仕組みなら効率アップ!
被扶養者(異動)届とは
被扶養者(異動)届は、従業員の結婚、配偶者や子供の出生・就職・死亡などにより、健康保険や厚生年金保険に加入する従業員の被扶養者として追加・削除・氏名変更などがあった場合に届け出る書類です。事実が発生してから5日以内に、管轄の年金事務所や健康保険組合等へ勤務先を経由して提出することが定められており、届出が完了すると従業員の家族等が被扶養者に認定されます。(被扶養者の削除については、被扶養者の認定要件を満たさなくなった日が「削除日」として定められているため、その都度の提出となります)
被扶養者(異動)届を提出すると、対象となる家族等が収入のない専業主婦(主夫)やパートなどで給与収入を得ている場合でも、「被扶養者」の要件を満たしていれば被保険者の扶養家族として疾病や負傷など必要な保険給付を受けることができます。
ただし、被扶養者の認定は、公正を期することを目的に、厳正な審査が行われます。
審査では要件を満たしているかの確認はもちろん、社会通念などにも照らし合わせて総合的に勘案され、厳正な判断を下された上で被扶養者として認定されます。万が一、申請内容に虚偽があり、扶養事実のない親族の扶養者認定を受けたことが判明した場合には、被扶養者の資格が遡って取り消されます。(健康保険法58条)また、当該期間中に支払われた保険診療や給付金、健診などの補助金などは保険運営主体に返還しなければなりません。
健康保険組合の場合は、認定後も扶養状況の確認が行われることが法的に定められており、再確認できない際には被扶養者の資格が取り消されることがあります。
被扶養者(異動)届が必要なケースとは
担当者が被扶養者(異動)届を取り扱うのは、次のようなケースが発生した場合になります。
●従業員の扶養家族が増えた場合
例えば、結婚や子供の出生で扶養家族が増えた場合や、年金受給額が少ない両親に仕送りをする場合は、被扶養者(異動)届の提出が必要です。また、失業、退職、働き方の変更などにより、配偶者の収入が減った場合も従業員の被扶養者となることがあります。
特に、配偶者や両親を被扶養者にする場合は、収入要件をしっかりと確認することが大切です。
●従業員の扶養家族が減った場合
例えば、子供が就職・結婚などで独立した場合や、扶養家族が死亡した場合に被扶養者(異動)届を提出し、被扶養者から削除する必要があります。
また、配偶者に対して被扶養者(異動)届を提出後に、就職・働き方の変更などにより収入要件を超えてしまった場合も、削除のための届出が必要です。この場合、収入を得ている勤務先の健康保険もしくは国民健康保険に扶養家族自身で加入する必要があります。
●従業員の扶養家族の氏名に変更が生じる場合
被扶養家族の氏名が変更されることは、決して多くありません。しかし、被保険者や被扶養家族の氏名、住所、生年月日などが誤って登録されているケースも少なからずあります。そうした間違いが発覚した際には、扶養者(異動)届を提出して修正手続きを行う必要があります。
被扶養者の認定要件〜対象となる「範囲」と「収入要件」とは
被扶養者として認定を受けるには、「被扶養者の範囲」と「被扶養者の収入要件」を満たす必要があります。
ここではこの2つの認定要件について具体的に解説します。
1 被扶養者の範囲
「被扶養者」になれる親族には、次のように範囲が定められています。
「勤務先での家族手当」や「所得税法条の扶養親族」などの対象と必ずしも一致するとは限らないため、続柄をしっかりと確認しておくことが大切です。
<被扶養者の範囲>
以下を満たす扶養者であること。
- 被保険者との関係が以下の場合(同居・別居を問わず)
• 配偶者
• ⼦、孫および兄弟姉妹
• ⽗⺟、祖⽗⺟等の直系尊属 - 被保険者との関係が以下の場合で、被保険者と同居している者
• 上記1以外の三親等内親族(伯叔⽗⺟、甥姪とその配偶者等)
• 内縁関係の配偶者の⽗⺟および⼦(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む) - 1または2の要件を満たし、⽇本国内に住所を有している者
これを図式化すると、次のようになります。
配偶者には、婚姻届を提出しないまま事実上の婚姻関係にある人物も含まれますが、事実上の婚姻関係にある人物であっても、その父母および子の場合は同一世帯でなければ対象になりません。そのため、義父母・義祖父母の場合は、同居であるか否かを入念に確認する必要があります。また、75歳以上になると後期高齢者医療制度の被保険者となり、被扶養者の対象から外れるため注意しましょう。
