「勤怠管理」どうしてる?
目的から注意点まで、人事総務担当者が知っておきたい基礎知識

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どの業種・業界でも、企業規模にかかわらず、「勤怠管理」は通常業務として当たり前に行われていることでしょう。ですが、現状の勤怠管理業務に対して、不満や不安を抱えてはいないでしょうか?
この4月には、働き方改革の一環で労働時間に関する様々な法改正も行われます。「労働時間の正確な把握」は企業の義務となり、「適切な勤怠管理」は企業にとって重要かつ喫緊の課題とも言えます。その渦中において、「法令に則り正しく勤怠管理を行うにはどうしたらいいのか」「作業の手間が増えるだけではないか」など、山積する問題にどう対処すべきか頭を抱える担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、自社の勤怠管理を見直す前に知っておいていただきたい、勤怠管理の重要性や管理項目、方法、注意点などについて解説します。勤怠管理とはそもそもどんな業務なのか、どこに注意すべきかなど、コンプライアンス視点で整理してみましょう。

目次

「勤怠管理」はなぜ必要なのか?

勤怠管理とは、従業員の日々の労働時間を正確に把握するため、出勤、退勤、休憩時間、欠勤・遅刻の状況、休日の取得状況などを管理するものです。

では、なぜ企業にとって勤怠管理は必要なのでしょうか。

労働基準法第32条では、法定労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められています。これが適正に守られているか、正しい賃金を支払えているかを管理する仕組みが、勤怠管理です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)には、「賃金台帳の適正な調製」として以下のようにも定めています。

使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円 以下の罰金に処されること。

労働時間は、従業員の給与計算において基礎情報となります。従業員が働いている時間を正確に把握できていなければ、正しい給与や残業代を支払えているかどうかわかりません。正しい労働時間を算出するためにも、勤怠管理を適切に行うことが求められているのです。
労働基準法には、労働者名簿、賃金台帳とともに労働時間の記録に関する書類についても「3年間保存しなければならない」と定められています。このことからも、勤怠管理は企業に課せられた「義務」であることが分かります。

また近頃では、残業問題や過労死問題の影響を受け、勤怠管理が雑な企業は「ブラック企業」とレッテルを貼られるケースもあります。勤怠管理が適切に行われていないと、残業が増えている従業員をそのまま見過ごしてしまう可能性すらあります。
勤怠管理で従業員の労働状況を正確に把握できれば、従業員の働き過ぎを防ぎ、健康管理に配慮することができます。さらには、残業が増えている業務の見直しや生産性の改善を図ることにも貢献できます。
法令上、勤怠管理は「義務」ですが、「企業生命を守る」上ではリスクヘッジとしても有効な業務と言えるでしょう。

以上のことをまとめると、適切な勤怠管理には以下のようなメリットがあると言えます。

  • 長時間労働を防ぎ、従業員の健康を守る。
  • 有休取得を把握し、取得に向けて適切な指導ができる。
  • 残業や休日出勤、有休消化の状況などを反映し、正確に賃金を支払うことができる。
  • 売上(利益)を労働時間で割ることで、生産性の測定ができ、生産性改善にも活かせる。

勤怠管理で管理すべき内容とは?

勤怠管理を行う上では、勤怠管理の対象者と管理すべき項目を把握することが大事です。

■対象者

厚生労働省の「ガイドライン」によると、「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適応される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間性が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者」とあります。
つまり、会社規模や業種を問わず従業員を雇用する場合は、例外なく勤怠管理が必要ということです。

ここで記載される「労働基準法第41条に定める者」とは、例えば管理監督者など事業所の責任者を指します。また「みなし労働時間制」は、「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」があたります。

<注意>

2019年4月に改正される労働安全衛生法において、「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文が追加されることから、今後は管理監督者等の責任者であっても労働時間の適正な把握が義務化されることになります。また、高度プロフェッショナル制度はみなし労働時間制になりませんが、健康確保の措置が求められるので、年間104日の休日取得状況の把握は必要となります。

■管理する項目

勤怠管理の項目について、労働基準法では規定されていませんが、厚生労働省の「ガイドライン」には「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」とあります。そのため、必ず以下の項目は把握しておく必要があります。

  • 始業・終了時刻、労働時間、休憩時間:
    労働時間を正確に把握するために必要な項目です。賃金算定のため、始業・終業については1分単位で管理します。遅刻や早退が多い従業員には、適正な業務指導や配置換えなどの対処にも応用できます。
  • 時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間:
    法定労働時間を超えて働いた時間も、当然支払う賃金に影響します。時間外労働や深夜残業、休日出勤には、割増賃金を支払わなければなりません。それぞれ異なる割増率が適用されるので、正確に時間を把握する必要があります。
  • 出勤日、欠勤日、休日出勤日:
    1ヶ月単位で勤務状況を把握することも必要です。休日を正しく取得できているか、休日出勤があった際には振替休日や代休を取得できているかなどの情報は、従業員の健康を管理する上で欠かせません。給与計算にも影響するため、適切な管理が必要です。
  • 有休取得日数・残日数:
    従業員に有休を取得させることは、使用者としての義務です。2019年4月からの労働基準法改正では「年次有給休暇の取得」も義務化されます。適切に有休を取得できているかの把握をするためにも、勤怠管理をしっかり行うことが大切です。

勤怠管理の手法とメリット/デメリットとは?

