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令和5年分・保険料控除申告書の書き方|担当者が押さえておきたいポイント

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年末調整で従業員から提出してもらう書類の1つに「給与所得者の保険料控除申告書」があります。この申告書は、証明書類も多く従業員の記入ミスも発生しやすいこともあり、担当者にとっては確認・検算作業に手間取る“要注意”書類になっていることでしょう。
そこで今回は、「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方について、担当者が従業員の申告をサポートする際の注意点を解説しつつ、担当者の事務負担を軽減するためのヒントなども紹介します。

目次

保険料控除申告書の書き方

給与所得者の保険料控除申告書とは

「給与所得者の保険料控除申告書」(以下、「保険料控除申告書」)は、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の4種類の保険料について申告するための書類です。生命保険や地震保険、iDeCoなどの掛金を支払っている場合は、この書類を提出することで、一定額をその年の所得から控除することができます。

給与所得者の保険料控除の申告

出典:国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告

保険料控除を受ける場合は、この申告書とともに、保険料を納めたことを証明するための控除証明書(原本)も提出してもらわなければなりません。控除証明書は、電子データでの提出も認められています。現在は、多くの保険会社等で電子データでの受領が可能になっており、社会保険料もマイナポータルから電子データで控除証明書を発行できます。いずれも契約者本人による手続きが必要ですが、企業側としては従業員が電子データで提出することを考慮しておくことが必要です。

提出された保険料控除申告書は、控除証明書とともに企業が7年間保管し、特に税務署長から提出を盛られる場合以外は、税務署に提出する必要はありません。 なお、当然ながら次のように4つの控除対象となる支払いが全く発生していない従業員は、保険料控除申告書の提出は不要です。

保険料控除申告書の提出が不要なケース

※以下の全てに該当する場合

  • 生命保険に加入していない
  • 地震保険に加入していない
  • 勤務先から天引きされた社会保険料以外で、社会保険(国民年金、国民健康保険、健康保険・厚生年金保険など)に加入していない
  • 小規模企業共済や企業型DC(企業型確定拠出年金)、iDeCo(個人型確定拠出年金)、心身障害者扶養共済掛金に加入していない

「生命保険料控除」欄の書き方

生命保険料控除は、被保険者が誰かにかかわらず、従業員自身が契約者として支払ったものが対象となります。控除額は、次のように3種類に分類してそれぞれに計算し、合計した額を「生命保険料控除額」として申告します。

  1. ①一般の生命保険料:生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約等にかかる保険料
  2. ②介護医療保険料:疾病または身体の傷害等により保険金が支払われる保険契約のうち、医療費支払事由により保険金等が支払われるもの
  3. ③個人年金保険料:民間個人年金、共済年金、郵便局の個人年金など、税制適格特約を付加した個人年金保険にかかる保険料

ただし、一般の生命保険料と個人年金保険料は、 2010年度の税制改正によって生命保険料控除制度が改正され、2012年1月1日を境に、2011年以前に契約した保険を「旧制度」、2012年以降に契約した保険を「新制度」として区分し、控除額の計算方法が次のように変更されました。

No.1140 生命保険料控除

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除

そのため、一般の生命保険料と個人年金保険で控除の適用を受ける場合、新契約と旧契約のそれぞれの区分で控除額を計算する必要があり、新旧区分の合計額を控除額として申告します。
生命保険料の種類や適用する制度(旧制度か新制度か)については、控除証明書の記載内容を確認しながら記入します。

[手続名]給与所得者の保険料控除の申告 ≪記載例≫令和5年分給与所得者の保険料控除の記載例

出典:国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告 ≪記載例≫令和5年分給与所得者の保険料控除の記載例

控除額の計算は、次のような手順で行います。

(一般の生命保険料の場合)

    1. 新制度の保険料の合計を算出(A)
    2. 旧制度の保険料の合計を算出(B)
    3. それぞれの控除額計算式に当てはめて控除額を算出(①②)ただし端数は切り上げ
    4. ①②の合計(③)、②と比べて大きいほうの額を控除額欄に記入 (㋑)

※記号は申告書の記号を指します

例えば、次のような申告内容の場合、①②の合計は5万5,000円となりますが、控除最高額が4万円のため③には4万円を記入し、②よりも額が大きい③(4万円)を㋑に記入することになります。

(記載例)記載例

同様に、「介護保険」「個人年金保険」の控除額も計算し、最後に3種類の控除額を合計して生命保険料控除額を算出します。ただし、種類・新旧別に上限額が設けられているため、上限額を超える場合は上限額を記入することになります。

