雇用保険被保険者証とは?手続きや必要なタイミングを解説

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従業員が雇用保険に加入すると「雇用保険被保険者証」が発行されます。雇用保険被保険者証は、従業員が退職する際などに必要になるものです。
ここでは、労務担当者が知っておきたい雇用保険被保険者証に関する基礎知識や手続きや、必要になるタイミングなどについて見ていきましょう。

目次

雇用保険被保険者証とは?

雇用保険被保険者証は、従業員が雇用保険に加入していることを証明するものです。雇用保険に加入した従業員1人につき1枚、公共職業安定所(ハローワーク)から発行されます。
まずは、雇用保険の加入条件や雇用保険被保険者証の記載内容のほか、雇用保険被保険者証の保管方法とはどのようなものなのか紹介していきます。

雇用保険の加入条件

雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入している従業員にしか発行されません。雇用保険に加入できる従業員は、下記の条件を両方満たす人となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上継続して雇用される予定である

一般的に、企業に正社員として雇用される従業員は、雇用保険に加入できる条件を満たしているといえるでしょう。そのほか、上記の条件を満たすパートやアルバイト、契約社員なども雇用保険に加入できます。
なお、上記の条件にあてはまる従業員を雇用保険に「加入させない」ことは、雇用保険法に抵触し、企業は罰則を与えられる可能性があります。
なお、派遣社員は、派遣元の派遣会社で雇用保険に加入します。上記の条件を満たしていても、派遣先の企業が雇用保険の加入手続きをとる必要はありません。

また、企業の代表取締役や役員などは、「雇用されている人」ではないため、基本的に雇用保険への加入ができません。ただし、働き方や給与などから、実質的に雇用されて働いている人と同等であると判断できる人については、雇用保険に加入できる場合があります。当該の人が雇用保険に加入したい場合は個別判断となるため、勤務実態のわかる書類などを用意して、管轄のハローワークに問い合わせをしてください。
また、取締役営業部長など、役員としての立場と労働者としての立場の両方を持つ人については、一定の条件をクリアしていれば「兼務役員雇用実態証明書」を提出して、労働者部分の賃金を基準として雇用保険に加入することができます。

雇用保険被保険者証の記載内容

雇用保険被保険者証には、下記の5つの情報が記載されています。

  • 被保険者番号
  • 資格取得日
  • 従業員の氏名
  • 従業員の生年月日
  • 事業所名

上記のうち、「被保険者番号」は、雇用保険に加入している人一人ひとりに割り振られるもので、勤務先が変わっても番号は引き継がれます。ただし、勤務先から退職後、7年以上雇用保険適用下で働いていない場合、被保険者番号は抹消されます。

雇用保険被保険者証の保管方法

雇用保険の加入手続きを行うと、「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」の3点が発行されます。

このうち、雇用保険被保険者証と雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)は、従業員本人に対して交付されるものですので、本人に渡すのが原則です。しかし、雇用保険被保険者証は退職時まで本人が使用をする機会があまりないことから、本来企業が保管するべきものではありませんが、紛失しないように企業が保管しているケースもあります。

いずれにせよ、雇用保険被保険者証の所在は常に明確化するように、社内でルールを決めて運用することが大切です。

雇用保険被保険者証が必要なタイミング

雇用保険被保険者証は、頻繁に使用する書類ではありません。雇用保険被保険者証が必要になるのは、従業員の入退社時と、従業員が雇用保険の給付制度を利用して教育訓練を受けるときです。
それでは、雇用保険被保険者証が必要なタイミングとはどのようなときなのか、ひとつずつ見ていきましょう。

従業員を雇い入れたとき

雇用保険の加入条件を満たす従業員を新たに雇い入れた際には、ハローワークで雇用保険の加入手続きを行います。
雇用保険には「31日以上継続して雇用が見込まれる」という加入条件がありますが、これは「31日以上継続して雇用された場合に加入する」ということではありません。企業が雇用期間を定めずに従業員を雇用した際は、すみやかに雇用保険の加入手続きをとる必要があります。

従業員が転職者ではなく新卒者など、これまで雇用保険被保険者でなかった場合は、新たに雇用保険被保険者証の交付を受けます。一方、転職者の場合は雇用保険の被保険者番号を引き継ぐため、前職の会社で交付された雇用保険被保険者証を本人からもらって手続きを行いましょう。