厚生労働省の「ガイドライン」には、原則として以下のような方法で勤怠情報を記録するように指示されています。

  1. (ア) 労働時間管理を行う企業または管理監督者などが、直接確認し、適正に記録すること。
  2. (イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

勤怠の管理方法には様々なタイプがあり、原則としてこのガイドラインに則って記録する必要があります。
ここでは、「紙の出勤簿」「タイムカード」「エクセル管理」「勤怠管理システム」と、大きく4つに分類してその特徴を整理してみましょう。

■紙の出勤簿

紙のフォーマットで勤怠を管理します。カレンダー仕様のフォーマットを用い、出勤時刻・退勤時刻、残業時間、休憩時間、遅刻、早退、休日取得など、あらゆる情報を書き込みます。アナログ式ながら、1枚のシートに全てをまとめて管理できるという特徴があります。

しかし、この方法は全て手書きの自己申告が主となるため、不正申告やサービス残業の温床になりやすく、厚生労働省の「ガイドライン」に定める「適正な労働時間の把握」は難しくなります。ただし、「ガイドライン」には、自己申告制の特例措置についても条件が定義されていますので、それらを全て満たすことができれば「客観的記録」として認められます。

※特例措置については、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の「自己申告制により始業・終業時刻の確認および記録を行う場合の措置」を参照ください。

■タイムカード

紙の打刻シートをタイムレコーダーに差し込んで打刻する方法で、1人分の1ヶ月分の勤怠状況を1枚のシートで管理することができます。打刻する端末を購入すれば用紙を補給するだけで済むため低コストで導入でき、操作も簡単なので誰でもすぐに使用することができます。

ただし、始業・終業時刻しか記録できないものが多く、休日や残業時間の管理ができない可能性があります。また、社内にタイムレコーダーの設置が必要なため、テレワークや社外で勤務する場合には「リアルタイムに打刻できない」というデメリットもあります。手書きなどの修正による自己申告は、厚生労働省の「ガイドライン」で定める「客観的記録」として認められていないため、紙の出勤簿と同様、別の措置が必要となります。
さらに、打刻機能しかないタイムレコーダーを使用すると、集計作業をエクセルなど別の表計算ソフトを活用して行うことになります。そのため、集計作業にかなりの労力と時間がかかり、転記ミスなどのリスクも考慮しなければなりません。

■エクセル管理

エクセルを使って打刻から集計まで同時に行う方法です。セルに数式を設定しておけば、従業員が出退勤時刻を入力するだけで自動的に労働時間を計算します。
インターネット上には、無料で手に入るテンプレートも数多くあり、タイムカードのように端末や用紙を用意することもなく、エクセルがインストールされていれば実質0円で導入できます。テンプレートも、項目が休憩時間や休日、遅刻・早退など細かく分類されている仕様もあり、自社の働き方に合わせて選べます。

しかし、基本操作は従業員任せになるので、客観的な記録とはなりません。また、入力ミスや不正申告も起こりやすく、適正に管理するのは難しいと言えます。また、固定されたPCでデータを共有する場合は、テレワークなど勤務形態によっては対応できない可能性もあります。

エクセル管理には、アプリケーション上の問題もあります。
1つのセルで管理できるのは単純な計算に留まるため、分析に用いるには複雑な計算が別途必要になります。人数が多くなると表計算エラーが起きやすくなったり、入力時のミスでエラーが起こったりする場合もあります。エラーに気づかず、残業代が未払いになるケースも発生しています。
さらに、法改正によって残業の割増率が変更になると、計算式が変わります。勤怠管理をエクセルで行う場合は、定期的に計算式を確認しておかなければなりません。

■勤怠管理システム

勤怠管理システムは、タイムレコーダーやスマートフォン、パソコンなどと連携して打刻から集計、分析まで一貫してシステムで管理します。
リアルタイムで打刻管理ができる上、集計や分析にかかる手間も少なく済みます。給与システムとも連携できるので、転記する手間がなく給与計算ミスも防げます。個別の勤務状況によってアラート機能を設定すれば、労働過多になっている従業員に対しても適切な指導をタイムリーに行えます。
データの管理にはクラウド型とオンプレミス型があり、どちらも市場には商品が充実しています。また、打刻手段にはICカードの他にも指紋、指静脈、顔認証、GPSやSNSを使うなど様々な方法があり、パソコン以外にもスマートフォンやタブレットが利用できるなどデバイスも多彩です。
テレワークや社外労働の多い従業員がいる場合でも、インターネットに繋がっていればどこでも使えるクラウド型とスマートフォンやタブレットを組み合わせれば簡単に勤怠管理が行えます。

