賞与支払届の手続きの流れと、担当者が注意しておきたいポイント

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企業は、従業員に賞与を支払った場合、「賞与支払届」を提出する義務があります。しかし、毎月支払う給与とは違い、賞与の支給は年に2回もしくは3回で時期も限られています。支給時期が決まっているとはいえ、ベテラン担当者でも期間限定で発生する業務はつい忘れてしまいそうになりがちです。
賞与支払届には提出期限もあり、従業員の将来の年金受給額にも大きく影響することから、担当者はその重要性もしっかり認識した上で適切に対応しなければなりません。
今回は、賞与支払届の手続きについて、担当者が把握しておきたいポイントを整理してみましょう。

「賞与支払届」とは

賞与支払届は、賞与における社会保険料を算出し保険料を納付するために必要な届出書類です。企業は、賞与を従業員に対して支給した際に、「被保険者賞与支払届」と「被保険者賞与支払届総括表」を管轄の年金事務所または事務センターへ賞与支給後5日以内に提出しなければなりません。

賞与は法律で支給が義務づけられているものではありませんが、労働基準法では給与と同じく「賃金」の一部とされています。そのため、賞与についても健康保険料や厚生年金保険料と同率の保険料を納付することになります。

賞与支払届の対象は、「賃金、給与、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対価として受け取るもののうち、年3回以下で支給されるもの」とされています。つまり、賞与として見なされるのは年に3回までとなり、4回以上になると、標準報酬月額の対象(=給与)として扱われ賞与ではなくなるため、賞与支払届の提出は必要ありません。

日本では、夏(7〜8月)と冬(12月)に支給されることが一般的ですが、それとは別に、春先や決算月に賞与を支給する場合もあります。担当者としては、自社の賞与規定で年間支給回数を確認しておくことも大切です。

賞与支払届の手続き 〜書類作成から提出までの流れ〜

賞与支払届に関する手続きの流れは、以下の通りとなります。

  • 届出書類の受取
  • 保険料の算出
  • 届出書類の作成
  • 届出書類の提出
  • 保険料の納付

① 届出書類の準備

「賞与支払届」は、日本年金機構もしくは加入している健康保険組合に登録された賞与支払予定月の前月に、被保険者の氏名や生年月日等が印字されて各企業に送付されますので、それを活用するとよいでしょう。
書類が届いたら、印字されている内容を確認しましょう。書類の「被保険者氏名等の基本情報」に氏名等が印字されていない従業員がいる場合は、印字されていない欄に手書き等で追記する必要があります。

また、一般の給与計算システムも、賞与支払届を作成できるようになっています。ただし、健康保険組合に加入している企業の場合は、組合固有のフォーマットを使用する場合があるため、給与計算システムで作成する際はフォーマットが適切か組合に確認する必要があります。
その他、電子媒体での提出や電子申請も可能です。(申請方法については④を参照ください)

② 標準賞与額・保険料の算出

賞与支払届を提出することで、「標準賞与額」が決定します。「標準賞与額」は、実際に支払われた賞与額(税引き前の賞与の総支給額)から、1,000円未満を切り捨てた金額をいいます。これに健康保険・厚生年金の保険料率をかけた金額が、賞与にかかる保険料となります。ただし、保険料については、企業と従業員で折半して負担します。

賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 健康保険・厚生年金の保険料率

例えば、厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正に基づき段階的に改正されてきましたが、現在は18.3%で固定されています。すなわち、厚生年金保険の場合は、以下のような計算式になります。

(例) 厚生年金保険の賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 18.3%

一方、健康保険の保険料率は、住んでいる都道府県や「介護保険第2号被保険者」に該当するか否かなどで保険料率が変わります。保険料率は毎年改正されていますので、計算時には最新情報を確認することをお勧めします。
また、標準賞与額には上限が設けられているので注意が必要です。健康保険では、年度(4月1日〜翌年3月31日まで)の累計額が573万円、厚生年金保険では1ヶ月あたり150万円(同月内に2回以上支給される場合は、合算した額で上限額が適用)までとなります。

③ 賞与支払届の作成

賞与支払届を作成する上で必要な書類は、従業員ごとの賞与支払額を記入する「被保険者賞与支払届」と、支払合計人数と合計金額を記入する「被保険者賞与支払届総括表」の2つです。

■賞与支払届

賞与支払届に印字されている従業員で賞与の支払がない場合は、支給額等の記入は必要ありません。
また、複数の事業所で社会保険に加入している場合は、備考欄「二以上勤務」に○をします。同一月内に複数回の賞与を支給した場合は、備考欄「同一月内の賞与合算」に○を忘れずに記入しましょう。

賞与支払届の様式は、日本年金機構のサイトからダウンロードできます。

■被保険者賞与支払届総括表

「被保険者賞与支払届総括表」では、賞与の支給の有無を記入する欄があります。賞与を支給しなくても「被保険者賞与支払届総括表」の提出は必要です。登録された賞与支払予定月の翌月までに届出がない場合、翌々月に催告状が送付されますので注意しましょう。
また、「被保険者人数」と「賞与支払人数」は別に記入することになります。

