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みなし残業(固定残業)制度とは?企業のメリットと導入時の注意点

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みなし残業(固定残業)制度とは、企業が従業員に支給する給与について、あらかじめ一定時間分の時間外労働代を、給与に含める制度のことです。過重労働や違法な残業などネガティブなイメージを抱かれてしまうこともありますが、正しく運用すれば大きなメリットがあります。
この記事では、みなし残業制度の意味のほか、導入時のメリット・デメリット、制度導入のポイントなどを解説します。

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目次

給与に一定時間の残業を含むみなし残業(固定残業)制度

みなし残業(固定残業)とは、企業が従業員に支払う給与の計算根拠となる労働時間に、あらかじめ含まれている一定時間の残業(時間外労働)のこと。みなし残業制度は、この残業を含んだ労働契約です。みなし残業は「固定残業」とも呼ばれています。

通常、従業員が労働時間外に業務を行えば、企業は基本給のほかに残業代を支払います。企業がこのみなし残業制度を導入していると、一定時間内の残業代が給与に含まれているため、従業員に残業代を支払う必要がなくなるのです。ただし、あらかじめ定められた時間を超えた残業が発生した場合には、別途残業代を支払う必要があります。

みなし残業に含まれる割増賃金

いわゆる「残業代」と呼ばれる割増賃金がつく労働には、下記のような種類があります。

■割増賃金がつく労働の種類と賃金割増率
労働の種類 法律で定められている最低割増率
法定労働時間を超える労働 25%以上
深夜労働(22~5時の労働) 25%以上
1ヵ月60時間超の労働 50%以上(※1)
法定休日以外の休日労働(所定休日労働) なし(※2)
定休日労働 35%以上

出典:e-GOV「労働基準法」
※1 2023年3月まで中小企業は25%(2023年4月以降は規模を問わず適用)
※2 1週間の労働時間が40時間を超える場合は25%

みなし残業の残業代にどこまで含むかは、企業ごとの規定によって異なります。

固定残業制とみなし労働時間制の違い

みなし残業(固定残業)は大きく分けて、固定残業制のほかに「みなし労働時間制」があります。みなし労働時間制とは、従業員の実際の労働時間にかかわらず、規定の労働時間分を働いたと「みなし」て、給与を支払う制度です。
みなし労働時間制の適用は、一部の業務・職種などに限定されています。つまり、一般的に企業がみなし残業を取り入れる場合は、固定残業制を活用することになるでしょう。

みなし労働時間制の種類

みなし労働時間制には、「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

・事業場外労働のみなし労働時間制

事業場外労働のみなし労働時間制は、労働基準法第38条の2に定められた社外での仕事が多く、実際の労働時間の把握が困難な業種・職種向けの制度です。

・専門業務型裁量労働制

仕事の性質上、従業員の裁量にゆだねた働き方をする必要がある職種については、労働基準法第38条の3に定められている専門業務型裁量労働制の対象となります。この制度を導入できるのは、新聞社の記者や出版社の編集者のほか、テレビプロデューサーやデザイナー、建築士、弁護士など、法律によって定められた19職種のみです。

・企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、労働基準法に定められた要件を満たす企画・立案・調査および分析の業務について、一定の要件を満たす従業員が、一定の場所で行う場合に利用できる制度です。具体的には企業の本社・本店などで経営企画の担当者が該当する可能性があります

なお、本記事において「みなし残業」は、この段落以降、固定残業として解説します。

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みなし残業(固定残業)導入のメリット

みなし残業(固定残業)導入の際は、自社にとってどのようなメリットがあるのかを十分理解する必要があります。ここでは、みなし残業の企業側の4つのメリットを紹介します。

企業は残業代計算などが不要になる

企業がみなし残業を導入すると、規定時間分までの残業代については計算不要です。仮に、「月20時間の固定残業を給与に含む」という規定で働く従業員が残業をした場合、残業時間が5時間でも20時間でも、支払う給与の金額は変わりません。毎月、残業代の計算をしたり、変動する残業代に伴って社会保険料や所得税の確認をしたりする必要はありません。
業務の効率化が図れるという点で、大きなメリットといえるでしょう。

