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ここ数年で、業務のDX化が急速に進んでいます。改正電帳法や行政手続きの電子化、今後はデジタルインボイスの導入も予定されており、中小企業といえどもDX化に対して「取り組まない」という選択は考えにくい状況にあります。
しかし、「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書」(経済産業省2022年4月発表)によると、コロナ禍の前後でデジタル化が一気に進んだとはいえ、中小企業の間ではデジタライゼーション(デジタル化によるビジネスプロセスの変革)まで進められていない企業は未だ4割超あり、DX(デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化)に取り組めている企業は1割程度しかありません。
市場競争がグローバル化し、世界がデジタルシフトする中、DX戦略は中小企業にこそ重要な戦略です。
そこで今回は、いま取り組むべきDX戦略について、その必要性や取り組み方などをご紹介します。
目次
- DX戦略とは
- なぜいま中小企業にDX戦略が必要なのか?
- DX戦略で期待できる6つのメリット
- DX戦略の効果的な進め方とは
―経産省が示す中小企業DX実現のロードマップと成功ポイント - DX戦略はバックオフィス業務から着手するのがオススメ!
DX戦略とは
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、デジタル技術による変革を意味する言葉です。デジタル技術を活用することで、業務効率化や経営戦略実行のスピードアップなどを実現し、市場競争の優位性を確立することを指します。DX戦略とは、こうした取り組みを戦略的に考えることを指します。
経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書」(通称「DXレポート2」)では、DXには「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3段階があり、推進すべきDXはこれら全てを包括するものと定義づけています。
また、「DXレポート2」では、DXの実現にあたって「必ずしも下から順に検討するものではない」としています。
しかし、そもそも「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」なくしては最上位段階のDX、つまりデジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化は実現しません。そのため、まだ紙を中心としたアナログな情報が混在している企業には、この2つに着手することがDX戦略を早期実現に近づけるためにも最優先で取り組みたい課題と言えます。
「DX戦略」の示す範囲は、狭義の意味で最上位段階の「デジタルトランスフォーメーション」を実現するための戦略として捉えられることもありますが、広義にはこの3つの段階全てに対する戦略でもあります。このコラムでは、DX戦略を広義に捉えて解説します。
なぜいま中小企業にDX戦略が必要なのか?
DXが注目を集めるようになったきっかけは、経済産業省により発表された「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年)で、「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退や、サポート終了などによるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある」と論じられたことによります。そして、DXの推進がこの問題の解決策になるとも言及されました。
ただ、当日は「DX=レガシーシステムを刷新すること」と誤解され、大手企業を中心としたムーブメントとして捉える傾向が強かったため、中小企業・小規模事業者の間では浸透しませんでした。
しかし、今では社会全体としてデジタル化が当たり前の環境となっており、企業規模に関係なくDX化が求められていることを認識しなければなりません。
その理由は、次のような事象が目前に迫っていることも大きく影響しています。
(1)制度改正に対応するには2024年までにDXが必需に
現在、政府が進めているデジタル社会の実現に向けて、様々な法制度がデジタル対応を前提として改正されています。
例えば、改正電帳法で義務化された電子取引のデータ保存では、保存方法のみを変更するだけでなく、ビジネスプロセスも見直さなければ業務の生産性が低下してしまう恐れがあります。また、2023年に開始するインボイス制度では「デジタルインボイス」の導入も予定されています。デジタルインボイス自体は義務ではありませんが、この仕組みがあれば手作業を介さず請求から支払い・入金消込まで可能になることから、今後は電子取引が主流になることが予測されています。
こうしたデジタル化の時流に乗らない場合、コンプライアンスの面でリスクを伴う可能性があります。
制度改正に適正に対応し運用できるようになるためには、企業は遅くとも電子取引の電子データ保存が完全義務化される2024年までにはビジネスプロセスのデジタル化を進めることが求められます。
※ 詳しくは、コラム「2年猶予を賢く使おう!改正電子帳簿保存法に必要な対応と進め方をわかりやすく解説!」を参照ください。
(2)今後ますます深刻化する人材不足対策としてDXが必要不可欠に
