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採用に付随して必ず発生するのが入社手続きです。社会保険や雇用保険の加入手続きなど期限が決まっているものもあり、迅速かつ正確に行わなければなりません。
新入社員が入社する4月に集中する業務ですが、中途採用は年間を通して発生するため“不定期な業務”とも言えます。いつ起こっても適切に対応できるよう、必要書類と手続きの手順を整理しておきましょう。
目次
- 入社前にやっておくべきこと
- <入社後の対応①>社会保険、雇用保険、税金関係の手続き
- <入社後の対応②>社内での手続き
- 入社手続きの様々な「困った!」を乗り切る方法
- 電子申請も取り入れて、より迅速な対応を
入社前にやっておくべきこと
入社前に雇用契約や労働条件等の説明をしておくと、従業員の安心につながります。採用が難しいと言われる時代だからこそ、丁寧に対応しておくことが大事です。
入社前に準備しておきたいものは、以下の通りです。
①雇用契約書・労働条件通知書の作成・送付
雇用契約書および労働条件通知書は、使用者と従業員との間に結ばれる重要な取り決めです。事前に充分な説明を行ったつもりでも、「知らない」「聞いていない」といった問答は起こりやすいものです。雇用契約書に就業規則から重要な点を抜粋し、記載しておくことで、説明を行った証明にもなります。
正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの雇用形態や労働時間、日数、職種、仕事内容、給与額などに関係なく、労働条件は双方が書面で共有するようにしておきましょう。
雇用契約書や労働条件通知書については、「なくてもOK? 雇用契約書とは 〜記載事項や「労働条件通知書」との違い」を参照ください。
②採用通知書(内定通知書)の作成・送付
採用の意思を伝え、相手の入社意思を確認するため、採用通知書(内定通知書)、入社承諾書、誓約書の3点を作成し、セットで送付します。
採用通知書には、下記6項目を記載するのが一般的です。
<採用通知書の記載事項>
- 採用応募についての御礼
- 採用内定のお知らせ
- 同封書類の案内
- 提出が必要な書類と提出期限
- 入社日(未定の場合は、別途連絡する旨を記載)
- 問い合わせ先(人事担当者の連絡先、担当者名など)
また、上記に加え、労働条件に関する事項(勤務地、配属先、労働条件等)を記載するケースもあります。
③入社承諾書、誓約書の作成・送付
相手の入社意思を書面に残し、契約有無の証拠にするため、入社承諾書や誓約書を準備します。形式や記載内容は企業によってさまざまですが、基本的には署名、捺印欄を設けて内定者が署名、捺印を行います。
返送の代わりに辞退の連絡があることも少なくありません。その場合は求人活動再開の準備にかかります。
なお、「①雇用契約書」および「③入社承諾書、誓約書」は、本人の承諾の証としてサインが必要になります。入社前に書類のやりとりを行う場合は、返信用封筒を同封しておくと親切でしょう。
④入社時に回収する書類等の提出依頼
入社後の手続きで必要となる書類は、入社前に詳細を伝え、あらかじめ準備を促しておきましょう。
本人に準備してもらう書類は以下の通りです。
<入社時に回収するもの>
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 住民票
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者資格取得届(該当する家族がいる場合)
- マイナンバー
- 源泉徴収票(中途採用などで前職がある場合)
- 雇用契約書、入社承諾書(署名、捺印済みのもの)
- 給与振込先申請書、身元保証書(必要に応じて提出する)
- 通勤手当支給申請書、住宅手当支給申請書
- 資格免許証、合格証明書類(採用において、必要な資格が明示されていた場合)
- 健康診断書
- 個人情報保護法に基づく誓約書
従業員の情報は、個人情報に当たります。特に、税金や雇用保険等の加入手続きに必要なマイナンバーは、取り扱いに気を配らなければなりません。マイナンバーを取得する際には、事前に利用目的を明確にし、本人確認を厳密に行う必要があります。
また、家族のマイナンバーを提出してもらう場合もあります。その際は、従業員が“個人番号関係事務実施者”として扶養家族の本人確認と利用目的の明示を代行することになるため、企業が扶養家族の本人確認を行う必要はありません。ただし、「国民年金第3号被保険者資格取得届」については、第3号被保険者である従業員の配偶者が企業に届出を行う必要があるため、企業が当該配偶者の本人確認を行う必要があります。通常は、従業員が配偶者に代わって事業主に届出をすることになりますので、 代理人である従業員からマイナンバーの提供を受ける場合の本人確認を行うことになります。
<入社後の対応①>社会保険、雇用保険、税金関係の手続き
入社手続きは、従業員の生活に直結するため、速やかに完了させなければなりません。例えば、健康保険への加入が遅れると、従業員やその家族が病院をタイミングよく受診できなかったり、受診料が高額になったりすることも考えられます。漏れなく手続きできるよう、しっかり確認しておきましょう。
■社会保険(健康保険・厚生年金)の資格取得手続き
入社した従業員が以下の条件を満たす場合は、年金事務所または健康保険組合・厚生年金基金に「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を、雇用開始から5日以内に提出する必要があります。