(各保険料の控除限度額)各保険料の控除限度額

「地震保険控除」欄の書き方

地震保険料控除は、1年間に支払った地震保険料のうちの一定額を控除するものです。地震保険は、火災保険に「地震保険特約」をつけて加入するのが一般的ですが、この地震保険特約分について支払った額が控除の対象となります。
ただし、生命保険料と同様、従業員自身が支払った地震保険に限られます。また、保険対象となる建物等も、自身が所有するもの、または生計を一にする配偶者およびその他の親族が所有し、住宅として常用している建物等に限られます。(別荘や他人に賃貸している建物など、従業員自身や生計を一にする親族でない人が使用している建物等は対象外です)

2006年度の税制改正で地震保険料控除が創設された際、それまでの長期損害保険控除が廃止されました。その際、2007年以前に契約した一定の要件を満たす長期損害保険は、地震保険料控除の対象となったため、現在の地震保険料控除の欄には「地震保険」「旧長期損害保険」の区分が設けられています。
「地震保険」「旧長期損害保険」の区分は、控除証明書の記載内容を確認しながら申告書に転記します。保険期間が1年契約の保険の場合、契約時に届く保険証券に控除証明書が同封されている場合があるため、従業員に確認を促しておきましょう。

[手続名]給与所得者の保険料控除の申告 ≪記載例≫令和5年分給与所得者の保険料控除の記載例

出典:国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告 ≪記載例≫令和5年分給与所得者の保険料控除の記載例

地震保険料の控除額は、次の手順で算出します。

 

    1. 地震保険料の合計を計算する(B)
    2. 旧長期損害保険料の合計を計算する(C)
    3. BとCを合算する
      ただし、Bの金額が5万円を超える場合は5万円、Cの金額が1万円を超える場合は次の計算式によって算出した金額で計算します。(最高15,000円)
      Cで控除できる金額=(C÷2)+5,000円

※記号は申告書の記号を指します

(記載例)
記載例

「社会保険料控除」欄の書き方

社会保険料控除は、給与・賞与の天引き以外に従業員が社会保険料を支払った場合、その支払い額全額を控除するものです。
ここで適用できる社会保険とは、国民年金、国民年金基金、国民健康保険、健康保険、介護保険、厚生年金、後期高齢者医療保険などのことで、例えば、生計を一にする親族の社会保険料であっても、従業員自身が保険料を支払っている場合は控除の対象となります。
社会保険料についても、生命保険などと同様、保険料を支払った機関から「社会保険料控除証明書」が送付されます。国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療保険料などは、控除証明書が届かないため、領収証書や保険料納付証明書などで1年間の納付額(合計額)を確認し記入します。

(イメージ)社会保険料控除証明書(イメージ)社会保険料控除証明書

出典:「日本年金機構

例えば、親の後期高齢者医療保険を支払った場合、次のように記載します。

(記載例)記載例

「小規模企業共済等掛金控除」欄の書き方

小規模企業共済等掛金控除とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金(企業型DC)・個人型年金加入者掛金(iDeCo)、心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金に対する控除のことです。給与・賞与から天引きされる以外に、1月から12月までの1年間に支払った掛金がある場合は、この欄に記載することで支払額が全額控除されます。
ただし、社会保険料控除とは異なり、あくまで自分名義の、自分が支払った額だけが対象です。従業員本人が支払った場合でも、本来生計を一にする親族が負担すべき掛金は控除できないため、注意が必要です。

支払った掛金の詳細は、各機関から発行される「小規模企業共済等掛金払込証明書」に掲載されています。
例えば、企業型DCとiDeCoに加入している場合、企業型DCは原則として給料から天引きされているため記入せず、iDeCo分だけを記入することになります。

(記載例)記載例

保険料控除申告書の注意点〜差し戻し・再提出を防ぐためのポイント

保険料控除申告書の作成は、控除証明書の記載内容を転記してもらうことが中心となります。その際、次のようなミスや間違いが起こりやすいため、従業員が正しく記入できるよう注意喚起をしましょう。

あるある①

控除証明書の「申告額」ではなく「証明額」で計算している

控除額の計算の際、控除証明書にある「申告額」ではなく「証明額」を誤って記入し、計算が丸ごと違っているケースは、多くの担当者が経験していることでしょう。 一般的な控除証明書は、「証明額」→「申告額」の順で記載されていることが多く、従業員が「申告額を記入する」ことを理解していなければ、先に目に留まる「証明額」を記入してしまうのも無理からぬことと言えます。

