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裁量労働制とはどんな制度?
2024年改正内容と導入時の注意点を解説

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労働者が自ら働く時間を決められる裁量労働制は、導入できる職種に制限があるものの、働き方改革が進む中で注目を集めている労働時間制の1つです。
今回は、この裁量労働制について、担当者が理解しておきたい制度概要や導入時の注意点について解説します。

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目次

裁量労働制とは

裁量労働制は、労働基準法38条に定められた「みなし労働時間制」のひとつで、実労働時間に関係なく、企業と労働者との間で労使協定に定めた一定の時間を「労働時間」とみなして賃金を支払う制度です。そのため、「必ず○時間働かなければならない」という縛りがなく、労使協定で定められた一定の時間に実働が満たない場合でも「契約した時間どおりに働いた」とみなされます。
ただし、裁量労働制は適用できる職種が決まっています。専門職に適用できる裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」といい、経営・企画管理などのホワイトカラーに適用できる裁量労働制は「企画業務型裁量労働制」と呼ばれ、それぞれに運用ルールも定められています。

みなし労働時間制

また、みなし労働時間制の一種とはいえ、裁量労働制であっても残業代や休日手当などは支払う義務があります。残業代が発生するのは「みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合」と「深夜労働・休日労働をした場合」です。

裁量労働制のメリット・デメリット

裁量労働制が適用される労働者は、仕事の進め方や時間配分を自身の裁量で決められ、求められる成果をあげれば自分のペースで働くことができます。これにより、モチベーションやワークライフバランスを保ちやすくなり、生産性向上につながることが期待されています。また、所定労働日の時間外労働による残業代が発生しないため、企業側も人件費を予測・管理しやすいというメリットがあります。
※深夜業や休日出勤に関しての労働基準法上の割増賃金の支払義務はあります。

一方で、これまでは「労働時間管理や健康管理といった労働管理が難しい」というデメリットがありました。
厚生労働省が実施した「裁量労働制実態調査」の結果(2021年6月発表)によると、適用労働者がいる適用事業場で1ヵ月の平均労働時間数は1人あたり171時間36分、1日あたり平均8時間44分となっており、非適用事業場の平均労働時間(1ヵ月で1人あたり平均169時間21分、1日で平均8時間25分)に比べ長時間労働になっていました。裁量労働制には基本的には時間外労働という概念がないため、このように長時間労働の温床になりやすいのが長年問題視されてきたのです。
また、労使協定で定められた時間より多く働いても残業代が支給されないため、裁量労働制は適用できる職種が限定されているにもかかわらず、適用職種とは異なる業務に従事する従業員にも適用するなど不適切な対応も一部報告されていました。

このような問題点を改善するため、2024年4月に労働基準法施行規則が改正されました。適用できる職種や運用面において手続き等が一部変更され、より柔軟な働き方の実現を目指します。

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専門業務型裁量労働制の概要

専門業務型裁量労働制が導入できる職種は、「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある」業務で、2024年度以降は次の20職種が対象となっています。

●専門業務型裁量労働制の対象業務(2024年度〜)
  1. ① 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. ② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であって、プログラムの設計の基本となるものをいう。[7]において同じ)の分析または設計の業務
  3. ③ 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送法(昭和25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という) の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. ④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. ⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. ⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
  7. ⑦ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
  8. ⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
  9. ⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. ⑩ 有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
  11. ⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. ⑫ 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
  13. ⑬ 銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
  14. ⑭ 公認会計士の業務
  15. ⑮ 弁護士の業務
  16. ⑯ 建築士(一級建築士、二級建築士および木造建築士)の業務
  17. ⑰ 不動産鑑定士の業務
  18. ⑱ 弁理士の業務
  19. ⑲ 税理士の業務
  20. ⑳ 中小企業診断士の業務

※ ⑬は2024年4月から追加

専門業務型裁量労働制を導入する際は、労使間で法定上の必要事項を定めた労使協定を締結し、所轄労働基準監督署へ届け出なければなりません。また、個別の労働契約や就業規則にも、裁量労働制に関する規定を定める必要があります。
特に、専門業務型裁量労働制を適用するにあたっては、2024年度以降、対象者本人の同意が必要になりました。これにより、労使協定で定めるべき事項も次のように一部の項目が追加されています。

<専門業務型裁量労働制の労使協定で定めるべき事項>

  • 制度の対象とする業務
  • 労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  • 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が対象労働者に具体的な指示をしないこと
  • 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
  • 対象労働者からの苦情の処理のため実施する措置
  • 制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
  • 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
  • 制度の適用に関する同意の撤回の手続き
  • 労使協定の有効期間
  • 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中およびその期間満了後5年間 (当面の間は3年間)保存すること

