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企業には、障害者雇用促進法により一定数以上の障害者を雇用する義務があります。厚生労働省の調査では、2023年の報告で雇用障害者数は約64.2万人と過去最高になったものの、民間企業の達成率は50%にとどまっているのが現実です。(厚生労働省「令和5年障害者雇用状況の集計結果」より)法令に対する認知度も決して高くなく、取り組みを「難しい」と感じている担当者も少なくないようです。
そこで今回は、障害者雇用促進法の概要や2023年4月以降に施行される改正点について解説するとともに、自社の雇用計画策定に向けて押さえておきたいポイントをご紹介します。
障害者雇用促進法は、正式名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」といいます。
第二次世界大戦で負傷者や身体障害者となった帰国兵のために1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」を前身として、障害者の職業の安定・自立の促進を目的に、1976年の改正で企業に対して義務化されました。その後も度重なる改正が行われ、雇用義務の対象となる障害者枠の拡大や、企業負担の軽減を目的とした助成金制度の創設など、多くの取り組みが推進されています。
また、障害者雇用促進法のベースには、障害者も自立した一人の社会人として企業や社会に貢献しようというノーマライゼーション※の理念がこめられています。このことからも、障害者雇用促進法が企業に求めているのは、障害者の隔離や保護ではなく、障害者が安全に働ける職場環境を整え、健常者と同様に能力を発揮できるよう促す対応であると言えるでしょう。
※ ノーマライゼーションの理念とは、障害者を特別視するのではなく、障害のない人と同じように社会で暮らしていけるようにしようという考え方です。
昨今は、障害者を雇用することには、法令で定められた義務を超え、SDGsやサステナビリティ、ダイバーシティの取り組みとしても大きな意味があります。障害者が働きやすい環境を整備することで既存社員の働き方も改善でき、「業務効率化につながった」「外注業務を内製化でき、コストを削減できた」といった成果を生み出している企業もあり、企業の成長につながる重要な取り組みにもなっています。
2020年の改正では、障害者雇用に関する優良な取り組みを行う中小企業への認定制度(もにす認定制度)が創設されました。認定を受けた企業には、日本政策金融公庫による低利融資や、公共調達等における加点評価などの特典も設けられるなど、中小企業全体に対して障害者雇用の取り組み支援が推進されています。

出典:厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」
障害者雇用促進法では、義務対象となる企業と雇用の算定対象となる障害者が次のように定められています。
障害者雇用促進法では、「従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務がある」と定められています。(43条第1項)
民間企業に対しては、法定雇用率によって算出された従業員数43.5人以上の企業が対象となります。(43.5人未満の企業には雇用義務は発生しません)
なお、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種の場合は、雇用する労働者数の計算時に、除外率に相当する労働者数を控除することができます(除外率制度)。ただし、ノーマライゼーションの観点から制度そのものはすでに廃止されており、当面の間は特例措置として残るものの、廃止の方向で段階的に除外率の引き下げ、縮小が行われます。
障害者雇用促進法では、障害者とは「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者」とされています。
企業が雇用すべき対象となるのは、原則として身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの交付を受けている人であり、具体的には次のような障害者が対象となっています。
一方、障害者の中には、精神障害の特性・疾患があっても症状が安定し就労できることから「手帳を持たない人」や、その他の心身機能の障害はあるが様々な事情で「手帳を持たない人」もいます。こうした人たちは、障害者雇用促進法で定められている雇用算定対象にはなりませんが、決して「雇用しなくてよい人」ではありません。障害者雇用促進法の根底にはノーマライゼーションの理念があることから見ても、企業には“障害者手帳にかかわらず、誰もが働きやすい職場づくり”が求められていることを留意しましょう。
障害者雇用促進法では、「事業主の義務」として「雇用率制度」「差別禁止と合理的配慮の提供義務」「障害者職業生活相談員の選任」「障害者雇用に関する届出」の4つが定められています。
労働者を雇用する事業主は、民間企業・官公庁を問わず、身体障害者等に雇用の場を提供する社会連帯責任があります。これにより、官民それぞれの事業区分に応じて、次のように法定雇用率が定められ、これに相当する人数の障害者を雇用する義務が課されています。

