【雇用保険とは】加入条件や手続きなど労務担当者が押さえておきたい基礎知識

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人事労務業務の中には、雇用保険に関する手続きがたくさんあります。政府が管掌する強制保険制度のため、一定の雇用条件を満たす従業員には必ず加入手続きを行わなければなりません。また、様々なライフイベントに応じて給付手続きを行うこともあり、こまめな対応が必要になります。
今回は、そうした「雇用保険」にスポットを当て、加入条件や雇用保険で支給される給付金、手続きの方法などについてご紹介します。

目次

雇用保険とは <加入する人・しない人>

雇用保険で支給される給付金の種類

雇用保険の保険料と支払い

【取得・喪失・異動】雇用保険の手続きの流れ

雇用保険の給付金に関する手続き

今や手続きは電子申請が主流!ペーパーレスな情報収集でスムーズに業務を進めよう!

雇用保険とは <加入する人・しない人>

雇用保険とは、失業や育児・介護などによる休業で収入が減った際に、労働者の生活を支えるために設けられた強制保険制度です。困窮する労働者の生活や就職促進のために給付金を支給するだけでなく、失業の予防や雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上、その他労働者の福祉の増進を図ることなどを目的としています。
そのため、労働者を雇用する企業は、その業種や規模等を問わず原則としてすべて「適用事業」となり、労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負うことになります。(農林水産業の一部を除く)つまり、「適用事業」に雇用される労働者は、原則として雇用保険の“被保険者”になります。

雇用保険に加入する対象者は、以下の(1)(2)いずれにも該当していることが条件となります。

(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

「31日以上雇用が継続しないこと」が明確でなければ、パート・アルバイトであっても雇用保険に加入しなければなりません。また、雇用契約期間が31日未満であっても、次のような場合は原則として「31日以上の雇用が見込まれる」ものとされます。

  • 期間の定めがなく雇用される
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない
  • 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある

また、たとえ雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であっても、その後31日以上雇用されることが見込まれることになった場合には、その時点から適用されます。

(2) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

例えばパート・アルバイトの場合、忙しくて20時間以上働いた週があっても、常時は週15時間働くことになっている雇用契約であれば、雇用保険の加入対象にはなりません。シフトの関係で、毎週の労働時間が異なる場合は、月の合計が週20時間相当を超える契約になっているかどうかで判断します。

ただし、以下のような人は雇用保険の加入対象とはなりません。

  • 無限責任社員、顧問
  • 学生
    ※卒業前に内定先に就職し卒業後も引き続き勤務することが予定されている場合や、通信教育・夜間・定時制の学生は除く
  • 家事使用人
  • 臨時内職的に雇用される者
  • 授産施設の作業員
  • 保険会社の外務員及び商事会社の外交員、営業部員(事業主と雇用関係になく、委託関係と認められる者)
  • 旅館、料理店、飲食店、接客等、娯楽場の事業に雇用される者(事業主との間に雇用関係のない者)
  • 在日外国人(外国において雇用関係が成立した後、日本国内にある事業所に赴き勤務している者)
参考:厚生労働省 滋賀労働局

雇用保険で支給される給付金の種類

従業員の中には、雇用保険は「退職時にのみ恩恵を受けられる」ものと認識している人が多いようです。もちろん、それが一番の役割ではありますが、雇用保険で支給される給付金には以下のようなものもあります。

求職者給付、就職促進給付

失業した際に、新しい仕事を探している期間中の収入を保障したり、再就職を促進したりするための給付金です。基本手当は、一般的に「失業保険」などと呼ばれており、退職後にハローワークで手続きを行うと支給されます。

教育訓練給付金

国が指定する教育訓練講座を受講し修了すると、受講料や入学料などの教育訓練経費の一部が給付金として支給されます。

高年齢雇用継続給付金

雇用保険に加入していた期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者について、60歳時点の賃金と比較してその後の賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。

育児休業給付金

1歳または1歳2ヶ月(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6ヶ月または2歳)未満の子どもを養育するために、育児休業を取得した被保険者に支給されます。