控除証明書

出典:「日本年金機構

このような記入ミスを防ぐには、事前に「証明額ではなく申告額を記入する」ことをしっかり周知しておくことが肝心です。
なお、国民健康保険料、後期高齢齢者医療保険料については控除証明書が発行されないため、「国民健康保険の納付額のお知らせ」などのような納付額が分かるものを見ながら記入するように指導し、記入時に参照した書類を添付してもらうようにしましょう。

(イメージ)「国民健康保険料の年間納付額のお知らせ」通知書年間納付済額のお知らせ

出典:神戸市役所「年間納付済額のお知らせ

あるある②

控除額の上限を超えて申告している

生命保険料や地震保険料は控除額に上限が設けられており、上限を超えた申告はする必要がありません。しかし、「上限があることを知らない」または「知っているが手元の情報全てを記入して上限額で申告する」というケースがしばしば散見されます。
担当者が控除証明書と照合・検算作業をする際、記載順に確認するため、結果として全てを確認した後に上限を超えていることに気付き、不要な突合作業の手間が発生することになります。

控除額の上限

このようなことが発生しないよう、従業員にはくれぐれも「上限までの控除額になるように記入すること」を念押ししておくことが肝要です。

あるある③

控除証明書の提出方法がバラバラ

多くの従業員は、申告書類を提出した後、控除証明書がどのように扱われるかを理解していません。そのため、控除証明書の添付方法を指示しないと、提出された状態が揃わず、誤った貼り方をして必要な情報が読めなかったり重要な内容が途中で切れていたりして、照合に時間がかかる場合があります。
スムーズな突合作業のためにも、従業員には「何のために添付書類を提出するか」「どの情報が確認に必要か」を理解してもらうことが大切です。

保険料控除申告書の書き方

記入不備を減らすには“年末調整のデジタル化”が効果的!

保険料控除申告書は、税制優遇のためとはいえ、複雑で難しそうな記入欄が多く、多くの従業員が申告書作成に辟易しています。実際、記入不備も多く、担当者の業務負担の多くを占めていることでしょう。記入不備を防ぐため、書き方マニュアルを準備している企業も多くありますが、マニュアルの作成作業は担当者の負担になりやすく、「マニュアルがあるから」といって記入ミスが激減するわけでもありません。

従業員の申告作業をタイムリーにサポートし、担当者の業務負担も減らしたいのであれば、「年末調整のデジタル化」がおすすめです。現在、市場には多くの年末調整電子化サービスが提供されており、従業員の申告をサポートする様々な機能が搭載されています。その中から、自社で従業員が間違えやすい箇所を適切にサポートできるものを選べば、従業員の作業負荷・心理面での負荷も減り、担当者の確認・検算作業にかかる手間や時間も軽減されるでしょう。

例えば、奉行Edge 年末調整申告書クラウド の場合、従業員の申告書作成と担当者の申告代行業務の双方を網羅的にデジタル化できるよう設計されており、様々な従業員の困りごとをリアルタイムで解決できる豊富な機能が標準装備されています。
入力画面は「穴埋め」式で、入力された情報から控除額は自動計算されます。保険料の金額が上限に達するとメッセージが表示される仕組みになっているため、それ以上の申告を制御することが可能です。

年末調整申告書クラウド

特に間違いが起こる項目には、「管理者からのお知らせ」を表示させることもでき、入力中に注意喚起をすることもできます。

年末調整申告書クラウド

翌年には前年の情報が自動複写されるため、従業員は控除証明書を見ながら内容を確認・修正するだけでよくなり、2年目以降の従業員の入力作業負担が大幅にカットできます。
さらに、控除証明書の提出には、貼付台紙をダウンロードできます。貼付台紙には、担当者が確認しやすいように、証明書の貼り方を指示することもできます。

年末調整申告書クラウド

もちろん、昨今導入が進んでいる控除証明書の電子発行についても、各保険会社などから取得した電子データを簡単にアップロードできるほか、マイナポータルと連携して個人年金保険料、住宅ローンの特別控除証明書、年末残高証明書等の電子データを取り込むことも可能です。電子データで提出してもらえば、データを取り込むだけで控除額が自動計算されるため、計算ミスもなくなります。

おわりに

保険料控除は、所得税・住民税の税額負担を軽減するための制度です。1年間に払うべき税金の額を確定させる上で重要なものであり、正確な申告が求められます。従業員のためにも、計算ミスや申告ミスがないよう、適切に申告書作成をサポートし、慎重に突合作業を進めなければなりません。
年末調整をデジタル化すれば、従業員には効率的に申告書を作成できる方法を提供することができ、担当者の確認作業も効率化することができます。自社の課題を解決する機能を備えたサービスを利用して、今年こそ、正確かつ合理的に申告手続きを行えるよう仕組み化してはいかがでしょうか。

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