企業は人件費を把握しやすくなる

企業がみなし残業を導入することで、残業代が固定となり、給与額の大幅な変動を抑えられます。企業の支出のうち、大きな割合を占める人件費を正確に把握できるため、経営側は事業予測や資金繰り計画を立てやすくなるメリットがあるのです。
ただし、一定時間を超過した分の残業代については支払う必要があります。また、固定化された残業代によって人件費を把握しやすくはなりますが、人件費の支出総額を減らせるわけではないので注意が必要です。

企業の業務効率が上がる可能性がある

みなし残業を導入すると、残業をしてもそうでなくても、従業員に支給される給与額はほぼ一定です。「生活費を稼ぐために長時間残業をしよう」と考える従業員が減り、「残業しても給与は同じだから、テキパキ仕事を終わらせて定時で帰ろう」と考える従業員が増え、結果として生産性が向上する可能性があります。
従業員が集中して業務に取り組むことで良いアイディアが生まれやすくなったり、長時間労働しづらい職場に変わることで、従業員が働きやすさを感じたりする効果も期待できます。光熱費などの経費削減も見込めるでしょう。

従業員の生活が一定レベルで安定する

みなし残業導入は、従業員が受け取れる給与が、一定レベルで安定するということも意味します。
「月給25万円、残業代別途支給」のA企業と「月給30万円(固定残業代30時間分を含む)」のB企業において月30時間の残業をすれば、A企業の従業員のほうが高給です。しかし、残業が減ればA企業の従業員は給与額も減っていき、B企業の従業員の給与額が上回る可能性が高くなるでしょう。

みなし残業を導入すれば、従業員の給与が比較的高い金額で固定されることから、従業員の生活の安定に寄与できるのです。求人の際も、A企業の提示額は25万円、B企業は30万円と差がつくため、求職者に対するアピール度が向上するはずです。

みなし残業(固定残業)導入のデメリット

みなし残業(固定残業)にはメリットのほか、いくつかのデメリットも存在します。デメリットを理解した上で、導入を検討するようにしてください。続いては、みなし残業を導入するデメリットを解説します。

固定残業代発生で人件費が上昇する可能性がある

みなし残業のデメリットは、一定レベルの残業代支給があらかじめ決まっているため、人件費がその分かさんでしまうという点です。
みなし残業は、「残業代を支払わなくても良い」制度ではなく、最初から一定レベルの残業代を含めた給与を支給する制度。従業員の残業時間が上限に届かなくても、残業代を含んだ給与を支払わなければならず、固定残業時間の上限を超えて残業した場合は、その分の割増賃金を従業員に支払う必要があります。つまり、あまり残業が発生しない企業では、むしろ人件費が上昇する原因となりうるのです。

サービス残業が横行する状況に陥りやすい

みなし残業は、固定残業代が給与に含まれているものの、決して「一切残業代を支給しない」制度ではありません。定められた残業時間を超えれば、残業代は支給されます。
しかし、従業員のみなし残業の制度に対する理解が不十分なことにより、「残業代は固定されていて給与に含まれているのだから、それ以外の残業代は一切支給されない」といった誤った認識が広まって、サービス残業が横行するおそれがあるのです。
企業の労務担当者は、みなし残業に対する正しい知識を従業員に周知するとともに、管理者とともに適切な勤怠管理を行う必要があるでしょう。

管理者の誤解で長時間労働に結びつきやすい

一定の残業時間があらかじめ給与に含まれているみなし残業制度。そのため、主に管理者側で「一定時間内は残業をさせても問題ない」「一定の残業代をもらっているのだから、定時退社させるのはむしろおかしい」という誤解が生じやすいのがデメリットです。

そもそも、みなし残業制度は、定められた残業時間の労働を一律に推奨するような制度ではありません。みなし残業制度を導入していても、原則的に従業員の労働時間は1日8時間、週40時間が上限であることに留意する必要があります。
「従業員は残業時間の上限まで働かせて当たり前」という風潮にならないように、管理者の意識改革や適切な勤怠管理が必要です。

