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領収書を発行する際に気をつけなければならないのが、収入印紙です。領収書やレシートを発行することのある事業者なら、収入印紙を貼るケースや必要金額について、正しい知識を身につけておきたいところです。
ここでは、収入印紙の概要や、領収書に貼付が必要な場合と必要金額のほか、貼り方や貼付ルールについて説明します。
目次
- 収入印紙とは、税金・手数料納付のために国が発行する証票のこと
- 収入印紙の貼付が必要な領収書の見分け方
- 領収書に貼付する収入印紙の金額
- 収入印紙の額面の種類
- 収入印紙の購入場所
- 領収書への収入印紙の貼り方
- 領収書に収入印紙を貼らなかった場合のペナルティ
- 収入印紙を交換する方法
- 領収書は電子データで発行するのがおすすめ
収入印紙とは、税金・手数料納付のために国が発行する証票のこと
経済的な取引に伴う契約書や領収書などの書類は、印紙税という税金が課せられます。収入印紙は、その税金を支払うために国が発行する証票です。
なお、収入証紙や普通切手は、収入印紙と見た目もよく似ているため混同されることもあるようですが、使用目的がそれぞれ異なります。収入証紙は地方自治体へ支払う税金や手数料のために使用し、普通切手は郵便局へ支払う前納料金のために使用します。
収入印紙が必要な課税文書
企業が作成する書類は、収入印紙の貼付が必要な「課税文書」と貼付が不要な「非課税文書」「不課税文書」があります。それぞれの文書の概要は、下記のとおりです。
・課税文書
課税文書とは、印紙税の課税対象となる契約書および受取書のことです。課税文書には、5万円以上の領収書のほか、契約書や約束手形、証券などが該当します。契約内容や契約金額、領収書の金額により、収入印紙の金額が変わってきます。
・非課税文書
非課税文書は、課税文書に該当するもののうち、例外的に印紙税の納付が不要な書類のこと。金額が5万円未満の領収書や、契約金額が1万円未満の売買契約書などが該当します。
・不課税文書
不課税文書は、課税文書に該当せず、印紙税が課せられない書類のことです。雇用契約書や秘密保持契約書、請求書などが該当します。
ただし、不課税文書に該当する名称の書類でも、実態が課税文書に該当する場合は収入印紙の貼付が必要なこともあるので注意が必要です。
収入印紙の貼付が必要な領収書の見分け方
領収書を発行する際に覚えておきたいのが、収入印紙のルールです。原則、5万円以上の領収書には収入印紙が必要になりますが、条件によっては不要になるケースもあります。ここでは、収入印紙が必要かどうかの見分け方についてご紹介します。
原則、5万円以上の領収書には収入印紙が必要
金額が5万円以上の領収書を発行する場合は、原則として収入印紙の貼付が必要です。金額は売上代金のみとなり、消費税は含みません。
ちなみに、印紙税はあくまでも「課税文書を発行」する際に納める税金ですので、そもそも領収書を発行しない場合は、5万円以上の商取引をしたとしても印紙税を納付する必要はありません。
5万円以上の領収書でも収入印紙が不要なケース
領収書の金額が5万円以上でも、収入印紙を貼らなくても良いケースがあります。下記に該当する場合は、収入印紙の貼付が不要です。
・電子的に発行された領収書の場合
PDFの領収書など電子的に発行された領収書は、領収書の現物の交付がなされない以上、課税文書を作成したことにはならないため、収入印紙が不要です。別途、印紙税を納める必要もありません。収入印紙を貼る必要があるのは、実際に課税文書を発行した場合です。もちろん、収入印紙の貼られていない電子的な領収書でも、法的な効力を有します。
・金銭を受け取っていない場合
紙で発行する領収書でも、その場で現金を受け取っていないのであれば収入印紙の貼付が不要です。具体的には、クレジットカード決済をした場合などが該当します。ただし、領収書に「クレジットカード決済」などと明記して、現金を受け取っていないことがわかるように記載しなければなりません。
・事前に届出している場合
印紙税は、収入印紙の貼付以外の方法で納付するケースもあります。例えば、大量の課税文書を作成する場合などは、事前に税務署で手続きをすることで収入印紙の貼付を省略できます。ただし、印紙税の納付自体は必要です。
領収書に貼付する収入印紙の金額
領収書に貼付する収入印紙の金額は、領収書の金額に応じて決まります。
■領収書に貼付すべき収入印紙の金額
