労働安全衛生法とは?事業者の義務や2019年の改正ポイントを解説

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企業活動においては、従業員が出社したり取引先へ商談に行ったりする「物理的な移動」が伴います。テレワークやオンライン商談などは一般的になりつつありますが、まだ従業員が物理的な移動を行う必要がある企業は多いのではないでしょうか。
この記事では、企業活動における従業員の交通費の種類や通勤手当の非課税限度額のほか、支給方法や注意点などについて解説します。

目次

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法は、事業者が労働者の安全と健康を守り、労働者にとって快適な職場環境形成を促進するために1972年に制定されました。制定後も時代の流れに応じて改正が重ねられている労働安全衛生法を、事業者は正しく理解し、適切に対応する必要があります。

労働安全衛生法の「事業者」

労働安全衛生法において、事業者とは「事業を行う者で、労働者を使用するものをいう」と定義されています。一部例外を除き、ほぼすべての企業が対象です。
ちなみに「事業者」は、個人事業主の場合、事業主本人ですが、法人は「企業そのもの」を指します。「者」といっても「経営者個人」ではないのでご注意ください。
法令違反があった場合の罰則の適用については、現場の責任者と事業者の両方が罰せられることがあります。

労働安全衛生法の「労働者」

労働安全衛生法によって守られる労働者とは、「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」です。ただし、同居親族のみを使用する事業および家事使用人、船員については含まれません。

労働安全衛生法と労働基準法の関係

労働安全衛生法と混同されがちな法律が、労働基準法です。そもそも、労働安全衛生に関する項目は、労働基準法にありました。しかし、1960年代以降の高度経済成長で労働災害が多発したことからより細かい規定を設ける必要性が生じ、労働基準法から分離・独立する形で労働安全衛生法が定められたのです。
労働安全衛生法は、下記のとおり大きく3つの項目に分けられます。

■労働安全衛生法の概要
項目 内容
事業場における安全衛生管理体制の確立のために必要な措置 ・総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医などの選任
・安全委員会、衛生委員会などの設置
事業場における労働災害を防止するための具体的な措置 ・危険防止基準
・安全衛生教育
・就業制限
・作業環境測定
・健康診断
国による労働災害防止計画の策定 ・5年単位の中期計画策定

労働安全衛生に関して事業者が講じるべき措置

労働安全衛生に関して、事業者はどのようなことを行うべきなのでしょうか。ここでは、事業者の責務として講じるべき措置について解説します。自社の状況に照らし合わせ、抜けや漏れがあるようであれば早急に対応する必要があります。

業種・規模に応じた管理者の配置

労働安全衛生法において、事業者は業種や業務内容、事業場規模などに応じて管理者を配置する必要があります。
特に、50人以上の労働者がいる事業場では、少なくとも衛生管理者と産業医を配置しなければなりません。ちなみに「事業場」とは、「企業そのもの」ではなく支社や工場など「労働者が働くひとつの場所」を指します。さらに、労働者が10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者の配置が必要です。
そのほか、業種に応じて、総括安全衛生管理者や安全管理者、作業主任者などの管理者が必要となります。自社にどのような管理者が必要なのかを、あらためて確認してください。

厚生労働省愛媛労働局「事業場業種別・規模別安全衛生管理組織」

出典:厚生労働省愛媛労働局「事業場業種別・規模別安全衛生管理組織」

労働者の危険・健康障害の防止措置

事業者は、労働者が使用する機械・設備や扱う爆発物・発火物などによって起こりうる事故を防ぐため、措置を講じなければならない義務があります。また、ガスや蒸気、粉塵、高温、騒音などが発生する事業場では、これらを原因とした健康障害が起こらないようにする措置も必要です。
業種・規模を問わず必要な措置には、労働災害の防止に努めることや労災発生の危険がある際の適切な対応、違法な指示禁止などが挙げられます。