さらに、被保険者の兄弟姉妹については、以前は「同居」の要件が定められていましたが、現在は別居していても対象となります。
なお、2020年以降は、被扶養者の認定基準に「国内に居住していること」が新たに追加されています。ただし、「海外へ留学している」「外国に赴任する被保険者に同行している」など、国内に居住していない場合でも被扶養者として認定されているケースがあります。(日本国籍を有さず、医療目的や長期観光などの特定活動を目的とした滞在者については被扶養者の対象とはなりません)
2 被扶養者の収入要件
被扶養者になるには、「主として保険者に生計を維持されている」ことが必須条件となります。
「主として保険者に生計を維持されている」とは、対象者の生活費用(預貯金を除く食費・住居費・光熱費など)の半分以上が被保険者の収入で賄われている、という意味で、経済的な扶養の事実が将来にわたって継続することが前提となります。
具体的には、次のように同居・別居それぞれにおいて収入要件が定められています。
<被扶養者の収⼊要件>
- 認定対象者が被保険者と同⼀世帯に属している(同居)場合
• 認定対象者の年間収⼊が130万円未満であり、かつ、被保険者の年間収⼊の2分の1未満であること
• 認定対象者が60歳以上、または障害厚⽣年⾦受給者等の場合は、年間収⼊が180万円未満、かつ、被保険者の年間収⼊の2分の1未満であること - 認定対象者が被保険者と同⼀世帯に属していない(別居)場合
• 認定対象者の年間収⼊が130万円未満であり、かつ、被保険者の援助による送⾦額(仕送り)より少ないこと
• 認定対象者が60歳以上、または障害厚⽣年⾦受給者等の場合は、年間収⼊が180万円未満、かつ、被保険者の援助による送⾦額(仕送り)より少ないこと
「年間収入」は、過去の実収入額ではなく、被扶養家族に該当する時点と認定された日以降の年間収入額の見込額で算定します。例えば、2022年度の被扶養者調査であれば、2022年7月〜2023年6月の収入見込額、という具合です。今後も今までの収入状況と変わらない場合には、原則として「前年の年収」=「今後1年間の収入見込額」で良いとされています。給与収入などで月ごとの収入が確認できる場合には、「前年の年収」と「直近3ヶ月の収入」から収入見込み額を算定します。
また、「所得」ではなく「収入」となるため、雇用保険の失業手当などの給付、公的年金、健康保険の傷病手当金など、非課税の収入や手当も含まれます。退職や契約の変更などで状況が変わった場合には、過去の収入が要件を超えていたとしても、「状況が変わった後の見込み額」で考えます。失業保険の待機期間中でも、収入要件を満たしている場合は被扶養者として認定されますが、基本手当(日額3,612円以上)の支給が始まると収入要件を上回るため、支給時には扶養削除の届出が必要です。
具体的には、給与所得などの収入を得ている場合には月額10万8,333円以下、雇用保険などの受給者である場合には日額3,611円以下が、「年間収入130万円未満」となります。そのため、「今後1年以内に退職予定」「期間雇用契約が1年未満であり更新予定がない」といった場合でも、「その時点での契約などによる収入を1年間得た場合の金額」が月額10万8,333円以上であると判断されれば、被扶養者の要件から外されます。
ただし、収入が被保険者の収入の半分以上の額であっても、被保険者の年間収入を上回らず、保険運営主体の総合的な勘案によって「被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしている」と認められた場合には、被扶養者として認定されることがあります。
被扶養者(異動)届の書き方と手続きに必要な書類
届出には、次の3つの書類を必ず提出しなければなりません。
- 1.被扶養者(異動)届書・国民年金第3号被保険者関係届
- 2.続柄確認のための書類
- 3.収入要件確認のための書類
- 4.その他確認書類(必要に応じて)
1.被扶養者(異動)届書・国民年金第3号被保険者関係届
被扶養者の認定を受けるには、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出が必要であり、さらに被扶養者が国民年金の第3号被保険者に該当する場合は、「国民年金第3号被保険者関係届」の提出も必須です。