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みなし残業(固定残業)制度を導入するためのポイント

みなし残業(固定残業)制度を導入する際には、後々トラブルを招くことのないように、綿密な準備を行いましょう。ここでは、企業がみなし残業制度を導入する際に注意するべきポイントをまとめました。

就業規則に詳細なルールを記載し、従業員に明示する

みなし残業について、従業員がどのような給与形態なのかを理解できるように、就業規則にルールを定めて明示しておいてください。
このとき、必ず行わなければいけないのが、みなし残業の時間数が何時間なのかをはっきりさせること。そして、基本給と残業代がそれぞれいくらなのか明らかにしておくことです。従業員によって具体的な金額が異なるため、計算方法を就業規則や給与規程に明記します。また、個々の従業員の給与金額についても、雇用契約書などに明記する必要があるでしょう。

みなし残業に関するルールを周知・徹底する

みなし残業を法令遵守して運用するために、各支社・支店などの現場にルールを周知徹底する必要があります。管理者の誤った認識によってサービス残業が横行することがないように注意しなければなりません。
また、問題のない運用が行われているかどうか、労務担当者が定期的に管理体制のチェックを行うことも重要です。

従業員の労働時間の管理を継続する

従業員の労働時間の管理は、みなし残業制度導入後も継続して行うようにしてください。労働時間の管理が必要であると従業員に周知した上で、勤怠管理を行いやすい体制づくりなどを行いましょう。

みなし残業時間を規定し、規定時間を超えた分は別途残業代を支払う

みなし残業で注意しなければならないのが、規定時間を超えた残業に対しては、残業代の支払いが必要である点です。管理者や従業員にも計算方法を周知し、固定残業に対する誤解を解くとともに、正しい給与計算を行う必要があります。
さらに、深夜残業や休日出勤などを行った際の計算方法についても、あらかじめ定めておかなければいけません。法律に定められた割増率に反しない制度づくりをしてください。

企業のみなし残業(固定残業)制度運用が違法となるケース

みなし残業(固定残業)制度は、正しく運用しないと違法となってしまう可能性を含んだ制度です。みなし残業のどのような運用が法的に問題なのか、例を挙げて解説します。

基本給が最低賃金を下回っている

最低賃金とは、都道府県ごとに設定されている1時間あたりの賃金です。アルバイトやパートタイムの従業員だけでなく、正規雇用の従業員に対しても、最低賃金を下回る基本給を設定することはできません。
2022年10月から最低賃金1,072円の東京都に拠点を置く企業で、1ヵ月の所定労働時間は172時間、基本給15万450円と40時間分の固定残業代4万8,100円、それに従業員に一律支給されている通勤・家族・住宅手当が1万5,000円、計21万3,550円を月給として支給しているケースで考えます。

月給21万3,550円を所定労働時間172時間で割れば約1,242円となりますが、1時間あたりの賃金は固定残業代を抜いた基本給+各種手当で計算します。なお、各種手当については、支給条件などにより残業代単価の基礎とする場合と、しない場合があるので注意してください。
基本給15万450円と各種手当1万5,000円を所定労働時間172時間で割ると、1時間あたりの賃金は約962円。最低賃金を下回っているので違法となる可能性があるのです。

残業代部分が法定賃金割増率を下回っている

労働基準法においては、残業に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。みなし残業による固定残業代であっても、この割増率を満たしていない場合は違法です。

基本給15万7,472円、固定残業代35時間分:4万2,528円、従業員に一律支給されている通勤・家族・住宅手当1万3,000円を合計した月給21万3,000円を支給する企業で、所定労働時間162時間のケースで考えてみましょう。
基本給15万7,472円と各種手当1万3,000円を162時間で割って1時間あたりの賃金を求めると、約1,052円です。
賃金割増率は25%なので1時間あたりの残業代は、1,052円×(1+0.25)=1,315円以上となるべきですが、固定残業代の4万2,528円を35時間で割ると約1,215円で、1,315円に及びません。つまり、このケースも違法なのです。

規定時間を超えた分の割増賃金が支払われていない

みなし残業制では、あらかじめ定められた残業時間分の残業代だけが給与に含まれ、超過分については、別途残業代が発生します。
何時間分までの残業代を給与に含めるのかは、企業ごとの給与規程次第です。給与に含まれる固定残業代が30時間であれば、従業員が30時間の残業をしても残業代を支払う必要はありませんが、残業が40時間であれば、10時間分の残業代支給が必要です。この10時間分を支給しなければ違法となるので注意してください。