労働者が従事する業務についての安全教育

事業者が労働者を雇用した際は、労働者が従事する業務内容に応じて、適切な安全衛生教育を行う必要があります。これは、アルバイトやパートタイムの労働者でも同じです。また、中高年の労働者など、安全衛生面で特に配慮が必要な労働者に対しても、しかるべき措置をとらなければなりません。
一部の業種については、監督者を新たに任命した場合や作業内容を変更した場合の労働者配置や監督方法について、安全衛生教育を行う必要があります。

労働者の健康保持・増進のためのチェックや診断・指導

事業者には、労働者を新たに雇用したときと年1回、健康診断を受診させる義務があります。2015年からは常時50人以上の労働者が働く事業場で、ストレスチェックも義務付けられています。
また、快適な作業環境を維持するために採光や照明、防湿状態などをチェックしたり、労働者の健康状況に応じて配置転換や働き方の検討を行ったり、必要性がある労働者に対して保険指導を受けさせたりしなければならないのです。

2019年の労働安全衛生法改正のポイント

1972年に施行された労働安全衛生法は、時代の流れに合わせて度々改正されています。直近では、働き方改革関連法の一環で大きく改正され、2019年4月1日に施行されました。
ここでは、労働安全衛生法改正のポイントをご紹介します。自社の社内規定が対応しているか、チェックしてみてください。

労働者の労働時間把握・保管義務

事業者は、すべての労働者の労働時間を適正に把握しなければなりません。
原則的な方法は2つあります。1つは使用者の「現任」です。しかし、使用者(上司)が誰よりも早く来て、誰より遅く帰ることは現実的ではないため、もう1つの原則である「客観的な記録」によることになります。その際には、タイムカード、ICカード、パソコンのログイン・ログアウト時刻などで管理します。
この労働時間の把握は残業代の計算が目的ではなく、健康管理の観点が目的のため、管理監督者や裁量労働制の適用者に対しても同様であることにも注意すべきでしょう。労働時間の記録保存は3年間保管しなくてはならず、場合によっては産業医に提供する必要も生じます。

産業医・産業保健機能の独立性・中立性強化

事業者には、労働者の健康管理・維持のための健康相談が受けられる体制を整える努力義務があります。また、事業場の労働者数に応じて、産業医の選任義務が生じます。
2019年の労働安全衛生法改正によって、この産業医・産業保健機能の独立性や中立性が強化されています。具体的には、産業医が辞任や解任に至ったときには、安全衛生委員会・衛生委員会への報告を事業者に義務付けました。
ちなみに、事業場の産業医選任の条件は、下記のとおりです。

■事業場労働者数別の産業医選任条件
労働者数 産業医選任義務の有無
49人以下 医師などによる健康管理を行う努力義務(産業医の選任義務なし)
50人以上999人以下 1人以上の産業医の選任義務あり(嘱託可)
1,000人以上3,000人以下 1人以上の専属産業医の選任義務あり
3,001人以上 2人以上の専属産業医の選任義務あり

産業医面接指導基準を80時間へ引き下げ

事業者が労働時間を適正に把握した結果、時間外労働(休日出勤を含む)が月80時間を超えた労働者がいた場合には、産業医にその情報を提供し、労働者からの申し出を受けて面接指導を実施します。この「面接指導基準」が、月100時間から80時間へと引き下げられたのが2019年の改正点です。
ただ、新技術・商品などの研究開発業務にあたる労働者や高度プロフェッショナル制度対象の労働者については、労働者の申出がない場合でも時間外労働(休日出勤を含む)が月100時間を超えた場合に面接指導を実施する必要があることに注意が必要です。

さらに、産業医による面接指導後、事業者は面接結果にもとづいて必要な措置をとる必要があります。この措置が不十分と産業医に判断された場合、産業医からの「勧告」が行われることになったのも産業医権限強化の一環であり、改正のポイントです。勧告を受けた事業者は、衛生委員会または安全衛生委員会に勧告内容を報告しなければなりません。

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労働者の安全衛生を守るためには、勤務時間や休日出勤時間の正確な把握が必要です。しかし、業種によっては勤務体系が複雑だったり働き方が多様だったりと、手作業での勤務時間の集計が難しいケースもあるでしょう。
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山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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