<社会保険の加入対象>
■正社員の場合
- 70歳未満であること
■派遣社員、契約社員、パート、アルバイトの場合
- 1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、派遣元の一般従業員の4分の3以上であること
- 契約期間が2ヶ月以上になること(所定の期間を超えた場合はその日から被保険者となります)
※ ただし、労働日数は4分の3以下でも、以下の条件をすべて満している場合は被保険者となります。
1. 1週間の所定労働時間が20時間以上ある(残業時間は除く)
2. 1年以上の雇用見込がある
3. 月給が88,000円以上である(残業手当、通勤手当、ボーナス等は除く)
4. 学生ではない
5. 法人、個人、地方公共団体、国に属する特定適用事業所に勤務している
対象者に配偶者や子どもがいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出も必要になるため、事前に確認しておきましょう。配偶者が「国民年金の第3号被保険者※」に該当する場合は、「国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届」を提出します。
※「国民年金の第3号被保険者」とは・・・
会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)が対象で、第3号被保険者である期間は“保険料納付済期間”として将来の年金額に反映されます。
■雇用保険の資格取得手続き
雇用保険は、「31日以上の雇用が見込め、所定労働時間が週20時間以上」であれば加入対象となります。ただし、企業・法人の経営者や役員、日雇い労働者、4ヶ月以内の季節的事業に従事する場合などは、雇用保険被保険者の対象ではないため、手続きを行う必要はありません。
手続きには、対象者を雇用した月の翌月10日までに、労働者名簿や出勤簿(タイムカードなど)、雇用契約書など雇用を証明できるものを添えて「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。
対象者が前職で雇用保険に加入していた場合は、被保険者番号の確認のため「雇用保険被保険者証」を提出してもらいます。
■税金に関する手続き
手続きを行う必要がある税金関係には、所得税と住民税があります。
所得税は、原則給与から天引きで源泉徴収されます。対象者が退職した年内に再就職で入社した場合は、以前の勤務先から「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらいます。また、入社時には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」も忘れずに記載・提出してもらいましょう。
住民税を給与からの天引きで支払う「特別徴収」にする場合、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を住民税納付先にあたる市町村へ提出する必要があります。
住民税は、前年度分を翌年6月から1年間で後払いをする方式のため、新卒者など前年の給与がない場合は、翌年の6月から住民税を給与天引きすることになります。対象者が前職からすぐ転職している場合は、以前の勤務先で必要事項を記載した「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を送付してもらい、同届出書の記載項目にある「転勤(転職)等による特別徴収届出書」欄に記載した上で市区町村に提出することになります。
■労災保険に関する手続き
職務遂行中に起こった事故や通勤を含む業務上の病気、怪我、失業などから従業員を保障するために加入する「労災保険」については、すでに適用事業所である場合、新規採用を行っても従業員ごとの手続きは必要ありません。
<入社後の対応②>社内での手続き
雇用保険や社会保険などの手続きのように、決まった期限が設けられているわけではありませんが、社内で必要な手続きも迅速に行うことが原則です。
社内で必要となる手続きには、以下のようなものがあります。
■労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作成
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿からなる「法定三帳簿」は、企業に義務づけられている重要書類です。
労働者名簿には、性別、住所、業務の種類、入社の年月日など定められた事項を記載し、保管しておくことが課せられます。
※詳しくは、OBC360°コラム「労働者名簿とは?記載事項や保存期間、書き方、管理方法を詳しく解説」を参照ください。
また、賃金台帳は、正社員、契約社員、アルバイトなど全従業員の記載を求められます。出勤簿も全従業員が対象ですので、速やかな作成が必要です。
■貸出物や備品の供給
入社後、スムーズに業務に取りかかれるよう、すぐに使用するものは入社式当日に渡せるように準備します。主な供給物には、以下の5つのようなものがあります
①制服
制服着用であれば、あらかじめサイズを聞いておき、入社日に手渡せるように手配しておきましょう。洗い替えも用意できれば親切です。
②社員証、名刺
