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社会保険料とは?標準報酬月額の決め方や内訳をわかりやすく解説

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日本には、さまざまなリスクに備えるための保険制度として、社会保険制度があります。その社会保険制度を維持するためのお金が社会保険料です。企業では、従業員が負担する社会保険料を、企業負担分とともに納付しなければなりません。企業の担当者は、社会保険料について正しく理解しておく必要があるでしょう。
この記事では、社会保険料の概要と計算方法のほか、標準報酬月額の決め方などについて解説します。

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目次

従業員と企業が負担する社会保険料

社会保険は、従業員の病気や失業、老後、介護、労災などに備えるための社会保障制度のひとつです。社会保険料とは、これらを維持するために納付するお金です。

■社会保険の分類
広義の社会保険 健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険
狭義の社会保険 健康保険、厚生年金保険、介護保険

社会保険は広義の社会保険と、狭義の社会保険の2つの分類に分けられます。狭義の社会保険料は、従業員の給与に応じて決まるもので、従業員と企業とが半分ずつ負担します。
また、労災保険は企業が全額負担、雇用保険は雇用保険料率にもとづいて従業員と企業の双方が負担しますが、負担割合については後述します。

なお、企業に雇用される従業員を対象とした社会保険に加入できない個人事業主や失業者は、国や自治体の社会保険である国民健康保険や国民年金に加入します。

社会保険料を納めなければならない理由

社会保険は、加入者全員が社会保険料を納めることで、万一の事態に陥った加入者を支えます。こうした共助制度を維持し、加入者の生活の安定を守るためには、社会保険料の納付が必要となるのです。

例えば、健康保険に加入している75歳未満の人は、病気やケガをして病院にかかる際の医療費負担が原則3割に抑えられます。これは、残りの7割を健康保険で賄っているからです。病気にならなければ健康保険を使うことはありませんが、病気になったときには大きな助けになるものなのです。

社会保険料の種類

社会保険適用事業所に勤める従業員の社会保険料には、下記の5種類があります。

■社会保険料の5種類
種類 概要
健康保険料 労災以外の原因による病気やケガに備える健康保険の保険料。フルタイム勤務の従業員のほか、正社員の4分の3以上勤務する短時間労働者など一定の要件を満たす従業員が対象
厚生年金保険料 老後や障害、死亡などに備える年金の保険料。対象者は健康保険加入対象者のうち70歳未満の人
介護保険料 要介護、要支援認定を受けて介護サービスを利用するための保険料。40歳以上の健康保険に加入する従業員が対象
雇用保険料 失業や育児休業などに備えるための保険料。1週間に20時間以上働き、31日以上継続して雇用される従業員が対象
労災保険料 労災に備えるための保険料。全従業員が対象

社会保険料の金額が決まるタイミング

社会保険料のうち、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の3つは、毎年9月に金額が変更になります。これは、9月に「定時決定」で決まった社会保険料が適用されるためです。
また、固定賃金が変わり一定以上給与支給額が変更した場合も、社会保険料の金額変更が行われます。これを「随時改定」と呼びます。定時決定と随時改定について、詳しくは後述します。
なお、従業員が新たに入社した際は、そのタイミングで社会保険料を決定します。

一方、雇用保険料と労災保険料は、毎月の給与支給額に保険料率を掛けて求めるため、毎月保険料の金額は変更されます。

社会保険料の納付期限

社会保険料は、当月の翌月末日までに、従業員負担分と企業負担分をまとめて日本年金機構に支払います。翌月末日が土曜日、日曜日、祝日の場合は翌営業日が期限です。

もし、社会保険料を納付期限までに支払えないことが予想される場合は、できるだけ早く年金事務所に連絡して、納付計画を伝えるようにしましょう。年金事務所に通知することなく納付期限までに納付しなかった場合は、企業に督促状が郵送されてきます。さらに、督促状に記載された期日までに納付できない場合は、延滞金が加算されます。

従業員から徴収するタイミング

企業が従業員の給与から社会保険料を控除するのは、社会保険料が発生する翌月の給与を支払うタイミングです。なお、社会保険料には日割り計算はなく、入社時が月末だったとしても1ヵ月分の社会保険料が徴収されます。月末まで在籍することなく退職した場合は、最後の月の社会保険料は徴収されません。