注意したいのは、だからといって「給与に含む残業時間を長く確保しておけば良い」わけではないこと。固定残業代などを除いた基本給は最低賃金を上回る必要があり、さらに固定残業代は法律で定められた賃金割増率を上回る必要があります。残業時間を長めに含むと、その分、月々の人件費も上がってしまうのです。
何時間までの残業を給与に含めるべきなのかは、平均的な残業時間などをベースにして慎重に検討するようにしてください。

給与明細に残業時間が記載されていない

給与支払額・控除額がまとめて記載された給与明細には、「その月に何時間働いたのか」という勤怠についての情報が記載されています。勤怠情報がないと、給与計算の根拠がわからなくなってしまうからです。
これは、みなし残業制度を導入している企業においても例外ではありません。固定残業制であったとしても、実際の残業時間が何時間だったのかについては記載する必要があります。

みなし残業時間を45時間超に規定している

そもそも、企業が従業員に45時間を超える残業をさせるには、労働組合や労働者の過半数代表者などと特別条項付きの36協定(サブロク協定)を締結する必要があります。また、45時間超の残業は、臨時的な特別の事情がある場合にのみ認められているものです。

みなし残業は「毎月一定の固定された時間の残業代までは給与に含む」制度ですが、仮に固定残業が45時間超に設定されていた場合、常に45時間を超える残業を認めることになってしまいます。
45時間超の残業は従業員の健康被害の要因になり、また長時間労働前提の契約は公序良俗の観点からも問題があります。基本的にみなし残業時間が45時間を超えないよう、労務担当者は注意が必要です。

雇用契約書や就業規則などに詳細が明記されていない

みなし残業制度を導入した給与制度は、雇用契約書や就業規則などに記載して、従業員に周知する必要があります。その際、「給与は固定残業の40時間分を含む」と記載するだけでは、内容として不十分です。

みなし残業について記載する際は、月々の給与に含まれるみなし残業の時間数、みなし残業分やみなし残業分を除く基本給などの計算方法、規定時間を超えた残業分の対応など、さまざまなケースについて想定し、できればその計算方法まで細かく記載してください。

企業が従業員の労働時間把握を怠っている

みなし残業制度を取り入れても、企業は従業員の労働時間を把握する必要があります。それは、規定時間を超えた分の残業代を支払う必要があり、また労働基準法を遵守し36協定(サブロク協定)を守るためや労働者の健康管理のために、従業員の実際の労働時間を知っておかなければならないからです。

出勤・退勤時の押印しかされていない出勤簿を利用し、労働時間の適切な管理を怠るようなことがないようにしてください。

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みなし残業(固定残業)制度で求人を行う際のポイント

企業が求人を行うとき、みなし残業(固定残業)制度の不明瞭な記載は、求職者に敬遠されることがあります。みなし残業制度について、法令を遵守して運用していることが求職者に伝わるように、下記のポイントを募集要項に明記しましょう。

<募集要項にみなし残業制度について記載する際のポイント>

・給与のうち、いくらが基本給で、いくらがみなし残業代なのか
・みなし残業の時間数と計算方法
・みなし残業の規定時間数を超えた場合には追加で残業代を支払うこと

みなし残業(固定残業)制度導入時は「奉行Edge勤怠管理クラウド」も一緒に導入しよう

企業が法律に抵触しない形で、みなし残業(固定残業)制度を導入するためには、従業員の労働時間の管理を厳密に行わなければなりません。従業員の残業時間を確認し、規定の時間を超過した場合は、残業代を支払う必要があります。そのためにも、正確な勤怠管理システムも合わせて導入したいところです。
「奉行Edge勤怠管理クラウド」なら、在宅勤務にも対応できるウェブ打刻システムや、みなし残業の管理・計算に必要な情報を勤怠集計機能により自動で取りまとめられます。正確な労働時間の管理に「奉行Edge勤怠管理クラウド」をぜひご活用ください。

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山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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