領収書の金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円未満 | 貼付不要(非課税) |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超え2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円を超え3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超える | 20万円 |
受取金額の記載なし | 200円 |
印紙税の対象となる領収書の金額は、消費税を除いた本体金額です。ただし、領収書の金額に消費税の内訳がわかるように記載しなくてはなりません。
例えば、「領収書の金額 50,600円」の場合、内訳に「税抜金額 46,000円・消費税額等 4,600円」などと記載があれば、本体金額が5万円未満だとわかるので収入印紙の貼付は不要です。内訳の記載がなかった場合は、消費税額が必ずしも明らかであるとは言えないので5万円以上と取り扱われ、200円の収入印紙が必要になります。
このように、内訳を記載しないと、収入印紙の金額が変わってくるため、領収書の金額は「税抜金額」「消費税額等」といった項目を書き込める形式で作成するのがおすすめです。
収入印紙の額面の種類
収入印紙は、1円から10万円まで全部で31種類の額面があり、必要に応じて購入します。貼付が必要な額面の収入印紙を使用するのが基本ですが、複数の収入印紙を組み合わせて使うこともできます。
<収入印紙の額面一覧>
1円、2円、5円
10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円
100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円
1,000円、2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円
1万円、2万円、3万円、4万円、5万円、6万円
10万円
収入印紙の購入場所
収入印紙は、郵便局などで購入することができます。突然必要になった場合に備えて、購入できる場所を確認しておきましょう。
郵便局
郵便局の郵便窓口では、原則すべての種類の収入印紙を取り扱っています。ただし、額面の大きな収入印紙の場合、郵便局の規模によっては取り扱いがないこともあるため、事前に取り扱い状況を確認しておくと安心です。
郵便窓口が開いている時間帯に都合がつかない場合、夜間や土日祝日でも窓口対応を行っている「ゆうゆう窓口」を利用するのもひとつの方法です。一部の郵便局に設置されていますので、郵便局のウェブサイトから探してみてください。
法務局
登記や戸籍などに関する手続きをする法務局では、収入印紙の貼付が必要な書類を提出することもあるため、収入印紙の売り場が設けられています。
コンビニ、スーパー
200円の収入印紙であれば、コンビニやスーパーでも取り扱っているところがあります。特に、店舗数も多く、時間を気にせず購入できるコンビニは、急に200円の収入印紙が必要になったときなどに便利です。ただし、収入印紙を取り扱っていない店舗もあります。
役所
すべての場所ではありませんが、役所の中にはパスポートの申請用に収入印紙売り場を設けていたり、収入印紙を取り扱う売店があったりするところがあります。役所では収入印紙と言葉が似ている収入証紙も取り扱っているので、間違って購入しないように気をつけてください。
領収書への収入印紙の貼り方
領収書に収入印紙を貼るときは、切手と同じ要領で貼った後に消印が必要です。ここでは、収入印紙の貼り方と、消印をする際のポイントをご紹介します。
収入印紙の枠内、もしくは余白に貼る
収入印紙を貼る場所について、法律上の決まりはありません。領収書に収入印紙を貼るための枠が設けられている場合は、その位置に収入印紙を貼ります。枠がない領収書の場合は、文字にかからないよう、余白に貼ってください。
複数枚貼る場合は、上下または左右に並べる
領収書に収入印紙を複数枚貼るときは、上下または左右に並べて貼ります。収入印紙同士は重ならないように気をつけましょう。領収書に収入印紙を貼る枠がある場合は、枠の付近に複数枚を並べて貼ります。
領収書と収入印紙をまたぐように消印する
領収書に収入印紙を貼った後は、必ず消印をします。消印とは、収入印紙などを再利用できないようにするために押す印のこと。領収書と収入印紙をまたぐように押印します。
押印するのは、収入印紙の上下左右、どこの場所でも構いません。複数枚の収入印紙を貼った場合は、すべての収入印紙に領収書用紙とかかるように消印をしてください。複数の収入印紙と領収書用紙をまたぐようにまとめて押印することもできます。