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社会保険料の計算方法

社会保険料は従業員の給与に応じて決まりますが、給与は月によって変動することが多く、計算がしにくくなってしまいます。そのため、計算しやすいよう標準報酬月額を設定して、それをもとに社会保険料を算出します。

社会保険料の計算に用いる「標準報酬月額」の求め方や、各社会保険料の具体的な計算方法について、下記で解説します。

社会保険料の計算に用いる標準報酬月額

標準報酬月額とは、社会保険料の計算をしやすくするために、賃金を1~50の等級(厚生年金は1~32)に分けて表すものです。社会保険料のうち、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、この標準報酬月額に保険料率を掛けて算出します。
標準報酬月額は、主に定時決定または随時改定で決まります。なお、標準報酬月額を算出する際の賃金には、残業代や通勤手当を含みますが、出張旅費や年3回以下のボーナスは含みません。

定時決定

4月、5月、6月の給与支給額の平均をもとに、標準報酬月額を算出します。該当の標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用されます。対象者は原則全従業員ですが、下記の人は対象外です。

  1. 6月1日以降に資格取得した方
  2. 6月30日以前に退職した方
  3. 7月改定の月額変更届を提出する方
  4. 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った方

随時改定

固定的賃金が変動したことで、標準報酬月額の等級が2等級以上変わる従業員は、随時改定が必要です。固定的賃金が変動した月から3ヵ月の賃金の平均から標準報酬月額を算出し、4ヵ月目から適用します。ただし、「固定的賃金が上がったが、残業代等の変動によって標準報酬月額が下がる」といった場合は対象外です。「固定的賃金が“上がった”場合は、標準報酬月額の等級が2等級以上“上がる”」、「固定的賃金が“下がった”場合は、標準報酬月額の等級が2等級以上“下がる”」と随時改定が行われます。

なお、入社直後の従業員は、見込み給与額から標準報酬月額を決定します。また、業務量に時期的な偏りがあり、被保険者の同意などの要件を満たす場合、年間の賃金の平均で標準報酬月額を決めるという方法もあります。

標準報酬月額については、当サイトの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
標準報酬月額とは?決め方や社会保険料との関係をわかりやすく解説

健康保険料の計算方法

健康保険料は、下記の計算式で算出します。健康保険料の負担額は、事業主と従業員が50%ずつです。

健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率

健康保険料率は、事業主が加入している健康保険の種類等によって変動します。全国健康保険協会(協会けんぽ)では、都道府県によっても料率が異なりますから、自社に適用される料率を掛けてください。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料も、事業主と従業員が50%ずつ負担します。現在、厚生年金保険料率は18.3%で固定されているため、従業員の給与から徴収する保険料率は9.15%となります。

厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率(18.3%)

介護保険料の計算方法

介護保険料も、事業主と従業員の折半です。介護保険料率は、加入している健康保険ごとに決められています。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している事業主の場合は1.82%(2023年3月分から)です。

介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、事業主と従業員負担が同額ではないので気をつけましょう。なお、給与支給額には、残業代や通勤費を含めます。

従業員負担の雇用保険料=毎月の給与支給額×従業員負担分の雇用保険料率

従業員負担分の雇用保険料率は、次のように事業によって異なります。

■雇用保険料率
雇用保険料率
出典:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率

労災保険料の計算方法

労災保険料は、全従業員に支給した給与や賞与の合計に保険料率を掛けて算出します。従業員負担がないため、毎月の給与計算時に個別に保険料を計算する必要はありません。

労災保険料=全従業員の年度内の賃金総額×労災保険率

社会保険料を計算する際の注意点

社会保険料は、定期的に法改正や保険料率の見直しが行われます。社会保険料を計算する際は、下記の3点に注意してください。

社会保険料の徴収月は事業主の規定にもとづいて決定する

社会保険料の徴収は、法律上翌月徴収です。4月分の社会保険料は5月の給与から徴収します。実務上当月徴収をしている会社もありますが、本来は翌月徴収となります。

日割り計算は行わない

社会保険料は、日割り計算を行いません。月の途中で退職した場合でも、1ヵ月分の社会保険料を納めます。なお、社会保険料の徴収は、資格喪失日の属する月の前月分までです。
例えば、3月31日退社の場合、資格喪失日は4月1日で、3月分の社会保険料まで支払う必要があります。翌月徴収であれば、4月に支給される給与から社会保険料が徴収されます。