出典:厚生労働省東京労働局「令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります。」
先述した義務化対象となる企業の要件「従業員数43.5人以上」は、上記の民間企業に義務づけられている法定雇用率2.3%から算出されたものであり、対象となる企業は障害者を1人以上雇用しなければならないことになります。
ただし、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合、その子会社に雇用される障害者を親会社に雇用されていると見なして実雇用率を算定することができます。(特例子会社制度)
なお、法定雇用率が未達成で従業員100人超の企業は、不足している雇用障害者数1人につき毎月納付金が徴収されます。
企業には、募集・採用、賃金、配置、昇進などの雇用に関するあらゆる局面において、障害を理由に不当な差別をせず、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するべく個別の対応や支援を行うことが義務づけられています。
具体的には、次のような例が該当します。
この指針は規模・業種を問わず、全ての企業が対象です。
企業には、障害者からの相談に対応する体制の整備が義務づけられています。特に、障害者の雇用数が5人以上の企業には、厚生労働省認定の障害者職業生活相談員を選任し、次のような職業生活に関する相談・指導を行うことが義務づけられています。
障害者職業生活相談員は、資格認定講習を受講・修了した従業員等から選任し、相談者の選任後、ハローワークに選任報告書を届け出る必要があります。
障害者雇用の義務対象となる企業には、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況(障害者雇用状況報告書)をハローワークへ報告することも義務づけられています。この届出をもとに、障害者の雇用状況や、法定雇用率の達成状況が確認されます。
障害者雇用状況報告書には次のような情報を記載し、7月15日までに提出することになります。障害者雇用状況報告書を提出しなかったり虚偽の報告をしたりすると、罰金が科せられるため注意が必要です。
※報告書の記入方法については、コラム「高年齢者雇用状況報告書[新様式]と障害者雇用状況報告書の書き方と効率的に書類を作成する方法」を参照ください。
障害者雇用状況報告書は、郵送、窓口での提出のほか、電子申告もできます。(電子申告は、2023年よりGビズIDまたはe-Govアカウントを使用した電子署名が必要となります)
なお、雇用障害者は、障害の状況・レベル・労働時間に応じて次のようにカウントします。

出典:厚生労働省PDF「障害者雇用率制度について」
障害者雇用促進法は、これまでも時勢に応じて度々改正されています。
2023年3月の改正では、法定雇用率の段階的な引き上げや「障害者を積極的に雇用する企業」への新たな支援なども加わり、2023年4月以降、順次施行される予定です。
ここでは、人事労務担当者が押さえておきたい6つの改正内容について解説します。
雇用率は5年程度ごとに見直しが行われており、今回の改正では、現在の民間企業に対する法定雇用率2.3%が、段階的に2.7%まで引き上げられることになりました。これにより、2026年7月には、障害者雇用の義務化が適用される企業が従業員37.5人以上まで拡大されることになります。

これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1〜0.2ポイントだったことを考えると、国の障害者雇用率に対する姿勢がより積極的になっていることが窺えます。
先述したように、除外率は段階的に廃止されることが決まっています。
2025年4月以降は、省令の改正により各除外率設定業種で10ポイント引き下げられ、2023年度時点で除外率が10%以下の業種は、2025年4月以降、除外率制度の対象外となります。
引き下げ後の除外率は、次の通りです。

出典:厚生労働省 委託調査PDF
「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
所定労働時間が20時間以上30時間未満となる短時間労働の精神障害者については、これまで特例措置として1人=1カウントとする算定方法が適用されてきましたが、2023年度以降も当面の間継続されることになりました。
具体的には、雇い入れや精神障害者保健福祉手帳の取得期間にかかわらず、2022年度までは1人=0.5カウントとして算定していた従業員も含め、1人=1カウントとして算定します。
週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を雇用した場合、特例的な取扱いとして、1人=0.5カウントで実雇用率に算入できるようになります。
また、週10時間以上20時間未満で働く障害者を雇用する企業を対象に支給していた特例給付金は、2024年4月1日をもって廃止されます。

