【連載(第4回)対策!平成30年配偶者控除改正】【2018年】年末調整のやりなおしにも慌てない!従業員の再申告を想定した実務と対処法を徹底解説

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従業員本人および配偶者の1年間の合計所得金額が確定し、見積金額より大きく変動した場合には、従業員に配偶者控除等申告書を再度提出してもらい、年末調整をやりなおすことになります。一般的に年末調整の精算は今年最後に支払う給与や賞与で行いますが、従業員からの再申告が精算に間に合わないことも想定されます。そこで重要となるのが「再申告の早期回収」と「再申告のタイミングに応じた対処」です。

今回は、年末調整のやりなおしを正しく効率的に行うための実務について、具体的に紹介します。やりなおすケースに直面しても慌てないよう、しっかり確認していきましょう。

年末調整の再計算が必要となるケース

従業員および配偶者の合計所得金額が見積った時点から変動し、配偶者控除および配偶者特別控除額が変わる場合には、配偶者控除等申告書を再提出してもらい、年末調整を再計算する必要があります。合計所得金額の大半を占める給与所得は企業側で把握していますので、労務担当者は年末調整の計算が終わったら、従業員の給与所得に差が生じていないかチェックを始めましょう。
どのようにチェックして再計算を進めていけばいいのか、具体的な手順を「1 従業員の給与所得のチェック」以降の解説で確認していきましょう。

注意したい点としては、合計所得金額には、給与所得のほかに事業所得・雑所得・配当所得・不動産所得・退職所得が含まれますが、給与所得以外の所得は企業側では把握できないため、本人からの再申告を促す必要があります。具体的には、申告書の提出依頼をする時点や申告書の提出期限が経過した時点で、「申告内容に変更がある者は労務担当者に連絡をする」旨を案内しておきましょう。

1 従業員の給与所得のチェック

給与所得の「確定額」と「見積額」を比較して、再申告が必要となる従業員を把握します。前回の記事で「12月の業務スケジュール」を紹介しましたが、初回の年末調整計算から再計算までの猶予は数日間しかないことが想定されます。労務担当者にとって、再申告が必要な者をできるだけ早く把握することが重要となりますので、以下の手順を参考に効率よく対象者をリストアップしましょう。

①「確定額」と「見積額」を一覧にする

従業員ごとに確定した給与所得の「収入金額」、「所得金額(確定額)」、「所得金額(見積額)」を比較するリストを作成します。リスト上で「所得金額(確定額)」が高い順に並べかえしておくことで、再申告の可能性が高い高所得者をチェックしやすくなります。

  • 収入金額
    1年間の給与および賞与における課税支給額の累計額となります。再申告を依頼する際に従業員へ案内するため、このタイミングでリスト化しておきます。
  • 所得金額(確定額)
    1年間の収入金額から給与所得控除を行った後の所得金額となります。この金額を元に配偶者控除額・配偶者特別控除額を算出します。
  • 所得金額(見積額)
    配偶者控除等申告書に記載された「あなたの合計所得金額(見積額)」の所得金額となります。

※ 不動産所得や退職所得などの給与以外の所得がある従業員の場合は、給与以外の所得も含めて各金額を算出しましょう。

②給与所得金額を3段階に区分けする

給与所得金額を配偶者控除等申告書で用いている3段階の区分A・B・C(下図)に区分けします。「所得金額(確定額)」と「所得金額(見積額)」のそれぞれに記号を付けておきましょう。

<配偶者控除等申告書の本人の所得区分Ⅰ>

③「確定額」と「見積額」の区分を比較する

「所得金額(確定額)」と「所得金額(見積額)」の区分を見比べて一致しない場合には、申告書を修正して再度提出する必要がある従業員となりますので、目印をつけておきます。

給与計算システムを利用している場合には、給与データや年末調整データをExcelなどへ展開できると転記作業が省けます。お使いのシステムで各種データが利用できるかを確認しておきましょう。

<2018年の年末調整データを利用したリストの例>

2 再申告依頼・回収

再度申告書の提出が必要な従業員に対して、申告書を返却し、期限を決めて再提出を依頼します。労務担当者は、従業員に手戻りが発生しないよう、以下の内容をできるだけ具体的に案内しましょう。

  • あなたの合計所得金額(見積額)の「給与所得(1)の収入金額等、所得金額」、「(1)〜(7)の合計額」
  • あなたの本年中の合計所得金額の見積額、判定欄に記載する金額、区分

また、従業員が申告書の訂正に慣れていない場合には、訂正箇所は二重線で取り消して訂正印を捺した上で、正しい内容を空いている場所に記載するといった具体的な指示を行うようにしましょう。