なお、転職者が以前の雇用保険被保険者証を持っていなくても、雇用保険被保険者証の番号がわかれば手続きが可能です。番号もわからない場合は、委任状と本人確認書類を用意して、ハローワークで再交付手続きを行います。その際の詳しい手続き方法については後述します。

従業員が退職するとき

本来企業が保管するべきものではありませんが、雇用保険被保険者証を企業で保管していた場合、従業員が退職をする際には本人へ手渡す必要があります。従業員が転職をするときは、「雇用保険被保険者証は、転職先に提出する必要がある」旨を伝えておくと親切です。

なお、従業員の退職にあたって、企業は管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出する必要があり、どちらにも「雇用保険被保険者番号」を記載する必要があります。
また、離職証明書には、退職する従業員が退職理由等を確認して署名する欄がありますので、離職証明書は早めに用意をしましょう。従業員の突然の退職など、離職証明書の署名がすぐに用意できない場合は、その理由を明記した上で署名を省略することも可能です。

離職証明書をハローワークに提出すると、「雇用保険被保険者離職票-1(離職票1)」と「雇用保険被保険者離職票-2(離職票2)」が発行されます。それらの書類は、退職した従業員にすみやかに送付をしてください。離職票は、従業員の退職後10日以内に交付する必要があります。
ただし、従業員から離職票は不要と言われた場合は、離職証明書の提出や離職票の交付は不要です。離職票は失業保険の受給等に必要になる書類のため、すでに転職先が決まっている従業員などの場合は、不要の申し出があることもあります。

従業員が教育訓練を受けるとき

雇用保険に加入している従業員が、厚生労働大臣指定の一般教育訓練の講座を受講した場合、教育訓練給付金を受け取れる可能性があります。
厚生労働大臣指定の講座は、厚生労働省のウェブサイトから検索することができます。簿記や介護福祉士、データサイエンスなど、さまざまな講座が対象になっているため、従業員のスキルアップに活用できるでしょう。
なお、教育訓練給付金の手続きは、企業の管轄ハローワークではなく、従業員の住所を管轄するハローワークで、従業員本人が行います。その際の詳しい手続き方法については後述します。

従業員を雇用した際の、雇用保険の具体的な手続き方法とは?

雇用保険の加入条件にあてはまる従業員を雇用した際は、雇用保険の加入手続きをとらなくてはなりません。具体的な手続き方法は、従業員が新卒か中途採用かで異なります。それぞれ、どのように行うのか見ていきましょう。

新卒社員の雇用保険の手続き方法

新卒で入社する従業員は、雇用保険に加入するのが初めてのはずです。そのため、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出して、雇用保険被保険者証の交付を受けましょう。
雇用保険被保険者資格取得届に記入する内容は、下記のとおりです。

<雇用保険被保険者資格取得届に記入する内容>
  1. 1. 個人番号
    マイナンバーを記載します。マイナンバーは、従業員に利用目的を伝えた上で取得してください。その際、本人確認も必要です。
  2. 2. 被保険者番号
  3. 3. 取得区分
    取得区分には、「1 新規」「2 再取得」があります。新卒の社員の場合は届出書類の「1 新規」を選択します。
  4. 4. 被保険者の氏名、フリガナ
  5. 5. 変更後の氏名
    当該項目は、新卒ではほぼ必要ありません。「取得区分」で届出書類の「2 再取得」を選んだ場合で、なおかつ従業員の被保険者証に記載された氏名と現在の氏名が異なる場合は、「変更後の氏名」の欄に現在の氏名を記載します。
  6. 6. 性別
  7. 7. 生年月日
  8. 8. 事業所番号
  9. 9. 被保険者となったことの原因
    卒業する年の3月1日から6月30日までに入社した新卒の従業員は届出書類の「1」、それ以外は「2」を記入します。
  10. 10. 賃金
    入社時点の賃金です。賞与や残業代等不確定の金額は含みません。
  11. 11. 資格取得年月日
    試用期間等を含めた最初の入社日です。
  12. 12. 雇用形態
  13. 13. 職種
  14. 14. 就職経路
  15. 15. 1週間の所定労働時間
  16. 16. 契約期間の定め
    定めがない場合は、届出書類の「2」を記入します。