保険料率は定期的に見直される

社会保険料のうち、厚生年金保険料の保険料率は固定されていますが、それ以外の保険料率は変更されることがあります。年に1度程度見直しが行われているため、健康保険組合やハローワーク等からのお知らせを見落とさないように気をつけてください。

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支払った社会保険料は所得控除が可能

社会保険料控除は、所得税や住民税の計算をする際に利用できる所得控除の一種です。所得税の計算をする際、1年間に支払った社会保険料の全額を給与支給額から差し引くことができます。なお、生計を一にする家族の国民健康保険の社会保険料などを負担した場合は、その金額も控除可能です。

正確な社会保険料控除の計算は年末調整で行いますが、月々の給与から控除する源泉所得税を計算する際も、社会保険料の金額を差し引いた金額をもとに税額を求めます。

社会保険料が免除されるケースとは?

従業員が必ず支払わなければならない健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料ですが、免除になるケースもあります。下記の条件に該当する従業員がいる場合、社会保険料を免除する手続きが必要となります。

<社会保険料が免除となる条件>

  • 産前産後休業(産前産後休業期間、産前42日・多胎妊娠の場合は98日、産後56日のうち妊娠または出産を理由として休業した期間)
  • 育児休業(満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間)

介護休業や傷病休暇では、社会保険料は免除されません。
なお、雇用保険料と労災保険料は、給与が支払われなければ発生しないため、無給であれば保険料もかかりません。

社会保険料に関連する法改正

2017年10月の法改正によって、一定の要件を満たす短時間労働者も健康保険や厚生年金保険の対象者となりました。そして年々拡大傾向にあります。2022年10月に適用者が拡大されたほか、2024年10月にもさらに拡大することが予定されています。条件に該当する従業員を雇用している事業主は、新たに社会保険の加入手続きを行う必要があるため留意しておきましょう。

短期労働者の適用条件は、所定労働時間と月所定労働日数が正社員の4分の3以上です。ただし、特定適用事業所で働く従業員が下記の要件を満たす場合も、社会保険適用者となります。

<短時間労働者の社会保険適用要件>

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月収8万8,000円以上
  • 学生でない
  • 2ヵ月以上継続して雇用見込みがある

2022年10月の社会保険適用者の拡大

特定適用事業所の条件は、2022年9月まで従業員が常時500人を超える事業所でした。しかし、2022年10月からは、現在の社会保険適用対象者となる従業員数の条件が常時100人を超える事業所に拡大されています。

2024年10月の社会保険適用者の拡大

2024年10月からは、特定適用事業所の要件が、従業員が常時100人超から50人超にさらに拡大されます。これまで適用外だった事業所も対象になる可能性がありますから、該当するかどうか確認しておきましょう。

該当する場合は、社会保険に新たに加入しなければならない従業員を洗い出し、今後の働き方や社会保険料について説明をしておく必要があります。

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社会保険料計算の自動化・省力化には「給与奉行クラウド」がおすすめ

随時改定や育児休業等終了時改定などの作業を手作業で行っている場合、手間や時間がかかってしまい大変だといえるでしょう。
給与データを自動集計し、改定後の標準報酬月額を自動計算する「給与奉行クラウド」であれば、正確に処理を行えるので安心です。社会保険料の手続きなどをスムーズに行うためには、「給与奉行クラウド」のご利用をご検討ください。

よくある質問

社会保険料にはどんな種類がある?
社会保険料には、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、労災保険料、雇用保険料の5種類があります。なお、企業に雇用される従業員を対象とした社会保険に加入できない個人事業主や失業者は、国や自治体の社会保険である国民健康保険や国民年金に加入します。
社会保険料の金額はどうやって決まるの?
社会保険料のうち、労災保険料と雇用保険料は、給与の支給額に保険料率を掛けて算出します。一方、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を掛けた金額です。標準報酬月額は、主に4~6月までの給与の平均額に応じて決まります。
給与から社会保険料を徴収すべき従業員とは?
原則として、社会保険に加入している従業員の給与からは、従業員負担分の社会保険料を徴収しなければなりません。健康保険と厚生年金保険は、すべてのフルタイム労働者と一定の要件を満たすパートタイム労働者、介護保険料は健康保険加入者のうち40歳以上の従業員が対象です。雇用保険は1週間に20時間以上働き、31日以上継続して雇用される従業員が対象です。なお、労災保険料はすべての従業員の保険料を雇用主が支払うため、給与からの徴収はありません。
山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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