※太字部分は2024年4月から追加

なお、2024年の改正では、苦情の申出先や申出方法等を書面で明示する等、苦情処理措置の具体的内容を事前に説明することも義務化されました。さらに、同意の撤回後の配置および処遇については、同意の撤回を理由として不利益な取扱いをしてはならいと明言され、同意の撤回後の処遇や撤回の申出方法等についても、あらかじめ協定で定める必要があります。

企画業務型裁量労働制の概要

企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務が対象となります。ただし、対象業務の具体的範囲は、ホワイトカラーの業務全てが該当するわけではなく、以下の4要件全てを満たす業務の中で、具体的な範囲を決議しなければなりません。

●企画業務型裁量労働制の業務要件

  1. 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
    ※例えば、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響をおよぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど
  2. 企画、立案、調査および分析の業務であること
  3. 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
  4. 業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

この制度を導入する際も、労働者本人の同意が必要です。
また、対象事業場において労使双方の代表者を構成員とする労使委員会を設置し、労使委員会で運営規程と決議を取り決めた上で労働基準監督署へ届け出る必要があります。
労使委員会の「運営規程」と「決議しなければならない事項」は、2024年の改正により、それぞれ次のようになっています。

●運営規程で規定すべき事項(2024年度〜)
  • 労使委員会の招集に関する事項(定例開催、臨時開催)
  • 労使委員会の定足数に関する事項
  • 労使委員会の議事に関する事項(議長の選出、決議方法など)
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対する説明に関する事項(説明を事前に行うことや説明項目など)
  • 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)
  • 労使委員会を6か月以内ごとに1回開催すること
  • その他労使委員会の運営について必要な事項(企業からの開示情報の範囲、開示手続き、労使委員会の開催時期、調査審議範囲など)

※太字部分は2024年4月から追加

この変更は、2024年の改正で、対象者に適用される賃金や評価制度ついての事前説明が義務づけられたことによるもので、説明項目等を運営規程に定めるとともに、賃金や評価制度が変更される場合は労使委員会に対して変更内容の説明※1を行うこととされました。
また、これまでは労使委員会の開催頻度※2について法令上の定めはありませんでしたが、2024年度以降は「6ヵ月に1回」となります。
さらに、企業は労使委員会の開催の都度、議事録を作成し、開催日から3年間保存しなければなりません。労使委員会の議事録は、職場の掲示板に掲示するなど従業員に周知することも義務づけられています。

※1 説明のタイミングは、変更前(事前に行うことが困難な場合は変更後遅滞なく)行うことが適当とされています。

※2 定期報告の頻度は、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算し、初回は6ヶ月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回の実施となっています。

●労使委員会で決議すべき事項(2024年度〜)
  • 制度の対象とする業務
  • 対象労働者の範囲
  • 1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
  • 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
  • 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  • 制度の適用にあたって労働者本人の同意を得なければならないこと
  • 制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしてはならないこと
  • 制度の適用に関する同意の撤回の手続き
  • 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
  • 労使委員会の決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  • 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること

※太字部分は2024年4月から追加

「本人の同意」「その同意に関する記録の保存」は、従前より決議すべき事項とされていましたが、2024年の改正で「同意の撤回の手続き」「同意とその撤回に関する記録の保存」も追加されました。
なお、同意の撤回を理由として、同意撤回後の配置・処遇において不利益な取扱いをしてはならないとされています。そのため、「同意の撤回の手続き」では、申出先の部署および担当者、申出方法等を明示することともに、同意の撤回後の処遇や決定方法等についてもあらかじめ決議することが望ましいとされています。

2024年改正の注目ポイントは「健康・福祉確保措置の強化」

2024年の制度改正に合わせ、「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」も改正されました。これにより、従前から企画業務型裁量労働制に求められていた「健康・福祉確保措置の強化」が、2024年度以降は専門業務型裁量労働制にも求められることになりました。
具体的には、次の1、2の中から1つずつ以上実施することが望ましいとされています。

<健康福祉確保措置>

長時間労働の抑制や休日確保を図るための事業場の適用労働者全員を対象とする措置
    1. ①給与所得の源泉徴収票
    2. ②退職所得の源泉徴収票
    3. ③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
    4. ④不動産の使用料等の支払調書
勤務状況や健康状態の改善を図るための個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置
  1. ⑤医師による面接指導
  2. ⑥代償休日・特別な休暇付与
  3. ⑦健康診断の実施
  4. ⑧心とからだの相談窓口の設置
  5. ⑨必要に応じた配置転換
  6. ⑩産業医等による助言・指導や保健指導