3 年末調整の再計算と精算

再度提出された申告書を元に年末調整を再計算して源泉徴収税額との過不足額を求めます。その金額を12 月分の給与または賞与で精算すれば、年末調整計算は終了となります。
しかしながら、従業員の給与所得以外の所得、例えば配偶者の給与所得や一般保険料などが年末調整の精算が終わった後に変わることが想定されます。
この場合には、いったん12 月分の給与または賞与で年末調整の精算を行った後、年末調整をやりなおし、過不足税額の差額を求めて別途精算することとなります。以下に具体的な流れを記載していますので、事前に確認しておきましょう。

①はじめに年末調整をした結果を確認する

12 月分の給与または賞与で年末調整を計算した際の「すでに精算した源泉徴収税額との過不足額」を把握しておきます。給与計算システムを使用している場合には、このタイミングでデータのバックアップを取ることをお勧めします。

②年末調整を再計算する

再申告された内容を反映して年末調整を再計算し、「本来の源泉徴収税額との過不足額」を求めます。

③差額を計算して精算する

①と②の差額を求めて従業員へ追加で精算します。2通りの精算方法がありますので、以下の作業を確認した上で、自社の運用を決めておきましょう。

【方法ⅰ】過不足額のみを現金もしくは振込にて精算する
過不足額を精算するための明細書を発行します。さらに、現金の場合には還付・追徴に必要な金種を用意し、振込の場合にはファームバンキング用のデータを作成する必要があります。

【方法ⅱ】翌年1月分の給与または賞与で精算する
給与または賞与の支給控除項目に年末調整の差額を精算するための項目を設けて、還付・追徴する金額を反映します。

なお、給与奉行では、「給与もしくは賞与年調」で精算した後にやりなおしたい場合には、「単独年調」で計算した結果を別途還付金として処理することができ、還付金を翌年1月分の給与へ反映することも可能です。ご利用の給与計算システムでどのように対応できるかを確認しておきましょう。

紙の配偶者控除等申告書を電子化するメリット

年末調整申告書をWebで提出できる年末調整申告書クラウドを利用すれば、再申告が必要な項目だけを差戻し、従業員も該当箇所だけ入力するだけで申告できるため、時間をかけずに再申告業務を完了することが可能です。また、再申告データはそのまま給与計算システムへ反映されますので、すぐに年末調整の再計算を始めることができます。この機会にクラウドサービスを検討することもお勧めです。

さいごに

今回の法改正が企業の負担になる最大の理由は、再申告の対象となる従業員を事前に特定することが困難であり、実際には年末調整を進める中ではじめて明確になるからといえます。この負担を軽減するためには、年末調整時期に突入する前にこれから必要となる実務を把握しておくことがとても重要です。合わせて、現行の給与計算システムの対応状況も確認し、必要な情報を整理しておきましょう。
全4回にわたって、配偶者控除改正に必要となる実務とテクニックについて紹介してきましたが、事前に確認しておけば、そのケースに直面しても慌てることはありません。自信をもって今年の年末調整を乗り切っていきましょう。

  • ※ OBCのFacebookページでも、「OBC360°」に新しい記事が公開されるとお知らせしていますので、ぜひチェックください。

参考情報:平成30年分からの源泉徴収票の変更点

平成30年分からの源泉徴収票では、所得控除および配偶者に関する情報欄が変更されていますので、新しい様式で作成することになります。以下に変更点をまとめましたので、確認しておきましょう。
なお、法定調書合計表や総括表には変更はありませんので、例年通りに行ってください。

<平成30年分の源泉徴収票の変更点>
  1. ① (源泉)控除対象配偶者の有無等
    以下の場合に、「○」を記載します。

【有】欄
主たる給与等において、控除対象配偶者を有している場合
※年末調整の適用を受けていない場合は、源泉控除対象配偶者を有している場合

【従有】欄
従たる給与等において、源泉控除対象配偶者を有している場合

【老人】欄
控除対象配偶者(年末調整の適用を受けていない場合は源泉控除対象配偶者)が老人控除対象配偶者の場合

  1. ② 配偶者(特別)控除の額
    配偶者控除額または配偶者特別控除額を記載します。
  2. ③ (源泉・特別)控除対象配偶者
    控除対象配偶者または配偶者特別控除の対象となる配偶者の氏名およびマイナンバーを記載します。(受給者交付用にはマイナンバーは記載しません。)
    ※上記の方が非居住者の場合は、区分欄に「○」を記載します。
    ※年末調整の適用を受けていない場合は、源泉控除対象配偶者の氏名およびマイナンバーを記載します。
  3. ④ 配偶者の合計所得
    配偶者の合計所得金額を記載します。
    ※年の途中で退職し、源泉控除対象配偶者を有している場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載された源泉控除対象配偶者の「所得の見積額」を記載します。
  4. ⑤ 摘要
    同一生計配偶者(控除対象配偶者を除く。)が障害者、特別障害者または同居特別障害者に該当する場合は、同一生計配偶者の氏名および同一生計配偶者である旨を記載します。
    ※同一生計配偶者とは、居住者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が38 万円以下である人をいいます。

※ 詳細は、国税庁のホームページより、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」をダウンロードしてご参照ください。