介護休業給付金

家族の介護のために休業した被保険者に支給される給付金です。

労働者は、失業や休業により生活が困窮するリスクを常に抱えています。
雇用保険に加入することは、労働者を失業などのリスクから守り、安心して働けるようにしてくれるという点で、従業員にとって大きなメリットになります。

雇用保険の保険料と支払い

雇用保険料は、労働者と事業主で負担することになっています。保険料率と負担割合は、業種ごとに定められており、毎年4月1日から翌年3月31日を1年とする年度末に公表されます。

(例)令和2年度の雇用保険料率

出典:厚生労働省PDF「令和2年度の雇⽤保険料率について」より

企業(事業主)が労働者よりも保険料を多く負担する理由は、事業主の保険料には労働者に支給する給付金以外の費用負担も組み込まれているからです。
例えば、2020年に猛威を振るった新型コロナウィルスの影響で、国は休業を余儀なくされた企業に対し、雇用調整助成金の特例措置を実施しました。実は、この特例措置の費用には、雇用保険料の事業主負担分が活用されているのです。

保険料は、年に一度、従業員の当該年度の見込み給与をもとに雇用保険料と労災保険料を算定し、企業がまとめて前払いします。これを「労働保険の年度更新」とよび、原則として例年6月1日から7月10日までの間に労働基準監督署、都道府県労働局及び金融機関で手続を行います。
そしてその後、従業員の負担分については各月の給与から分割で徴収します。

【取得・喪失・異動】雇用保険の手続きの流れ

雇用保険では、「雇用時」「退職時」「異動時」に手続きが発生します。ここでは、それぞれのタイミングで必要となる雇用保険の手続きにいついて解説しましょう。

従業員を雇い入れる際の手続き(資格取得手続き)

雇い入れた月の翌月10日までに、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。雇用保険の被保険者に該当するにもかかわらず未加入の場合は、罰則として懲役6カ月以下もしくは罰金30万円が課せられますので、雇用保険の被保険者に該当するかどうかをしっかり確認しておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の確認が済むと、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」(被保険者通知用)が交付されます。「雇用保険被保険者証」は、“雇用保険の加入手続きがなされた”証として企業が退職まで保管することが多いですが、「雇用保険資格取得等確認通知書」(被保険者通知用)は企業から従業員に渡すことが義務づけられています。

※雇用保険被保険者資格取得届の書き方については、コラム「これで安心!雇用保険被保険者資格取得届の書き方と申請時の注意点」を参照ください。

 

従業員が離職する際の手続き(資格喪失手続き)

従業員が離職する際は、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を離職した翌々日から10日以内に事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。(本人が離職票の交付を希望しない場合は「雇用保険被保険者離職証明書」の提出は不要です)
離職証明書を提出する際には、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など、離職の日以前の賃金支払状況等を確認できる資料や、その他離職理由を確認できる資料の提出も求められます。

※「雇用保険被保険者資格喪失届」の書き方については、コラム「雇用保険被保険者資格喪失届の書き方・添付書類など提出時の注意点」を、「雇用保険被保険者離職証明書」の書き方については、コラム「要チェック!雇用保険被保険者離職証明書の書き方と作成・提出時の注意点」を参照ください。

 

他事業所に転勤をさせる際の手続き(異動手続き)

雇用保険は、事業所単位で登録されているため、他の事業所に転勤させる場合には雇用保険の転勤届を提出する必要があります。
手続きでは、事実のあった日の翌日から10日以内に、転勤先となる事業所の管轄ハローワークに以下の書類を届け出ます。

  • 雇用保険被保険者転勤届(則様式第10号)
  • 転勤前に交付された資格喪失届・氏名変更届(則様式第4号)
  • 転勤の事実が確認できる書類(転勤辞令、労働者名簿、出勤簿など)
  • 企業の組織図等 ※転勤前後の事業所が同一の事業主の事業所かを確認する場合のみ