ただし、勤怠管理システムは総じて導入コストがかかりやすく、企業規模や管理体制によってはコストが膨らむ可能性もあります。システム選びの際には、操作性やセキュリティ面など見当しておきたい項目も多く、導入にはある程度の時間もかかります。

勤怠管理には原則「客観的な記録」が求められます。従業員数を含めた企業規模、雇用形態など様々な要件から、自社や従業員にとって一番適した管理方法を選ぶことが肝心です。
管理方法を検討する際には、以下のような視点も忘れずにチェックしておきましょう。

  1. ① 打刻忘れや打刻ミスを防ぐことができ、従業員にとって使いやすいものか
  2. ② 給与計算への反映や勤怠データの集計などが担当者の業務負担にならないものか
  3. ③ 社員数や雇用形態など、自社の雇用状況に応じた方法で勤怠を管理することができるか

勤怠管理を行う上での注意点

前項で述べたように勤怠管理は全ての従業員が対象になりますが、勤務形態や雇用条件によっては勤怠管理の面で注意しておきたいポイントがあります。

■パート・アルバイトの場合

パートやアルバイトのシフト管理にも勤怠管理は欠かせません。彼らはそれぞれに勤務日や勤務時間が異なるため、休憩時間や勤務時間などをしっかり把握しておくことが肝心です。それに、パートやアルバイトの多い職場では、個人によって時給が変わるため給与計算も大変です。
適正でかつ客観的な打刻情報と手間なく勤怠データを収集できるよう、正規雇用の従業員と同様に勤怠管理方法を検討する必要があります。
また、シフトを考える際には1日の人件費や本人の勤務希望日なども考慮しなければならず、シフト作成業務はかなりの労力を要します。勤怠管理システムの中には、申請された希望日を反映しながら自動でシフト作成するものもありますので、できるだけ手間をかけずに行える方法を検討しましょう。

■多様な働き方の従業員、契約社員の場合

働き方が多様化している現代では、勤務形態ごとに適切な勤怠管理が求められます。テレワークが適用される従業員では、始業・終業時刻の客観的な記録をどう残すか、時間外労働を正しく計算できるかが課題になります。また変形労働時間制、みなし労働時間制などが適用される従業員の場合、タイムカードなどの方法では管理が難しくなります。
契約社員においても、契約通りに勤務しているかを把握するために、正規従業員と同等の勤怠管理を行う必要があります。それぞれの働き方に合わせて、始業・終業時刻を正しく記録し、給与計算に反映できる勤怠管理の仕組みを検討する必要があるでしょう。
ただし、派遣社員の勤怠管理は派遣元企業が行うので、派遣先企業は勤務時間を管理できていれば問題ありません。

■「扶養控除内」希望者の場合

配偶者の扶養に入っている従業員の場合、年収や週の労働時間の規定範囲を超えると、配偶者の扶養から外れる可能性があります。従業員が「扶養控除内」での勤務を希望している場合は、扶養控除内に収まるよう勤怠管理でしっかり管理しましょう。
一般に言われる「扶養控除内」には、所得税が発生する「103万円の壁」、従業員が501人以上の企業で勤務日数、勤務時間など諸条件によって自らに社会保険加入義務が発生する「106万円の壁」、配偶者の社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」があります。
まず、従業員がどの「扶養控除内」を希望しているのか確認しておきましょう。
繁忙期などでどうしても時間外労働が発生してしまう場合は、他の勤務日の労働時間を調整する必要があります。その場合は、従業員の判断で調整させるのではなく、必ず管理監督者が適切に対応できるように勤怠状況を共有しておくことが望ましいでしょう。

終わりに

勤怠管理を適正に行うには、労働に関する基準が社内に正しく整備されているかどうかも重要です。フレックスタイム制や変形労働時間制などの雇用形態を取り入れている場合、「労働時間が法的に正しく解釈されているか」「社内制度として就業規則に正しく明記されているか」なども確認する必要があります。
さらに、2019年4月に行われる法改正で、勤怠管理に求められる範囲が拡大されます。コンプライアンスが重視される現代において、勤怠管理は今後ますます重要な業務になっていくことでしょう。
ぜひこの機会に、従業員数や働き方など自社の特性に合わせた「適正な勤怠管理」になっているか、見直してみてはいかがでしょうか。

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