④ 賞与支払届の提出

全ての書類が整えば、被保険者整理番号順になるように、順番をそろえて管轄の年金事務所または事務センターに、賞与支給日より5日以内に郵送で提出します。
ただし、健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合と日本年金機構の2箇所に提出する必要があります。

また、CDやDVDなどの電子媒体での提出や電子申請(e-Gov)も可能になっています。
電子媒体で提出する場合は、日本年金機構ホームページに記載されている手順に従って、提出用電子媒体を作成します。提出用のファイル作成が完了した際に、印字出力する「磁気媒体届書総括票」と合わせて提出しましょう。
電子申請を行う場合は、厚生労働省パンフレット「電子申請利用マニュアル」を参照に、日本年金機構ホームページ内e-Govより申請してください。ただし、高齢任意加入被保険者については、電子申請ができません。

⑤ 保険料の納付

書類提出後、「保険料決定通知書」が管轄の年金事務所または事務センターから送付され、保険料が決定します。不支給の場合は、標準賞与額決定通知書等の送付はありません。
決定された標準賞与額については、必ず被保険者本人へ通知するようにしましょう。また賞与に対する保険料は、同じ月の標準報酬月額の保険料と合わせて翌月末日までに納付する必要がありますので、忘れないように注意しておきましょう。

賞与支払届の手続きで注意しておきたいポイント

賞与支払届の手続きを行う際、担当者として注意しておきたいポイントは、4つあります。

  1. ① 70歳以上の従業員への対応
  2. ② 中途入社・退職した従業員への対応
  3. ③ 育児休業中の従業員への対応
  4. ④ 賞与支払届に訂正が必要な際の対応

① 70歳以上の従業員への対応

2018年から賞与支払届の様式が変更され、「被保険者用」と「70歳以上被保険者用」の賞与支払届が兼用になりました。
賞与を支給した従業員が70歳以上の場合は、備考欄の「70歳以上被用者」に○をし、本人確認を行った上でマイナンバーまたは基礎年金番号を忘れずに記入しましょう。
協会けんぽが管掌する健康保険の高齢任意加入被保険者については、賞与支払届の該当者の被保険者氏名欄の余白に「高齢任意」と記入します。

② 中途入社・退職した従業員への対応

年の途中で入社した従業員については、入社日以降に支払われた賞与が保険料賦課の対象となります。ただし、同じ年度内で転職・転勤によって被保険者資格の取得・喪失があった場合、標準賞与額の累計は協会けんぽ管掌の健康保険または各健康保険組合等の保険者単位で算出することになっています。そのため、同一年に複数の被保険者期間がある場合は、それぞれの被保険者期間中に決定した標準賞与額を累計することになります。
退職した従業員に関しては、資格喪失月(退職する月)の前月までに支払われた賞与について賞与支払届を提出します。ただし、月末に退職する場合は、退職月に支払われた賞与は保険料徴収の対象になります。また、退職月に支払われた賞与から保険料を徴収しない場合であっても、標準賞与額の累計額(年度の累計額573万円)には含まれますので注意が必要です。

③ 産前産後休業・育児休業中の従業員への対応

産前産後休業中や育児休業中の保険料免除期間に支払われた賞与、資格喪失月に支払われた賞与(保険料賦課の対象とならない賞与)も標準賞与額として決定し、年度の累計額に含めます。したがって、該当する従業員に対して賞与を支給する場合、社会保険料はかかりませんが、賞与支払届の提出は必要となります。

④ 賞与支払届に訂正が必要な際の対応

「計算間違い」や「基本給の変更」などの理由により賞与金額に修正があった場合は、過去に遡って修正する必要があります。しかし、訂正用の書類はないため、「被保険者賞与支払届」を再提出することになります。
訂正する方法は、「二重線で以前の賞与支払額を訂正し、正しい賞与支給額を記入する」というのが一般的ですが、提出先によっては賞与支払届を作成し直すなどの方法をとることもあるので、提出先となる管轄の年金事務所または事務センターに問い合わせ、指示に従うようにしましょう。

賞与支払届は将来の年金額に大きく影響!提出は忘れずに!

賞与支払届は、賞与を支給した5日後までに提出する必要があります。提出がなければ、管轄の年金事務所または事務センターから「被保険者賞与支払届の提出について」という催告状が送られます。催告状が届いたら、ただちに賞与支払届を提出し、保険料を納付してください。

徴収された社会保険料の支払状況は、個人宛に送られる「ねんきん定期便」で把握することができます。この「ねんきん定期便」を従業員が見て、賞与支払届の提出漏れが発覚するケースがあります。万が一、提出漏れが発覚したら、「事業主からの自主的な申出にかかる申出者リスト(賞与支払届提出もれ用)」という書類を用意して、管轄の年金事務所または事務センターへ速やかに相談しましょう。
ただし、賞与を支払ってから2年以上経過すると、保険料の徴収時効が成立してしまいます。そうなると、将来の年金額に反映されず、将来もらえる年金が減るなどの不都合が生じます。
賞与を支給する際は、5日以内のスケジュールの中に賞与支払届の提出予定を組み込んで、忘れないように充分注意しましょう。

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