日本年金機構では、「健康保険被扶養者(異動)届」と「国民年金第3号被保険者関係届」を1枚にまとめた書類が用意されています。健康保険組合にも同様の書類を用いるところもあります。
出典:日本年金機構「健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届」
書式は、日本年金機構や所属する健康保険組合のホームページなどからダウンロードして、次の項目に記載します。
①「事業主記載欄」
被保険者ではなく勤務先の企業が、事業所の名称、所在地、事業主の氏名、電話番号などを記入します。事業所整理記号には、法人ごとに付与された記号を記載しましょう。
被扶養者の収入要件を事業主が確認したことを示すために、事業主確認欄の「確認」を○で囲みます。
②「被保険者欄」
被保険者の氏名、生年月日、個人番号、年収などを記載します。被保険者整理番号欄には被保険者ごとに企業が割り振った番号を記載し、収入欄には今後1年間の年収見込み額を記載します。
③「配偶者である被扶養者欄」
配偶者を被扶養者にする場合、「配偶者である被扶養者欄」に配偶者の氏名、生年月日、個人番号、被扶養者になった日などを記載します。ただし、氏名欄の提出日は、被保険者が事業主に提出した日となるため注意が必要です。
「被扶養者(第3号被保険者)になった日」欄には、被保険者の健康保険加入と同時に提出する場合は「被保険者欄」の「取得年月日」と同日を、それ以外のタイミングで提出する場合は婚姻年月日など実際に被扶養者(第3号被保険者)になった日を記載します。(配偶者が20歳未満または60歳位以上の場合は、第3号被保険者に該当しないため日付の記入は不要です)
また、被扶養者情報に変更がある場合は変更内容とその理由、別居の場合は1回あたりの仕送り額も備考欄に記載します。
企業側では、戸籍謄本などで被保険者と被扶養者の続柄を確認し、備考欄の「続柄確認済み」にチェック印を入れましょう。
④「その他の被扶養者欄」
子供や父母などを被扶養者にする場合、「その他の被扶養者欄」に対象者の氏名、生年月日、個人番号、続柄などを記載します。住所欄では、同居または別居のいずれかを○で囲み、住民票の住所を記載します。
その他の項目については配偶者の注意事項と同様です。
2.続柄確認のための書類
被扶養者(異動)届書には、被扶養者であることを証明するものを添付して提出する必要があります。
続柄の証明書類には、戸籍謄本または戸籍抄本(被保険者との続柄がわかるもの)を用意します。被保険者と被扶養者が同居しており、被保険者が世帯主である場合に限り、住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載がないもの)でも可能です。
甥や姪など、被保険者との同居が要件となっている続柄の場合には、同居の事実を証明する書類が必要になるため、被保険者世帯の全員が記載された住民票も提出します。
ただし、被保険者および扶養認定を受ける人物の双方のマイナンバーが届出に記載されており、「扶養認定を受ける人物の続柄が届出の記載と相違ないこと」を確認した旨を事業主である企業が届書に記載していれば、続柄確認のための書類添付は不要です。
3.収入要件確認のための書類
収入の確認書類としては、退職者の場合は「退職証明書」または「雇用保険被保険者離職票のコピー」、失業保険の受給中または受給終了者の場合は「雇用保険受給資格者証のコピー」、年金受給中の場合は現在の年金受給額を確認できる「年金額の改訂通知書などのコピー」、農業などを含む自営による収入や不動産収入などがある場合は「直近の確定申告書のコピー」、それ以外の収入については「課税(非課税)証明書」をそれぞれ添付します。
障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付などの非課税対象となる収入がある場合は、別途「受取金額を確認できる書類」などのコピーが必要です。
また、被扶養者が16歳未満である場合、収入の確認書類は不要となります。
被扶養者の認定に係る届出は、法律に基づいた必要な手続きに該当するため、収入証明に被扶養者(本人)の同意は必要ありません。
4.その他確認書類(必要に応じて)
他にも、次のケースに該当する場合は、別途、添付書類が必要になります。
● 別居中の家族を被扶養者にする場合
仕送りの事実と仕送りの額を確認するために、送金社名、受取人名、金額がわかる書類が必要です。
例えば振込で仕送りをしている場合、預金通帳などの写し(通帳の名義および振込日と金額のページ)や振込明細書などが該当します。