ただし厚生労働省では、その届出内容を精査する必要がある場合を除いて「添付書類を省略して差し支えない」としています。また、従業員のマイナンバーが紐付けされていない場合は、「個人番号登録届(則様式第10号の2)」を併せて提出することが義務づけられています。

雇用保険の給付金に関する手続き

雇用保険に関連する手続きでは、以下のような給付金の支給時においても人事労務担当者が対応することになります。

育児休業給付金の支給手続き

育児休業給付金を受けるには、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークから受け取り、本人が記入のうえ企業が提出する必要があります。
原則として、2か月に一度ハローワークの指定日に支給申請書を提出しますが、初回は支給対象期間の初日から4ヶ月に到達した日の属する月の末日までに提出しなければなりません。また、初回には「被保険者休業開始時賃金月額証明書」と、出勤簿、タイムカード、賃金台帳などの書類も添付する必要があります。
「パパ・ママ育休プラス制度」を活用する場合は、支給対象者の配偶者であることを確認できる書類(住民票など)や、配偶者が育児休業を取得していると確認できる書類(育児休業取扱通知書など)も必要になります。

※育児休業中の対応や各種手続きについては、コラム「【育休・復職手続き】総務担当者が押さえておきたい、出産した従業員への会社の対応・手続き」を参照ください。

 

介護休業給付金の支給手続き

介護休業給付金については、介護休業終了日(介護休業期間が3ヶ月以上ある場合は介護休業開始日から3ヶ月経過した日)の翌日から起算して2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業給付金支給申請書」を管轄のハローワークに提出します。
その際、添付書類として、賃金台帳や出勤簿、タイムカード、被保険者が事業主に提出した介護休業申出書、介護対象家族の方の氏名、申請書本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書(住民票記載事項証明書など)、振込先金融機関の通帳の写しを用意します。

※介護休業に関する対応や手続きについては、コラム「介護休暇・介護休 業制度とは|仕事と介護の両立支援で企業が注意すべきこと」を参照ください。

 

高年齢雇用継続給付の支給手続き

60歳以上65歳未満の人を雇用する場合、高年齢雇用継続給付の手続きが必要になることがあります。
高年齢雇用継続給付は「60歳時点の賃金と比較して60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が75%未満であること」が支給要件となるため、60歳の時点での「雇用保険被保険者六十歳到達時賃金証明書(通称「賃金証明書」)」を提出しなければなりません。
初回は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内に、「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を管轄のハローワークに提出します。添付書類には、「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」のほか、支給申請書、賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)、被保険者の年齢が確認できる書類等(運転免許証か住民票の写し)が必要です。
支給申請書は、原則として2か月に一度提出が必要になります。申請は事業主である企業が行いますが、希望があれば被保険者本人が手続きを行うことも可能です。

今や手続きは電子申請が主流!
ペーパーレスな情報収集でスムーズに業務を進めよう!

今、多くの行政手続きが電子申請になっています。雇用保険も例外ではなく、ほとんどの申請において電子申請が可能になっています。
電子申請にすると、様々な手続きの準備が簡素化されます。例えば、資格取得手続きの場合(必要に応じてハローワークから要求されることもありますが)原則として添付書類が必要なくなります。また、申請書の確認後に交付される「雇用保険被保険者証」などの書類は、電子公文書として交付され、紙の書類がなくなるので、保管や従業員への交付などでも業務の手間を軽減することが可能です。

電子申請は、e-Govから行えますが、電子申請に必要な情報をExcelや手書き書類で管理していると、どうしても手続きにミスや漏れのリスクがつきまといます。そこで、従業員情報を一元管理し、かつ電子申請にも対応したクラウドサービスを利用すれば、従業員に電子データで提出してもらった情報をそのまま活かし、各種手続きをデスクにいながら完結することができます。
例えば、奉行Edge労務管理電子化クラウドは、ペーパーレスで従業員から情報を収集し、クラウド上に業務に必要な人事情報をすべて集約します。従業員は、住所変更や結婚などのライフイベント情報をパソコンやスマートフォンからいつ、どこにいても提出できるので、オフィスにいなくてもスキマ時間に各種の届出を行えます。
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