労働条件通知の際などに得た「氏名」「部署名」「役職」「配属先住所」といった情報を元に作成します。氏名の読み方などは必ず確認し、間違いがないようにします。
③机、イス、電話、パソコン、事務用品などの備品
配属先が決まっている場合は、各配属先で必要な貸出物を用意しておきます。新たに購入する場合は固定資産管理に関わるので、早めの申請、購入が必要です。
④メールアドレス設定、インターネット環境などの設定
パソコンの設定は、入社後本人に行ってもらう形で問題はありませんが、新入社員用のメールアドレスは事前に準備しておく必要があります。社内ネットワークに必要なIDやパスワードの設定も、業務に支障が出ないようできるだけ早期に行いましょう。
⑤ICカードの支給、指紋登録
セキュリティ強化などの観点から、ビルの入退室にICカードや指紋認証等用いる企業も増えています。ドアロックに代わるICカードの作成や指紋の事前登録も行うことが必要です。
■給与計算システム、人事システムへの情報入力
給与計算業務にとりかかる前に、人事システム(人事システムを導入していない場合は給与計算システム)に新入社員の氏名、住所、扶養親族ほか個人情報、住民税の支払先等を入力しておく必要があります。入力する内容は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にある個人情報を参照しましょう。また、振込先の銀行情報も忘れずに登録します。
「総務人事奉行クラウド」なら、従業員の基本情報をはじめ、手当や異動の履歴情報、履歴書や入社承諾書等のファイルなど管理できる項目は50種類以上あり、膨大な社員情報の管理を1か所でまとめて行えます。「給与奉行クラウド」とも連携でき、社会保険や労働保険の保険料算定などの処理まで自動化することができます。
入社手続きの様々な「困った!」を乗り切る方法
入社に関わる手続きは、期限が伴うものはもちろん、スピーディーな対応が求められます。しかし、一方で書類が揃わないなどのトラブルも起こりやすいものです。ここでは、手続きの際に悩みがちな事柄について、対処法についてご紹介しましょう。
①期日までに手続きができなかった
社会保険や雇用保険などは、手続きに期限が設けられています。しかし、様々な理由で「期限内に手続きができなかった」という事態が起こることもあります。
基本的に期限を過ぎても提出することは可能ですが、追加書類を求められることがありますので注意しましょう。
雇用保険では、3ヶ月以上遅れると所定の提出物に加え賃金台帳と出勤簿を、また6ヶ月以上遅れる場合はさらに遅延理由書の提出も求められます。また、記録を遡ることができるのは原則過去2年間となっていますので、注意が必要です。
社会保険でも、賃金台帳、出勤簿の追加提出を求められます。特に健康保険の場合は、本人に保険証の交付が遅れる旨を伝えた上で可能な限り早く書類を提出してあげましょう。その際の保険料は、入社日まで遡って徴収されます。
②雇用保険被保険者証書の所在、雇用保険被保険者番号が分からない
「雇用保険被保険者証書を紛失した」「雇用保険被保険者番号が分からない」と、書類が揃わないケースもあります。この場合は、従業員本人が前職の会社へ問い合わせるか、ハローワークに本人確認書類と前職の企業名および住所が分かるものを提出して手続きを行えば再交付を受けられます。
「雇用保険被保険者番号」は、不明のままでも手続きはできます。ただし、手続きの際には「雇用保険被保険者資格取得届」に履歴書等前職の企業名がわかる書類を添付することが求められます。
③年金手帳を紛失した
社会保険の手続きには、基礎年金番号が必要ですが、「年金手帳を紛失した」などで基礎年金番号が分からないというケースもあります。
この場合は、年金手帳の再交付手続きが必要です。手続きは、本人の届出意思を確認できれば事業主が届け出ることができます。再交付に関する手続きの詳細は、日本年金機構のホームページを参照ください。なお、再交付に際して手数料はかかりません。
④新たに外国人を雇い入れた
超高齢化社会、人口減少などにより、近年では外国人就労者を雇用する企業が増えています。2019年4月には「出入国管理及び難民認定法」(入管法)が改正され、今後ますます外国人就労者の数が増えることも予想されています。
外国人を雇用する際、雇用時に必要となる書類は以下の通りです。
<外国人雇用時に必要な書類>
- 在留カード(国内居住の場合)
- 旅券(パスポート)
- 卒業見込みまたは卒業証明書 ※留学生を採用する場合
- 職務経歴書
国外に住んでいる外国人を国内で雇用する場合は、上記内容に「ビザ申請」が加わります。また、国内で暮らす外国人を雇用するよりも手続きが煩雑になるので注意しましょう。
また、就労資格がある中長期在留者に交付される「在留カード」を保持しているかどうかを必ず確認し、氏名や在留資格などを確認したら、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出します。これは、全ての事業者に義務づけられているものですので、忘れずに行いましょう。
電子申請も取り入れて、より迅速な対応を
1人が入社すると、手続きや準備などできめ細やかな対応が求められます。なるべく合理的に漏れなく進められるよう、業務手順をマニュアル化しておくことも大事です。
特に、期限が定められている雇用保険や社会保険の各種手続きなどは、電子申請を行うのがオススメです。
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