最後に、事業所名や事業主名等を記入して提出しましょう。届出書類の当該欄「2」と「5」は、空欄のままで問題ありません。

中途社員の雇用保険の手続き方法(雇用保険適用下での勤務から7年以上経っていない場合)

雇用保険適用下での勤務から7年以上経っていない中途社員は、雇用保険の被保険者番号を引き継ぐことになります。中途社員の初出社の日に、以前の勤務先でもらった雇用保険被保険者証を持って来てもらってください。

被保険者番号は、雇用保険被保険者資格取得届の「2. 被保険者番号」に記入します。また、結婚等の理由によって届出時と氏名が変わっている場合は、「4. 被保険者の氏名、フリガナ」に以前の氏名、「5. 変更後の氏名」に現在の氏名を書いてください。「3. 取得区分」は「再取得」となります。

中途社員が以前の勤務先から雇用保険被保険者証を受け取っていない場合や紛失している場合、ハローワークに前職の企業名を伝えれば手続きを行えることが多いです。

中途社員の雇用保険の手続き方法(雇用保険適用下で7年以上働いていない場合)

出産や育児で長期離職していた人や、会社員から自営業者に転職して長く働いていた人など、雇用保険の被保険者でなくなってから7年以上を過ぎている人は、被保険者番号を引き継ぐことができません。
すでに履歴が削除されているため、新たに雇用保険被保険者証の交付手続きを行いましょう。

教育訓練給付制度を利用する場合の手続き

教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣指定の教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される給付制度です。働く人の主体的な能力開発の取り組みを支援し、雇用安定と再就職促進を図ることを目的としています。
従業員が教育訓練給付制度の利用を希望している場合は、企業を通してではなく、本人が手続きを行います。企業担当者が実務を担うわけではありませんが、従業員から手続き方法などを聞かれた場合には答えられるよう、必要書類や手続きの大まかな流れについて知っておきましょう。

教育訓練給付制度の対象者の条件

教育訓練給付制度の対象となるのは、今までに教育訓練給付を受けたことがない雇用保険加入期間1年以上の従業員、もしくは前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年(初めて教育訓練給付制度を利用する場合は1年)以上ある従業員です。離職してから1年以内の人も対象となります。
給付金の対象にあてはまるかどうかわからない場合は、ハローワークに問い合わせてみましょう。

教育訓練給付金の支給に必要な書類

教育訓練給付金の支給申請には、下記の書類が必要です。

  • 教育訓練給付金支給申請書(教育訓練を受けたスクールなどから交付される)
  • 教育訓練修了証明書(教育訓練を受けたスクールなどから交付される)
  • 領収書(受講者本人が支払った教育訓練経費)
  • 本人・住所確認書類
  • マイナンバーがわかる書類
  • 雇用保険被保険者証
  • 教育訓練給付適用対象期間延長通知書(適用対象期間の延長をしていた場合)
  • 給付金の振込を希望する金融機関の口座番号等がわかる通帳やキャッシュカード
  • 教育訓練経費等確認書

そのほか、状況等に応じて書類の追加提出を求められる可能性があります。詳細は、従業員の住所地を管轄しているハローワークに問い合わせましょう。

教育訓練給付制度の手続き方法

教育訓練給付金を受け取るまでの大まかな流れは下記のとおりです。詳細は住所地を管轄するハローワークでの問い合わせが確実です。

<教育訓練給付金を受け取るまでの流れ>
  1. 対象者かどうかの確認(住所地を管轄するハローワークで確認するのが確実です)
  2. 受講講座を選び、教育訓練給付制度を利用したい旨を伝える
  3. 教育訓練を受講する
  4. 修了書類などの必要書類をスクールから受け取る
  5. 住所地を管轄するハローワークで給付の申請をする
  6. 給付金が支給される

教育訓練給付制度の対象となる教育訓練

教育訓練給付制度の対象となる教育訓練は多岐にわたります。そのため、厚生労働省は「教育訓練給付制度 検索システム」で、教育訓練給付制度の対象が検索できるように公表しています。
従業員から教育訓練給付制度の対象について問い合わせがあった場合は、下記の教育訓練給付制度検索システムを案内しましょう。
出典:教育訓練給付制度 検索システム

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山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

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