出典:厚生労働省「特定短時間労働者の雇用率算定について」
これまでは、企業に対して「適当な雇用の場の提供」「適正な雇用管理」などが事業主の責務とされてきましたが、2023年4月以降は、それらに加え「職業能力の開発・向上に関する措置」も追加されました。

出典:厚生労働省「雇用の質のための事業主の責務の明確化」
これにより、今後は、雇用機会の確保および必要な合理的配慮を行うことに加え、次のような障害者が活躍できる職場環境の整備と、適切な雇用管理の取組を行うことが望まれます。
常用労働者101人以上の企業が法定雇用率未達成の場合、不足している雇用障害者数1人につき毎月5万円の納付金を納めることになっています。この納付金は罰則ではなく、法定雇用率の達成や一定数以上の障害者雇用を行った企業とそうでない企業との間に生じる経済的負担の差を調整するため、障害者雇用調整金(雇用率を達成している企業に対して支給)や報奨金などの財源に用いられます。
2024年4月以降は、雇用率達成企業に支給される障害者雇用調整金・報奨金について、当該超過人数分の支給額が次のように引き下げられることになります。

出典:厚生労働省 PDF「具体的な支給調整方法(支給対象人数や支給額」
支給額単価の引き下げで得られた財源は、新設される障害者の雇入れ・雇用継続に対する相談支援などに対応するための助成措置や、既存の助成金(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金など)の拡充に充てられます。
※助成金の新設・拡充の具体的な内容についてはこちらを参照ください。
企業の障害者雇用を促進するには、まずは自社の実雇用率を把握し、雇用計画を立てることが大事です。
実雇用率とは、企業が実際に障害者を雇用している割合を指し、自社で雇用すべき障害者は何名なのか、雇用率を達成しているかどうかは、次の計算式で求めることができます。

この計算には、従業員数を適切に分類し集計する必要があります。従業員が多い企業では最新の従業員数を集計するのも面倒な作業でしょう。障害者のカウント方法も特殊なため、できるだけ効率的に算出するには、柔軟に集計できる機能を持った人事システムなどが有効です。
例えば、総務人事奉行iクラウドの場合、従業員情報は、労働者名簿に必要な基本情報や給与計算のための情報、履歴書や入社承諾書等の提出書類などを一元管理できます。また、自由に設定できる区分を活用して本人障害情報も管理することができるため、「基準日」と「区分」を指定すれば簡単に障害者雇用状況報告のための人員構成表を作成することができます。

このような機能を使えば、簡単に自社の雇用率を把握することができ、障害者雇用状況報告書も簡単に作成できます。
また、障害者雇用の対象となるかどうかの判断には、障害者手帳の確認が必要となります。扶養控除申告書でも障害者手帳を確認することになるため、その際、障害者雇用情報把握のための依頼もしておくと効率的です。ただし、基本的には説明会などで全従業員に対して“画一的な手段”で呼びかけ、情報の利用目的および利用方法を理解したうえで同意を得られるようにしましょう。
なお、次のような場合は法令違反となり、30万円以下の罰則が課されるため注意が必要です。
従業員の障害情報の入手は個人情報を取り扱う業務でもあるため、プライバシーに関わる点を考慮し、細心の注意を払いながら情報を適切に管理することが求められます。
また、障害者雇用においては、障害者が働きやすい環境づくりも担当者のミッションです。総務人事奉行iクラウドのような人事労務業務を網羅的にアシストできるシステムを活用し、コラム「 【2026年最新】障害者雇用とは?会社の義務やメリット、法改正のポイント、助成金を解説」も参考にしながら、自社に合った障害者雇用計画を実践してみてはいかがでしょうか。

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