①〜③については、実労働時間を適正に把握できていることが前提となります。もともと、裁量労働制においても労働時間の状況の把握が義務づけられており、実労働時間を全く管理しなくてよいというわけではありません。(労働安全衛生法第66条の8の3など)裁量労働制の対象従業員といえども、「何時間働かせてもよい」というわけではなく、実労働時間を適正に把握し、残業を抑制する指導を行う必要があります。
例えば、①勤務間インターバルでは、著しく短い時間を設定することは不適切です。高度プロフェッショナル制度で「11時間以上」とされていることを参考に、具体的な時間数を労使で協議の上設定し、運用するのが適切です。
また、②深夜業の回数制限では、著しく多い回数を設定することは不適切とされており、高度プロフェッショナル制度で深夜業の回数制限は「1ヵ月あたり4回以内」と規定されていることから、4回以内で設定するのが望ましいでしょう。
特に、労働者の健康確保を図る上で「実施することが望ましい」とされている③労働時間の上限措置では、時間外労働の上限規制を基準とし、その範囲内とすることが望まれます。

制度導入時の注意点① 効率的に本人同意を得る方法を検討する

裁量労働制を従業員に適用する際は、本人の同意を得なければなりません。
同意を得る方法としては、書面のほか、イントラネット等を活用した電子データも認められています。いずれの方法でも、労働者ごとの同意の記録を労使協定又は決議の有効期間中〜満了後3年間保存しなければならないため、保管スペースや業務効率の観点から見れば、電子データで同意を得る方法が効率的でしょう。
例えば、奉行Edge 労務管理電子化クラウドは、独自のアンケートを作成して従業員に回答を依頼することができ、この機能を活用して、従業員に裁量労働制の同意を得ることができます。 従業員は、メールで案内されたアンケートに、スマートフォンやパソコンから回答できるため、スムーズに手続きを進めることが可能です。

アンケート機能_裁量労働制_同意

同意書の様式については定まったものはありませんが、企画業務型裁量労働制は以前から義務づけられているため、今後義務化される専門業務型裁量労働制の参考にするとよいでしょう。

なお、いずれの方法でも次の内容を明示・説明し、本人が納得した上で同意を得ることが必要です。

  • 対象業務の内容を始めとする協定または決議の内容など裁量労働制の制度の概要
  • 同意した場合に適用される評価制度とこれに対応する賃金制度の内容
  • 同意しなかった場合の配置・処遇

説明は、書面等で明示するだけでなく、適用対象者向けの説明会や動画等により説明し、質疑応答ができる形で行うことが望ましいとされています。従業員が制度を正しく理解・納得できるよう、みなし時間や対象者、業務内容、健康確保措置など、現在の運用規定の内容を見直すことが望ましいでしょう。

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制度導入時の注意点② 健康・福祉措置の仕組み化を検討する

裁量労働制は、労働時間や業務遂行の方法などを労働者の裁量にゆだねるため、残業代の節約対策と考える企業も少なくありません。中には、対象業務以外の従業員に適用しているケースも見られます。
しかし、裁量労働制にも時間外手当や休日手当、深夜手当は発生します。また、2024年改正では健康・福祉確保措置も強化され、裁量労働制であっても、適正に労働時間を管理し、長時間労働を抑制する勤怠管理を行う必要があります。

市場には、時間外労働の上限規制に対応する勤怠管理システムが数多く提供されています。こうした勤怠管理システムに、残業を抑制する機能や勤務間インターバル機能など健康管理機能があれば、裁量労働制の健康・福祉措置強化にも対応することができるでしょう。
例えば奉行Edge 勤怠管理クラウドは、残業時間数に応じて帳票を色付きで視覚的に確認でき、サービス内から自動集計された勤務情報をもとに、残業推移や平均残業時間などを様々な角度で簡単に把握できます。

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奉行Edge 勤怠管理クラウドの場合、36協定の届出時間をもとに勤務状況を自動監視し、警告基準を超えると従業員と関係者へ自動アラートされます。出退勤時刻とPCのログオフ時間の乖離から、サービス残業の有無も確認できるため、テレワークなどの労働状況も可視化します。労働時間の適正把握と長時間労働を防止できます。
また勤務間インターバルの設定や時間外労働の上限設定も簡単にでき、労働超過している従業員をリスト化して把握することが可能です。

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おわりに

労働人口の減少、慢性的な人材不足により、様々な事情を抱えた従業員が長く働き続けられるよう、多くの企業が多様な働き方を模索しています。一方で、近年は時間外労働に上限規制も設けられ、働き方に関しての法令が厳格になっています。裁量労働制は限られた業務にのみ適用できますが、いざ導入するとなると長時間労働の抑止や本人同意書の管理など業務が増える恐れもあります。そんなときは、システムを上手く活用して業務のデジタル化を図り、スムーズな導入・運用を目指しましょう。

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