送金している場合には、現金書留の控えを添付します。ただし、6歳未満または16歳以上の学生の場合は不要です。
● 内縁関係の配偶者を被扶養者にする場合
内縁関係を確認するために、内縁関係にある両人の戸籍謄本・戸籍抄本や、被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)などを添付します。
このように、被扶養者の要件に応じて提出を求められる書類が異なるため、個別に準備物の把握・確認をしておくことが大切です。
また、確認書類として使用する住民票や戸籍謄本・戸籍抄本は、提出日から遡って90日以内に発行されたものを提出しましょう。
被扶養者(異動)届の提出方法
書類の提出方法は、郵送・窓口持参・e-Govでの電子申請の3種類から選べます。
● 郵送・窓口持参の場合
郵送の場合、所轄の年金事務所や自社が所属する健康保険組合の事務所へ書類を郵送します。これらの窓口では、直接の持参も受け付けてくれます。年金事務所では、紙の書類の他に電子媒体(CD・DVD)による提出も可能です。
● 電子申請の場合
電子申請を行う場合は、e-Govから「健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届」を選択し申請します。画面に届出用紙と同様の書式が表示されるので、必要項目を直接入力し、申請内の「提出先選択」で事業所を管轄する年金事務所(事務センター)を選択すると、管轄窓口に提出されます。
ただし、電子申請には次の点に注意が必要です。
- • 申請書・電子添付書類には必ず電子署名を付与する
- • 添付書類は、JPEG形式およびPDF形式の画像ファイルのみ利用できる
※ 状況確認画面を印刷の上、添付書とあわせて郵送することも可能です。
- • 電子添付書類・電子証明書などを含む申請データの容量が99MBを超えると受信されない
- • 入力画面では、本人確認後に個人番号の入力をしなければならない
- • 「姓と名の間に1文字分のスペースを入れる」「年月日は半角数字で入力する」などの細かい規定がある
- • 申請が返戻されると、届書の入力を最初からやり直さなければならない
※ 詳しくは、コラム「e-Gov(イーガブ)とは?利用のメリット・デメリットや電子申請時の賢い活用方法」もご参照ください。
被扶養者(異動)届の手続き業務も
情報収集から電子申請まで一気にできる仕組みなら効率アップ!
社会保険に関する手続きは、対象者や申請期限、必要書類などを正しく把握して業務を進める必要があります。しかし、身上異動届出書など情報収集を紙の書類で行っていると、転記ミスや記載漏れなどが発生しやすいという難点もあります。適切にミスなく対応するためには、情報収集をデータで受け取るようにし、収集したデータを活かして届出書の作成ができるサービスを利用するのが確実だと言えるでしょう。さらに、同じサービスで電子申請まで行えれば、郵送のための作業も窓口へ持参する労力も必要なくなります。
例えば、奉行Edge労務管理電子化クラウドの場合、「扶養家族追加」や「扶養家族除外」、家族の住所変更などが発生した際の「家族情報変更」など、手続きを開始する際のガイダンスが標準装備されています。
従業員が提出内容を選択し、次のように届出に必要な項目を穴埋め式で入力していけば、自動的に届出書も作成できます。
添付書類もデータでアップロードでき、ガイダンスによって迷わず手続きを進められます。スマートフォンにも対応しており、従業員は時間や場所を問わずWeb申請が可能です。
収集した情報は、人事データベースに自動反映され、最新情報を常に一元管理できます。また、サービスから直接電子申請も行えるので、業務の流れで手続きまで完了させることができます。e-Gov・マイナポータルのどちらにも対応しているため、e-Gov非対応の健康保険組合への電子申請もできます。
健康保険組合への電子申請に対応できるシステムは、市場でもまだそう多くはないため、健康保険組合に加入している企業は、サービス選びの際にマイナポータルにも対応しているかしっかり確認しましょう。
社会保険関係は速やかにミスなく対応しなければ、従業員やその家族の生計などに差し障る可能性もあります。従業員から被扶養家族の変更届を受理した際に迅速に対応できるよう、この機会に情報収集の取り組み方から見直して見てはいかがでしょうか。
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