年々少子高齢化が進行する中、2025年には約800万人いる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本はいよいよ超高齢化社会に突入します。その結果、人口が減少する以上に生産年齢人口の減少スピードが加速し、結果として企業の人材不足問題がこれまで以上に深刻化することになります。
今後、企業には「限られた人材でいかに生産性を上げるか」が問われることになります。新たな人材確保がさらに厳しくなる以上、業務のあり方そのものを見直すべき時期に来ていると言えるでしょう。
また採用競争においても、これまで以上に激化することが明白です。最近は働き方への関心が高い求職者が多く、「テレワークやオフィス環境のデジタル化がどの程度進んでいるか」という点も企業を選ぶ決め手になっています。
「DX化が進んでいない」ということは、労働力、生産力の低下を招く大きな原因となり、人材確保や経営スピードに大きな影響を与える可能性があります。
DX戦略で期待できる6つのメリット
DX戦略に取り組むことによって、中小企業にどのような効果が得られるのでしょうか。DXのメリットは様々ありますが、大きくは次の6つの効果が期待できます。
1.業務効率化と生産性向上が期待できる
例えば、バックオフィス部門でDX化を進めると、ビジネスプロセスのデジタル化によって定型業務をはじめ多くの業務が自動化・効率化でき、人の手を必要とする業務が大幅に削減されます。定型業務がデジタルで自動化されることで業務の精度も上がり、慢性的な人材不足でも品質を維持できます。従業員は空いた時間で本来の業務に専念できるようにもなるため、生産性の向上が期待できます。
また、バックオフィス部門とフロントオフィスなど他部門がデジタル技術でつながれば、部門の垣根を越えて業務効率化・生産性向上も可能になります。
2.経営に必要なデータが自然と集まる
市場競争が激化する中で生き残るには、いかにスピーディに現状把握できるかが迅速な経営判断のカギとなります。しかし、手作業でデータ収集や分析をしていると、時間や手間がかかるだけでなく、計算ミスなどが発生する可能性もゼロではありません。
DX化が進むと、組織内の数字が自然と蓄積・一元管理されるようになるため、迅速なデータ確認、分析が可能になります。手作業では難しかった多角的な分析も簡単にできるようになり、よりタイムリーで的確な経営判断が可能になります。
3.テレワークやペーパーレス、改正法対応の課題を一気に解決できる
今、企業には多くの課題が山積しています。改正電帳法やインボイス制度、働き方改革などの法改正による義務化対応は、否が応でも進めなければなりませんが、テレワークやペーパーレス化対策など「いつでも取り組める」課題は後回しになりがちです。また、取り組んだものの「定着しない」「形骸化」などを引き起こし、結果として解決に至らないケースも多発しています。
DX戦略では、ビジネスプロセスも見直すことになるため、法改正への対応はもちろん、これまで実現に至らなかったペーパーレス化や働き方の変革も実現させることができます。
DXの要となるデジタルツールに法改正対応が標準装備されていれば、導入するだけで将来にわたり継続的に改正への対応ができる点も非常に大きなメリットでしょう。
4.人材確保・採用力強化がしやすくなる
DX化が進むことでビジネスプロセスが変わると、働き方そのものが変わります。従業員の事情に合わせて柔軟に対応できるようにもなり、シニア層や副業者など優秀な人材も登用しやすくなります。
また、デジタルネイティブと言われるミレニアム世代・Z世代では、企業の業務デジタル化状況によって入社や定着の決め手になると言われています。実際、企業内のデジタル化が推進されていないことで新入社員が退職したという事例も出ています。社会的に若手人材が減少する中、せっかく採用できた若手人材を長く定着させるためにも、DX戦略は必須と言えるでしょう。
5.高付加価値のビジネスモデル創出がしやすくなる
DX戦略の最終目的は、新たなビジネスモデルの創造で市場競争を優位にすることです。
中小企業や小規模事業者でも、経営に必要なデータをデジタル技術で様々に活用できれば、新たな商品・サービスの開発、新たな顧客体験の創造など、事業拡大の可能性が広がります。
例えば、Eコマース(電子商取引)は、今では大手企業だけでなく多くの中小企業でも活用されており、実店舗では接点を持てなかった顧客に対してアプローチができるようになっています。このように、先行者により整備されたプラットフォームを利用することで、企業規模にかかわらず、新しいビジネスモデルに取り組むことができるようになります。
6.BCP対策・事業継承につながる
災害大国日本では、企業のBCP対策は必須の課題となっています。
DXの推進によってビジネスプロセスが変わると、あらゆる情報はクラウドで蓄積され、インターネットを介してどこにいても業務を遂行することができます。災害など非常時の際もコア業務が停止するリスク予防にもなります。
また、2020年以降、新型コロナウイルスの影響や人材不足の加速などの影響を受け、多くの中小企業、小規模事業者が経営難に苦しんでいます。2022年4月に中小企業庁が発表した「中小企業白書・小規模企業白書」によると、2021年の休廃業・解散件数は2000年以降で過去3番目の高水準と報告されました。
経営者にとって「企業の存続」は永遠の課題です。DX戦略を導入することにより、業務効率化や人材確保、経営判断のスピードアップなどを得られれば、企業の生存率を伸ばすことができるでしょう。
DX戦略の効果的な進め方とは
―経産省が示す中小企業DX実現のロードマップと成功ポイント
DX戦略の進め方については、経産省が2022年4月にまとめた 「中堅・中小企業向け デジタルガバナンス・コード実戦の手引き」が参考になります。