消印をする印鑑には決まりはなく、会社の印鑑、または、領収書を発行した経理担当者の印鑑のほか、自筆による署名(サイン)も有効です。ただし、署名する場合は、鉛筆や熱で消えるボールペンなどの署名は無効のため、消すことができないボールペンを使用してください。また、記号や斜線などを、消印代わりにすることはできません。
領収書に収入印紙を貼らなかった場合のペナルティ
収入印紙が必要な領収書に、収入印紙を貼らずに発行してしまった場合はどうなるのでしょうか。収入印紙を貼り忘れた場合のペナルティや、収入印紙がない領収書を受け取った場合について解説します。
領収書を発行した側に過怠税が課せられる
収入印紙が必要な領収書に収入印紙を貼らずに発行した場合は、貼付すべき印紙税の金額と、その印紙税額の2倍の金額の合計額、つまり納付すべき印紙税の3倍の過怠税が課せられます。例えば、収入印紙を貼付せずに10万円の領収書を発行した場合、200円の3倍で、600円の過怠税を支払わなければいけません。
ただし、収入印紙を貼り忘れていたことに後から気づき、所轄の税務署に申し出て認められた場合、過怠税は納付すべき印紙税の額と印紙税額の10%の金額の合計額、つまり印紙税額の1.1倍に減額されます。上記の例の場合は、200円の1.1倍で220円を納めます。税務署から調査を受けて、「過怠税が課せられる可能性がある」とわかってから申し出た場合は適用外です。
領収書を受け取った側にペナルティはない
領収書に収入印紙を貼るのは、発行する側の義務です。必要な収入印紙が貼付されていない領収書を受け取った側は、ペナルティを受けることはありません。正式な領収書としての効力も失われませんので、通常どおりの経費処理が可能です。
収入印紙を交換する方法
収入印紙を間違えて購入してしまった場合や、ほかの額面の収入印紙に交換したい場合は、1枚あたり5円の交換手数料を支払えば、郵便局で交換が可能です。ただし、交換できるのは下記の条件を満たすものだけとなります。
<交換ができる収入印紙>
- 未使用
- 白紙または封筒など、本来貼付する必要がないと明らかにわかるものに貼付
例えば、次のようなケースでは交換ができると考えられます。
<収入印紙が交換可能な例>
- 350万円の領収書を作成することになり、1,000円の収入印紙を購入したが該当の取引がなくなって領収書の発行が不要になった。今後、1,000円の収入印紙を使う予定がないため、200円の収入印紙に交換したい。
- 収入印紙とメモ帳を重ねて置いていたところに水をこぼし、メモ帳に収入印紙がくっついてしまった。はがせないため、新しいものに交換したい。
また、国税庁では、交換対象となる収入印紙と同様に、対象にならない収入印紙についても案内しています。
<交換対象にならない収入印紙>
- 汚れたり破れたりしている
- 消印がある
- 利用された形跡がある
- 書類に貼った後、切り離されている
ちなみに、「領収書に貼付したが、押印はしておらず、実際には使わなかった領収書」などは、交換対象にも、対象外にも該当しません。利用された形跡の有無などは個別に判断されることになりますが、領収書から切り離したり消印をしたりせずに郵便局に持ち込めば、交換してもらえる可能性があるでしょう。
なお、交換手数料の1枚5円は、持ち込んだ収入印紙の枚数に応じて決まります。例えば、1,000円の収入印紙を200円の収入印紙5枚に交換してもらう場合の手数料は5円です。一方、200円の収入印紙5枚を1,000円の収入印紙に交換した場合の手数料は5円×5枚=25円です。
領収書は電子データで発行するのがおすすめ
領収書を紙で発行するには、手間とコストがかかります。一方、請求書データから自動で電子的に発行できる領収書であれば、手間なく間違いのない領収書を発行できますし、収入印紙の貼付も必要ありません。
また、2023年10月からは適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートし、2024年12月31日には電子帳簿保存法の電子取引に関する電子データ保存義務化の猶予期間が終了します。今後、さらにビジネス文書の電子化が加速していくでしょう。
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■監修者
石割 由紀人
公認会計士・税理士、資本政策コンサルタント。PwC監査法人・税理士法人にて監査、株式上場支援、税務業務に従事し、外資系通信スタートアップのCFOや、大手ベンチャーキャピタルの会社役員などを経て、スタートアップ支援に特化した「Gemstone税理士法人」を設立し、運営している。
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