この手引きでは、DX実現には4つのプロセスが必要であると示しています。
もっとも重要なのは、経営ビジョンから逆算した構想です。経営者がパーパス(存在意義)を明確にし、5年後、10年後どのような企業を目指すか(経営ビジョン)を描くことで、現状との差を埋めるための課題が整理され、課題解決に向けてどのようなデジタル技術が必要なのかが明快になってきます。DXの目的が明快になれば、最新技術を導入することで安心しきったり、デジタル技術導入のためのデジタル技術導入に陥ったりすることもなくなるでしょう。また、社内外の関係者を巻き込みながらDX 実現に向けた体制を構築することで、単なる経営者の号令で終わってしまうことも回避できます。
そのためにも、経営者は外部の視点や適切な支援者との出会い、セミナー等での情報収集、業種や地域におけるコミュニティ活動など、急速に変化する社会動向からDXに取り組むきっかけや気づきを得る機会をいかに持つかが重要になります。
そこで、経済産業省では、企業がDXの取組を自主的・自発的に進められるよう、次の4つの対応を経営者が実践すべき「デジタルガバナンス・コード」として取りまとめました。
このデジタルガバナンス・コードは、「DX銘柄」や「DX認定」の評価・認定基準ともなっており、同コードに沿って取り組めば、DX推進の体制が整備できるようになっていますので、実践の参考にされるとよいでしょう。
手引きには、他にも次のような成功に向けたポイントが明示されています。
<成功に向けたポイント>
●まずは身近なところから着手すること
「DX実現には目的が大事」といっても、いきなりゴールを目指すことは挫折や失敗のリスクを抱えることにもなります。まずは取り組みやすいところから着手して、小さな成功を積み重ねましょう。ほとんどDX化が進んでいない企業なら、負荷のかかりにくいバックオフィス業務から順を追って進めることで、従業員の抵抗感を最小限にしながら着実にDX化を進めることができます。
DX化に成功している企業でも、個別業務等のデジタル化、既存データや公表データの活用など、できる領域から取りかかる事例が多く見られます。身近な業務で実践しノウハウを蓄積し、試行錯誤を繰り返しながら徐々に取組領域を拡大していくことが大切です。
●外部の視点・デジタル人材を活用すること
DX戦略には、デジタル技術に関する理解が必須となります。ただし、リソースの少ない中小企業にとって、社内でIT人材を確保・育成したり専門部署を立ち上げたりするなどは、ハードルが高く現実的ではありません。
そのため、ITベンダーやITコーディネーターなど外部機関を上手く活用し、その過程で社内にノウハウやスキルを蓄積していくなど、中長期的に人材育成に取り組むとよいでしょう。
●DX化を通じて組織全体で変化に強くなること
顧客に新たな価値を提供するには、社会や顧客ニーズの変化に素早く対応することが求められます。デジタル技術の活用は、まさにその素早い変化に対応するための絶対条件だと言えるでしょう。
しかし、そのためには、既存のビジネスモデルや組織をデジタル技術に対応できるよう変革し続けなければなりません。また、“素早く変わり続ける”企業になるためにも、つねにデジタル技術やデータ活用に関するノウハウ・スキルを高め、組織全体で変化に強くなることが重要です。
●中長期的に取り組むこと
DX戦略は、取り組んですぐに思い描いていた結果を得られるものではありません。組織やビジネスモデルを変革するのですから、経営ビジョンの策定に始まり現状把握やビジョンとのギャップ、問題抽出と解決策やそれにかかるリソースの確保、適切なデジタル技術の導入など、長い時間とコストが必要になります。
そのため、DXは5年後、10年後といった中長期的な計画のもと、腰を据えて取り組むべきものと考えましょう。
DX戦略はバックオフィス業務から着手するのがオススメ!
DXに取り組むといっても、中長期的な目的を策定するだけでも大変な作業です。まずは、経済産業省の手引きに習って「身近なところ」から始めましょう。
その際のオススメは、バックオフィス部門から始めるDXです。
法制度の対応には「いつまでに」という期限があるため、法制度に沿った業務を求められるバックオフィス部門は早期DX化が必要になります。また、多くの場合、DX化は最初から大掛かりな取り組みを行うことで、うまく浸透せず途中で頓挫してしまいやすいですが、バックオフィス業務は、入力・集計・出力など誰がやっても同じ結果を得るための業務が多く、プロセス自体も企業ごとに大きな違いはありません。そのため、自社に合ったデジタル技術を導入するだけで、業務プロセスと業務時間を大幅に削減でき、確実に一定の成果を得られます。
バックオフィス部門向けに提供されているサービスは、ITスキルやITリテラシーが不足していても、またDX戦略の目的が明確に定まっていなくても、早期に運用レベルに到達でき、DX戦略の立案や他の施策と並行して進めることも可能です。
加えて、バックオフィス部門にはつねに企業情報が集約されるため、リアルタイムに経営指標を確認でき、経営判断のスピードアップにもつながります。
2022年中なら、バックオフィス業務のDX化にIT導入補助金を活用できるので、DXサービスの導入コストを大きく削減することも可能です。
DXが当たり前の取り組みとなる社会は、もうすぐそこまで迫ってきています。DX時代をうまく生き抜くためにも、今から社内のDX化を進めていきましょう!
※ IT導入補助金2022の詳細は、コラム「[IT導入補助金2022]インボイス導入を見据え国が企業のDX推進を強力支援!2年分のクラウドサービス利用料が対象に」を参照ください。
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